情熱は幻想に   作:椿三十郎

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フーゴ視点。


神社とは

 

 

 

 

「ジンジャ?なんだそれ」

 

 

ミスタは僕に興味無さげに聞いた。

 

 

「神道という宗教の...教会みたいなものですよ」

 

 

僕は飛行機の中で得た簡単な知識で説明した。

彼はふーん...と小さく呟いた。

これまた興味無さそうだ。

 

 

「教会にしちゃあ、ずいぶん荒れてんな」

 

 

ミスタの言う通り、ひどく荒れ果てていた。本殿は半壊。それに、元の木の色が分からないほど黒くくすんでいる。立っている鳥居は今にも倒れそうだ。

 

 

妙な雰囲気は続いている。

漠然とした不安がからだを取り巻いて離れない。

 

 

「"新手".....かもしれません」

 

 

"新手"、即ち、組織のスタンド使い。

心の中でジョジョの言葉を反芻した。

 

 

次の瞬間、ミスタが目にも止まらぬ速さで懐からリボルバーを取り出した。

僕は銃口の先に目をやる。

ようやく"新手"は動き出したのだ。

 

 

辺りの大量の落葉が風に巻き上げられ、一箇所にまとまり、渦を巻いていた。

不可解な風の動きは、スタンド能力であることを嫌でも感じさせた。

 

 

落葉の旋風が強さをましてこちらに接近してくる。

既にジョジョとミスタの傍らには、『スタンド』が現れていた。

しかし、僕はスタンドを出していない。

僕のスタンド"パープル・ヘイズ"は集団戦に向いていないからだ。歯痒さを感じるが、この二人を相手にして勝てるスタンド使いなどいるはずがない。

 

落葉の旋風が僕らを飲み込まんとする数秒前。

 

 

 

 

「俺らの世界じゃあ、待ったは無しだ」

 

 

ミスタが「No.1!」と叫んだと同時に、銃声が辺りに木霊する。

 

 

彼のスタンド"セックス・ピストルズ"を乗せた弾丸が、真っ直ぐに、落葉の壁に突入した。

 

 

「No.1!本体の影は見えたか?」

 

 

自身のスタンドからの応答は無い。

落葉の旋風の勢いは止まらない。

あっという間に僕らは落葉の渦に包まれた。

葉の集まりは壁の如き分厚さで、視界を奪ってきた。

 

 

「イネェンダヨォーミスタァー!」

 

 

いつの間にか帰ってきたNo.1はそう嘆く。

 

おそらく相手は視界を奪ってから攻撃を開始する。つまり今!

しかし、パープル・ヘイズは出せない!

 

僕は考えを巡らせた。

 

 

 

そうだ!ジョジョの"ゴールド・エクスペリエンス"なら!

僕がその答えに到達した時、ジョジョは既に行動を終えていた。

 

彼のゴールド・Eは地面に拳をつけている。

 

 

「石を蛇に変えた。我々以外の人間に反応する!」

 

 

蛇は落葉の壁をすり抜け、見えなくなった。動きに迷いはなく、それは近くに人がいることの何よりの証拠だった。

 

 

蛇が出ていってから数秒後、風が止んだ。舞っていた大量の落葉は力なく落ちてゆく、蛇が敵を再起不能にしたのか?いや違う。早すぎる。

 

 

僕らは辺りを見渡した。

 

 

先ほどまでの思考は吹き飛んだ。

 

目を疑った。ありえない。

 

 

 

綺麗に整った神社がそこにあった。雑草が生え放題だった境内は、どこへ消えた?足元の剥がれていた石畳もいつの間にか隙間なくはまっている。変わらないのは大量の落葉だけだ。

 

 

「こ...これは一体...」

 

 

口に出さずにはいられなかった。

 

 

 

「移動させられたのか?ありえねぇ...」

 

 

 

「よく見ると建物の配置がよく似ている........瞬間移動だとか、そんなチャチなものではなく、ましてやタイムスリップ以上のものかもしれない」

 

 

ジョジョが顎に手を当て俯く。

 

 

 

 

 

 

そこまで言うのには理由があった。

 

 

ジョジョのスタンドの本当の名は、

"ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム"

 

『矢』によって覚醒した『スタンド』を超えた『スタンド』。

 

実際に見たことはないが、というより、認識出来ていないだけなのかもしれないが、『相手の動作や意思のエネルギーをゼロに戻す』能力を持っている。

 

 

つまり!

僕達が強制的に移動させられたこの状況自体が、"ありえない"。

したがって、僕達は迂闊に動くことはできず、ただただ思考することを強いられているのだ。

 

 

 

 

 

カチャ..

 

ミスタが得物の残弾数を確認した。

普通に考えて、先ほど放たれた1発の弾丸を最大装填数の6発から引けばいい。

ミスタ自身もそれを承知していただろう。

 

残弾数は当然5発。安堵した顔になった後、固唾を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キャーーーーーーーッ!』

 

 

 

 

 

ーーーーッ!?

 

 

 

高い声。女?

 

それは三人をハッとさせた。

 

例のスタンド使い?

 

僕達三人は揃って歩き出した。

この時、ギャングともあろうものが固まっている動けないでいる状況が馬鹿馬鹿しく思えた。個人的な思考だが、二人も同じようなことを考えているんじゃあないかな。

此処で動かなくてどうする。

 

声のした方へ行く。神社の裏だろうか。

 

 

 

 

先程の声の主だろうか?

しゃべり声が聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何!?この蛇!初めて見る柄だわ。気持ちわる〜』

 

 

 

 

 

なんとも珍妙な服装をした女がジョジョの作り出した蛇を竹箒で追い払っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤と白?リボン??脇???

 

 

 

 

言葉が出なかった。これは夢か?

 

 

 

 

 

 

 

こちらに気付いたのか、奇天烈女は物色するようにまじまじと僕達を見る。

 

 

 

少し考えるような顔して、曇った空に大きくため息を吐いた。

 

 

 

 

 




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