ごめんなさい
※修正・加筆しました
階段の上、長い髪をなびかせた少女の姿があった。喜美だ。
彼女は眼下、”後悔通り”の前、石畳で舗装された通りに立っている弟の姿を見た。
彼の後悔通りへ踏み込もうとして、また戻り、また踏み出そうとする動きを見て、
「怖かったら戻ってきていいのよ、トーリ・・・」
頬杖を突き、トーリの行く末を見守っている喜美がつぶやいた矢先、トーリは近くのポールでポールダンスをし始めた。
「・・・ふふふ、愚弟、結構いい雰囲気だと思ったのに、ぶちかましてくれるじゃない・・・」
「トーリのヤツ、何やってんの?叩き落した方がいい感じ?」
「先生・・・学食で紅茶にブランデー入れすぎてほぼ酒になったって話聞いたけど先生こそ何しに?」
「先生?先生は・・・涼みにかな?」
オリオトライが酒瓶片手に喜美の隣に座った。
わずかに乱れた髪を手櫛で直すのを見て、
「先生、手櫛は髪を痛めるから駄目よ、トーリとか直政とかたまにやってるけど、ファッション以外にやっちゃだめよ・・・私に任せなさい」
懐から取り出した櫛でオリオトライの髪を梳いていく。
オリオトライは戸惑いながらも、なされるがままの状況に顔を緩める。
「へへへ」
「なによ先生・・・気持ち悪い」
「いや・・・康景にやってもらう時の事思い出しちゃって」
「なによアイツ、自分の師匠相手にそんなことまでやってんの?」
それってもうなんか・・・師弟関係っていうよりむしろ・・・姉弟関係じゃない?
喜美は思ったことを言おうとしたが、先にオリオトライが口を開いた。
「いや先生だってね、色々身だしなみとかには気ぃ使ってるつもりなんだけど、寝ぐせがちょっと立ってるだけで「先生ちょっとそこ座ってください」とか言って私の髪の毛とかし始めるのよ?!・・・」
「いや先生、そういう羨ましい系のノロケ話とかいいですから・・・先生ホントに酔ってるの?」
「まぁいいじゃんいいじゃん、先生にとって今日は節目の日でもあるんだから・・・」
「あら偶然、愚弟にとっても今日が節目になる日よ・・・、明日は目出度い日になるといいけど」
オリオトライはトーリが居る方を見て
「がんばれ、がんばれ・・・」
応援するようにつぶやいた
喜美はそのつぶやきを髪を梳かしながら聞いて
「フフ、先生、先生って康景贔屓って訳でもないのね、先生は愚弟の味方にもなってくれるの?」
「何言ってんのよ、先生は先生のクラスの皆に対しては絶対に味方だから・・・まぁ康景に対しては私生活の事もあるから、ちょっと贔屓目に見ちゃうかもしれないけど」
「ふふふ、やっぱり贔屓じゃない・・・あら?」
喜美は正純が自然区画から後悔通りの半ば辺りに出ようとするコースを、何か大きな荷物を背負いながら歩っているのを確認した。
変なコース抜けるのねあの子・・・。
*******
正純は自然区画の「ちょっとした森」を一人歩いていた。
後悔通りに近道しようとして自然区画を横切ろうとしたのがマズかった。
お、重い・・・!!
正純は康景宛の荷物を背中に背負い、生徒会、もといトーリ宛に届いたエロゲを小脇に抱えながら森の中を歩いていた。
歩いても歩いても、通りへ出る気配がない。
この道は果たして合っているんだろうか・・・?
