親馬鹿な加賀さんが着任しちゃいました   作:銀色銀杏

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《燃料 0 》

(゜ロ゜)

もうダメだ……
筆者、第E2にて燃料切れのためリタイア。無念……松風や伊14が欲しかったなぁ……やっぱりまだレベル40には厳しいんですね、春に向けてバケツとレベリングやらねば(使命感)
艦これ劇場番を4DXでみてきました!二回目だったんですが、凄く…感動します…
とにかく迫力と臨場感が凄かったです!
それでは本編どうぞ~



十五、不幸を胸に抱きし者

何かがおかしい、扶桑はそう思った。この戦いが始まって早くも半日以上が経過した、第一軍は撤退しもうすぐ此方にも敵が押し寄せてくる。多摩川を守るセイバー班が第二艦隊を砲撃支援、第一艦隊が敵に切り込むという陣形に展開する中で扶桑の何ともしがたい違和感は広がっていった。

扶桑は提督でありながら艦娘という極めて特殊な立場上直接現場にでて艦隊を指揮することが多い、そのような経験を重ねていく中で彼女は深海棲艦の動きを直感的にではあるが把握できるようになっていた。しかしその直感が何故か声高に「危ない」と叫んでいた。

 

「……さん!扶桑さん!」

「!ごめんなさい、今はそれどころじゃないわね…」

「もうすぐ敵艦隊が来ます、第一軍の一部が修復を終えて各班の援護に向かうという通信がありました。」

「それが来るまで持ちこたえる、と。」

「はい。」

 

頭の中の違和感を振り払い目の前の戦場に集中する扶桑、慎重な考えが己を救うとわかってても余計なことに気を取られては元も子もないというのも彼女は知っていた。そして間もなくセイバー班(仮称S班)第一艦隊の筑摩が飛ばした艦載機が戻ってくる、筑摩は此方を見て首を振り敵艦隊が見つからなかったということが伝わる。

 

「おかしいわ……」

 

一人ごちる扶桑、それもそのはず第一軍が撤退してから早一時間、ここの詳細な地形は敵に伝わって無いことから迷ったという可能性も考えられる、がそれにしても敵の一隻も確認出来ないのはおかしい……

なら次に考えられるのは他の河川に集中しているのか、そこまで扶桑は考えて他の班に通信するように指示しようとした瞬間に事態は動いた。

 

「緊急通信!アーチャー班敵潜水艦に奇襲を受けり!」

「っ!そういうことね、やられた!」

 

 

 

 

 

 

 

 

江戸川

 

「っ!?魚雷確認!全艦回避ー!」

「きゃっ!」

「榛名さん!ちっきしょう!」

 

中川と江戸川を防衛するアーチャー班、しかし守備範囲が広いため艦隊を分けて行動していた。提督もその事実を考慮して比較的練度の高い艦娘を配置していたのだが、江戸川を守備していた艦隊が潜水艦の奇襲を受けた。これにより二隻が中破となりそこから一気に深海棲艦が現れたのだ。

提督と扶桑はここに来て一つの事実を知ることになった、それは深海棲艦は艦種に関係なく潜水出来るということだ。もちろん、索敵には引っ掛からない潜水艦に見つかればただの的だが、それに海中から上がり武装を展開するまでは完全に無防備になってしまう。しかし潜水艦に奇襲を受けパニックになった彼女達は呆然と海中から深海棲艦が現れるのを見ているしかなかった、結果的に敵艦隊に包囲されてしまった。

 

「くっ!打電はしたのか江風!」

「はい那智さん!けど今から向かうって!」

「あきらめるな!もうこれは防衛とかの話じゃない、絶対に援軍が来るまで死ぬな!」

(また私のせいで不幸になっていく……)

 

すでに第一艦隊の赤城、榛名、摩耶、江風、那智、山城の内でまず赤城が中破、その後那智そして榛名が中破に追い込まれた。今無傷なのは江風と摩耶のみ、第二艦隊は唯一の空母である飛鷹が艦載機を中川から飛ばしているが夜間のため厳しい状態が続く、妙高を始めとする艦娘も砲撃支援を行っていたが焼け石に水。しかも第二艦隊の艦娘が一人行方不明という有様、四面楚歌とはまさにこの事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多摩川

 

