テイルズ・オブ・ザ・レディアントマイソロジー3・闇は破滅か救世か?   作:にゃはっふー

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スピード上げるぜ。


第21章・生きる意味

 それは彼からすれば悪夢だった。

 

『うわ、カノンノいっぱい。やだ………』

「ひどいよっ!!」

 

 そんなこと言いながら、羽ばたく魔竜は、光の中を進む。

 

 共に進むセレナもまた、レイディアントを纏っている。

 

『多くの世界にカノンノ………その情報が。ニアタ』

『ああ、我々の知る世界だけでなく、これほどまで』

「暖かいな………」

 

 セレナがそう言うが、リュウは嫌な顔をする。ゲーデである彼からすれば、光はやはり相容れないモノらしい。

 

 そして、最も暖かく、桜のような輝きへとたどり着く。

 

 それと共に、

 

【………来たか】

 

 一人の黒い何かがいる。

 

『ここは、カノンノの記憶の最果てだ。彼は………』

 

『広い(そら)の中に瞬く光………受け継がれた記憶の、最も先にいる者』

 

 声が響く、女性の声が響く。

 

『ようこそ』

 

「あな、たは………」

 

『私はカノンノ、根元の世界樹』

 

 それに全員が驚き、ニアタが前に出る。

 

『なんと、根元の世界樹とな………そなたから、全て受け継がれてきたのか』

 

【その通りだ、魂のみの者】

 

『じゃ、テメェは』

 

【………気にするな】

 

『おい』

 

 それに根元の世界樹はふふっと嬉しそうに笑う。それにセレナは胸に触れる。

 

(あれ?)

 

『………彼と彼は違うわ、安心して』

 

 そんなことをセレナに言いながら、セレナは?を多く浮かべ、こちらもよく分からない顔をする。

 

『私の世界は地殻の変動で滅びを避けられなかった。だから私の世界の住人達は、全ての生命を一つにして、新しい生命の姿をとったの』

 

「すべてを」

「一つに………」

『………したのか?』

 

【………】

 

 それに苦笑する根元の世界樹。

 

【彼の世界は、全ての生命を一つにし、また新たな世界を生み出す生命になった。世界樹、それが答えとして。カノンノと言う、根元の世界樹は、その器にして種子らなるために選ばれ、成ったんだ】

『命をつなげるために、世界のすべての命を宿して、世界樹という、新しい生命の種子になったのよ』

 

「命を、繋げる………」

 

『そう、それが新しい可能性』

 

 多くの世界が生まれ、多くの可能性を学び、知り、繋げて生きていく。

 

 世界が一つだと寂しいから、助け合い、生きていけるように、ともに創造するために生まれていく家族。

 

「家族………じや、なんでラザリスの世界、ジルディアとルミナシアは」

『おそらく根本は同じでも、別れた道が違いすぎるためだろう』

 

【そうだ、根元は同じであろうと、枝葉は別れすぎた】

 

『理がそもそも違いすぎる所為で、相容れないもんになった、か………』

 

『光と闇、ディセンダーとゲーデである貴方達のように』

 

 そう穏やかな伝えながら、最後に告げる。

 

『さあ戻りなさい。貴方達は戻って『いまを』生きなければ………あなたは私、私の記憶、世界の記録が受け継がれた証』

 

「わたしが………」

 

『世界もあなたも、たくさんの受け継がれた命の上にあるのよ………生きなさい。最後に、ルミナシアの創造を見せてあげる』

 

 

 

 二人が泣きやむのを待って、リュウ達は帰還した。

 

 ロックスが食堂へ案内したりする中、リュウは報告するため、研究室へと出向いていた。

 

星晶(ホスチア)は世界樹、ルミナシアが理が違うジルディアを守る、ゆりかごだった」

 

 ルミナシアはいずれ共に生きられるように、家族を守るため、生み出した空間。それが星晶(ホスチア)であった。

 

 それを聞いた者達は全員黙り込むが、結局いまは変わらない。

 

