テイルズ・オブ・ザ・レディアントマイソロジー3・闇は破滅か救世か? 作:にゃはっふー
自由の灯火アドリビトム、そこには二人の少女がいる。
一人は救世主にして、異世界の少女セレナ・カデンツァヴナ・イブ
そしてカノンノ・グラスバレーと言う二人の少女がいる。
彼女達は、原初にして、最狂のゲーデであるリュウを愛している。
「………」
その最狂(笑)はいま吊されていた。
覆面とか付けているけど分かるよ、異世界の客人とアドリビトム女子メンバーなの分かるよ。本人はとりあえず、躊躇いもなく叩かれた後頭部が痛い。
「とりあえずこれでよしっと、それじゃ、今回の議題をしましょ」
アンジュ?っぽい声の方がそう言う。それは、
「まあ言わなくても分かるけど、彼がさっさとセレナかカノンノがどちらが好きかはっきりさせましょ♪♪」
なにを言っているか分からないため、気絶したフリしていよう。本人はそう思いながら、防人が手を挙げる。
「しかし、こういうものは当人達で決めるべきでは?」
「正直いい加減にしろが我々の総意見なので」
ああ分からない、本当に分からない。
「下手すれば彼、響さんのことが好きなんじゃないかって話にまでなってますし」
それに反応しかけたが、何故や!? 異世界組が驚いているぞ。
「ほら、彼のひねくれた性格って、響さんのご家族に対するバッシングが原因で、彼がヒトらしく、他人に優しくしたのも響さんが切っ掛けですから、もしかすればってと言う話になってるの」
「だからあのバカは外したのか………」
「? 切ちゃんは………やっぱり切ちゃんも」
そう言いながら、黒髪ツインテールが睨んでくるが、私は気絶してます。聞いてません、なにも分からないです。
ん? なにか下に水の気配。ま・ず・い・ッ!!
「拷問の準備できたよ~」
「しかし、いいのでしょう? 無理矢理どう思っているのか聞き出すのは」
「いいのいいのっ。こいつの本心なんかこんなんしなきゃ、分からないわよ♪」
イリア貴様、エステル止めて。ロゼ覚えてろ。
いかんせんタイミングはあれだ、水につけられた瞬間、逃げ出すか。
「あっ、念のため水は熱湯にしておいて」
なん、だと………
「はあぁぁぁぁ」
「お嬢さま、ため息は幸せが逃げてしまいますよ」
「ロックス………そうなんだけどね」
少し苦笑しながら、カノンノは窓を見る。
「少しだけね、聞きたい言葉が長く伸ばされてるから」
「そうだよね………」
セレナがそう言いながら向かい合う。
ラザリスが戻って、色々大変なのだ。
そう………
「彼が誰が好きか、ね………」
「お嬢さま」
「………響が好き………なのかなって思ったり、リタやラザリスも。色々なヒトが側に居るんだもん。だから………」
「それにね」
「………」
カノンノとセレナはお互いを見つめ合う。一番の危機感は、目の前の恋敵。
だが、どうにも競い合うなどの感情は無く、だからと言って、このままと言うのも嫌なのだが、嫌なのだが………
「「どうしてもいまのままがいいな~って思うんだよね~」」
そう言いながら、机に倒れる。
逃げた者は、熱湯にぶち込まれた後、必死に逃げだした。
いまは静かに、こそこそしている。世界樹の近くはある意味自分の領域、伊達に長くここでラザリスを待っていたわけではない。
世界樹の側で、世界樹を見上げる。いま、実りの季節。
ニアタが言うには、新たな世界が生まれるらしい。
「………」
世界の創造、ジルディアとルミナシアが築く、新たな世界。
果たしてその世界はどのような物語を紡ぐか分からない。
「………ま、知らん」
そう、知らない。
なぜならば、自分はゲーデ。災厄であり、災いなのだ。知らない。
ただ、言うべきことはある。
「俺を殺す輝きがあることを願うさ」
その時、光が辺りを包む。
急なことに剣を構えるが、すぐに気づく。
「根元の世界樹………そして」
長い間、悠久の時を共にした魂がいる。
『こんにちは』
【………】
「人をこんな形で呼んで、なにかようか?」
黒い固まり、人のようなそれは静かに近づいてくる。
【一つだけ聞きたい、お前は生まれてすぐ、なぜ自分を壊し始めた?】
「疑問はそれか?」
取り戻した己について、彼らは聞きに来たようだ。自分、過去の自分を取り戻したいまの自分なら、断言して言える。
自分こそ、ただ世界から零れ落ちた負より、偶然にも生まれた、自然的に生まれた、原初なる負。原初の負ゲーデであると。
【………他の世界から生まれたゲーデは、輝きを、創造を、生命を恨んでいた】
『だけど原初、砂のように零れて集まり、偶然にも世界樹が世界から集めた負のように意志を持った貴方は、自分で自分を壊し始めた』
始まりは自分達が自分を消そうとした。
だがそれは、自分が世界を壊す前に、自身を壊した。壊す前に、時折輝きを見ながら、暗い暗い世界の底へと移動する。
『ずっと話したかった………彼に止められながら、私達は貴方を見守った』
【世界を壊すか、否か………こいつは違うがな】