「提督から通信は!?」

「最寄りの簡易泊地から援軍を出すようですが……」

「それじゃ間に合わない、敵は一つ一つ守備艦隊を叩くつもりよ。」

『そうだ、それなら話は早い。』

「提督!?」

「わかってる、つまりそこには敵がここに()ける戦力が集結している。」

『そう、これは逆にチャンスだ。』

 

提督と扶桑の考えは一致、つまり攻撃を受けてない艦隊から増援を編成して送ると言うものだ。聞くともう他の艦隊には打電し終わっているらしい、流石提督、手が早い。

 

「そうと決まれば早速増援に……」

「いや、どうやらそう上手くはいかないみたいだクマ。」

「これは…!」

 

扶桑の視界に移った小さい黒い点、しかしそれだけでもその黒い点が深海棲艦だと判断するには十分すぎた。そして続いて伝わった敵艦隊の情報に愕然とする、空母ヲ級elite、戦艦ル級flagship二隻、駆逐イ級elite二隻、そして―戦艦レ級。江戸川の敵艦隊が数による波状攻撃で相手を殲滅させるタイプならばこちらは少数で敵を足止めするといったところだろうか、奇しくも少数精鋭という考えはこちらも相手も持っていたようだ。

加えて旗艦である戦艦レ級、これは姫、鬼級と共に近年確認された艦種だ。砲撃、航空、雷撃に対潜まで全てをこなし尚且つ未だ確認されている通常個体の時点で同時期に発見された姫、鬼級と同じ実力を持つ正に化け物、「もうこいつ一人でいいんじゃないか」という言葉が最も似合う深海棲艦である。

 

「どうするクマ、もしかしたら他の班も似たような状態かもしれんクマ。」

「わかっています、第二艦隊とそれを誘導する球磨を援護に回します。」

「………」

「ここは一本道、私達が道を開けます、その間に―――」

「待つクマ。」

 

迅速に分配し、行動に移ろうとした扶桑だったが寸前で球磨に止められる。訝し気に球磨の方を見る、球磨はやれやれと言った感じでこういった。

 

「無理すんのも大概にしろクマ。」

「何を言って―――」

「第二艦隊、私のアレ持って来るクマ。あと第二艦隊の北上、龍田、隼鷹は扶桑に付いていくくクマ。」

「ちょっと!」

「私が行くよりも提督として指揮に長けたお前が行くべきクマ。」

「でも!」

「ギャアギャア五月蠅いクマ、さっさと行くクマ。」

 

扶桑が必死に反論するがそれさえも遮られる、納得がいかないと扶桑はさらに反論しようとした。そこに第二艦隊の艦娘が布に包まれた巨大な物体を持ってきた、球磨はそれを片手で受け取り布を開いた、出てきたのは球磨の身長の一.五倍はあろうかと言う巨大な大剣だった。

これは剛剣「山卸(やまおろし)」球磨が愛用している得物で深海棲艦の装甲を素材とし、それをわざわざ横須賀の明石に作らせたという業物、こんな武器を持っている球磨も普通の艦娘ではない。こと接近戦に関しては全艦娘中トップクラスでありその実力は味方を撤退させる為に姫、鬼級を含む敵主力艦隊と単独で相対してほぼ無傷で生還する腕前、その為呉という精鋭に所属しているのだが彼女の強さは群を抜いている。

そして大剣を肩に構えて球磨は扶桑だけに聞こえる声で言った。

 

「妹が心配なんだろ、さっさと行って助けてやるクマ。」

「私はそんな事別に――」

「私とお前の付き合いの長さをなめるなクマ、不安さが顔に出ているクマ。」

 

上述したように球磨の練度は高い、その為扶桑とも昔からの付き合いであり互いに思っていることが相手が思っていない事でもわかるのだ。それほどに二人は長い付き合いだった。

無論それだけではない、球磨にはわかるのだ、北上と言う自身と同じ艦娘の家族がいる球磨には。「家族がピンチならばすぐに行って助けたい」そんな当たり前のことを気が付けないほど浅い付き合いでもない、それを邪魔するなど―――無粋だろう。

だからここは引き受けた、娘の北上も信用できるからついていかせる。

 

「私が切り込んで穴開けるクマ、その間に四人はその穴通っていくクマ。」

「……礼は言わないわよ。」

「家族として当然の権利を行使するのに何で礼が必要クマ?」

 

そして球磨は地をいや水を蹴った、眼前には戦艦レ級と多数の強個体達、しかし球磨は動じることなく彼らの前で自らの決意を示すように大剣を降り下ろした。ただそれだけだった――

