境界線上の死神   作:オウル

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ゴールデンウィーク・・・連休・・・うっ、頭が・・・


十話 前編

武蔵と英国

 

二国間の行く末は

 

戦争か平和か

 

配点(会議)

――――――――――――――――

 

オクスフォード教導院の広間では宴が行われていた

元々色んな意味でレベルの高かった女性陣がさらに着飾ることで、英国生徒の関心を引いた

中でも先頭を歩く青いドレスを着た存在に英国男子の視線が集中している

 

「長い黒髪に貧乳・・・あれが武蔵の副会長」

「お前らに黙ってたけど、実は俺、貧乳派だったんだ」

「何だよ、お前らも貧乳派かよ・・・解ってるじゃねえか」

 

英国貧乳派男子がその青いドレスを着た正純?に近寄り、英国紳士風に手の甲にキスする

既に会場中の注目を集めているが、肝心の武蔵女性陣はと言うと

 

「正純?あちらの御仁は?」

「いや、私に聞かれても・・・誰か解るか?」

 

二代と正純に関しては解っていない様だが、付き合いが長い連中が見れば

 

「あれってもしかして・・・」

「もしかしてですよね?」

「トー、リ、くん?」

 

武蔵内外でも人気の高い鈴の一言で、周囲が固まる

 

「「え」」

 

信じられないものでも見るかのように一斉に武蔵女性陣に振り返る英国男性陣

だが僅かに残った希望さえ、あざ笑う者がいた(笑)

 

「見て康景、愚弟も化粧したらあんなに映えるのよ?私凄くない?」

「すげえ、普通に女に見える・・・お前ら姉弟は才能の塊だよ」

「おいおいそんな褒めんなよ相棒ぅ~、照れるじゃねぇか・・・ってヤス!?」

 

康景だ

彼は喜美に手を引かれるようにして会場に入ってきた

喜美が一瞬で女装のネタバラシをし、トーリもあっさりかつらを脱ぎ捨て康景に駆け寄る

相手がトーリだと解った瞬間、英国紳士(笑)たちは膝をついて吐いたが、誰も気にしない

 

「おいヤス!お前大丈夫かよ!?お前いくら女の尻好きだからって油断すんなよ!」

「今回は別に尻じゃねーよ馬鹿」

「じゃあなんで怪我する様な事態に陥ってるんだよ馬鹿!」

「それは後で皆に話す馬鹿」

「やっぱ尻じゃねぇか!人前で話せないってことはそういう事なんだろこのドスケベ!」

「・・・三枚に下すぞ?馬鹿」

「あひぃ!やめてよぉ!」

 

馬鹿なやり取りをやってる間に、康景が武蔵連中に近寄る

皆の反応は様々で、ある者は怒り、ある者は泣きそうになっていた

 

「康景・・・」

「おう」

「いや、『おう』じゃないだろ・・・重傷じゃないか、寝てなくて平気のか?」

「おう」

「いやだから・・・」

「おう」

「・・・」

「おう」

「何も言ってないぞ!?」

 

正純の問いかけにまともに応じないのは、このやり取りが前話からやっているので後でまとめて話そうと思っているからである

決してないがしろにしているわけではない

 

「俺に何があったかは会議の後で話すよ、今は目の前の事に集中、OK?」

「・・・いや、でも、えぇ・・・」

 

正純を含め多くが納得はしていなかった

だが康景のいう事も正しいと言えば正しいので、一同は深く追求することをしなかった

だが不意に浅間が

 

「あれ?そう言えばミトを見ませんでしたか?喜美を呼びに行ったはずなんですが」

「・・・いや?見てないな・・・喜美は見たか?」

「・・・見てないわ」

「そうですか・・・鼻の利くミトが迷子になるとは考え辛いんですが・・・」

 

ミトツダイラが行方不明だった

常人より鼻の良いミトツダイラが喜美と康景の匂いを追えないはずがない

 

・・・何かあったんでしょうか?

 

だがその時

 

「あ・・・」

「ミト?どうしたんですか?何かあったんですか?」

 

ミトツダイラが遅れて入ってきた

 

「智・・・いえ、少し気分がすぐれなかったので・・・」

 

明らかに顔色が悪い

 

「また康景君関連ですか?」

「ちょっと待て智、なんで俺関連?またって何?」

「あ、いや、その、違いますわ・・・ホントに大丈夫ですので・・・」

「ちょっと康景君・・・日頃から言ってるじゃないですか、女の子扱いには気を付けてくださいって」

「俺?俺が悪いのこれ?俺身に覚えが無いんだが・・・おいなんだお前らその顔・・・って、あ、そう言えば」

 

康景に非難の目が集中する

直接的には何もしてないが、間接的にやってしまっている事を康景は知らなかった

だが康景には思い当たる節があり

 

「そうか、俺、お前に一番ひどい事してたんだな・・・」

「むぎゅ!?」

 

康景はネイトの頭を撫でて、そのまま抱き寄せた

 

