幻想起源録   作:アマザケ01

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第1話 幻想が世界に降りた時

「………………」

 

時として何百年以上も前の時代、妖怪の賢者である八雲紫は自身のスキマの中にて思案に耽っていた 。紫は以前本人の目標である「妖怪と人間が共存できる理想郷」を作ろうと画策していた。しかし、目標というのは難しいから立てるもの。世界一つの構築など、いくら自身の力が強大だからといって簡単に成し得ることではない。

 

「……やはり、この手しかなさそうね」

 

紫は一つため息を吐きだせばスキマを開き、外の世界と自身の空間を繋げては外へと足を踏み出した。

 

紫は降り立ってすぐに辺りを見渡し、世界を確認した。遠目に村が見え、人が住んでいることが手に取れる。その世界は文明が発達してはおらず、世界としてはまだまだ未熟なように思えた。当時は名など聞く余裕すらなかったが、今ではこの時代はとある名前で呼ばれている。

 

紫は目的通り事を進めるために、その国の長である者を訪ねるため、眼前に見える村へと歩みを進めた。歩いていけば、その村の周りに小さいながらも木でできた、バリケードを表すような壁が立ちはだかり、紫の行く手を塞いでいた。

 

「…………」

 

紫は目をすっと細めれば、その壁の前で指をかざす。のまま縦に指を下ろせば、空間が裂け、スキマがその場に構築される。スキマの中へと足を踏み入れる。すると、不思議なことに一瞬で景色が変わった。先ほどまで木でできた壁があったはず。だが、今ではすでにその壁は背後へと位置を変え、視界には藁木で編まれた家が立ち並んでいた。

紫が現れたことにいち早く気がついた青年が、高く声を上げる。

 

「だ、誰だお前は! い、今どうやって中へと入ってきた! 名を名乗れ!」

 

自分たちとは服装が全く違う紫に対し、その青年は身構え、何が起きても対応できるようにと気を落ち着かせる。

 

「人に対する質問にしては、一度に聞く数が多いんじゃなくて? まぁ、人ではないのだけども……」

 

そう紫がそう呟くのを聞けば、青年はごくりと生唾を飲み込みながら、その姿勢にたじろぎつつも身を引く様子は見えなかった。

 

「……中々いい面構えだけど、無駄よ。私には到底勝てない。人間の……それも、貴方みたいなただの人間じゃあ、ね。それに、私は何も争いに来たわけじゃあないの。とある人と話がしたいだけなの」

 

紫は言いながら、パサリと扇子を広げ、口元を覆い隠し、冷たく射殺すような視線を青年に向ける。

 

「とある人……そ、それってまさか……!」

 

「そう」

 

紫は勢いよくパチンと扇子を閉じ、顔を青ざめさせる青年の視線を振り切るかのように、スッとその村の中で一番大きな屋敷へとその扇子の先を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……貴方たちにとっての女王、卑弥呼に会いたいの、私は」

 

 

 

 

 

 

今ではこの時代は、とある名前で呼ばれている。そう……

 

「邪馬台国」と




はい、ということで1話目が書きおわりました。正直いうと、歴史のことなんてさっぱりなので、時代背景が違うやら、その時代の建物はこうだ、などご意見があれば嬉しく思います

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