清武田と武蔵
考え方の違いは
大国故か立場故か
配点(強国)
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南進して、三河、関東行き。
その言葉に関東勢が反応する。
「六護式仏蘭西やM.H.R.R.の介入でIZUMОで補修は困難になった。安全に補修を行うには関東IZUMОの武蔵専用ドッグに行くしかない。無論、元々貿易で行く予定ではあったがな」
IZUMОを囲んでいる二大国の艦群のうち、M.H.R.R.の艦群を見る。
「私の意見としては、ヴェストファーレンを一度望みたい気持ちもあったが、M.H.R.R.が六護式仏蘭西、K.P.A.Italiaとにらみ合いが続いている今はヴェストファーレンの進行どころではない。よって武蔵が欧州で得た成果は英国、三征西班牙との理解を深めて繋がりを得、三十年戦争が一段落するまでに関東諸国と意見をまとめる段階に入ったと、そう思っていた」
だが、と正純は続け、ツキノワに中国地方から紀伊半島までの概要図を出させて、
「現在考えられるルートとしては、M.H.R.R.、六護式仏蘭西の暫定国境を下り、瀬戸内海から紀伊アラビア半島を回る。武蔵が欧州に来たときのと逆を行くルートだが、人々に武蔵のスタートラインが何処だったかを想起させるきっかけにもなる。それが希望的だったんだが・・・」
「無理だな」
この考えに、里見義頼が反応した。
彼は腕を組み、
「そのルートを考えているのであれば解ると思うが、M.H.R.R.旧派が暫定国境側に集結しつつあると聞く。つまり、武蔵が南進した場合、六護式仏蘭西から攻撃を受けるのはもちろん、それに国境侵犯を理由にM.H.R.R.からも攻撃を受けるのは必定、更にK.P.A.ItaliaがM.H.R.R.と睨み合っているから、もし南進を強行すれば武蔵と欧州の三ヵ国を巻き込んだ戦争に発展するかもしれない・・・そんなことになれば聖連所属国が味方に付くことはないだろう」
「ならば・・・どうなさるおつもりですかな?」
義頼の言葉に続き、佐藤兄弟のどちらか(兄弟のどちらかが解らない)がそう問いかけてきた。
彼らは武蔵の方を見て、
「武蔵なら、他国の艦の攻撃が届かない高空に"逃げる"という選択肢も有りでしょうな」
「だがその選択では世界は武蔵に対して"逃げた"という心象しか持たないし、しかも聖連や六護式仏蘭西とは敵対状態のままでいいことはない」
それは避けたい。
ならばすべきことは、
「手詰まりのこの状況の中で六護式仏蘭西が明日攻めてくるのであれば、武蔵はこれを凌ぐか講和を結ぶかを
**********
なるほど、そう来たか・・・。
義頼は内心、武蔵副会長の会話運びを評価した。
武蔵が
そして関東勢が武蔵を欲するのならば、今ここにいる以上六護式仏蘭西の攻撃を凌ぐのを手伝えと、そう解釈することができる。
戦闘系小国である里見からすれば役割を得られるだけでもありがたいことだ。
「ならば六護式仏蘭西を凌いだ後は?その先の道筋を聞きたい」
「まだ六護式仏蘭西を凌げると決まったわけではないが・・・」
苦笑いして答える武蔵副会長。
その視線は一瞬だが天野康景の方を見ていた。
天野康景・・・か。
三河で起きた騒動は、今じゃほとんどの教導院がその存在を知っている。
聖連の旧派首長であるK.P.A.Italiaと、同じく旧派である三征西班牙を武蔵が凌いだことは、極東の国としては大きな衝撃を与えることになった。
中でも、三征西班牙の西国無双、立花宗茂と、同じく三征西班牙の特務である立花誾を無傷で凌ぎ、百を超える敵をたった一人で倒して武蔵の勝利に貢献した天野康景は、武蔵における最大戦力の象徴とも言える。
