テイルズ・オブ・ザ・レディアントマイソロジー3・闇は破滅か救世か? 作:にゃはっふー
砂漠の中、カーゴを押して進む一行。
クレス、イリア、セレナ。この面々で砂漠の中を進む。
「あー暑い~もうその辺に捨てちゃえばいいじゃないのっ。どうして魔物なんか捕まえて倒さないのよっ」
「まあまあ」
「依頼内容を忘れないで、カーゴの中は見ない。オアシスに魔物を捨てる。これが今回の依頼だよ」
クレスの言葉に、がんばろうとセレナが腕を上げ、イリアが暑いと愚痴りながら、リュウだけは静かにカーゴを押す。
クレスはその様子を見ながら、静かに前へと進む。
「・・・」
クレスの視線を感じながら、リュウは静かだった。
人気のないオアシス、そこにたどり着き、周りを見る。水飲み場があり、日陰も多少ある。そんな場所なだけの場所。
「あーやっと終わりねっ、さっさと鍵開けて帰るわよ」
「イリア達は先に帰れ」
「ん? どーしてよリュウ」
「魔物がちゃんと外に出たか、確認しないと。中は覗いてないんだ、いいだろクレス?」
「それは・・・」
少し妙な胸騒ぎに、クレスは首を振るうとしたとき、トカゲ型の魔物達がカーゴの上に振ってきた。
『な、なんだ!?』
『た、助けてくれっ』
カーゴからしたのは、
「ヒトの声!? 嘘っ!? なんでよ!?」
「いまは詮索は後だっ、いまは魔物を倒すっ」
「ちっ」
軽く舌打ちして、魔物を倒す。これは簡単だった。
だが、
「鍵を開けるよ」
「いいの?」
「僕らが受けたのは魔物を捨てる依頼だ、ヒトを捨てる依頼じゃないよ」
そう言って、カーゴの中を開けると、そこにいた者達は、
「ジョアンさん・・・」
二人の人が、身体の一部を鉱石に変えて、苦しみ、そこにいた。
その一人は、危惧した通りの状態であり、それを見て静かにする。
「これは・・・」
彼らの話では、村の中にいると居心地が悪くなり、この世にいること自体が嫌になり、少しずつ自分が分からなくなっていったらしい。
そして気が付いたときには、カーゴの中と言う話。
そして分かるのは、自分達は村で暴れてしまったと言うこと・・・
「そんな・・・」
「・・・」
セレナがショックを受ける中、難しい顔をするクレス。イリアもまた頭をかく。
「もう村には帰れない・・・俺達はもう、ここで死ぬのを待つしか・・・」
「そんなことを言わないでください、まだ手が・・・!?」
突然、背後の剣に気づき、剣を受け止めるクレス。
それにイリア、セレナは唖然となり、その様子を見る。
「・・・リュウ?」
セレナが信じたくないものを見る目で、その光景を見た。
リュウは、クレスを、いや、ジョアン達を斬ろうとした光景に、
「リュウ!? なにをっ」
「そいつらをここで殺す、それだけだ」
「「「!?」」」
その言葉に、反射的にセレナ、イリアは二人を守るように立ち、クレスは静かに剣を握る。
「・・・正気かい? 彼らは」
「だからなんだ? 斬ることには変わらない」
そう静かに剣を握り、その目を見る。クレスは本気だと、そして、
「君は分かっていたのかい? こんなることを」
「・・・」
静かに黙り込み、踏み込んできたため、戦闘が始まる。
砂漠の中で響き会う、剣と剣の音、それにイリアは拳銃を構えるが、軽く苛立ちながら、舌打ちをする。
セレナだけは泣きそうな顔で、その光景を見る。
「やめて、二人とも、やめて、やめてッ」
剣の攻撃の中、リュウは純粋な剣士ではない。彼は平然と剣を砂に刺し、顔へと砂を巻き上げ、その隙をついたり、足の先に小石を乗せ、蹴り上げたりと、格闘術も織り交ぜている。
完全に人を、相手を倒すことのもに特化したスタイル。どのような卑劣なことをしてでも、事をなすための戦法。それがリュウのスタイル。
なにより、
「迷ってるなクレス」
「!?」
「その程度で迷うなら、散れッ」
黒い魔神剣がクレスの鎧をえぐり、それにイリアがキレた。
火炎の弾丸が迫る中で、魔物の死骸を盾にする。
平然と、そのようなことをする彼に、苛立ちながら叫ぶ。
「リュウ、私も対外だけど、あんたのそれは度が過ぎるわよッ」
「・・・」
「・・・聞く耳無しってわけねッ」
