テイルズ・オブ・ザ・レディアントマイソロジー3・闇は破滅か救世か? 作:にゃはっふー
帝国の暗部より命を狙われる姫君、アリーシャがディセンダーの力を借り、世界を救うために訪れたが、アドリビトムのやり方を知り、自分も協力したいと言った矢先、情報屋ロゼより、サレの暴走が聞かされる。
だがすでに遅く、暴走した過激派により、攻撃を食らうが、ゲーテの力にてこれを回避し、無人島へ不時着するバンエルティア号。
そしてそこに襲いかかる謎の集団、その中でゲーテことリュウは一人の少女を取り押さえた際、慎ましい胸を触り、カノンノ、セレナ、本人の手にて重傷の傷を負う。
オマケ、それを羨ましいと言った男性達も制裁を受け、翌日の朝、彼らから詳しい話を聞くことになった。
エドナ「いま、侮辱された気がするわ………」
翌朝の飯を大人しく作るコックリュウ。セレナとカノンノは無言の圧力を掛ける中で、アンジュははいはいと落ち着かせ、話題を変えるため、彼らを見る。
「それでは、私はアンジュ、ギルド・アドリビトムの代表です。あなた方は」
「俺の名前はスレイ、この島、と言うより、集落で導師をしてます」
「ミクリオだ、導師であるスレイの補佐をしているよ」
「同じくライラともうします、彼女はエドナ様です………えっと、もうエドナ様」
「私はいいわ、それを殺すとき以外はいまは呼ばないで」
そう言って朝食を食べているエドナに、渋々大人しくなるが、それと言われたのは、
「やはり、貴方達は」
「ゲーテ………災厄の化身が島に現れたと思い、それに対応しようと………まさか、人に生まれていたとは、思ってもいませんでした」
それにはセレシウスは少しばかり黙り込む。彼女も最初、リュウを攻撃した者だが、本人は気にせず、別のことが気になる。
『君達はゲーテのことを知っているのかい?』
「えっと………はい、ご存じです」
ライラが戸惑いながら、ニアタに話しかけ、スレイは代表して、セレナに言う。
「この島は光輝の眠る島、ディセンダー様が現れた時、彼の者のための装備が安置された島です」
『なんだと!?』
それにメンバー全員がざわめく中、静かに森の奥から誰かが現れる。それは、
「天使………コレットと同じ種族の方?」
「それと」
「ザビーダ、遅かったわね」
エドナが不機嫌に言う中、悪い悪いと男は言う。
「俺はザビーダ、んで、風で話は聞いてたが………救世の使徒と破滅の使徒がご一緒とは、世の中分からないな」
ニヒルに笑う中、メンバーの何名か挑発に乗りかかるが、そばにいるメンバーに止められ、ニアタが言う。
『ゲーテは完全に悪では無いからね、当然だよ』
「そこの機械さんは色々知ってるみてぇだな、ともかく、族長が集落に連れて来いってさ、話はそこでだとよ」
「分かりました、リュウ、セレナ。それでいいわね」
「俺も行くのか?」
「貴方もです、その方が色々便利ですから♪ 後は任せてね~」
そんなこと言われる中、何故かアリーシャとロゼも着いてくる話をする。後はニアタとクラトスとリタ、セレシウスだった。
天使住まう集落、遠巻きからこちらを見る様子を見ながら、リュウは気にせず、静かに歩く。
「ニアタ、ディセンダーの装備って」
『かつてソウルフルケミーで創り出した、ディセンダーのための装備だよ。私はその後は知らないが、創造には立ち会った』
「そうなのね………それで、それはどんなものなの」
リタの言葉に、少し考え込みながら、静かに、
『ディセンダーは生まれるたび、世界が違えば戦い方も何も変わるからね。最初は剣の形をしているが、主であるディセンダーの下にあれば、姿を変え、セレナにあった武器の形状に変わるんだ』
「ふーん」
そして一つの剣が安置された石舞台の前に来る。一人の老人がいて、静かに頭を下げる。
「みなさん、良くおいでに………氷の精霊、セレシウス様。お久しゅうございます」
「汝であったか………」