それだけならまだしも、噂によると政治にも精通しているとか。
文武両道という言葉がそのまま通じるような存在、まさに万能という言葉が相応しい男だ。
それだけでも警戒するに足りる。
もしかしたら六護式仏蘭西相手でもなんとかなるのではないかと思えてしまうほどに。
しかし、
「・・・」
彼もまた"人"である。
それほどの無茶を、一人で背負い込めばどうなるかは想像できる。
まぁ彼自身のことを知っているわけではないが、彼が辛い想いをすることになるのは想像に難くない。
そう言った意味も含めて、武蔵副会長が天野康景を見たのは、彼への負担を掛けたくないという意図もあるのだろう。
個人的に聞いてみたいこともあったが、それはまたの機会にしよう。
「―――決まったわけではない、が・・・見通しを立てておくことも必要だろう」
武蔵副会長は少し考えてから、
「ああ、安全なルートを見つけ出し、三河、関東に行く」
*******
正純はネシンバラから送られてくる情報を元に、会議を進める。
六護式仏蘭西には不確定要素が多い。
特に康景を襲った存在に関しては要注意が必要だ。
無論明日六護式仏蘭西が攻めてくるのはほぼ確実である。
その際にその者がまた来る可能性もある。
武蔵の負担を減らすことはもとより、康景の負担も減らすことが出来るかもしれない。
だからこそ関東勢を
里見義頼もその意図をおそらく察したのだろう。
それでもなお不安要素は残るが、とりあえず今は関東行きの方を何とかしよう。
「関東行きのためにまず話し合わなければならないことがある。佐藤兄弟」
「ほう・・・」
「貴方たちだ・・・理由については、おおよそ察しはついていると思うが・・・」
関東行きについての懸念の一つに松平元信の歴史再現がある。
「松平元信、後の極東天下を得る人物には、その生涯で大きなものが幾つかあった。近時で起こり得る危機が・・・」
「そう、それが"三方ヶ原の戦い"だ」
松平と武田が大きく関わる戦争だ。
結論から言えば、松平が敗北する戦争。
つまり、ここをうまく調整できれば、三河行きはなんとかなるはずだ。
だからこそ、佐藤兄弟との交渉は逃せない。
「聖譜記述によるならば、松平は自陣の前を通り過ぎて上洛する武田に激怒し追撃するも、逆に返り討ちに遭い敗走する。多くの人材を失いながら自分の城になんとか逃げ込む、そういう敗戦だ」
言葉を送る先の佐藤兄弟は、どちらも反応がない。
だから正純の方から言葉を重ねる。
「私たちが三河を東ルートで通過するならば、三方ヶ原も経由することになる。さぁどうする佐藤兄弟・・・三方ヶ原をどうするのか、そのためのギブ&テイクの話し合いをしようじゃないか」
********
康景は膝に乗せた義経を甘やかしながら話を聞いていた。
「おいおい、口元汚れてるぞ」
「うぃいい、あ?おお、すまんのぅ」
義経がデザートで口元を汚したのでそれを拭いてやりながら、考えた。
"三方ヶ原の戦い"
松平が幾つか迎える危機の内、最大クラスの危機に直面する戦の一つだ。
おおよその概要は正純が言った通りであり、この前の三河騒乱時にウチのヤクザオヤジがやらかした新名古屋城喪失地点から南東に80㎞に位置する三方ヶ原で、松平と武田が争った戦である。
武田信玄の晩年、自らの寿命を悟って本格的に上洛を開始。
上洛ルートには武田と同等の力を持つ織田の同盟相手である松平元信の本拠地である三河を通ることになる。
松平元信は戦闘準備をして構えていたが武田はこれを無視して通過したため、激怒し、追撃する。
流れとしては、
一言坂の戦いで二俣城に進軍した松平の偵察が武田に見つかり、酷い目に遭わされる。