そう思った時、公園に出た。十数メートルの広場の端に立つ休憩所を見て、
良かった、この休憩所は教導院の方からも見たから、こっちの方で合ってるな・・・。
更に通りの方へ向かおうとしたとき、正純は声を聞いた。
P01-sか・・・今日はやけに彼女の声を聞くな・・・。
そんな事を思いながら歩みを進める正純は、やっとの思いで通りに出ることが出来た。
一年経っても未だに道に不慣れとは・・・
夕刻だという事もあり、人気は少ないな、なんて考えていると目の前に馬車が止まり、不意に中から声がした。
「正純・・・こんなところで何をしてい、る・・・?」
父親である本多正信だ。彼は正純が持っている大きな荷物とエロゲの包みを見て怪訝そうに尋ねた。
正純は正直父親がわからなかった。
自分を武蔵に呼び寄せておいて、自分とろくに顔も合わせようともしない人だ。
嫌いではないが、苦手。
好きではないが、家族である。
簡潔に言ってしまえば距離感がつかめないのだ。
「まだ武蔵の事でわからないことが多いので、実地で調査を・・・」
「お前が出てきた森にあった休憩所について、なにかわかったことはあったか?」
「・・・?あの休憩所が何か?」
いつもなら無言で去られるのが通例だったので、返答が帰ってきたことに正純は驚いた。
しかし、休憩所の事については全く分からなかったので明確な回答を提示できなかった。
知っているのであれば聞きたいが、
「不勉強だな・・・何一つ理解がないとは・・・」
「・・・」
「しかし御子息、変わったものを持たれてますなぁ。私共の取引ではそういう物も取り扱っておりましてな・・・しかも初回限定版とは」
正信の正面に座る男が、正純の背負う荷物ではなく小脇に抱えるエロゲの方に興味を示した。
ひょっとしたら父は、取引相手がいる手前、仕方なく声を掛けたのかもしれない・・・。
そう思うと、なんだか虚しい気分にもなった。
「いえ、これは友人のモノで・・・」
「よくわからんが、差し上げろ」
は?今父はなんと言った?
今父は、今後との取引に対し今恩を売っておけば後々有利になる。だからそれを渡しておけ、そう言ったのだ。
だが正純は直前に「これは友人のモノ」と明言した。
つまり友人を裏切れ、そんなことを暗に言っているようなものだ。
自分は政治家を志しているが、同時に父親の様にもなりたくない・・・正純はそう感じた。
反応に困っていると、右の方から声がする。
「よっしゃああああセージュンいい仕事したなァ!」
トーリが、正純と馬車の間に割って入った。
トーリは正純の肩をつかみ早口で、
「今夜中にプレイしなきゃいけないエロゲの一つなんだけど、ナイトとナルゼが中々運んでくれなくてさ、仕方ないから空飛んでる二人を見つけるまで空見上げながら徘徊してたんだ!」
正純が持っているエロゲを奪い取る。
「葵?お前顔色悪いぞ・・・大丈夫か?」
「ダイジョブダイジョブちょっと走ったからな!それより学長かヤスから聞いたと思うけど明日惚れた女に告りに行くから前夜祭を教導院でやるんだけど・・・来るか?」
「行くわけないだろ!校則違反だぞ、行くなら三河の花火見に行くさ!」
トーリは見るからに吐く一歩手前みたいな顔を更に残念そうにさせたことでその顔の深刻さを悪化させた。
「そっかぁ、告る相手セージュンも知ってる人だからできれば来てほしかったんだけど・・・」
「は?私の知ってる人?・・・おい私に迷惑及ばないよな?な?!」
ど~だろうねぇ~!!
