テイルズ・オブ・ザ・レディアントマイソロジー3・闇は破滅か救世か? 作:にゃはっふー
バンエルティア号が来る前に、カノンノ、セレナ、リタは彼を見つけた。
黒いもやで身体を覆い、身体の一部がキバの浸食を受けていたリュウ。
急いで回収し、その容態を見た。
「ニアタ、リュウは!?」
『落ち着いてくれカノンノ。彼はどうやら、世界樹へと向けられたキバを、自分が取り込むと言う方法で、世界樹を守ったようだ』
「そんなこと」
アンジュは話を聞きながら、外を見る。外では世界樹をキバから守る、黒曜石のようなものが、キバを阻んでいるが、それも少しずつ取り込まれている。
それと共に、目を覚まさない彼の身体は、キバの水晶へと変わり始めていた。
「ディセンダーの力は!?」
セレナの言葉に、ニアタは首を振る。
『それは無理だ。彼の身体はゲーデだ、共に消えてしまう』
彼がディセンダーの輝きを受け、痛みのような反応を見せていることを思い出して、全員が絶句する。
人々を救う、誰かを救うはずの輝きは、彼だけは救わず、むしろ滅ぼす輝きなのだと、セレナは愕然となる。
「どうすれば………どうすればいいの」
涙を溜めて座り込むカノンノ。医務室にいる者達、そして外にいる者達が黙り込む。
「くだら………ねぇ………」
そう言いながら、身体を起こすリュウは、身体が水晶のように変わりながらも、闇を纏い防いでいた。
「リュウ!!」
『無茶だ、いまの君は』
「ディセンダーの力で浄化しろッ」
その言葉に全員が驚くが、それだけで止まらず、
「この様子じゃ、一人二人じゃ無理だ。アドリビトム全員で浄化の力を使ってくれ」
『!? 分かっているのか!! それは』
「消す気か?」
それに何が言いたいか分からない。
「くだらねぇ………ああくだらねぇ」
そう言いながら、水晶になって腕を見る。こっちの方が誰かを救えそうな気がする。
だが、
「ニアタ………俺は命を救えない。だが、ディセンダー………アドリビトムは違うだろ………」
そう言いながら、ベットで横になりながら、
「信じてるぞ」
そう言い、闇を最大に纏い、眠りにつく魔竜。
周りは分からない顔をするが、ニアタは、
『………彼はどうやら、耐える気のようだ。自分が消滅するより先に、浸食が消えることを信じている』
「けどそれは」
『分からない、少なくとも、彼の存在が消えるのが先か、浸食が消えるのが先か分からない』
「そんな無茶、できるはずが無いです」
アニーの言葉を聞き、全員が黙り込む。だが、
「………アンジュ、みんなを呼んで」
「カノンノ!?」
カノンノとセレナは頷き合い、手を繋ぐ。
「リュウは信じるって言ってくれたんだよっ」
「!」
それにアンジュははっとなる。あの天の邪鬼なリュウが、信じると………
「私は応えたい、彼に………リュウに」
「私も………みんなだって」
「………」
そして、
「みんなを呼び、全員でリュウを助けます」
彼女達は決意する。
どこか手頃な場所に下りて、彼を囲む。
全員にディセンダーの転移を終え、後は信じるだけだ。
「やるぞみんな」
「ああ」
全員は静かに、そして見る。
「………」
セレナは少し震えていた。だけど、
「セレナ」
「………カノンノ」
「信じよう」
「………」
真っ直ぐ、そしてはっきり、
「信じてくれた」
「彼が、そう、貴方の輝きを、私達が繋いだ輝きを」
「私達を信じてくれた」
「まだ終わらない、終わらせたくない」
「だって」
まだ伝えてないでしょ………
その言葉に、セレナは静かに、
「うんっ」
そしてみんなが手をかざし、輝きが闇を包む………
削れる音がした。
そして崩れる音もした。
だが、それよりも、
【なんで彼奴だけが、くっそがッ】
【あの人は助からなかったのにッ、どうして、どうしてあんな子が助かるの!?】
【死ね死ね死ね死ね死ね死ね】
【キャッハハハハハっ】
それは悲しみから逃げたいが為の、一時の思いだった。
だが何時しか悪意とも言えない、ただ、面白がってそれをあおった人々の声が、それを本物に変えていく。
それだけで無かった。
人を騙す声、見下し、蔑み、醜い、ああ醜い声ばかり聞こえ出す。
男だった。
女だった。
老若男女関係ない、悪意の中で一番酷い声。
他者を思わず、責任すら持たず、人を傷付ける言葉を平気で言う生き物を見てきたモノがいた。
それが………
(………ずっと………こんな声を聞いてたんだね………)
それでも、忘れられなかった声があった。
彼が本当におかしくなったのは、
『あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――』
一人の少女の声と父親の懺悔だった。
忘れられなかった、忘れるために壊すことで声を消していく彼の人生。
耳を防ぎながら、枯れ果てた人生を歩く。
【ああそうだ………】
黒い彼が輝きから現れる。
【なんでそんな輝きをお前らは持てる………なんでお前らは輝きを放てる】