その上で二俣城は助命を条件に開城させられ、ついに武田は松平の居城たる浜松城を無視して上洛を再開する。
松平はそれに対して追撃するが、逆に多くの配下を失うことになる。
という感じで松平は優秀な配下を失う、ただの敗戦になる。
途中、この戦いで松平公が糞漏らすとか自戒のために顰像を描かせたなどという逸話もあるが、一番の問題になるのが、
松平配下の将が、何人か死ぬことになる・・・。
歴史再現を正確に行わなければならない状況になった場合、武蔵はこれを出さなければならないことになる。
今思えば元信公が松平四天王を除く家臣団を自動人形に襲名させていたのは、こういったことへの対策だったのだろう。
三方ヶ原において、松平元信が浜松城に撤退する際に、その身代わりとなって死亡する将の一人に成瀬正義という人物がいる。
つまり、速い話が我らがエロ同人作家であるマルガ・ナルゼ大先生のあやかりの件でそこが問題になるということだ。
まぁ本人は成瀬正義ではなく、その弟の子である正成の方をあやかっているらしいのだが、その辺りに付け込まれる可能性もある。
義経を甘やかしながらナルゼの方を見る。
すると何故か彼女もこちらを見ており、
●画『なによ康景、アンタ心配してるの?』
そんなことを尋ねてきた。
なんだ急に、と思いつつも、正純が三方ヶ原の話題を出してきた時点で何についての心配かはわかりきっている。
成瀬正義の件は武蔵においての悩みどころでもあるし、ナルゼのことも心配といえば心配なのだが、ただそこで素直に心配していると思われるのもなんだか癪だ。
だがここで「心配なんてしてねえし」と言うと、「ナイスツンデレね!同人誌にするわ」みたいな流れがお決まりのパターンなので面倒くさかったりする。
「心配しているの?」→肯定→なんか癪
「心配しているの?」→否定→同人誌ネタ
どっちも個人的に嫌な流れだった。
会議後にナルゼを苛めたり虐めたりする手間を考え、どちらの反応が楽かを考慮した結果、
うん、面倒臭ぇや( ^ω^)
康景は考えることを放棄した。
だから、
弟子男『ああ、心配に決まってるだろう!』
適当に相槌を打った。
もし何かナルゼが変な事(同人誌無断作成など)を行えば、その時は公衆の面前で尻叩きの刑に処せばいいだけだ。
(※康景はその尻叩きの刑がナルゼにとっての御褒美だということを知らない)
●画『お、おおう・・・』
弟子男『あんだよ?お前から聞いてきたんだろうが、なんだその反応』
●画『いや、その、だって・・・』
なんだかナルゼの反応がおかしい。
思った反応と違う。
これはどう返してやろうかと迷っていると、
あ。
しまった。皿から唐揚げを落としてしまった。
流石に膝の上に義経を乗せつつ、左手で唐揚げを、右手で表示枠を操作するのは無理があったか。
唐揚げが床に落ちてしまったが、三秒ルールという言葉がある。
だから三秒、三秒以内で・・・!
だがそれでナルゼへの返信を遅らせてはいけないと思ったので、とりあえず唐揚げを拾い上げる作業と同時に感覚で打った。
弟子男『お前が居なくなったら寂しいからな。俺もそうならないように全力を尽くすが、もし歴史再現なんかで俺の前からいなくなったりしたらぶっ飛ばすぞ』
適当に送ったが、なんて書いたのか自分でもよく解らなかった。
自分では"お前がいなくなるなんて選択肢は武蔵は取らない"という、武蔵の基本方針で、当たり前の言葉を送ったつもりだった。
康景は落ちた唐揚げを箸でつまみ上げ、食べる。
はたしてナルゼはどう言った反応を示すのか。
彼女の方を見た。
・・・ん?
なんか顔を真っ赤にしてプルプルしてるが、大丈夫だろうか。
*********
お、おおお、おおおおううう!?