銃口を向けるイリアだが、セレナはそれを交互に見ることしかできない。
「セレナ、あんたも剣を」
「・・・できないよ」
「セレナッ」
「・・・お前も迷ってるな、イリア」
それを睨むイリアだが、リュウだけは迷い無い。
二人は怯え、後ろに下がることしかできない。それをただ、斬る。
「ダメだ・・・」
倒れていたクレスが起きあがり、すぐにイリアと二人、相手に出来る配置に移動する。
クレスは歯を食いしばり、静かに、
「そんなこと、仲間にさせられないっ。そんな悲しいこと、させるわけにはいかないッ」
「ちっ、バカか・・・こんなことする時点で、俺はテメェらアドリビトムの仲間じゃない。そもそも俺は」
「異世界だとか、そんなの、もう僕らの中じゃ関係ないッ。君は大切な仲間だ!!」
「・・・俺はそんなこと一度も考えたことはない」
それに静かに黙り込み、クレスは叫ぶ。
「『オーバーリミッツ』!!」
光り輝く力が放たれ、それにリュウは驚愕し、セレナやイリアは驚く。
「ちょっ、クレスそれ」
「本気じゃないと、君を止められないのなら、本気で止めるッ」
「!?」
クレスの剣撃や威力が上がり、その速さに顔を歪める。
クレスの様子に、セレナが困惑していた。
「そうか、あんたも知らないのね。オーバーリミッツ、一時的に力を増す技よ。いまなら、あのバカを止められるはずよ」
「けど、あれじゃ」
「だーかーら、あんたは治癒術の準備しなさいッ。どうあっても二人とも、ただじゃすまないわ」
「!?」
セレナはその光景を見る。悲しそうに、だが、それを気にも止めない。
「くそったれッ!! んな技教わってないぞッ」
「いずれ教えるつみりだったさ・・・こんな形で、見せたくはなかったよッ」
そして剣を静かに構え、
「『うおぉぉぉぉぉぉ、冥空斬翔剣』ッ!!」
剣撃の嵐が、彼に迫り、血が舞い上がる。
吹き飛びながら転がるが、それにクレスは驚く。
(バックステップで最大限防いだ!?)
それに驚く中、すぐに立ち上がるリュウ。
光の粒子が消え、そして静かに、
「・・・なんでだい? どうして」
「・・・逆に聞く、この後どうする気なんだ」
「!?」
血を流しながら、剣を構え、その瞳はけして閉じず、剣から殺気を放つ。
「こんな魔物しかいない場所に置いていって、助かる方法があるから待ってろって言うのか? 宛はあるのか? 無いだろッ」
「それは調べてみないと」
「ハッ、その間にここでそいつらが魔物みたいに暴れない保証はどこにある!? その間、その人達の安全は? 苦痛は? ここに人が来ないと言う保証は?」
「それは」
「無いよな!? 無いのにテメェは、いや、村の奴らは自分の手が汚れるのが嫌で目の見えない場所で問題が終わるのを待ってるだけだッ」
「違う!! 僕は」
「違わないッ!! 最後まで助けられることも出来ない希望なぞ、俺がここでぶっ壊すッ!!」
剣と共に放たれる光は黒く、それはオーバーリミッツとは違う何かだった。
「テメェも変わらないッ、最後まで助けられる保証も無いのに、何も出来ないくせに、奇跡や希望にすがる、愚か者だッ!!」
黒い魔神剣が乱舞する。あり得ない、技がこうも連続で放たれるなんてことは無いはずなのに、彼はそれを成す。
「くっ」
「最後まで救えないのなら、ここで俺が斬るッ。邪魔するな正義ッ」
地面に剣を刺すと共に、クレスの足下に魔法陣が、
「『ネガティブゲート』!!」
「グアァァァァァァァァァァァァ」
闇に捕らわれたクレスに、そのまま狼の闘気をぶつけ吹き飛ばす。
そのまま地面へと転がり、倒れるクレス。
闇を纏いながら、光は消えていく。
「・・・イリア、テメェも邪魔だ」
「・・・」
「リュウッ」
前に出るセレナ、だが、
「助けられないのに助ける、なんてことはただの偽善ですらない」
「どうして・・・どうしてそんなこと言えるの!? いつものリュウに戻ってよッ」
「いつもの俺? ハッ、違うッ!! これが俺だッ、本当の俺はこっちだ!! そうだ、そうだったんだッ、俺は結局、壊すことしかできないッ」
そう言いながら、剣を構えるが、セレナは両腕を広げる。
「どけッ、お前ごと斬るぞセレナッ」
「どかないッ、リュウにひどいことさせられないッ」