「知ってるの? セレシウス」
「昔の話だが、多くの混乱を鎮めた者の一人だ。かつて私に知恵を借りに来たときがあった」
そう言いながら、剣を見ると、だんだん気持ち悪くなる。
「ゲーテだからか、やっぱ気持ち悪い剣、ほんもんだな」
「えっと………それでいいのかな?」
「ゲーテだから別に良いんじゃないの? リュウらしいわよ」
「あっははは………」
その様子を静かに見つめる老人。視線がこちらに来る中で、ため息を吐く。
「『困惑』か、まあ当然だな」
「!? 心が読めるのか」
「違う、負が分かるんだ俺は」
スレイ達は分からず、首を傾げたが、カノンノの説明で理解し、静かに剣を見る。
「その剣は本物だろうが、それでまずどうするかだな」
「いま世界が大変な時なんだろ? あの剣、輝く光器レイディアントがあれば、きっとディセンダーの助けにはなる」
ミクリオがそう言う中、セレナは少しリュウの背に隠れる。それに驚かれる中、リュウは代わりに説明する。
「念のために、いまあんたらは世界で起きていることは把握しているのか?」
「………正しくは、世界は大変だ、ってところだけど」
導師スレイの言葉に、静かにリタが説明する。
ニアタもまた説明する。星晶が無くなり、世界が内包したもう一つの世界、そこから生まれたラザリスが、世界を塗り替えようとしている。
それの代理品を集め、ラザリスの暴走を止める話。それを聞き、いま現在、力は不要な点があるが、どうするか考えるのは、
「セレナ、お前はどうする? 今後のこと考えれば、あっても問題ないぞ」
その言葉に、セレナは静かに剣を見る。
そして静かに、
「………いらない」
それに多くの者達は驚くが、セレシウスは少しばかり感じ取っていた。
「セレナ、少しいいか」
「セレシウス………」
静かにセレナを見るが、前に出て話すため、リュウより前に出る。
「何故、ディセンダーの力を拒むか、教えて欲しい」
「………」
その言葉に少し黙り込むが、だが、
「一つだけ教えてください」
スレイ達を見ながら、はっきり顔を上げて、
「なぜリュウを、襲ったんですか」
それにスレイは難しい顔して黙り、ライラが代わりに、
「彼はゲーテ………この世全ての厄災の化身です」
「それが理由なんですか」
「いや、別に構わないが」
リタにシャイニングウィザードと言う技が放たれ、沈むリュウ。
「わ、私は、力は欲しくありません。みんなを、リュウを含めた、アドリビトムのみんなを守るためなら頑張ります。けど」
「りゅ、リュウのことを心配して、レイディアントはいらない。そう言う意味で良いのね………」
セレシウスの言葉に、静かに頷く。
セレナは、力と言うものが分からない。
「セレナ、いいのか。俺のことなんて、放ってもいいんだぞ。手に入れても、問題ないし」
「………じゃ、リュウ、答えて」
真っ直ぐな瞳、それを見て嫌な顔をするリュウ。それを見ながら、
「リュウはなんで平気なの?」
「………」
「色々な人達から危険だって、世界の災いだって言われて、力を向けられて、なのに、どうして平気なの!? 私、分からないよっ。リュウのことが、なんで平気なのか分からないよッ」
それにどよめく心の波、それは周りの輩。気にせず、その目を見ながら、嫌な顔をする。
「チッ、んなもん一つだ………慣れた」
「慣れた………」
「セレナ、俺は生まれたときから人の負が聞こえた」
他者を理不尽に恨む、上から見下し哀れむ、理解もせず怒り、様々な負を感じ、聞き、そして見てきた。
「そんな日々の中で、いまさら災厄の使徒? 世界に生まれるべき命じゃねぇ? ああそうだ、いつしか俺も、ゲーテである以前からそんなことは分かっていたッ」
暗い闇が身体から放たれる。それに怯える者達。スレイ達が武器に手を置くが、アドリビトム達は違う。
「………そんな力で、私達はごまかされないよ」
カノンノはそう呟いた。
