親馬鹿な加賀さんが着任しちゃいました   作:銀色銀杏

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初投稿
 こんな苦労を
   するとはな
       By銀色銀杏

はい、第一話です。なんとかかんとか書き上げられました、まぁ細かい前置きは省いてとりあえずどうぞ~


第一作戦 鎮守府までは何マイル?
一、夢への旅立ち


朝、起きたら顔を洗い畑仕事のために外へ出た。外へ出て空を見ると見事な朝焼けだった。こんな空をみると思いだす、私がかつて「艦娘」として「加賀」として戦いそして迎えたあの運命の日を―――

 

 

あの日は大規模作戦が終わり、全員がボロボロの状態で帰還した時のこと。ちょうど今のような朝焼けだった。皆が入渠した中で旗艦で損傷が一番軽微だった私は執務室で報告をしていた。私はその戦闘で練度が九十九になったにもかかわらず暗い顔をしていた。

 

「提督、第一艦隊帰投しました。」

 

静かな執務室に二人の声が響く、今は二人っきりだ。

 

「そうか、それで作戦結果は?」

「大破3、中破2、小破1です。」

「わかった、轟沈が一人も出なくて何よりだ。」

 

しかし、その提督も顔は暗い。当然だ、人類史上三回目となる大規模反撃作戦が失敗に終わったのだから。が、私は今はそんなことよりも気になることがあった。

 

「提督、()()命令は何の意味が―」

「加賀」

 

しかし、私の言葉は提督によって遮られる。彼は天才的なセンスを持つが、かなり個性的で悪く言えば変態の部類に入る。だが艦娘に対してはかなり優しかったので、多くの艦娘からは好意を寄せられている。因みに認めたくはないが私もその一人である。しかし、発言を遮られた私は少しムッとした。が、続いて発せられた言葉に私は凍りついた。

 

 

 

 

 

「結婚しよう」

「、、、、、、、、は?」

 

意味が分からなかった。確かに近々ケッコンカッコカリをするらしいという噂は聞いていたが、対象はもっぱら金剛や赤城さんの上に提督は駆逐艦好き、いわゆるロリコンである。しかも大規模作戦が終わった直後、それに結果は失敗、どう考えてもいまその話をするのかがわからない。ましてや、相手が私など――――――

 

「結婚してくれ。」

 

なおも提督は言う。内心うろたえながらも私は反応する。

 

「、、、なぜ今、このタイミングで?それに私以外にも相応しい人がいるのでは?」

「今だからこそ言うんだ、加賀、俺は()()命令のせいでおそらくもうすぐ軍法会議にかけられるだろう。」

「ッ!」

 

確かにそうだ、あの大規模作戦の終盤にあんな命令を下したのだ当然とも言える。だが知っている、あの場にいた私達は知っているのだ()()命令の本当の意味を。だからこそ私は反論した。当然だ、真実を知っている私達現場はあの命令は仕方なかったと言えるからだ。

 

「、、、なぜです。今すぐ()()事実を大本営に伝えられれば――」

「すまんがそれはできない。現状では上を納得させられるだけの証拠がない、それに報告しても()に感づかれて裏で手を回されてもみ消されるのがおちだ。」

 

絶句する。皆が知れば納得しないだろう。当然だ、なんだかんだで彼は軍人としてどうなのかというほど優しいのだから。真実を知っている者たちからすれば尚更だ。私だって納得できない。

 

「ですが!」

「しかたないんだ、納得してくれ。それとも何かいい案でもあるのか?」

 

歯がみをする、いい案など無い。彼の言う通りだからだ。しかし、このままでは彼がどんな処罰になるかわからない。最悪、銃殺刑になりかねない。 ならいっそのこと逃走させようかなどと考えていた時だった。

 

「、、、だが俺も軍法会議なんて御免被る。だから、、」

「?」

 

 

 

「俺は軍を抜ける。」

「なっ!?」

 

驚愕した。だがそれでは何の解決にもなっていない。たとえ軍からぬけたところで罪が消えるわけではないからだ。しかし次の提督の言葉でさらに驚愕する。

 

「俺が犯した罪については大丈夫だ。こちらも俺の親友と先輩が手を回してくれるからな。現場の方はアイツが、上に関しては先輩が何とかしてくれるようだからな。」

 

