情熱は幻想に   作:椿三十郎

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負の遺産

 

 

 

ーーーM県S市!

 

 

 

の、隣に位置するK町の山中にてーーー

 

 

 

ーーーー三人の男の影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏の暑さはいつの間にか忘れ、厭わしい熱さを放つ陽の光は、温もりを感じさせる愛おしいものとなっている。

秋は折り返し地点に差し掛かっていた。

彼ら三人は、ごつごつと地中から出張った木の根に足を取られぬよう、気をつけながら歩を進めていた。

 

ふと、その内の一人。

頭にぴったりとフィットした帽子を被った男が振り返った。自分達の努力の証を確認するために。

眼前には、一面の紅葉。

 

絵の具で丁寧に配色された、色鮮やかな美しいヴェールがそこにあった。紅、黄、橙、それらは自然によって計算され、曖昧で淡い色の連なりは、山一つを芸術品に変える。切り取られた絵画の一部分を見つけたような、そんな充実感を彼に与えた。

しかし、空は生憎の曇天。それに蓋をしていた。天と地の境界はあまりにもはっきりとしており、交わることを決して許さないだろう。

 

感傷に浸っていたのほんの数秒。すぐに向き直る。

 

 

「まだ着かねえのか、ちと長すぎやしねえか」

 

 

そう言われ、金髪で、前髪を下ろしている男が懐から端末を取り出した。

 

 

「財団の資料によれば、そろそろのはず。もう少しの辛抱ですよ」

 

 

彼が苛立ちを隠さずに言ったのは無理もなかった。

既に彼らはかれこれ一時間以上歩き続けている。一番近いであろう舗装された車道から、十kmも離れていた。

 

 

「これは旧パッショーネ最後の負の遺産、これで...これで全てが終わる」

 

 

歩を進めながら二人に半ば独り言のように語りかけたこの男は、もう一人の男と同様に髪が金髪で、前髪を束ねて三つにカールさせた、なんとも珍しい"奇妙"な髪型をしていた。

彼の持つ瞳は、全てを見据えるように達観しており、雰囲気は、あらゆる人々を引きつける包容さを醸し出していた。

 

彼の名は

 

 

 

 

『ジョルノ・ジョバァーナ』

 

 

 

 

 

 

またの名を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ジョジョ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー三日前

 

 

イタリアのローマーーー

 

 

 

 

 

この日、2011年11月2日は、夜雨が降っていたためか、路面が濡れていた。

濡れた路面は、朝日を照り返している。

 

そんなローマの街を横目で眺めながら、彼『ジョルノ・ジョバァーナ』は朝食をとっていた。

レストランの二階の個室。彼以外誰もいない。聞こえるのは人々の雑踏だけ。

 

最後の一口を食べ終え、カプチーノを飲んでいた時。

扉の奥から忙しない音がした後、落ち着きを取り戻したのか、ゆっくりと扉が開く。

 

 

「例の組織のアジトが見つかった、ジョジョ」

 

 

息を切らしたその男は、『パンナコッタ・フーゴ』という。

かつて"恥知らず"と罵られ、進むことも引くことも許されぬ半端な男だった。しかし、"組織"に最も尽力したのは彼なのだ。

ある男の望みを叶えるために、ついて行くことが出来なかった弱い自分を詫びるために。

その望みを叶えることで、自分の運命に決着が着くとかんがえていた。

そして、それが今叶えられようとしていた。

 

 

「場所は?」

 

 

「M県K町、日本だ」

 

 

短い沈黙のあと、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕も行こう」

 

 

「えっ?」

 

 

その発言はフーゴを驚かせた。

負の遺産が処理されることを報告しに来たのであって、処理法や指示を仰ぎに報告に来たわけではなかったからだ。

困惑気味の彼にジョルノは微笑みながら言う。

 

 

「不満か?」

 

 

「いや...しかし、なんでまたそんなことを」

 

 

ローマの街をもう一度目を向けて語った。

 

 

「旧ボスとの戦いから、もう十年だ。これでヤツの存在はようやく消える。ブチャラティ、アバッキオ、ナランチャ、彼らの三人の遺してくれたものは完全に実を結ぶ。だからここまで我々は努力してきたんだろう?」

 

 

フーゴは黙ってジョルノを見つめていた。

 

 

「ミスタを入れて、三人だけで日本に向う。」

 

 

「あんたの身の心配はないにしても、ここを留守にしていいのか?」

 

 

「ポルナレフが居る。それより、夜にはイタリアを発つ。ミスタとポルナレフ、あと......いや、その二人に連絡を」

 

 

フーゴはその命令に、二つ返事で引き受けレストランを後にした。

 

残りのカプチーノを飲み干し、空を眺める。

 

 

(日本か...もう帰らないと思っていた…)

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

M県を中心に密売を行っていた麻薬組織のボスは、旧パッショーネの情報分析チームの一人であった。

日本全土での売買を目論んでいたが、いともあっさり壊滅してしまった。

それもたった2日で。

 

詳しくは後に記述。

その組織内には『スタンド』を有する者がいたため、警察の捜査は難航し、半ば諦めかけていた矢先の出来事であった。

 

 

 

 

 

組織は壊滅。スタンド使いは財団で拘禁。

 

しかし、組織の莫大な利益と麻薬は、山中に匿っていた。

何処にあるのか、という疑問は問題ではなかった。下っ端がすぐに吐いたからだ。組織の結束のなさが伺える。

ヘリコプターでは降りられない場所のため、徒歩で行く必要があった。

人員はこちらで出す予定であったが、名乗りを上げた者がいた。

現パッショーネのボスと二人の側近である。

 

彼らは、組織壊滅にあたって大いに役に立ってくれた立役者であった。

なぜなら、彼らも『スタンド』使いであったからだ。それに相当熟練の。

お陰で早期解決に至った。

そんな重鎮がわざわざ赴くとは考えが図りかねぬが、ポルナレフ氏からの信頼が厚いとのことで、深い言及は抑えた。

 

 

 

 

スピードワゴン(財)報告書

 

 

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プツッ

 

という音と共に端末がブラックアウトした。

 

フーゴはぎょっとする。

電源スイッチを押しても、叩いてみても、振ってみても、反応はない。充電はまだあったことは確認している。

 

 

「クソッ!なんでこんな時にッ!冗談じゃない!」

 

 

端末を地面に叩きつけた。

 

しかし、ジョルノとミスタに反応はない。

二人が足を止め、辺りを見渡していた。

 

 

 

 

 

 

「何か妙だな...胸騒ぎがする」

 

 

ミスタが三人の胸中を代弁した。

 

辺りは静まり返り、木々の葉の音さえ僅かである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静寂を破ったのはジョルノだった。

 

 

 

 

「二人とも、あれを」

 

 

ジョルノは首を向け、二人に見るように仰いだ。

 

 

木々の切れ間から建物のようなものが見える。

 

三人は疑問の的に歩み寄る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジンジャ?でしょうか...」

 

 

フーゴがそう口にした。

 

 

 

 




一応幻想入りです。要素ゼロですいません。
五部勢が書きたくて、つい....
口調に関しては十年経ってるから、多少はね?

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