 封印し、いずれまた共に生きられる日が来るまで、眠ってもらうしかない。

 

 

 

「………」

『気になるのかい?』

「ああニアタ、まあな」

 

 根元の世界樹の側にいた意識、魂がいた。

 

 黒く、濁ったそれは、もはやヒトでも無い何かであった。

 

 それでも根元の世界樹は、そばに置いていた。

 

「………ゲーデでは無いのは分かっている。だが」

『あまりに居続けていた所為で、ほぼ変わらない何かのように、我々は思った』

「………」

 

 正直分からない、ゲーデのようなそれはゲーデで無い。なにより、なぜ根元の世界樹の側にいるか、分からない。

 

「ん? そう言えばヒトが少ないが」

 

「あっ、黒剣士~もとい、リュ~」

 

「ロゼか」

 

 ロゼも最近はもはや派閥云々言ってはいられないため、ロゼとしてアドリビトムに入り、動いている。

 

 ロゼの話では、進行の恐怖の所為で、まだ無事の土地へと侵略行為しかけている国があり、また戦争が始まりそうであること。

 

 キバの進行を止める力、ディセンダーの力が、他の人にもあればいいと言う案が出て、何名かその為の準備に出ているらしい。

 

「ドクメントの技術を使えば、一応は可能らしいんだね。その為に準備が必要だけど」

「ま、俺には無理だな。根本が違いすぎる」

 

 ディセンダーの力なぞ持てない。この身はヒトじゃないと、分かり切ってるため、少しあくびをする。

 

「眠い、用が出来たら起こせ」

『分かったよ、毛布を』

「いらんいらん」

 

 剣を壁に掛け、椅子を合わせて横になり、数秒で寝る。その様子に呆れる。

 

「ここ一応ヒト多く通るんだけど、よく眠れるね」

『疲れているのだろう、彼も彼で、力を使っていたからね』

 

 そう言い、その光景を通りかかって見る者達は呆れながら、彼は休む。

 

 

 

 カノンノはいま、ドクメント。命を見ている。

 

 身体と心が別れた後遺症だろうか、そのおかげで分かった。

 

 ドクメントは命で、自分達は命と繋がり、そしていまを生きている。

 

 大切なことを知り、食堂を後にしたとき、彼を見た。

 

(………あれ………)

 

 黒く、膨大な量のドクメントが彼を囲っている。

 

 ヒトとも命とも違うほど、それは膨大にある。

 

(彼の命………彼のドクメント………)

 

 少しだけ手を伸ばした。その時、

 

 

 

 負が叫び、すぐに手を離した。

 

 

 

 それは悲しみだった。

 

 

 

 それは苦しみ、辛く、泣いていた。

 

 

 

 そして枯れ尽くしていた。

 

 

 

「………リュウ………」

 

 それでも、彼の側から離れる気が起きない。

 

「あっ、カノンノ」

「セレナ」

 

 と、毛布を持ったセレナが近づき、毛布を掛けるセレナ。

 

 側に空いている椅子に座り、少しだけ話して、セレナの歌を聴く。

 

(………あれ)

 

 その時、彼のドクメントは微かに輝く。

 

 まるで安心したように、歌を聴く。

 

 そしてカノンノは胸を押さえる。気のせいか、少しだけ何かを感じて………

 

 

 

「で、いまから転写実験を開始するのに、あのバカはどこ行ったの?」

「リュウなら自分はいらないだろって言って、どっか行ったわよ~」

「ちなみに、私らから戦争しそうな国のリスト持ってね」

 

 ため息を吐くリタとアンジュ。カノンノ、セレナは少しだけ顔を伏せるが、

 

「ところでロニはなんで縄なの?」

「ん、被験者だから」

 

 ハロルドを止めながら、誰が転写実験するか話し合い、そして、

 

「私がするよ」

 

 

 

 一人の男、否、魔竜は戦場を駆ける。

 

