テイルズ・オブ・ザ・レディアントマイソロジー3・闇は破滅か救世か?   作:にゃはっふー

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どっちがどっちだ。


第12章・凶悪と凶人

 洞窟の中を進む一行。リュウ、コハク、カイル、しいなの面々。珍しい組み合わせだなと思いながら、先を歩くリュウ。

 リュウが星晶の変わりを勤めるための三品の一つを知っているのは、訳がある。

 

「実はブラウニー坑道で少しやることがあったとき、情報屋と行動してたんだ。そいつから聞いた話なんだよ」

「情報屋? 忍者としては商売敵だね。風の骨じゃないだろうね?」

「ノーコメ」

「風の骨って?」

「あー忍びの世界でもかなり有名でね。情報のやりとりはまあ信頼第一なんだけど、信頼を失うとかなり危険なんだよ」

「それでも悪党だのなんだのだし、暗殺もしない。グレーな人達だ」

「グレーなんだ」

 

 コハクが呆れるが、その情報屋はジェイドも使ってる以上、自分だけ非難されたくない。第一、裏で色々引っかかりそうなことを平気でしていること以外、ギルドと変わらない。場所が悪い。

 

(本部が帝国で、しかも帝国が他国に漏洩されちゃ困る情報ばかり扱うから、帝国からは犯罪組織なんだけどね)

 

 ここの時も帝国の動き知りたいから、腕のいい人として呼ばれたのだ。その時、サービスで教えてくれた。

 あの時は無視したが、その時に一部持っていけば良かったと思う。

 

「コハク、ハロルドからドクメント回収するアイテムは」

「あるよ♪」

「ともかく、そんな強い魔物はいねぇから、問題・・・」

 

 と、奥地まで歩いてきて、妙なことに気づく。

 

「? どうしたんだ?」

「・・・聞こえない」

「?」

 

 全員が首を傾げるが、そう、聞こえない。

 

「魔物の負の声が一切聞こえない!? この先に生き物はいないだと!?」

 

 それに異変に気づく。ここは魔物が住み着いた場所。入り口付近にだっていたのに、奧にいないのはおかしな話だ。

 

「気を付けていくぞ、声が聞こえないからって、油断できない」

「そうなの?」

「当たり前過ぎて負が聞こえない奴もいる、まあそんな奴はそういないがな」

「・・・当たり前すぎて」

 

 カイルが言葉を繰り返すが、それに気づかず先に進む。

 

 

 

 壁の一部、空色の鉱物が生えている場所に来る頃、魔物の死体の山がある。

 全員が息をのみ、男はその上に座る。

 

「んぅん? 今度はヒトか・・・」

「バルバトスっ!!」

 

 その言葉に全員が驚愕する。

 

「カイル達が言っていた奴」

 

 カイル達曰く、強ければ誰でも戦い挑み、殺す危険な男。その男がカイルの父親に目を付けたため、カイル達は戦っていたらしい。

 だが事故の所為で、どうなった不明だったが、

 

「お前もこの世界に来てたのか」

「ほぉおう・・・やはり、この世界は、異世界か・・・ふっふふ、ふっははははははははっ」

 

 男は笑いながら、次にリュウを見る。

 

「いいぞその目、気に入ったっ。貴様を殺す」

「!? 仲間は殺させないっ」

「カイル待てッ」

 

 カイルが陣形など無視して飛び出すが、男、バルバトスは鼻で笑う。

 

「邪魔だ小僧ッ」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 

 剣と斧がぶつかり合う中、しいなが札を投げたり、コハクは魔術で援護する。

 その一つ一つが当たるのだが、バルバトスは気にも止めない。

 

「うそ!?」

「全然効いてないのかい!?」

「ふっははははは、このてい・・・!?」

 

 その時、自分がこの中で一番楽しめると認識した男がいない。

 その瞬間、腹が貫かれた。音もなく、静かに背中をやられた。

 

「『無音』」

「ぐっは」

 

 カイル達の目まぐるしい攻撃の中、彼だけは静かに気配を消して、そして隙を衝いた。荒れ狂う闘気なんてものが静かすぎるほど無い一撃に驚く。

 

「ぐっははははは、面白い、小僧ッ」

「・・・ゲーテ」

 

 剣を引き抜き、振り下ろされる斧を回避すると共に、闇を纏う。

 

(この男、剣が刺さったままだろうと、振り返って斬りかかりやがったな・・・)

 

 冷酷に見据え、そして静かに闇を纏う。

 カイルも距離を取る中、静かに、

 

「引け、戦うとしても、チャンスを待てよ」

「!! 分かったっ」

 

 そして凶悪と凶人がぶつかり合う。

 

「ぬっおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

「・・・・・・・・・」

 