もはやただ驚くしかなかった。それもそのはず、彼の親友もまた提督を務めているし先輩という人物に関してはあまり知らないがかなり上に顔が利くと言われているのは知っている。故に疑問がわいた。

 

「提督、そこまでするのなら軍を抜ける必要も無いのでは?」

「そうだな、だがあの二人でも完全に罪を帳消しにできる訳では無い。ケジメとして俺がキチンと辞めなければならん。それに今回のことで軍には愛想がつきた。」

「そうですか、、、、」

「というわけで加賀、結婚してくれ。」

 

意味が分からない。そもそも話の関連性が見えない。それに軍を抜ければ罪に問われないのならば良かったが、軍を退役するのならケッコンカッコカリしても意味が無いのではと思った。

 

「しかし提督、軍を抜けるのならケッコンカッコカリをしても意味が無いのでは?」

「何を言っているんだ、正式な結婚だぞ!ガチの方だ!」

「、、、、、、、はぁ?( ゚Д゚)」

 

思わずすっとんきょうな声がでた。ますます意味が分からない、とりあえず理由を聞いてみることにした。

 

「なぜですか?」

「俺が退役したとしても罪からは逃げられるが、()の手の者が来るかもしれん。だから護衛が一人欲しいなと思ってな。」

 

なるほど、もっともな理由だ。しかし、ならば私よりも適任な艦娘がいるはずだ。例えば伊勢型戦艦の姉妹ならば屈強で格闘技もできる。ならば、、、

 

「それで本当は?」

「単に一人で抜けるのが寂しいし、ならこれを機に好きな艦娘とケッコンカッコガチしちゃおうかな~なんて。」

 

即答である。しかしやはり腑に落ちない、なぜ提督は私を選んだのか?

 

「、、、何故私なのですか?」

「一目惚れしたからだ。覚えているか?初めて会ったあの時。当時駆逐艦にしか興味が無かった俺がお前が着任の挨拶に来た時、俺は雷に打たれたように感じた。今でもハッキリ覚えている、俺はあの時にお前に惚れたんだって。だから―」

 

提督はそこで一旦言葉をそこで区切り、かがんで机から何かを取り出した。それは小さい箱だった、彼はその箱を開いて私に言った。

 

「加賀、好きだ、愛してる。結婚してくれ、そして俺の生涯の伴侶として俺のそばにいてくれ。」

 

一目惚れなどという単純な理由には呆れるしかない。だがここまで私を思う気持ちに心を打たれた。私には断る理由など無かった。私はなんだかんだで自分も提督のことを愛していたのだと気づき苦笑しながら言った。

 

 

 

 

「一航戦加賀、その申し入れ喜んでお受けいたします。」                       私は重ねて言った                   

「私も愛しています、提督。これから末長くよろしくお願いいたします。」

 

この時の私がどんな顔をしていたのか、その後提督がなんと言ったのかはよく覚えていない。だが私達は二人揃って軍を退役した直後に結婚、そしてその年に娘も産まれた。それから知り合いの艦娘からは親バカと言われるようになった。全くもって不本意だが、それでもあれからなんだかんだで十五年がたち―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――さん!母さん!母さん!」

 

私の意識は戻ってきた、隣を見る。娘の水華がいた、今は十五歳だが今年で十六歳になる。普段ならまだ熟睡している時間だったはず。手伝いに来てくれたのだろうか?

 

「どうしたの、あなたが手伝いにくるなんて珍しいこともあるものね。」

「当然じゃない、今日から会えなくなるんだから。」

 

そうだった。今日からこの愛しい愛娘にはもうしばらく会えない。私は断られるだろうとわかってながらも言ってみる。

 

「あの事、考え直す気はないの?」

「何を言ってるのよ、やっと夢が叶うのに。」

 

やはりだ、考え直す気は無いらしい。どうしてこんなことになってしまったのだろうか。ことの発端は四、五年ほど前に遡る。当時十歳だった娘が突然こう言ったのだ。

 

 

 

 

 

「私、艦娘になりたい!」

 