彼はただ走り去りこの場からいなくなった。
嵐のように去り行く馬鹿を尻目に、正純と馬車は取り残される形になったが、正純は半ば安心していた。
本人に渡せてよかった・・・。
「申し訳ありません」
「いえいえ・・・でもまぁ、まさかここで"後悔通り"の主に出会えるとは・・・」
「"後悔通り"の主?」
後悔通りという単語が出てきたことにも驚いたが、主とは一体何事だろうか。
向こうを見てごらんになられるとよろしい。
言われ、正純はそちらを見た。
"ホライゾン・Aの冥福を祈って―・・・"
そう書かれた石碑が見える。
「ホライゾン・A・・・つまりホライゾン・アリアダストがここで亡くなった時の石碑ですな」
「アリアダスト?教導院の名前ではなく・・・?」
「三十年前に元信公が三河頭首になった際、松平姓の庇護はもはやいらぬという理由で松平の名を逆読みし、頭の一字を削って「ariadust」として聖連への恭順を示そうとしたのですな」
「では教導院の名はその時の・・・」
「そう、聖連は元信公の意思を尊重したう上で姓を元に戻させましたが、いくつかの者にその名は受け継がれました」
それが・・・、
言おうとする商人の台詞を引き継ぐように正信が繋いだ。
「元信公には内縁の妻と子がいた・・・それがホライゾン・アリアダストだ」
正純は武蔵の成り立ちにそんな話が合った事を知らなかったために、息を飲み、黙って聞いた
「ホライゾン嬢を事故に遭わせたのは元信公の馬車でな・・・ちょうど明日で十年か」
十年・・・。
正純の中で何かがつながりそうだった。
「ですが後悔通りの主にとっては後悔のリアルタイムなんでしょうな・・・結果だけ見たら彼がホライゾン嬢を殺したようなものですし」
「は・・・彼が殺したってどういう・・・まさか、後悔通りの主って・・・」
「"後悔通り"と"後悔トーリ"の二重の意味で・・・」
「彼も負傷して運ばれたが、帰ってきたのは彼だけだったからな・・・」
嫌な汗が噴き出る正純。
十年前の事故・・・葵の事・・・康景の事・・・何かがつながりそうだったが「そのこと」についてあまり考えたくなかった。
「明日で十年目・・・康景君はどう思っているんでしょうね・・・」
「ど、どうしてそこで康景の名前が・・・」
「天野康景・・・彼がその名を襲名する前の名は「義伊・アリアダスト」・・・・・・彼はホライゾン嬢の弟だ」
*******
「トーリと康景がまだ来ていないようだが・・・まぁいい、先に怪談話でもして気分を盛り上げよう・・・無料でな」
「シロ君、盛り上げたいのか事務的なのかよくわからないよ」
夜、トーリの告白前夜祭と称した幽霊探しがあるので、三年梅組の生徒は一部を除き昇降口前に集まっていた。
司会進行のシロジロが周囲を囲むようにして座る皆に対し、ここにいない二人へ嫌味っぽく言うが、その終始目線は階段の方に向いていた。
シロジロだけでなく、ハイディも、座っている皆も階段の方を気にしていた。
浅間はどうして皆が階段の方を気にしているのか、考えなくても理解していた。
皆、康景君が来るか来ないか気になってますね・・・。
時間になっても来ない彼を、皆気にしているのだ。ワザと時間を伸ばそうとするあたり、シロジロなりの気遣いなのかもしれない。
その気遣いに浅間も乗っかることにした。
「ええと、皆、まず私からいいですか?」
「どうしたの?浅間・・・ハッ、まさかここで浅間のスーパーエロい体験談話?!」
「ち、違いますよ!なんで皆も正座してるんですか!?そんなエロい体験談なんて持ってませんよ!・・・というか喜美、いくら「怖い話」が怖いからって私をダシにして話を逸らそうとしない!」
喜美は怪談話が苦手である、過去康景と怪談系のホラー映画を見て白目で気絶していたくらいには苦手である。
こういった話題になる時は大抵浅間をネタにして逃げようとするので、浅間からしてみればいい迷惑なのだ。
「はいはい、で話の続きはアサマチ―・・・」
「はい、怪談ではないんですけど、ここ最近頻発している怪異についてなんですけど・・・"公主隠し"と呼ばれる神隠しについてです」
公主隠し、ここ数年で何件か確認されている怪異。
三十年前から数件起きていたようだが、ここ数年は年に数件の割合で起こっており正純の母親も被害者の一人だ。