 僅かな動き、闇の闘気で斧の一撃を防いでいるが、バルバトスの予測不能な行動に舌打ちしている。

 

(こいつ、腹貫通してるってのに、無茶苦茶動きやがる・・・チャンス作れるか? そんなん考えてたらこっちが負ける。倒す気で殺るか・・・)

 

 あまりの攻防戦に、三人は何も出来ず、それでも、

 

(待つんだ俺・・・リュウを信じるし、危なくなったら助けるッ)

 

 三人もまたけして戦意を消さない様子に、バルバトスの顔が歪む。

 

「面白い・・・面白いッ!!」

 

 その時、片腕を大きく振り上げた。

 

「もらったぞ小僧ッ!!『灼熱の』」

「!!?」

 

 その時、リュウの背後には仲間達が、

 

「チッ」

「『バァァァァァァァァァァァァァンストッライク』」

 

 爆音、バーンストライク。本来の威力を遙かに越えた一撃が、辺り一面を包み込む。

 だが、バルバトスは笑う。

 

「防いだかッ」

 

 その瞬間、カイルが前に出る。

 

「『うおぉぉぉぉぉぉぉ受け継がれし、英雄の剣ッ。斬空、天翔剣ッ』」

 

 剣の一撃を受けても尚、バルバトスは笑うが、

 

「くっ」

 

 初めて顔を歪めた瞬間、煙の中から、

 

「『アイスニードル』」

 

 それが何者かに放たれた。

 

「ぬっ」

 

 それにより、一手後れた。

 

『アァァァァァァァァァァァァァァァ』

 

 闇が獣のように口開き、剣が迫る。

 

『剣ノ世界』

 

 片腕で全ての攻撃を防ぐが、骨まで到達する一撃に、顔を歪め、一気に距離を取る。

 

「なっ、剣ノ世界食らってそれくらいかよ!?」

 

 一気に離れ、がけの上まで一跳びで離れる。

 悔しそうに、それでも愉快そうにリュウを見た。

 

「覚えたぞ小僧、いや、黒い剣士ッ!! 俺の渇きを癒す男ッ。また殺し合おう」

 

 血を流しながらだというのに、高笑いしながら走り去る。

 コハクとしいなは急いでカイルとリュウに近づく。

 

「二人とも無事!?」

「ああ、闇で火炎弾は全部防いだ・・・つーか、よく出たカイル。さすがにあのままなら一撃まずいの食らってた」

「へっへへ・・・リュウがチャンス作れないなら、俺が作ろうって思っただけだよ」

 

 力無く笑う二人に、女子も微笑むが、

 

「コハクっ」

「って、やっぱり」

 

 先ほどのアイスニードルを煙立つ中で的確に放った男が、コハクに抱きつき、心配そうに叫ぼうとするが、

 

「ハッ」

 

 その前にコハクのかかと落としが決まる。

 

「もう恥ずかしい・・・お兄ちゃん、どうしてここにいるの?」

「コハクの兄貴か?」

「アァ? テメェか、俺のコハクをさらった誘拐犯は!!?」

 

 そう叫び、リュウの襟を掴むが、その腕を掴む者がいた。

 

「お・に・い・ちゃ・ん・・・ちょっと奧に来て」

 

 

 

「で、コハクの兄貴、ヒスイだ。それと塩水晶のドクメントだ」

「えっと、とりあえず医務室に連れて行ってくる?」

 

 未だ気絶しているヒスイは、とりあえずキュッポ達が運び込む。

 コハクは疲れた顔でため息をつき、リュウ達は苦笑する。

 

「とりあえずバルバトスだが、剣ノ世界じゃ、重傷程度しか負わせなかった」

「むしろ彼奴にそこまでできたことに驚くんだが・・・」

 

 ジューダスの感想に、カイルは少し悔しそうに、

 

「けどまずいよ、リュウのこと目の敵にしたんだ。もしかしたら、彼奴は今度からリュウのことを狙う」

「それは心配ね。ともかく、いまはみんな休んで。話はその後」

「ん」

 

 

 

 甲板でキバを長めながら、のんびりしているが・・・

 

「・・・ちっ」

 

 腕のしびれがいまだに取れない。バーンストライクを受け止めた両腕が、いまだに激痛を訴えている。骨の一部は下手したら折れているかも知れない。

 

「いや、あの威力からして、この程度で済んだのはよかった方だ・・・ははっ、化け物にどんどん近づいてるな」

 

 いまさら構わない。声が聞こえる頃から、化け物扱いなんだから、気にも止めない。

 そんなことを考えていると、

 

「ジュジィス? なんかようか?」

「ええ、少し貴方とお話したくってね♪」

 

 そう微笑みながら、静かに何かの欠片、ニアタのパーツを取り出す。

 