「いつもそうだよね、本当のこと言わないで………ううん。少しだけしか、本当のこと言わないで」
「カノンノの言うとおりだよリュウ………私は、私達はもう、貴方の闇は怖くない」
セレナは真っ直ぐにこちらを見る。それどころか近づいてくる。
「だってリュウはその力で、誰かを助けてきたもん」
『………違う、俺は誰も助けていない』
「ううん、違う」
『違わないッ』
「違うッ」
光がセレナの身体から放たれ、闇がより吹き出す。
光が闇、闇が光と反応し合い、そして少女は見つめる。
「私は知りたい、なんでなの………なんで悪者でいいって言うの!? もしリュウがゲーテであるからだとか、そんな理由で倒さなきゃいけないのなら………私は」
光が、静かに闇を照らす。
「私はそんな力ならいらないッ、私は救世主ディセンダーなら、私は闇だって、ゲーテだって救いたい!!」
それに、
『ふざけるな!!!』
闇がより強く、光がより強く吹き出す。
『闇なんて、悪なんてもんは消えていいんだよッ。テメェはそれを滅ぼす者ッ、俺は滅びるべきもんでいいんだよッ。我が儘言うなセレナ!!』
「我が儘言ってるのリュウだよッ」
『!』
「私は、私は………」
『………黙れ』
闇が、紅を交え、吹き出す。その姿が代わりかけるほど、セレナを睨む。
『俺は、俺は誰も救わないッ。この世界には消えるべきもんだってあるッ』
「それは貴方じゃないッ、あったとしても、それはリュウじゃ」
『それを決めるのはオレだッ』
吹き荒れる中で、スレイ達は距離を取るが、それを平然と見るのは、アドリビトム。
「おいっ、すぐに離れるんだ!!」
「ゲーテの闇に触れれば、どうなるか分からないぞっ」
「はっ、問題ないわよ」
リタは鼻で笑い、側にいる。
カノンノも静かに見る。その瞳はセレナと変わらない。
クラトス、セレシウスも変わらず、それを静観する。
『………なんでだ』
もはや姿が見えないほど、闇が深く、紅い眼光だけが見える場所。その眼の先にいる、輝きを見る。
『なんでテメェらは俺なんてもん、信じる………俺は、信じていない』
「………」
『………俺は』
その時、闇と光は上を見た。
『プリズムソード』
光の刃が放たれ、地面に刺さる。
全員がその場から離れ、セレナはリュウと共にそれを見る。
「誰!?」
「お前は………ユグドラシル!?」
天使の羽根を持つ男に、クラトスは叫ぶ。
「知ってるの?」
「天使の種族で、一度コレットを攫いに、ミブナの里を襲った男だ」
「何故そんなことを」
「天使と言う種族を守るためだ………」
そう静かに構える男、ユグドラシルはそう告げる。だが、
「なるほどね、帝国を始め、大抵の国々は、種族差別は前々からあるからね。カイウスのレイモーンの民を、リカンツって言うほどに」
「人間と言う野蛮な世界を捨て、天使が統べる世界を作る。その為に数多の術を探していた。無論ディセンダーの力である、レイディアントのこともな」
そう言い、翼を広げる中、憎々しげに周りを見渡す。
「まさか同胞が守っていたとは」
「お前、レイディアントをどうする気だ!?」
「破壊する」
それに静かに告げ、ディセンダーであるセレナを見る
「だがその前に、人間を救う者である、ディセンダーを滅するッ」
無数の剣が放たれるが、その光を砕く闇がいる。
「リュウ………」
『………』
その様子にも、静かに、
「醜い者だ、ゲーテ………人間が生み出した負の化身」
『………ばかばかしい』
「なんだと」
そう言う闇は、静かにユグドラシルを睨む。
『テメェ、天使が統べる世界を作ると言うがな。俺からすれば変わらない、なにもかもな』
「変わる、変えてみせる。野蛮な人間が溢れる世界に安息なぞないッ、天使のみにより、この世界を統べ、この世界に真なる平穏の世を創り出すッ」
『………クッハ』
それは大笑いした、ただしたすら、笑い出した。