普通の神隠しのように流体が乱れてその裏側に入るわけではなく、公主隠しに遭ったものは、跡形もなく魂も身体も消えてしまう。
これに関しては解っていないことの方が多いが、発生地点でわかっていることは、
「一番多いのは三河と、京付近です・・・」
「モロ圏内じゃないですかやだー」
大体浅間が知ってる範囲で"公主隠し"の説明を一通り終えたところで皆は黙って聞いていたが、さっきから五月蠅かったはずの喜美は、
「・・・」
「「き、気絶してる?!」」
笑顔だが顔を真っ青にして、喜美は気絶していた。
喜美・・・。
隣、座って話を聞いていた鈴も喜美を心配そうにしていたが、
「?」
何かに気づいたらしく、階段の方を見た。
皆もそれにつられて階段の方を向く。
「・・・悪い、遅れたか?」
白いコート、いつもの仏頂面で康景が遅れてやって来た。
皆がその姿を見て、ある者は驚き、ある者は安堵していた。
康景君・・・。
康景の顔色は悪かったが、康景もちゃんとこちらに合流できたことに浅間は安堵した。
皆が何か言おうとしたが、先に行動を起こしたのは喜美だった。
喜美は康景に勢いよく抱きつくが、その勢いと遠心力で真正面から背中に移動しおぶられる形になった。
「ふふふ、皆この賢姉ぇが気絶したと思った?残念!もうこのスーパーマン(笑)が来たから怖いものなしよ!」
康景の背中で青ざめた顔でどや顔している彼女の台詞にはなんの説得力もないが、とりあえず活力は取り戻したらしい。
「どうした喜美?背中にくっつかれると歩きづらいんだが・・・軽いから別にいいけど」
「「いいのかよ」」
皆がツッコむが康景はよく現状を理解していなかった。
すると、教導院の玄関の方で勢いよく扉が開かれた。
「おっし皆遅れちまったぜ!悪い悪・・・ヤス・・・」
「ああ、遅れたけど・・・何とか来たぞ」
トーリは、そっか、と呟き笑顔になる。
そして、
「よし皆早く来いよ!面白れぇぞ!!」
仕込みを隠す気はないらしい。
********
「はい、という訳で図書館前です」
浅間を筆頭に、アデーレ、鈴、直政の四人が図書室前の護符替えに来ていた。
直政は大型レンチを担ぎながら浅間に確認する。
「どうさね、アサマチ・・・霊視できない私らにゃ、何もわかんないんだが」
「ですよねー、ラップ音とかわかりやすいのだったらいいんですけどね」
「心配だったらアデーレも機動殻もってくりゃよかったのに」
「ナオさ、ん・・・なん、か、嬉し、そう、だね?」
言われ、自分が結構気分が良い事に気づく直政。
あれ?なんでだ?
よく自分でもわかってなかったが、鈴が言うならそうなんだろう。
そう思って直政は納得した。
「やっぱ今回、康景さん来てたのうれしいですよね?なんかこう・・・話が一つ進んだ感じで」
「まぁあいつ自身も、そんなすぐ切り替えられるわけでもないだろうさ、何せアイツは人より一つ分多く重い物背負ってんだから・・・」
「とかなんとか言いつつ、顔は嬉しそうですよ、マサ」
む・・・皆してそこまで言うかね・・・。
直政は気恥ずかしくなってレンチを持ってない方の腕で頭を掻いた。
浅間もその様子を見て、笑顔で目的地である図書室の戸を開ける。
「んー・・・?何アレ・・・?」
「どうしたんさねアサマt」
浅間が立ち止まったのを不思議に思い、浅間の背後から図書室を確認する直政。
暗い図書室に、何か白い何かがいることに気づいた。
よく見たら女の子の絵がプリントしてある抱き枕から、足が生えていた。
なんか見てはいけないモノを見てしまった気が・・・!
「「新しい価値観!!」」
異様な動き方で迫ってくる影に、浅間は容赦なく矢を撃ちこんだ。
*******
浅間のズドン砲を皮切りに騒ぎが大きくなる。
そしてナイトの「わはぁー!」とか「ヒャッホー」とかの掛け声とともに棒金の弾丸が射出され、教導院全体に響いた。
「おい馬鹿!何を仕込んだんだ!?」
「おいおいお前真っ先に俺疑うのとかやめろよな、俺は何も仕込んでないぞ・・・頼んだだけだよ」
「誰に?何を頼んだ?ちゃんと金で済ませられる相手なんだろうな?」
「おいおいおい、そんないっぺんに聞くなよ・・・俺にどうしろってんだ?」
「とりあえず死ね」
「ひでぇ!コイツ直球で言いやがった!」
トーリとシロジロが行事の度にやるやり取りに、先程合流した東は付いていけてなかった。
こういう場合は止めた方がいいのだろうか?