 それは恐怖からではなく、戦場と言うもので金儲けをする者達だった。

 

 故に、討つ。

 

 

 

 転写実験は危険がある実験。それでもリスクを恐れてはいけない。

 

 セレナとカノンノは二人並び、転写を始める。

 

 多くのメンバーが見守る中、カノンノが苦しみ出す。

 

「お嬢さまっ」

 

「カノンノっ」

 

 隣のセレナが叫ぶ中、静かに、

 

「わたしね………少し、セレナがうらやましいんだよ………」

「えっ………」

 

 

 

 魔竜はいつの間にか、子供の集団、少年兵にされた者達を守りながら、辺りを切り伏せていた。

 

『チィィィィィィィィィィ』

 

 

 

「セレナの歌は………彼を、リュウに安らぎを与えててね………うらやましいんだ………」

 

 そう言いながら、セレナも静かに、カノンノの手を握りしめながら、

 

「私も………カノンノが羨ましいんだよ。あの人の側で、いつもお話したりして」

 

 そう言いながら、二人は顔を上げる。

 

「………わたし、最も素敵なことを、いまから起こす………みんなと一緒に、未来を創りたい………彼に、その世界を見せたい」

「………うん、私も………みんなと一緒に、彼に見せたい」

 

 

 

『剣ノ世界ッ!!』

 

 魔物を切り払い、町を救う。ガキ預けに着たのに、何故にこうなった!?

 

『チッ、ゲーデってのはほんと、まあいい来いッ』

 

 黒い刃と邪悪な力。だが、

 

「………」

 

 一人の少年は彼を見る。人々を守り、前へと進むモノを………

 

 

 

「彼に伝えたいんだ………」

「うん、伝えるんだ」

 

 

 

「「みんながあなたのように、希望を灯して生きていける未来。輝いて生きていく世界を、見せたいッ!!」」

 

 

 

『邪魔を、するなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』

 

 どんなことがあろうと引かず、町から町、なぜにこうなった?

 

『あー厄日だ………』

 

 面倒だから、山を切り裂いた。その姿に驚愕はする。おかげで人々は厄災から逃れられた。

 

 彼は厄災の前に立ち、その場に残った。

 

 怯えていたとはいえ、救ってくれた存在。

 

 誰もが礼を言えなかったことを、後から後悔した。

 

 だが彼は気にせず、考えず、ただ戦った。

 

 

 

「転写完了、気分はどう? 平気?」

 

「カノンノ?」

「少し………疲れた、かな?」

 

 そう言って、すぐにアニー達、医療班が出て様子を見るが、念のため一日安静と言い、全員が胸を下ろす。

 

「あっ、今日私が料理」

「それはいいですよ~今日は私達が作りますよっ」

「はい、任せてください♪」

 

 リリスとクレアがそう言い、ロックスもまたお任せよと言う中、カノンノとセレナは微笑む。

 

 みんなが和む中、シェリアが、

 

「だけどいいな~好きな人のために頑張るって………」

 

「「えっ………」」

 

 イリアがにやにやしながら、マルタはエミルで妄想を絶賛口にし、ルビアも二人をうらやむように見る。

 

「………なんの………」

「話かな?」

 

「あら、いまの話、どう見てもリュウが好きだって話に見えるわよ」

「「えっ………えっ!?」」

 

 ハロルドの言葉に、二人は真っ赤になり、普段はそう言う話に乗らないコハクなどの人達もわいわい言い、男達は圧倒される。

 

 年長者もその様子を見たりと、二人は、

 

「「あっ………」」

「ただいま~どうよいま」

「「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」

 

 二人は即座に剣を取りだし、医務室の壁を破壊した。

 

 

 

「おい転写実験になにがあった?」

 

 闇を纏いながら問うが、

 

「あっ、男子言えば酷いからね」

「というわけですまない」

「この船は男女差別が酷い」

 

 その後、彼らはキバの側まで移動することになる。

 

 

 