「………なにがおかしい?」
『無駄だ無駄、テメェのやることはただの無駄だ』
それは分かる、ただひたすらに、
『テメェの言う、野蛮な人間ってのは共感する。だがな、俺からすれば全てそうだよ』
「なにを」
『天使が統べようが、ガジュマが統べようが、レイモーンの民が、クリティア族だろうが、もはや、どんな種族が世界を統べようと、命ある世界に、永劫に平穏なぞあり得ないッ』
だからおかしいと笑うが、ユグドラシルは不適に笑う。
「私なら、天使なら作れる。いまこの島を囲もうとしている、野蛮の人間なんぞよりもな」
「!?」
「それはまさか………帝国」
アリーシャが青ざめる中、闇は静かに笑うのをやめ、ユグドラシルを見る。
『………そうかい、野蛮な人間に、この島を襲わせるように仕組んだか』
「心が読めるのかゲーテ。だが、私は奴らが血なまこになって追う船がある場所を教えたに過ぎぬ」
「貴方は」
「この島は一部の天使達から聖域として、如何なることがあろうと語ることは禁句とされた場所。ここが人間の手により破壊されれば、我が言葉に賛同する同胞が現れるだろう」
「ここの人達はどうする気だっ」
「無論、私が救う。我が意志に従うのならな」
それに黙り込む闇、だが、
『だから無理なんだよ』
それは、静かに、
『んなもん朝っぱらから分かってたっての』
その瞬間、集落の側にバンエルティア号が流れ込み。準備終わったように、ジェイドやロイド達が流れ込む。
「リュウ、言われたとおり少し攪乱もしてたから、時間は稼げるぜっ。人数の数も確保できる」
「全く、ヒトの負が聞こえるのは、ほんと役立ちますね~彼らもここのことも、全て把握してますよ」
それに驚くユグドラシルに、くっははははと笑う。
「貴様………」
『俺は、ゲーテだぜ? この集落に住まう者達から聞こえる負の声は、しっかり聞こえていたし、囲む船員達の恐れからの声も、しっかり聞こえてた』
そう言いながら、静かに剣を構え、闇は疾駆する。
『テメェはここで終われッ、エセ救世主!!』
そして闇が迫る中、
『!?』
すぐに急ブレーキをかけたが、
「遅いッ、時を止まれ!! タイム・ストップッ!!!」
モノクロの空間が現れ、それに一番に止まったのはリュウ。
「なんだ!?」
「時の魔術!? 時を止める空間を作る魔術ですっ」
ミントの叫びに、ユグドラシルは叫ぶ。
「せめて邪悪なるものである貴様を滅し、私の正しさを証明するッ」
「! リュウっ」
セレナとカノンノが駆け出すが、
「遅いッ」
腕に光が集まり、それが刃のように闇へと迫るが、
『ぬるいッ』
闇はモノクロの世界を壊した。
『いい加減にしてもらおうか?』
ユグドラシルを捕まえる腕が、闇から現れる。
「………えっ」
その腕は、人の腕ではなかった。
『人間も、天使も、獣人も、如何なる生命、命だろうが、世界にそんなものが溢れる限り平穏なんてものは、無いッ!!』
姿を現すのは、ドラゴンのような翼を広げ、鎧のような外装を纏い、刃のような髪を持つ。魔獣のような姿。
『俺は、俺はゲーテッ。ゲーテでいいッ、人間なんてもんじゃなく、命なんてもんじゃなく、ただ邪悪でもいい。そんなものであるよりも、俺は化け物の方がマシなんだよ!!!』
ユグドラシルを握りしめ、骨を砕き、それは吼える。
その姿はまさに、破滅の化身であった………
『俺は、破壊の存在で、いいんだよ!!』
そう叫び声を上げ、飛翔した。
リュウ・ゲーテモード。
鎧を着た魔竜であり、人の形に似た何か。巨大な腕と剣を持ち、左右の色の違う瞳を持つ。
刃の髪は伸縮自在であり、鎧は胸プレートや、ブーツを着ているようではあるが、肉体と一体化している。衣類は着ているように見えるが、黒く染まっているため、一つに見える。
飛翔でき、森羅万象を弱らせ、世界の悪意を纏う。
その姿は、もう人間ではない。
お読みいただきありがとうございます。