「大丈夫よ東君、毎度の事だし・・・ほらほら二人とも、さっき合流した東君が置いてけぼりだから、話もどそ?」
「では東、まだ正気の連中とかいるだろうから、そいつらを集めて中庭で避難していてくれ・・・ホラ、行くぞ馬鹿」
シロジロとハイディがトーリの頭を左右から肘フックして連行する。
その様子を、東は後ろから眺めて、
「ポークウさん、怒ってるかな」
さっき同室になった女の子が怒ってないか心配になった。
*****
教導院の方で、騒がしいのをミリアム・ポークウは感じていた。
彼女は車椅子のため、大体部屋に引きこもっているが、
「何やってるのかしら?・・・読書に集中できないんだけど」
若干イライラしていた。
******
「一体なんの騒ぎであるか!」
そんな怒声と共に、教頭であるヨシナオが校舎に現れた。
大方の連中が集まる中庭にヨシナオも事情の説明を求めようとして来たのだが、そこに運悪く、息を切らした浅間に水を、と思い校内に給水行こうとした鈴と鉢合わせた。
それを見た東はまずいかもしれないそう思った。
「一体なんであるか!この騒ぎは!首謀者は何処だ?!」
「ひっ、あ、あの」
「何だね!言いたいことがあるなら言ってみたまえ?さぁ!」
「う、うわあーん!」
目が見えない彼女に大声で問いかけるのは結構危ないことだと、以前康景に言われた東は思い出した。
鈴が泣き出したのと同時、皆があ、という表情と共にヨシナオを見た。
皆非難の視線を向ける中、トーリが校舎の窓から顔を出し、
「わーにんわーにん!皆!我らが武蔵唯一の心の清涼剤が泣かされてるぞ!」
「何だって!?くそう、とりあえず皆下手人の処罰について意見は!?」
その問いかけに、校舎に残っている者が全員窓から顔を出し、
「「死刑!」」
「よーし!決定だ!ヤス、頼むわ!」
その判決に、康景はゆっくり前に出て「・・・仕方ない」などと言いながら剣を抜いた。
もしこれが漫画ならゴゴゴゴゴゴゴゴという地鳴りがなりそうな勢いの雰囲気だが、康景の表情はいつもと変わらなかったのでそれが余計に処刑の雰囲気を助長した。
「葵トーリ!貴様であるか!今回の騒動の原因は!」
「お、下手人は麻呂か!?おーいヤス!今回の下手人は麻呂だってよ!」
「・・・教頭でしたか・・・致し方ありませんね・・・」
********
康景は鈴が泣かされたと聞き、加えて皆が死刑判決を下したので仕方なく剣を抜いた。
相手が教頭であっても、鈴を泣かせるのはこの武蔵においては禁忌中の禁忌・・・!
康景は剣を抜いてヨシナオに近づくが、
「待っ、て」
鈴が叫んだ。
すると、三河の各務原の番屋の方で爆発音が響いた。
「三河の方で爆発音か!」
「何があった!?」
シロジロが三河の商工会と連絡が取れないのを確認する。
それぞれが混乱する中、ヨシナオがさりげなく鈴に謝り、さりげなく校庭から去っていくのを康景は見逃した。
謝罪もしたし、元々殴る気も切る気もなかったからいいか・・・。
「待って・・・!」
鈴がまだ静止を掛ける。
てっきり三河の方での異変に気付いたから静止をかけたのかと思ったがどうやら違ったらしい。
鈴が指さしたのは東の方だった。
「余?」
「・・・東?その足元に居る少女は、お前の知り合いか?」
東が自分の足元を確認する。
そこには半透明の幼女がいた。
「ぱぱ、いないの・・・まま、いないの・・・」
一瞬迷子かと思ったが、それより先にトーリが叫んだ。
「で、でたぁー!!!」
騒がしく過ぎていく夜だったが、この時康景は想像すらしていなかった。
「日常」が崩れ去る音がそこまで迫っているのを―――
ミリアムの出番が数行になってしまいました・・・
ミリアムファンの方ごめんなさい
「義伊・アリアダスト」ってなんか変な感じしますけど、ストーリー上こうするしか・・・(泣)
義伊って名前は多分検索すればある武将の名前が出てくると思いますよ