追記:この話のすべてで『折本』が『折原』となっていました。
今後このようなことがないよう、しっかり読み直しをしたいと思います。読んでくださったのに不快にさせてしまった皆さん、本当に申し訳ありませんでした。
遊園地に行ったあの日、俺は自分の中に眠っていた一色に対する気持ちに気付いてしまった。
家に帰ってから自分に限ってそんなことはない、と思い直そうとしたが、一色への気持ちを忘れようとすればするほど笑った、困った、怒った、あざとい、いろんな一色が俺の中から顔を出す。
もう認めるしかないのだ。
俺は……比企谷八幡は一色いろはのことが好きなのだと。
小っ恥ずかしい気持ちもあるが、仕方がない。
ただその気持ちを認めてしまったあと、一色との接し方がわからなくなり、これまでと違う対応をしてしまっている。
バレてない…よね?これで一色がもうすでに感づいてたりしたら恥ずかしすぎる。穴があったら入りたいレベル。
「さて、帰るか…。」
今日は一色がくる日だ。
大学の講座も終わったことだし、部活もないし、まっすぐ家に帰ろう…。
「……雨じゃねぇか…。」
今日1日考え事してたから全く外に気を配ってなかったな、まさか雨が降っているとは…。まぁバス停で立っててもどうしようもないのでとりあえずバスに乗る。
「さて、どうするか…。」
もうみなさんお気づきかもしれないが俺は傘を持っている。
いや持ってるんかーいとつっこんだそこの君、ツッコミの才能があるぞ、これからツッコミキャラとして頑張れ。
というわけで全く問題のない俺はすんなりとバスに乗り、そして一番アパートに近いバス停ですんなりと降りた。
そう、ここまでは良かった。しかし1人の某ウケるさんの登場で穏やかだった俺の日常がぶち壊される。
「あれ、比企谷同じバスだったんだ、ウケる!」
「いや受けないから。」
こいつは一種の縛りプレイでもしているのだろうか?
自分が三回話す間に一回は『ウケる』という言葉を使わなければならない、的な。
人生ハードモードだなおい。
「ね比企谷傘2本持ってない?」
「いや傘を二刀流で装備してるやつはあんまりいないと思うぞ…。」
「だよねー。」
「お前傘忘れたのか?」
「そーなのー、朝持って行こうとしたんだけど傘自身が拒否ってさー。」
え、傘に自我あるとかウケるんですけど。
いかん口癖が伝染してきた…。
「ちょっと黙るとか酷くなーい?友達は笑ってくれるのにー。」
「そんなので笑えるほど豊かな人生送ってねぇよ…。」
てか友達ツッコめよ。笑ってる場合じゃねえよ。
え、まさかツッコミ役いないの?そんな地獄がこの世に存在するなんて…。
ましてや折本なんてボケ製造機みたいなもんだろ、ボケしかない世界の完成じゃねぇか。
「というわけで比企谷傘に入れてよ!」
「やだよ。」
どこから繋がって『というわけ』なんだよ…。そんなのダメに決まってるだろ。
女子と同じ傘に入って帰るとか拷問と同義だろ。
誰が自ら拷問受けに行くんだよ…。
「即答とか辛辣すぎてウケるんですけど…。ねーお願いー。ほら、女子が濡れるとか大変じゃん?」
「いや水もしたたるいい女っていうだろ?良かったな折本、お前もいい女の仲間入りだ。」
というか相合傘とか周りの人に見られたら恥ずかしいだろ、余計な噂が増えるし。
ただでさえ今文研部に幽霊がいるとかなんとか言われて傷ついてるのに…。
「そう言わずにー、もしこのまま帰らせたら斎藤先輩に『比企谷に濡らされましたー』って言っちゃうからー!いやでもそしたら比企谷死んじゃうじゃん、ウケる!」
いやウケないから…かくなる上は今から全力疾走して逃げるしかないな……ってあれ、折本力強いな、腕を掴んでる手が離れないぞ?
おやー?もしかして俺の腕と折本の手はS極とN極的な関係なのか?
そんなわけないですねごめんなさい。
……そんなこんなで本当に折本と同じ傘に入ってしまいました。まさかこんなことになるなんて中学の頃の俺は微塵も思ってなかっただろうな…。その頃の俺に伝えてやりたい、いつか折本と相合傘できるようになるぞってな。そうすればおれもここまでひねくれることはなかっただろうに…。
「いやー、中学の頃はこんな風に相合傘するとか全く思わなかったー、ウケる!」
こいつ爆弾投げて来やがった…。
普通その話仮にも振った相手にするか?いやまあいいんだけどね…。
俺も折本のことはもう特になんとも思ってないしな。ほんとだよ?
ハチマンウソツカナイ。
「まぁ、そうだな…ってかお前から入ってきたんだろ…。」
みなさん何故俺がこんなにもおとなしく折本と相合傘しているか分からないだろう。いや、色々あったんだ斎藤先輩とは…。
大分端折って説明すると斎藤先輩は最近俺が女の子に優しくできるように俺を強化中なのだ。
頼んでないのに…。
でもまぁ嫌がらせではなく俺のことを考えてしてくれてるのでやめろとも言えず…。いや高校までの俺なら言っただろうが大学の俺は空気読む系男子だから…。
それで女子に優しくしなかったらめちゃくちゃ怖い。
なんというか普通に怖いんじゃなくて、陽乃さんのような怖さだ。
目が笑っていない笑みほど怖いものはない。
…と言うわけでやむなく折本と同じ傘に入っていると言う状況である。
「おい…、そんなにくっつくなよ…。」
何とは言わんが当たるだろ、というか由比ヶ浜ほどの存在感はないが折本もなかなか…。
「なに?照れてんの?ウケるんですけど!」
「そ…そんなんじゃねぇよ…。」
「だってうちが傘忘れたのに比企谷が濡れちゃわるいじゃん?うちのためだと思って!ね!」
「はぁ…。」
「それに比企谷のこともうなんとも思ってないし?問題なし!」
「いやそういうことじゃなくてだな…、周りの目とか気にしろよ…。」
「よーし、着いたー!比企谷、ありがとね!またなんか奢る!ばいばーい。」
無視ですかそうですか。まぁなんか奢ってもらえるみたいだしよしとするか…。
おっと、勘違いするなよ?俺は施しを受けるのは嫌いだが働きに対する報酬は喜んで受け取る主義だからな、今回もありがたく折本に奢ってもらうとしよう。
「そういや、そろそろ一色来る頃だな……今日はちゃんとしないとな。」
結局その日、一色は家に来なかった。
甘い話と書いておきながら甘くない話を書いてしまった…。
ここから甘くしていきたい…!