ナルゼは思わぬ反応にあたふたしていた。
いつもなら「私のこと心配してるの?」→「は?してねぇし」→「いいツンデレね、同人誌にするわ!」みたいな流れのはずだったのに、ストレートに返してきた。
しかも自分が居なくなったら寂しいとか、居なくなったらぶっ飛ばすぞとか、私得過ぎる。
いつもの流れではないが、これはこれで同人誌にしよう。そうしよう。
えへ、えへへへへ・・・///
「「・・・」」
「・・・Σ(゚Д゚)」
冷たい視線を浴び、ナルゼは顔を真っ赤にしてニヤニヤしている自分が居ることに気づき、咳払いして誤魔化す。
とりあえず、今は話が三方ヶ原で死ぬ成瀬正義の話になり、皆の視線がこちらに向いたので、自分からも何か言わねばなるまい。
「・・・別に私の"ナルゼ"が成瀬正義の"成瀬"だということではないわ。死ぬ人間の襲名やあやかりを得るつもりなんてなかったし・・・私のは次代である成瀬正成の方のつもりなんだけど」
「まぁそうでしょうな・・・」
佐藤兄弟の・・・兄?弟?面倒くさいから右の方がそう言った。
成瀬正成の父、成瀬正一は武田家に仕えていたこともあるため、当然佐藤兄弟も知っているだろう。
「成瀬正成としての私が居ることで、武田家に大事があった場合、"成瀬正一がいた"っていうことで受け皿に出来るものね」
兄弟は無言で頷いた。
「まぁ正直なところ、私はそこまで考えてはいないわ。マルゴット・・・ナイトも親の代までは"内藤家"のあやかりも考えてたらしいけど、私とマルゴットの間では、松平鉄砲隊が初期に構えていた土地である"内藤新宿"のあやかりってことにしてるし」
「内藤家では駄目なのか?」
「内藤家で鉄砲隊を預かっていたのは関東奉行の内藤清成って人なんだけど、"キヨナリ"の名前はウルキアガがあやかってるでしょう?」
「ああ、ウルキアガの"キヨナリ"は関東奉行の内藤清成か・・・ん?どうしてそこで関東奉行が姉属性専門のエロゲマイスターになるんだ?」
「知らないわ・・・正純、狂人のことを気にしては駄目よ」
正純がとんでもないものを見るような目でこちらを見たが、多分気のせいだろう。
正純の視線を無視して話を続ける。
「内藤つながりだとカブりになるから、マルゴットは鉄砲訓練地のあった"内藤新宿"をあやかることにしたわけ・・・私もマルゴットも極東側に対しては意識が薄いから、その程度でいいかって考えてたわ」
「内藤家の姓を持つものは武田家にも多くおりますし、成瀬の家名を頼って武田の者が合流するならばその姓をあやかるのもいいかもしれませぬな」
「いいのよ―――私が康景の愛人になってしまえば私の性は満たされるわ」
「「・・・えっ?」」
先程の
いけないいけない、姓と性違いだ。
「ごほん、間違えた・・・マルゴットが私の嫁になれば姓に関する問題はそれで解決ね」
全員がこちらを見た。
**************
正純は皆がナルゼを不思議なものを見るような目で見ている間、ほんとにこいつブレないなぁと思いながら情報を整理する。
そこでふと、気づいたことがある。
気づいたというか、疑問に思ったことだ。
佐藤兄弟の言に、違和感を感じるが、極力彼らの方は見ないようにして、ネシンバラに言葉を送る。
副会長『なぁ、自然に会議が進んで今更になって気づいたんだが、いいか?』
未熟者『なんだい?』
副会長『どうして佐藤兄弟はこちらを気遣う?ナルゼのことに対してもそうだった』
未熟者『つまり・・・?』
何が言いたいか、その辺はやはりちゃんと説明した方がいいと思い、説明するための時間を確保するため、
「少々いいだろうか・・・?」
右の掌を周囲の皆に向け、
「考えタァ~イム」
世界が、凍り付いた。
**********
正純は静寂の中に居た。
背後の酒飲み勢は静まり返り、膝の上に義経を乗せた康景は、
「くっ・・・
と、本気で寒そうにしながら膝の上に居る義経を抱きしめて暖をとっていた。
お前そこまでするか普通?と言いたくなったが、なんだか他も寒そうにしていたので、本気で寒いんだろう。
多分気温のせいかな?