それを言われながらも、根元の世界樹は静かに手を伸ばし、頬に触れる。
愛おしく、子供を見るように………
『ずっと貴方を見ていた………一人で、悲しそうに、辛そうに、苦しそうに………世界を見つめて、世界から遠ざかっていた貴方を………』
「………くだらない」
そう告げて手を弾く、それに悲しそうに、それでも微笑む彼女。
『貴方は彼と同じ、自分よりも大切なもの、愛したものしか見えていない。それさえ傷付かなければいい、自分の身なんてどうなろうといい』
勝手なことを言われるが、何も言わない。少なくとも、過去の己はそういうものだった。
きれいと思いながら手を上せばどうなるか分かっているが故に、なにもしなかった。
欲しながら、どうなるかわかるが故に、恐れ、逃げ、己を喰らうおかしなモノへと変わり果てていた。
【………もう転生なぞできないほど劣化したんだ、このままでいいだろ】
それはそう言う。人の形をまだできていることが奇跡なほど、劣化した魂。ヒトの身ではもう耐えられないほど長い時を、存在し続けたモノ。
「俺は負でできてるんだ、気にするな」
その様子にふふっと苦笑して、魂だけの男は、輝きを見る。
「テメェはいいのか?」
【………俺にはこいつだけあればいい】
そう言って根元の世界樹を見る。根元の世界樹はそれに嬉しそうに、静かに微笑みながら、こちらを見る。
『輝きを守ってくれてありがとう、優しい災厄さん』
【願わくばその輝きが、破滅と絶望を焼き払う輝きであることを祈り続けよう】
「ハッ、勝手に言ってろ」
剣を使い、勝手に帰る様子を見ながら、こちらの会話のために待っていてくれたことに微笑む。
『それと………あの子達を待たせないで。私はこれでも、最後の最後で正直にされて、少し怒ってるのよ』
【ぶっ!!】
聞こえない。
「そろそろですよーーーー」
みんながみんな、探すのをやめて、その様子を見るため、料理も用意して、みんなで祝福する準備をする。
ご飯もお酒も、もうすでに手を出したりしている者たちもいるが、今日は無礼講であり、みんな楽しそうだが、
「はあ、結局彼はここじゃないところで見るか」
「もう」
「見つけたらあとでお仕置きしなきゃ」
カノンノとセレナもそう言い、マリアはナイフをジーと見つめる。それは止めておかないといけないなと皆思いつつ、フルボッコは決定した。
響は異世界のおいしい料理を見たりして喜ぶ中、少し考え込む。
本当に彼にとってはどうなんだろうかと考えるが、
「………よく考えたら、変わらないな」
「………だね」
それでも、渡す気は無い。
二人は笑いあい、せっかくの祝福の日を楽しむことにする。
きっと、どこかで見ているだろう彼を考えながら………
「………そろそろか」
世界樹が見える丘で、一人で見ることにしていた。大樹にある、花のようなつぼみを見る。
結晶のような、草木のような、それと共にある花を見ながら、
「………セレナかカノンノか」
誰かを愛する人生じゃなかったし、そんなもの欲しいとも思っていない。
ただ言えるのは、一つだけだ。
自分がいる場所にため息をつく。
どちらの少女と初めて出会った場所で、彼は新たな世界の始まりを見る。
「………えらべるか」
新たな世界の創造を見ながら、静かにそう呟き、黒い輝きは、白と桜の輝き、自由の灯火の元へと歩き出す。
「始まりにも終わりにも、興味はねぇよ」
創造を背に、見たいものは見たので、帰ることにする。
「俺はそんなものより、きれいなものを見つけ出した」
創造の中で、精一杯生きる輝き。それを見つけた、それならもう気にしない。
「翼っ、せっかくだからここでライブすっぞっ」
「ん、ああっ」
「おいしいデスっ、これなんて肉デスか?」
「ブウサギって言うのよ」
「ククッキー」
「バイバっ、クイッキー♪ クリス好き~って言ってるよっ」
「そ、そうか………」
「キュ~」
「ジー」
「はい皆々様、どんどん作るので、どんどん食べてください♪」
「またカロリーとの闘いが………」
「いっっっっぱい動けばいいんですよアンジュさんっ」
「響はそれでいいけど、ほかの人はそうじゃないんだよっ」
「うるさいなここは」
「そうだね………」
キャロルとラザリスが仲良くしていて、それを見ながら、カノンノとセレナがこっちに気づく。
少しだけ嬉しそうに微笑み、そして駆けだして手をつかまえる。
「どこ行ってたのっ、もう」
「みんな料理作ったりしてるの、マリア姉さんも歌うから聞いてねっ♪」
「はいはい」
そして二人に引っ張られて、その輪に入る。
どうやら逃げられない、その輝きの中に入っていく。
その後色々拷問を受けた。酷い………
一人の少女のために、永遠を共に過ごす選択をした剣士がいた。
少女の輝き以外いらない。彼はそう願い、彼女の側に居続ける。
彼女は全ての輝きの母になる。
もしも、父がいるとすれば………彼女はずっと側にいる剣士を見る。
そして彼らは輝く世界を見ながら、ずっと側に居続ける………