「お前は昔から俺の身を案じてくれてたのに、お前には何も返せていなかった・・・ごめんな」

「ふがふっがが!」

「何というか、本当にごめんな?お前っていう最高の友達に俺は甘えてたんだな」

「(友達・・・)」

 

康景が抱き寄せたミトツダイラが沈黙した

それを見かねた浅間が

 

「や、康景君?もうそろそろ放してあげないとミトが窒息で死にます(あと羞恥で)」

「え?あ、悪い」

「///」

「ミトっつぁんが死んだ!」

「この人でなし!」

 

ミトツダイラが撃沈した

馬鹿が馬鹿な事をやらかしてる間に、もう一人会場に入ってくる

 

豪華絢爛な金の衣装を身に纏った女性

前に突き出すブレード型の王冠

金で織られた英国の女性用制服

 

妖精女王エリザベスだ

 

彼女は静かな身のこなしで侍女を携え、入ってくる

威厳に満ちたその表情はまさしく女王のそれに違いない

だがそんなエリザベスも会場に居る康景の存在に気付くと、驚いた表情を隠さず

 

「顔が抉れる重傷でもう動けるのか貴方は・・・」

 

呆れたように、だけど安心するように小さく笑った

 

******

 

「さて、そろそろ会議を始めようか・・・武蔵の総長兼生徒会長は何処だ?」

 

エリザベスが問いかける武蔵勢は、全員が顔を見合わせる

そしてしばらく話し合った後、皆がトーリを見た

 

「む、武蔵の総長兼生徒会長は・・・その、なんというか・・・」

「いいよエリザベス、コイツは変態だ・・・真性のな」

「そ、そうか」

 

康景に言われ、納得するエリザベス

"それでいいのか妖精女王"と皆が見るが、エリザベスは全く気にしない

 

正純は康景のエリザベスへの対応を見て、『ため口で話し合えるような関係』なんだなぁと思った

その辺りは後で話してくれるらしいのだが、どんな関係なんだろうか

とりあえず今は英国との会議に集中すべきだ

 

「―――改めてご挨拶を。武蔵アリアダスト教導院代表、本多正純と申します」

 

両サイドにそれぞれ英国の"女王の盾符"、武蔵の役職者が並ぶ

両陣営に欠員が見られる

英国陣営にはドレイク達船舶部がいない

対するこちらも点蔵やナルゼ、ネシンバラがいないが、欠員補充として浅間や康景がいるが・・・

 

「これより武蔵・英国間の会議を執り行おう・・・だがその前に、こちらの本来の書記が不在のため、浅間神社の代表に代行させたいのだが・・・よろしいだろうか」

「・・・Tes」

 

エリザベスの了承に、浅間が一礼する

 

あさま『これ結構気疲れしますね』

弟子男『気にすんな、こっちの書記が使い物にならないのは向こうの責任もあるんだから、とやかく言われる義理はねぇよ』

○べ屋『・・・でも何でヤス君この会議出席したの?』

弟子男『俺一人英国と関係ないところで負傷したからな、関係ないところで一人負傷して一人寝ている間に全部終わってましたってのも寂しいじゃんよ』

約全員『・・・寂しがり屋w』

弟子男『黙れ馬鹿共』

 

意外な康景の本音に、一同が微笑む

エリザベスも康景の方を見るが、彼女もまた呆れたように笑い

 

「貴方もつくづく強情だな・・・」

 

正純を見た

 

「会議を始める前にこちらからも一つ聞きたいことがある」

「jud・・・何でしょうか?」

「天野康景は不法入国者の襲撃に合い、負傷した。それはこちらの不手際だ・・・それゆえにこちらが責任を持って治療した。だがその傷の深さ故に完治はしていないはずだ。何故この場にいる?」

「それは・・・」

「それは自分から申し出たのですよ、女王陛下」

 

正純が答えるよりも先に、康景が一歩前に出てエリザベスに頭を下げる

 

「"正体不明"の襲撃者によって負傷したこの身を、英国のご厚意と温情によって治療していただいたこと、大変感謝しております。しかし、まことに勝手ながら、自分はこの英国と武蔵の行く末を決める会議がどうしても気がかりでこの場に馳せ参じてしまいました・・・」

 

康景は敵であれば目上だろうが何だろうが敵対心剥き出しで喧嘩腰になることが多い

しかし、逆を言えば世話になった人や関係の深い人たちにはちゃんと敬語を使う

先程までため口を利いていたが、今こうやって敬語を話してるという事は、康景にとっての英国は

 

・・・少なくとも敵対したいという意図はないのか

 

正純はそう思った

康景は続ける

 

「自分にとって武蔵は自分の全てであります陛下。しかし、英国もまた、自分の虚ろな幼少期を過ごした言わば"もう一つの故郷"、二つの私の居場所の行く末が、この会議で決まるというのであればいてもたってもいられませんでした。温情ある陛下のご厚意を蹴ってまでこの場に参じたことを咎められるのであれば、この場からすぐにでも消えましょう」