そして川が割れた、余りにも呆気なく簡単に。原理は単純、球磨の降り下ろした大剣の風圧により水が一時的にへこんだ、ただそれだけである。だがそれを剣の長さの八倍以上に伸ばすことなど出来はしない、それを球磨は息をするようにやってのけた。

 

「行ってくる。」

「行ってこいクマ。」

 

その短いやりとりの中で数々の思いが二人の間を行き交っていった、そして扶桑は北上達を連れてそこを全力で駆け抜けていった。

 

「オノレェ!イカセル――」

「つれないクマなぁ、お母さんと一緒に遊んで行くクマ。」

「コノォ!」

 

背後の尻尾を思い切り振り抜くレ級、それを球磨は片手でいなす。そしてそのままカウンターで大剣を振り抜いた、その大剣を誰も捕らえられなかった、それはレ級を掠めただけだが逆にそれがレ級を怒らせた。

 

「貴様ァ!」

「さぁ、躾の時間クマ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

江戸川

山城達は江戸川から本郷用水を通り中川に撤退し第二艦隊と合流、そして旧江戸川から新川を通り荒川の艦隊と合流しようとしたのだが、そこで初めて状況を知る。

 

「隅田川に敵艦隊ですって!?」

「ああ、どうやら他の艦隊も同じような状況らしい。」

「那智、第一軍の救援が来るまでどれくらいだと思う?」

「時間からして、三十分かそこらだな。」

「そこまでは耐え――」

 

そこまで言ったとき第二艦隊の菊月が半ば悲鳴になった声で叫んだ。

 

「電探に反応!此方に着ます!」

「ちっ!もう来るか!」

「後少しだ、頑張れ!一度敵が視認できたら発射だ。」

 

そうして本郷用水を曲がった敵が見えた瞬間に戦いは始まった、今回は体制を整え第二艦隊も共に居るため幾らかは戦況を保てると那智は思った。

東京湾側に下がりながら砲撃を繰り返すアーチャー班、対して深海棲艦は物量に物を言わせて駆逐艦を突撃させ、それに砲撃が集中している間に背後の戦艦級が遠距離から砲撃する、そして駆逐艦が全て沈んだらまた別の駆逐艦を突撃させるという戦法。

此方の駆逐艦と深海棲艦の駆逐艦が近距離で砲撃雷撃戦を繰り広げていたが戦艦級の砲撃で削られていく、elite個体が一隻もいなかったとしても数が多いのでかわらない。

 

(私のせいで…私のせいで…)

「きゃあっ!」

「菊月ぃー!」

「!」

 

自責の念に囚われていた山城、しかしその思いも目の前のピンチの仲間を見ることによって吹き飛ぶ。彼女は無我夢中で菊月を突飛ばした、それは自責の念からきていたのかは分からない、ただ分かるのはもう自分の不幸のせいで誰も傷ついて欲しくないという思いだった。

 

(姉様、先立つという不幸をしてしまう不出来な妹をどうかお許し下さい。)

 

突飛ばした菊月が何か言っているが聞こえない、周りの仲間達も何かを言っているようだ、きっと心配してくれているのだろう。こんな私でも心配してくれるなんて自分はなんて―――、なんて、何なんだろう?私は今何を思ったのか、この気持ちは何なんだろう?

それでもこの疑問も私も数秒後には消えているだろう、感覚が加速し長く感じる時の中でそう山城は静かに終わりの時を待った。

 

 

そして弾丸は彼女を――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貫かなかった

 

「………………え?」

 

いくら待てども終わりが来ない、不思議に思った彼女は瞼を開く、そこには先程別れを告げたはずの愛する者がいた。

 

 

唯一無二の、姉がいた。

 

 

その姉―扶桑は何処かの高速戦艦の様に弾丸を腕で弾くなどという真似はしない。弾き飛ばさず「掴んで」いたのだ、それは弾丸に追い付く速度と回転を止める握力、そして手を離さない勇気が必要だった。

それを扶桑はぶっつけ本番でやってのけた、深海棲艦も味方も何が起こったかわからずにぼうっとしていた。

 

「山城、無事なのね…!」

「姉様…何でっ…何で不幸な私を……!」

「不幸なのはね、貴女だけじゃないの。」

「え……」

 

ガツン!