当然私達は大反対した、私達は娘のことを溺愛しており、大抵のことは許してきた。が、今回ばかりは話が別だ。許すわけにはいかない。それは私達が娘には隠しているが、かつて二人とも現場の人間として戦場を駆け回り、そのたびに凄惨な光景を見てきたからだ。私達が生んだ子には平和な生活をして欲しいと思っていたが、どういう因果なのか。

 

「私はみんなを救うの!みんなの助けになりたいの!」

 

しかし、齢十歳ながらにしてでたこの発言に、私の夫で元提督のT督が折れた。そしてそのT督に説得される形で私も折れた。しかし次の争点で私達は一歩も譲らなかった。それは―――

 

 

 

 

 

寮生活か通学かである。

 

 

娘が通おうとしている艦娘養成学校は寮生活か通学のどちらかを選べる。学校から家までは少し遠かったので娘は寮生活を選ぼうとしていたが私達は断固として通学を選んだ。その私達の執念に今度は逆に娘が半ば呆れる形で折れた。何故私達が通学を選んだか、理由は一つ。

 

 

娘がいなくなるとめっちゃ寂しいからである。

 

 

私達夫婦の生活において娘は重要なポジションにいる。それはもう重要で半日に一回は顔を見ないと心配してしまう。娘が小学校の行事で三日間家を空けた時は一緒について行こうとした位である。(その時は娘に断固拒否されてしばらく心神喪失状態だった)故に私達は通学を押した。

まぁ、実を言うと私達は娘があの超高倍率を誇る学校に受からないと心のどこかで思っていたのだ。だが娘は私達に宣言した通りに受験を突破してしまった(?)のである。こうして、娘の夢への第一歩が踏み出された。もちろん通学である。

 

 

 

しかし、通学を選んで引き伸ばした娘との別れもとうとうどうしようもない形でやってきた。

 

娘の卒業である。艦娘養成学校を卒業したものは各地の鎮守府へとそれぞれ配属されて行くのである。そして今日こそがその日であった。

 

「、、、頑張りなさい。」

 

娘と二人、無言で畑仕事をしていく中、私はそう言った。

 

「、、、、うん。」

 

そして畑仕事は私の長い回想と共に終わり、私は娘と二人家に戻った。遅れて起きてきた夫も加えて朝食を取る。いつも通りの会話があった、いつも通りの午前中を過ごした、しかしいつも通りの時間もとうとう終わりを告げる。出発の時間である。

 

「荷物は持った?書類は?時間は大丈夫?」

「もう、母さんは心配性ね。」

 

何度も確認をする。それは夫が声を発するまで続いた。

 

「水華、いつでも連絡するんだぞ。」

「そうよ、いつでも連絡しなさい。」

「わかったわよ、暇があったらね。」

 

そして娘はこう言った。

 

「じゃあ、行ってきます。」

 

「「行ってらっしゃい。」」

 

そうして娘は呆気なく出ていき、扉はパタンと閉められる。普段の私達ならここで号泣し、一ヶ月は娘の幻影を求めさまよっていてもおかしくはない。しかし、今回ばかりは違った。私達は静かにこう言った。

 

「行ったか?」

「ええ、確かに。」

 

そして私達は口を歪めて笑い否、嗤いこう言う。

 

「そうか、ならば、、、、」

「かねてよりの計画を実行に移しましょう」

 

そう、私達は娘と離れるという運命を受け入れるわけがなかった。

 

ここに、「娘の夢を応援しよう大作戦」というなんとも可笑しな作戦が開始されたのである。

 

私の心は艦娘の頃のように気分が高揚していた。

 

「流石に気分が高揚します。」

「ああ、そうだな。」

 

全ては私達の愛しい愛娘のために―――

 

 

 

 

 

 

 

「しばらくサヨナラ、私の故郷。絶対に立派になって、戻ってくるんだから!」

 

両親がトンデモナイことを考えているとはつゆ知らず、夢と希望を持って少女は旅立つ。

 

 

 

 

 




第一話終了です。いかがでしたか?自分はもうちょいうまく出来たのではないかという気がしてなりません、これから書く内にだんだんと直していければと思います。
そしてこの作品に関する設定ですが、近日中に投稿しようと思います。
それではまた(o・・o)/~

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