北条氏直は咳払いし、里見義頼は理解しておらず、佐藤兄弟は引きつった笑顔を浮かべている。
この空気をどうしたものかと考えていると、
弟子男『正純、人ので滑るのは駄目だろう』
俺『あっちゃー・・・やっちまったな』
副会長『わ、私だけじゃなくて二代だってよくやってるだろう!?康景だってたまに真似してるじゃないか!』
弟子男『俺はちゃんと二代の声から動作、一挙手一投足に至るまで隅々まで観察し、時には女装だってする勢いで真似するんだ・・・お前のと一緒にするな!』
蜻蛉切『拙者のことをそこまで見てくださっているとは・・・感激で御座るな』
金マル『大体やっすんのって笑いを取るというよりは職人芸として周囲を驚かせるウケだもんねぇ』
確かに康景のは「お前の声帯どうなってんの?」と言いたくなるくらい似ている。
それこそ本格的に変装でもしたら解らなくなるくらいに。
だがそれでいて歌は下手という、よく解らない
あさま『や、やめましょう皆!正純のギャグセンスがいくら駄目でも本気でウケを取りに行きたいときはこういう無理だってするんです!でも結果として駄目だったので駄目ですけど!』
約全員『お前何言いたいのかよくわかんねよ!』
なんでこういう時に限って自分がアウェーなのか、そこが解らない。
副会長『と、とにかくネシンバラ、さっきの佐藤兄弟の会話で気になったのだが・・・』
未熟者『あー・・・うん、そうだね、そだね』
なんでお前もやる気なくなってるんだ。
副会長『先ほど清武田副会長である佐藤兄弟は、武田が滅びた後松平と合流するのに縁のあるナルゼの存在を気遣った。つまり、三方ヶ原での戦死者を出させないつもりだ』
ウキ―『こちらとしては好都合ではないか』
副会長『ああ、それはそれで好都合なのだが、よく考えてみてくれ』
それは、
副会長『清も武田も義経が治めているのだから、武田滅亡後は清に吸収されればいいだけだ。なのに、何故松平と合流しなければならない?』
***********
「ああ、そう言われると確かに疑問に思いますね。アデーレ、わかりますか?」
アデーレは酒粕アイスを貪り食っていたので、正面の浅間に不意に問われて肩を震わせた。
「そ、そういうのは自分より書記に聞いた方が・・・」
と皆でネシンバラの方を見た。
彼は、
「ウホッ!ミチザネ、ほら、あそこに"八房"あるだろう?あれ、あれを撮って・・・あ、くそ!ミチザネはあんまり画像能力に特化してなかった!くっ、なんとしても"八房"の資料を・・・!」
テラス縁に陣取って、"八房"のある方を見て駄目になっていた。
駄目だありゃ、と皆が呟いているが、自分も同じ気持ちだった。
とにかく、正純からの疑問については確かに考える余地がある。
確かに、清武田には松平と合流するような意味はない。
ならば合流する理由として考えられるのは恩を着せに来ているなども考えられるが、何かが根本的に違う気がする。
そもそもこちらとギブ&テイクをする必要のない相手がこちらとそれをする理由。
皆もそれぞれ考えている様子で、浅間なんて腕を組む動作で胸が持ち上げられ変形している。
なんて凶悪なものを・・・!
驚いているだけで、決して悔しくはない。
そう悔しくはない。
浅間との胸囲格差に絶望しつつ、アデーレはふと思った。
あ。
「わ、解りました!」
*********
浅間は目の前でアデーレが飛び上がったのを見た。
アデーレも大概ですねぇ・・・。
彼女はあたふたしながら、
「わかりましたよ!浅間さんの巨乳を見て閃きました!」
何を言っているでしょうか・・・!?
本気で大丈夫だろうか。
そんな心配をしていると、彼女は巨乳を表現するゼスチャーをしながら、
「向こうがギブ&テイクをする必要がないのは、向こうが富める者だからです!」
「ど、どうしてそこで私の胸を見ながら言うんですか・・・!?」
「そんなこと今はいいんです!」
そんなこと!?
「つまり、向こうはいくらギブしても問題ないほどの富める国なんですから、向こうからすれば"
アデーレが言いたいことは何となくわかった。
今まで自分たちは"ギブ&テイクをする必要がないのにどうしてするんだろう"という疑問から入っていたために、この発想に至らなかったのだろう。
そして最後にアデーレが締めに、
「これは胸国の余裕だったんです!」
約全員『審議中(´・ω(´・ω・)(・ω・`)ω・`)』
「え?審議中!?なんでですか!?」
*******
正純は浅間経由で入ってきたアデーレの言葉を聞いて、なるほどと納得した。
副会長『私もまだまだ発想のスケールが小さいということか・・・』
俺『おいおいセージュン、自分の胸が小さいからって嘆くなよ』
弟子男『そうだぞ正純、俺は胸より尻が好きだとあれほど・・・』
副会長『お前の好みとか今聞いてないぞ?』
それが胸のない自分の唯一の救いではあるのだが。
俺『ヤス的には誰の尻が一番なの?』
弟子男『実は・・・エロさで言うならダントツで智なんだ』
あさま『ちょっ、な、なに言ってるんですか!?撃ちますよ!?』
俺『浅間はやっぱりエロいもんなぁ』
あさま『と、というか康景君本当に大丈夫ですか?酔っ払い過ぎでは?』
弟子男『何を言う。俺はこの深淵なる問いに対して真摯に答えているだけだ』
深淵なる問いが尻ってなんだ?