「それは」

「彼のパーツなんだけど、読んだみたら、ニアタの故郷とディセンダーが見えたわ」

「ニアタの?」

「世界の名前はパスカ、彼にとって、娘や妹のような存在のディセンダー・・・それがカノンノとうり二つなの」

「・・・?」

 

 その言葉に首を傾げる。それは、

 

「待て、確かニアタは、この世界は自分の世界、パスカの子じゃないから、長居せずに移動したって話だろ? それとも」

「ちなみに名前もカノンノよ」

「・・・」

 

 それに頭に手を置く。静かに、

 

「ニアタの話を聞く限り、世界樹の世界創造は、子供を産む生物のような関係。受け継がれるように世界から世界にバトンが渡されている」

「ええ、それには同意見だわ。彼の話じゃ、この世界にパスカの因子は無いって話だけど・・・どう思う?」

「・・・カノンノ・パスカは、すでに別の因子の子供だった。それと枝分かれしたのがカノンノ・・・」

「そうね・・・」

 

 二人で考え込む間に、カノンノが扉を開けた。

 

「ごめん二人とも、スケッチブック見てない?」

 

 そう言ったとき、さっとリュウの前に立つジュジィス。

 

「それならロックスが持っていったわよ」

 

 そう言ったときだ。欠片が光り輝き、空へと飛んでいった。

 三人は驚きながらも、その場は収まり、去り際に、

 

「あの子達には内緒にしてあげるから、コハクかヒスイ辺りに治癒してもらいなさい。でないとバレるわよ」

 

 そう耳元で言われ、あーあとめんどくさそうにする。

 

 

 

「んで、オッサンに頼む普通? オッサンに」

「別にいいだろ」

「そう言うの、可愛い女の子っ♪とかに頼もうよ若人♪ おたくくらいなら、青春に花咲かせた方が楽しいぜ♪」

「あいにく、学生時代。陰湿ないじめの声や、表と裏側に、相手を見下す12から15くらいの女子見てるから、んな感情ねぇよ」

「ありゃりゃ、そう・・・」

 

 おちゃらけているが、レイヴンは内心引いていた。

 

(そりゃ、性格歪むってもんだね~)

 

 そんなレイヴンを無視しながら歩くと、食堂でロックスが居たのを見る。

 

「ロックス、カノンノがスケッチブック探してたぜ。そろそろ来ると思う」

「あっ、リュウさん。はい、それなんですが・・・」

「・・・浮かない顔だな」

 

 その時、テーブルの絵を見る。優しそうな夫妻の絵であり、それに考え込む。

 

「・・・カノンノの親か」

「・・・分かりますか?」

「お前の顔と・・・母親の顔かな、父親も似てる」

「お二方は医術関係で、国の命で戦場に、軍医として出向きました」

 

 その顔は暗く、静かに黙り込む。

 その後彼らは殉職し、ロックスが親代わりにカノンノを育てたらしい。

 だが、その顔は腫れない。

 

「くだらない負を聞かせるな」

「・・・すいません」

「・・・カノンノはお前が元軍人で、逃げ出したこと知っても気にしない。逃げたって仕方ないだろ」

「そんな者が、旦那様や奥様の大切なお嬢さまの育て親で良いのか、私は考えるのです・・・」

「それでもいいさ、俺なんか育て親すらいない化け物だぜ?」

「そんなこと」

「言われた、影で、孤児院の大人に」

「!」

 

 その言葉に黙り込むロックス。それにリュウはくだらないと連呼する。

 

「お前が気にするなら、持てないくらい彼奴に幸せを持たせればいいだけだ。それだけだ・・・お前は俺と違って、最後まで責任を背負ってるんだ。気にするなアホ」

「えっ、リュウ様?」

「じゃな」

 

 そう言って出ていくリュウ。とっとと部屋に戻り、剣を乱暴に置き、ベットに倒れ、静かにする。

 

「・・・らしくねぇ・・・」

 

 過去の出来事は        (あの子の事以外)どうでもいい。

 

 違う、もう                  (この子の泣き声、父親の懺悔なんて)気にしていない。

 

 やめろ、それは         (どれくらいたっても)忘れ      (られなかっ)た。

 

「くそがッ」

 

 勝手に闇が深まる。

 もうまた嫌になる。

 自分は、

 

「化け物でもなんだっていい・・・もう、なんだっていい・・・」

 

 静かに闇が深まる。

 

 ある者は怪訝な顔をし、ある者は嬉しそうに微笑む。

 

「そうだよリュウ・・・君は、君こそ僕の、ジルディアのディセンダーだよ」

 

 どこかでそう呟き、世界と闇の浸食が進み始める。




彼の苦難、闇はまだ深まります。

オリジナルはどこに差し込めればいいんだろう・・・

それではお読みいただきありがとうございます。

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