 

世の中に自分より不幸な人間が居るのだろうか、そう山城は思った。その瞬間、受け止めた時の風圧により折れた川岸の街灯が扶桑の頭を直撃した。重いがとてもいい音がした。

 

「扶桑型はね、山城に限らず扶桑も不幸なのよ。」

「そんなこと今まで…一度も…!」

「当然よ、だって不幸じゃないもの。」

「どういうこと…何ですか?」

「愛する妹が何時も側にいて、信頼出来る仲間もいる。確かに私は『不運』かもしれない、けど決して『不幸』ではないわ。」

 

山城の頭に衝撃が走った、いや実際に扶桑の頭に当たった街灯が半ばで折れたのが山城に当たり物理的にも衝撃が走ったのだが、精神的にも衝撃が走る。

彼女の頭は昨日の球磨との会話を思い出していた。

 

 

 

 

『今日は加賀と演習してボロ負けしたらしいクマな。』

『仕方ないですよ、私は不幸なんです……』

『………なーるほど、そりゃ加賀に負ける訳クマ、お前は大事なことを忘れているクマ。』

『何なんですか!大事なことって!?加賀さんにも言われましたけどサッパリわかりません!!』

 

激高した山城に球磨は少し黙った後、「大ヒントクマよ」と付け加えて言った。

 

『お前は鎮守府の皆とお姉さん…提督が嫌いクマか?今の生活がイヤクマか?』

『とんでもない!私は姉様が大好きです!それにこんなに不幸で害しかない私でも好意的に接してくれる鎮守府の皆も好きです!』

 

球磨はニッと笑って、こう一言残し去っていった。

 

『ならそれが答えクマ。』

『ちょっ!』

 

 

 

 

 

今なら球磨の言葉の意味がわかるし、さっき抱いた感情にも合点がいく、私は不幸を言い訳にしていた。そんなことをしていたら改二にも成れないし弱くなって当然だろう、悔しいが加賀さんや球磨の言う通りだった。

 

私は確かに「不運」だ、けど姉様がいて皆がいて私は幸せだ、決して「不幸」ではない!

 

そう決意した山城であった、そして姉様に言葉を伝えようとし――

 

その時、不思議な事が起こった。

 

山城の身体を光が包み、彼女の身を包む艤装の形を変えた。そして光が収まったあとには手に飛行甲板を持つ艦娘、「山城改二」がそこにはいた。着いてきた扶桑の艦隊と共に陣形を組み直す艦隊、二人も気合いを入れて深海棲艦を見据える。

 

「行くわよ、山城!」

「圧倒的に不利でも、姉様となら!」

「あら、私だけじゃないわよ。」

「え?」

 

そう口にした時、辺りを照らしていた探照灯よりも明るい光が辺りを照らす。そして見えたのは艦載機、夜には発進できないはずの艦載機だった。そして深海棲艦の後方から無数の砲撃が降り注ぐ。そしてその戦闘に立っていた艦娘が飛び上がりビルの壁を蹴り、深海棲艦の艦隊を越えてきた、そしてその艦娘は扶桑達を見て言った。

 

「わりぃにゃ、遅くなったにゃ。」

「た、多摩姉!?」

「北上の知り合い?」

「はい…叔母です。」

「積もる話は後にゃ、今はこっちに集中するにゃ。」

 

流石は球磨の妹か、奇襲を受けたという報告が入った時に迅速に判断し救援艦隊を誘導、より効率的に再編成して逆に奇襲をし返すという斬新な発想をしてのけたのは何を隠そう多摩である。

普段は「魚に眼がない変人」と呼ばれているが、そんな者も今の多摩を見れば考えを改めるだろう。

 

「さあ、反撃タイムだにゃ。」

「うそ、これが多摩さんなの……」

「認めない、認めない……」

 

余りの変貌ぶりにある意味現実を見れない者が現れたが、そんなこは意にもとめずに多摩は声高らかに反撃を宣言する。

 

 

 

 

 

 

やられっぱなしの時間は終わった、このままというのは性に合わない。

さあ、今度は此方の番だ。

 

 

 

「姉様!」

「山城!」

「「全艦、突撃!!」」

 

 

 

二人の掛け声と共に反撃は開始する……

 

 

 




皆さんこんにちは、大和です!
今どこかと言いますと……

「大和!」

ああ、そうでした。すいません、ちょっと言えないんですよね~。今私は「表向き」は別任務という扱いになっているんですけど。

「……大和、そんなにお仕置きしてほしいのか?」

いえ、すいません流石に言い過ぎました。私はMではありませんので、それでは次回

「counter attack」

文字通り、反撃開始です!




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