本当にお待たせして申し訳ありませんでした。
また、一応自分の中で2〜3週間周期で更新できればと思っております。
「ほら先輩!ご飯食べますよー。」
「おぉ、ちょっと待ってろ。」
俺は身につけていたエプロンを脱ぎ、椅子に座る。
「「いただきます!」」
そう言って俺と一色は作ったご飯を口に運ぶ。
一色は毎週末俺の家に来ては夜ご飯を作ってくれている。
最近では俺も平日にご飯を作るようにしているから、一色に任せるのではなく俺も手伝い、2人で作ることが増えた。
まあ一色がほとんど1人でやってしまうので俺はキッチンで棒立ち、なんてこともしばしばあるが。
珍しく、と言ってはあれだが俺が作った味噌汁を啜っているとおもむろに一色が口を開いた。
「そういえばわたしを不審者と間違えた時の罰のことですけどー、今度の週末空いてるのでその日にしましょう!」
いやなんで俺の予定聞かないの?俺だって予定とかあるよ?
まず朝はゴロゴロするだろ、それで昼にゴロゴロして、最後に夜にゴロゴロするんだよ………予定なかったですね、はい。
「先輩に週末予定入ってるとかありえないんで予定入ってるとかの言い訳はなしですよ?」
「いや俺だって週末に予定入ることくらいあるからな…?」
最近は部活にも入ってるしな。
やばい週末に予定とか俺リア充デビューしちゃったの?
え?部活で週末に予定なんてどんな陰キャでも部活に入っていればできるって?……勘のいいガキは嫌いだよ。
「まぁ百歩譲って先輩が週末に予定入ることがあったとしても、今週末はゴロゴロするしか予定が無いようなので決定ですね!」
あれ、俺そんなに顔に出てた?
ゴロゴロする顔ってどんな顔だよ……。
「さぁ先輩行きますよー!」
やって来ましたデートの定番遊園地!
強制されたとはいえまさかこんなリアリアしたところに女子と来るとは夢にも思わなかったぜ。
まあ一緒に来ている女子が一色だからなぁ…。
デートって感じじゃなく…なんというか…わがままな妹に付き合わされてる感がすごい。
小町も時々「お兄ちゃん!デート行くよ!」って誘ってくるけど基本ただの買い物だし…。小町とデート!なんて舞い上がった俺の心を返して!
と冗談はここまでにして、今非常にまずい事態に陥っている。
遊園地に入園してから言われるがままに一色のうしろについて行っているのだが非常にまずい。由々しき事態である。
何がそんなにまずいって一色の進んでる方向だ。
目の前には遊園地のド定番ジェットコースターがそびえ立っているのだが一色は完全にそれに向かって足を進めている。
自慢では無いが俺はジェットコースターが好きでは無い。いやむしろ嫌いすぎて一周回って好きまである。一周回っちゃったよ…。
そんな俺が一色と一緒にジェットコースターなんかに乗ってしまうとこれから生涯一色にいじられ続ける未来しか見えない。それだけは何としても阻止しなければ。
さあ、作戦開始だ!
「お…おい、一色。今どこに向かってるんだ?」
「目の前に見えるじゃないですかー、ジェットコースターに乗りに行くんですよー!」
よしここまでは想定内…。ここからが本番だ…!
「い…いや、ジェットコースターはやめたほうがいいんじゃないか?ほ…ほら、葉山もジェットコースター苦手って言ってたし、葉山の代わりの俺が乗る必要もないだろ?」
どうだこの完璧な作戦。
強く否定するのではなくやんわりとオブラートに包んだ否定。
そして疑問形にすることで最終決定権はあなたにあると主張。
きわめつけは葉山だ。葉山がジェットコースター苦手なら一色もわざわざ葉山とのリハーサルである俺とのデート(仮)で乗る必要もないだろう。まあ完全な嘘なんだが…だがしかし致し方ない。この際葉山にはジェットコースターを嫌いになってもらおう。
「むー、今は先輩と来てるんですよー、葉山先輩が苦手でも先輩とならない理由にはなりません!第一葉山先輩がジェットコースターが苦手なんて聞いたことないですしー。」
「い…いや…そ…それはだな、あれがあれで…そのー、なんだ…」
「あ、もしかして先輩ジェットコースター苦手なんですかー?」
「っ…!?にっ…苦手とかそんなんじゃないぞ。ただちょっとこれがそれだからな?」
「はいはい、苦手なんですね…。それならそうと言ってくれればいいのにー。ほら!着きましたよ先輩!」
鬼だ…鬼がいる…。
俺の作戦を完璧に打ち破っただけでなく葉山がジェットコースター苦手という嘘も見抜き、さらには俺のジェットコースター嫌いまで看破、そして苦手だと分かった上で乗せようとするその意地の悪さ。
きっと前世は人間ではなく鬼だったに違いない…。
「先輩なんか失礼なこと考えてませんかー?」
「…いや、考えてない…。」
なんで俺の考えてることがわかるんだよ…。そんなに顔に出てる?俺結構ポーカーフェイスな方だと思ってたんだが…。
「先輩の考えてることなんてわたしにはお見通しです!」
「超能力かよ…。」
テレパシーでも持っているのか?
じゃあこいつも斉木○雄みたいに苦労してるんだろうな…ってそんなわけないですねそうですね。
「さていよいよわたしたちの番ですけど…、怖いのなら一つだけアドバイスをあげます!手を横に出すと怖さが軽減されるらしいですよ!」
いよいよ俺たちの番が来てしまった…。
どうにかして逃げようと一色の顔を見るがいかにも「逃がしませんよ?」って顔をしている。もうダメか…。
ジェットコースタに乗り込み、先ほどの一色のアドバイス通りに手を横に出す。
え、これ怖さ倍増しない?安心感が全くないんだけど。
「それではみなさーん、空の旅にレッツゴー♪」
係員のお姉さんの声でジェットコースターが進み始める。
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
この登ってる時が一番嫌なんだよなぁ…。
地獄行きの列車に乗ってる気分だ。
山の頂点に達し、降り始めた。
やはり怖いので手をバーに戻そうと少し浮かせたその時何か柔らかく、温かいものがおれの右手を包んだ。
「せんぱいっ、手、繋いだら怖くないですよ?」
「っ……!?」///
その時の彼女は奉仕部の教室で初めて会ってから、今までで一番可憐で、美しくみえた。
その後は遊園地を満喫し、電車で一色と別れた。
家に帰って一人横になっていると、ある思いが俺の頭をよぎった。
それは今日初めて気づいた自分の気持ち。
そう、俺は一色のことを…小町のように妹のようにではなく、1人の女性として愛おしく思っているのではないか、そんな思いが消えることなく頭の中をぐるぐると廻っていた。
わたしの小説の更新を待っていてくださる人がいること、とても嬉しく思います。
そして本当にお待たせして申し訳ありませんでした。
感想でご指摘いただいて初めて気づく始末です。
こんなわたしですが、これからもこの小説を読んでいただけると嬉しいです。