「ぷは」

 

 シャーリィは何故か水の中で呼吸ができるため、特殊なスイッチなどが水中に隠されたダンジョンで活躍する中、何故か、

 

「「………」」

 

 二人がちらちらとこちらを見るので、リュウはどうしろと?と言う顔でシャーリィを見ると、シャーリィはいいな………と呟きながらこちらを見る。

 

 女の子分からない。気持ち悪い。

 

 

 

 そして転写による、ディセンダー能力の実験は成功し、彼らは帰還した。

 

 とある人達を助けて。

 

「はぁ………」

 

 夜空を見ながら、今日は今日で目まぐるしい成果が多く、少しだけ世界を見る。

 

 暁の従者は、もう一つの絶滅種。その菌糸らしい切り株を持っており、そこから話が盛り上がり、カノンノが、食べ物が生物のドクメントの一部になると言う情報から、それを食べていた生物から取れるのでは?となり、いま調べている。

 

 セレナが暁の従者に、ラザリスを恨まないで欲しいと頼んだとき、彼らも頷いた。

 

 自分達の弱さから多くの間違いをしてしまった。あの後からそれを受け入れて活動していた。

 

 彼女を恨むことは、また間違っていた頃に戻ると言い、それに嘘はない。

 

「命ってのは………なんなんだろうな」

 

 弱さから逃げ、自分と違う、弱い存在を見下ろす存在。それが命であるとそう思っていたのに………

 

 いまさらだ。

 

「………いまさら、間違いに気づいた」

 

 あの家族を、あの瞬間に立ち会っていたのなら、動いていれば、少女の叫び、父親の懺悔。その声は変わっていた。

 

 間違いなんて無い。間違っていたのは、世界だ。

 

 そして自分だ。

 

「ま、俺は救うことも助けることも守ることもできないもんだがな」

 

 いま多くの者達が僅かではあるが手を取り合い動く。

 

 暁の従者が、リタ特性の術式で、簡単ディセンダーの力転移をして、人々に繋げている。

 

 その輪の外にいるが、興味も何も感じない。

 

 だが着々と世界は繋がりだしているのは、声を聞けば分かる。

 

 少しずつ聞こえなくなる声に、それに壊すことで晴らしていた呪いのような黒い感情は消える。

 

 間違えたモノと、間違っても、また進める命。

 

(線引きはんなもんか)

 

 暗闇の中で、輝きを背にして、そう思う。

 

 

 

 ボルテックス、聖地の場所にて、ついに封印次元を使い、ラザリス、ジルディアの封印を始める。

 

 リタとカノンノ、セレナと共に来て、その中心部へとやってきた。

 

「これで一つの災厄は終わりか」

「ええ、ま、一つね。この後まだまだやることが沢山あるわ」

 

 そう言いながら、セレナもまた、救世を終えても残り、そのまだ残る問題を解決すると意気込み、カノンノも頷く。

 

 繋がる命、輝きを見ながら、手を見る。

 

 けして繋がることができない自分は、果たしてこの世界にいるべきか?

 

(………俺は)

 

 リタが術式を使用する。世界のみんなが、繋がった者達が紡いだ思いの結晶を見ながら、その輪から外れたモノとして、考える。

 

 そして、

 

 

 

【消させるものか!!】

 

 

 

 叫びが聞こえた。

 

 

 

 すぐに封印次元、世界樹へと振り返る。

 

「チィッ」

 

 魔竜と成り飛翔して飛び上がる。封印次元は世界樹を囲んだとき、ゆがみが生じ、キバらしいものが、世界樹へと食い込みかけた。

 

 だが、闇が吹き荒れ、壁となり、世界樹に食らいつくのを防いだ。

 

 その様子はバンエルティア号からも見え、急いで動く。

 

 その日、魔竜は地へと墜ちた………




ついに完全自覚する恋心。

だがその前に、魔竜は地へと墜ちてしまう。

お読みいただき、ありがとうございます。

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