「貴方は………」
【俺は………俺は救いたかった俺だ】
救いたいと願った。
守りたいと願った。
助けたいと願った。
だけど、
【俺には無理だった………間違いだった】
「違うッ、間違ってなんか」
【間違ってたんだよッ!! 俺はこの声から生まれたんだっ】
負の声を聞きながら、それは叫ぶ。
【こんなんから生まれた俺が誰かを、輝きを守れるはずがないんだッ。俺はお前らとは違う、繋がりなんか持てない!!】
「リュウ………」
【俺はなんで人間として生まれた………ゲーデとして、負の表徴として生まれていれば、消されていたのに………なんで】
だが、
「るっせぇ」
それは彼だった。
「いい加減に諦めろ………」
激痛からか、冷や汗を流しながら、それでも、輝きへ手を伸ばす。それを愚かと思うがために、黒い彼は睨む。
【輝きにすがるか。俺達を消す、輝きに………】
「ハッ、もう知るか。俺は俺として生きる」
【………俺ってなんだよ】
それに腕が崩れた。
【輝きなんか掴む腕なんて無い………よく見ろ、これがお前だ。これが俺なんだよ………】
「だろうな、だから?」
腕を伸ばす、輝きへ、血を流しながら、それでも、
「もういいだろ? もう」
【………お前】
「消える時は消える、消えないときは消えない。もう考えるのはやめだやめ」
【………いまさら】
その時、誰かが下を向く少年の闇を抱きしめた。
【!? ディセンダー!!?】
「側にいるよ」
そして腕を伸ばす手を掴む少女がいた。
「掴むよ」
輝きの中、闇は静かに笑う。俺は静かに身体にヒビが入る。
【………なぜだ】
「………私は」
「私は」
目を閉じる。きっと仲間とか言うのだろうと、そう思いながら、もういいと、
(疲れた………なら、消えようがどうなろうが、もう………いい)
この輝きの中で消えるのなら、もういいと………それが答えだった。
だが、
「「貴方が好きです………」」
それは想像していた答えじゃなかった。
闇は静かにそれに驚き、本体は目を閉じびくともしない。
【………光が闇を愛する………そんな】
「それでも、私達は好きなんだよ」
【………それが答えなのか】
何も救えなかった、いまさら、いまさら、
【いまさら誰かを救うために戦う気はない】
それには、
「彼奴何言ってるんだ?」
「前々からそう言うことばっかしてるのに、なにいまさら言ってるのか、オッサン分からないよ」
「まったくだね」
「ああ」
苦笑しながら、その輝きから痛みが消え、そして闇がいつの間にか腕があり、身体があり、そして、
【………俺は】
「………アドリビトムのリュウ、ゲーデのリュウ、異世界のリュウ。ただそれだけよ………」
アンジュの言葉に、それに、
【………そう、か………】
それに、枯れ果てた少年は、やっと、
【………もう、耳を塞ぐ必要は、無くなったのか………】
そう言って、彼は黒い竜へと変わり、鎧のようになり、本人へと宿る。
「でだ、途中から気失ってから、なにがどうなったの?」
女子一部が最大テンションで明日、ラザリスがいる空間へと突入作戦だと言うのに、異様なテンションであった。
「いえ………ぐすっ」
ロックスは泣きながら、掃除したり、カノンノの親に何か立派に成長しましたと報告するように空へと呟いたりと、おかしい。
男子は一部黙るように脅されていて、もう分からない。
「………言っちゃったね」
「うん………言っちゃった」
セレナとカノンノは頬を赤く染め、世界樹を見つめていた。
明日、全てを終わらす。そして、
「ラザリスともこうしてお話しできるかな」
「できるよ、ディセンダーは不可能を知らないもん。それに」
ゲーデと言う、頼もしい灯火もいる。
そう呟きながら、
「それからだね、セレナ」
「うん、それからだねカノンノ」
そう言い、少女達は微笑み合いながら、明日に備える。
「闇の壁があるとはいえ、世界樹への進行は止められないか」
【ああ、当たり前だ。俺達は破壊しかできない】
闇の自分へと語りかけ、そして再度問う。
「破壊しかできないだろうが、テメェは俺だ」
【ああ、お前が持っていた、負………それが俺だ】
それは黒い竜、闇が揺らめき、それに身体を変化させて手を伸ばす。
『なら俺と来てもらおうッ、散るときは派手に、輝きの中でッ!!』
【………ああ】
『【もう間違えないために】』
そして纏う、いままでよりも禍々しい。だが、やっと全てが一致したように、輝きのゲーデはそこにいた。
『………ラザリス待ってろ、説教タイムだ』
そう言いながら、ニヤリと笑いながら、剣を持つ。
「………けどあれはどうするか」
聞いてしまった少女の声。
輝きの声に対して、彼は、
「………聞かなかったことにしよ」
そう決めて、明日に備えることにした。
裏で………
「………クイッキィ………」
シリアスな顔でそのつぶやきを聞いた子がいた………
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