「ふざけるなッ、このままで言い訳無いだろ!? いい加減にしろッ、いますぐ救えないのなら、余計なこと言うなッ」
「リュウッ」
二人の言葉に、ジョアン達は考える。
そして、
「私は・・・私、は・・・」
「・・・セレナ?」
その時、セレナから光が放たれる。それに触れた瞬間、身体が焼けるように痛みが走る。
「く、アァァァァァァァァァァァァァァァ!!??!?!」
その光に触れるリュウは、明らかに何かに焼かれたように、白い煙が立ち上り、その場から離れる。
そして、
「これは・・・全員ストップッ」
「私達の身体が・・・」
「元に・・・」
「えっ・・・」
セレナが振り返ると、鉱石のような身体だった二人は、元のヒトに戻り、立ち上がるクレスも驚いていた。
二人の様子に驚き、安堵する三人。そして、
「リュウ、やったよっ。二人とも元に・・・リュウ?」
そこに、彼はいなかった・・・
「ごめん、アンジュ・・・こんな事態になって」
「ううん、クレス君の所為じゃないわよ。私のミスかな? 彼がこんな事態想定してたなんて、考えてなかったよ」
その後、ジョアン達はアンジュが通っていた教会に出向き、いまアドリビトムが活動する、自足する社会作りの村に住まう。もう、元の村に戻れない。
別れる際、二人は、
「正直、彼がやろうとしたことは怖かったですけど、理解は出来ます・・・あそこで、自分が自分で無くなっていくと思うと、いまでもぞっと思いますし」
「なにより、その時の自分が、誰かを傷付けるなんて・・・」
「そうですか・・・そう言ってもらい、感謝します」
「では、彼には恨み言も何もないと、伝えて置いてください」
「我々は我々で、今後がんばります」
「はい」
アンジュが対応する中で、アドリビトムは今後、赤い霧へ人の接触を回避することと、彼を捜すことが加わった。
「ったくよう、悩むんだったら、相談しろよな」
「ああっ、俺達だって、考えたのに」
「絶対に捕まえなきゃ気が済まないわッ、リュウの奴ッ」
ティトレイやシンク、イリアなど、多くの者達はそう言い、カノンノも心配そうにしていた。
彼女の育ての親同然の家族、ロックスは静かに近づく。
「お嬢さま、大丈夫ですか?」
「ロックス・・・ううん、少し、ダメかな・・・リュウの様子がおかしいの、分かってたのに、気づかなかったよ・・・」
「カノンノ」
クレアや最近は入ったリリスが近づき、静かに言う。
「それはここにいるみんなが思っていることよ、カノンノ」
「そうですよ、リュウさんも水くさいです。私達は仲間なんですから、相談してくれればいいんです」
「そうだね、今度会ったら、蹴り放つよ私」
コハクはそう言い、みんながわいわいと話し合う。
けして許しはしない、だけど、彼は仲間と言う光景に、セレナと共に微笑むカノンノ。静かに窓の外を見る。
「いま、貴方はどこにいる・・・リュウ・・・」
とある村で、魔物を倒しきり、代金を受け取る男がいる。
男はコートに、数多の道具を持つ剣士で、黒い髪と瞳であった。
「ん、店長、このチラシは?」
「ん、ああそれな。なんでも『暁の使者』って言う奴が張ってった」
そう言い、壁に貼られたチラシを見る。内容は、
「ディセンダー・・・救世主の出現を祈ろうか・・・無様だな」
「きっついねぇ兄ちゃん。ま、ここはともかく、他んとこは結構声が挙がってるって話だから、気つけな」
「・・・救世主なんてもん、探してもいねぇよ」
そう言いながら、その店を後にする。店長は髪をかきながら、あーあと思う。
「そういう兄ちゃんよお、あんなはした金で魔物討伐する時点で、俺らにとっちゃ救世主なんだがな」
そう思いながら、その少年の姿を見送った。
必要な情報は知った。あの力も自由に使える。
黒い光、その力を手にして、静かに歩く。
「精霊・・・赤い霧のことが分かればいいが」
苛々しながら歩く。人の悪意、静かに、
「はっ、救えない・・・結局俺は・・・」
何も呟かず、静かに歩く。
剣を腰に下げて、目指すは、
「忍びの里か、さあ、鬼か邪か、どちらにしても道を阻めば斬るだけだ」
そう呟き、前へと進む・・・
暴走し、どっか行った問題児。
それでは、お読みいただきありがとうございます。