●画『エロさの判断で浅間を推すのは解るわ。私も同人誌描く時、浅間の尻と胸が一番描きやすいもの』
弟子男『だがな、形で判断するなら直政なんだ』
〇べ屋『あ、マサが赤面してる。写真撮らなきゃ!』
貧従士『なんだか康景さんが総長クラスにひどくなったと思うのは自分だけでしょうか?』
金マル『やっすんが素面の時にこのスレ見せたらどんな反応するのか気になるなぁw』
弟子男『しかし、一番揉み応えがあるのは先生なんだ。ここは譲れない』
約全員『・・・えっ?』
それは爆弾発言過ぎるぞ康景。
というか本当にお前先生好きだな。
なんだか先生と康景の間に実は肉体関係があったとしても多分驚かないと思う。
弟子男『だが結論から言わせてもらえば、贔屓とかそういうの抜きにしても一番好きな尻は喜美だな』
賢姉様『ドヤァ』
銀狼『くっ・・・やはり喜美には勝てませんの・・・!?』
弟子男『喜美の尻のポイントは総合力だ。すべてのステータスが高い喜美は、やはり主観、客観的に見ても一番だろう』
〇べ屋『
あさま『穢れが多いこと書くと強制退出されるはずなんですが・・・なんで適用されないんでしょうか』
いい感じに康景が暴走し始めたが、自分には尻に関しても救いはなかった。
というか康景酔いが酷くなってないか?
絶対酔いが醒めてこれを見返した時、赤面すると思う。
とりあえず会議に戻ろう。
交渉をするつもりでいたが、果たしてこれは交渉と言えるのだろうか。
何しろ向こうは、こちらが要求すれば要求するほど与えるつもりだ。
王者の余裕。
この会議の流れそのものが、武蔵の死亡者の歴史再現をこちらの都合の良いように考慮しようとしている。
流れ的に問題はないし好都合なのだが、どうも裏を感じてしまう。
副会長という立場の自分は、もっと慎重であったほうがいいと、そう思う。
だから、
「仮定の話をしてもいいだろうか?」
本来であれば、この仮定などありえないのだが、
「いいですとも」
向こうは仮定の話も良しとしてきた。
何もかも許すつもりだ。
「・・・聖連から横槍が来たら、どうする?」
「聖連が
何かを言おうとしたこちらに対し、佐藤兄弟の右の方が続ける。
「富士山を天然要害とし、西の天山回廊、南のサガルマータ回廊から迫れる船など、武蔵を除けばほとんどありませんぞ」
「北は?上越露西亜の存在があるぞ?」
「上越露西亜は土地柄、冬の間は動けず、ルートも山岳地帯を通ると解っており、清武田に迫れるルートは決まっております故、そこを必要な時だけ防げばいいだけのこと」
つまり、
「我々清武田は、聖連所属でありながら余計な干渉は受けず、しかしながら有利に動け、不利な部分は無視できる」
だから、
「我々は王者であり、自由なのです」
*******
自由で縛られない王、か。
聞こえはいいが、そもそも欧州の聖連諸国と清武田の間にはP.A.Оdaが存在する。
だから欧州の聖連諸国は迂闊に清武田には手を出せない。
それを除いても清武田が強国で大国であることに変わりはないのだが、今の発言をさせたのは自分だ。
これが公式の、"生中継"での会議であったなら、自分は清武田のアピールに手を貸したことになる。
・・・注意しなければ。
正純は気を付けようと思い、こちらも弱気な態度を見せないように剛毅な態度で出た。
「では佐藤兄弟・・・聞きたいことがある」
質問を流れに任せて行う。
向こうは、
「どうぞ」
と兄弟揃って頷いた。
だから正純は、こっそりツキノワに口述筆記を指運で指示し、問うた。
副会長『松平対武田戦、松平が窮地に陥る三方ヶ原の戦い・・・それを談合によって無事に済ますことは可能だろうか?』
いい感じに酔ってきた人が居ますね。
こういう人は大体、後々になって、
「お前、飲み会の時酷かったぜw」
と言われて一人赤面してるのが想像できますね。
黒歴史?