 

康景がそこまで言うとは、意外だった

そこまで言わしめる何かが、この英国にはあるのだろう

康景の言葉に、エリザベスは頬を赤らめ、潤んだ瞳で言う

 

「・・・英国をそこまで言ってくれる貴方を邪険には出来ないさ・・・すまなかった、では会議を始めよう」

 

正純は何となく察した

この人もまた、康景が大事なのだと

トーリが康景を思うように、喜美が康景を思うように、ミトツダイラが康景を思うように、自分が康景を思うように

 

それらと何も変わらないのだろうな・・・

 

「ではまずどちらから要求を?」

「・・・どちらからでも大差ないだろう、どの道この会議の終着点は"武蔵の出港"に関わるのだから」 

 

******

 

武蔵の出港

やはり一番の問題点はそこだ

何せ英国にとっても武蔵の常駐は利益につながる

大罪武装を回収して末世を解決していくのが武蔵の目的であるため、以前の様に平行線の潰し合いになるかもしれない

そう思ったが

 

「英国は対論による潰し合いを求めているわけではない。今後英国に必要なのは利益―――出来る事なら相互に等価交換をしたい」

 

エリザベスは真正面からきた

何も隠さず、正面から

だが、何も隠さないという事は却って厄介でもある

何せちょっとした言い違いですぐさま開戦の狼煙が上がってしまう

味方の反応と言えば

 

貧従士『これって話がまとまらなくなったらヤバくないですか?』

弟子男『大丈夫大丈夫、俺たちには正純がいるんだぜ?戦争回避なんて余裕だろ?』

ウキ―『康景の期待がたまにイジメに思えてくるのは拙僧だけだろうか』

 

いや、イジメだよ

三河の時といい、今回といい、康景の自分への期待が少々過ぎる気もする

 

嬉しいんだけど・・・なんだかなぁ

 

やり辛さと嬉しさと気恥ずかしさが交錯してよくわからない感情になっているが、ひとまず会議を進める

 

「陛下、我々が英国に常駐することで大罪武装を回収することが出来なくなってしまいますが、それに対する等価とは何でありますか」

 

それに対しエリザベスはTes.と頷き

 

「まず言っておくが、考えてもみよ。大罪武装は国家にとって重要な戦力だ。今、英国は三征西班牙とのアルマダ海戦を控えている状況で、三征西班牙は未だに大罪武装を有しているのだぞ?もし今武蔵が出港し英国の大罪武装を持っていくのであれば、英国には不利益しか生じない」

 

さらに

 

「次に行く国は六護式仏蘭西かM.H.R.R.だと思うが、両国もまた、三十年戦争という大戦を控えている。どちらの国に先に行くかによって三十年戦争の行く末は大きく左右されるだろう・・・各国の軍事力バランスに影響を及ぼす武蔵を止めるのは各国の共通利益だと思うが」

 

○べ屋『腹立つわ~』

弟子男『いや、一応正論だろ、英国からすれば』

俺  『お前どっちの味方だよ!』

弟子男『お前らの味方だよ!』

金マル『でもやっすん、さっきの妖精女王への対応から見るにすでにフラグ立ててるよね?攻略済み?』

約全員『な、なんだってー!?』

弟子男『お前ら本当に仲いいよな、そのノリ嫌いじゃないけど腹立つわ本当』

 

何やってるんだお前ら・・・

表示枠の向こうで馬鹿たちが騒いでいるが、無視した

正純はとりあえず様子を見る

 

「どうやら英国の言う利益と、武蔵の利益が噛み合っていないようですね。極東が提示する利益は未来の危機回避のための物です。我々は現状あらゆる困難を辞さない、未来危機回避という各国の共通利益の事も考えていただきたいものですが」

 

金マル『セージュンノリノリだねぇ!あ、ガっちゃんの後輩からファンメールが・・・"今度正純先輩の今の衣装を参考に同人誌化するので後ろ向いてください"だって』

あさま『副会長:おい馬鹿やめろ』

弟子男『智?』

あさま『違いますよ?正純に表示枠一部貸してるんです』

金マル『あ、またメール。"今のヤス先輩の中二病状態とセットで描きたいのでぜひお願いします"・・・だって』

あさま『副会長:え、康景と一緒?本当か?どうしようかな・・・』

弟子男『お前は会議に集中しろよ・・・あとその後輩の名前と住所教えろ。直接話し合う必要があるようだ』

あさま『ですから、皆さん会議に集中しましょう?康景君もですよホントに・・・』

 

でも康景×正純なんて結構レアじゃないだろうか・・・

 

そんなことを考えてしまったが、正純はまだ知らない

「ナルゼの後輩=ナルゼと同じ作風=BL作品のネタにされる」という恐怖の等式が存在することに

 

「だが武蔵よ、お前たちが各国に移動して大罪武装を集めなくとも、歴史再現に身を任せておけばいずれヴェストファーレン会議は行われるのだ・・・その場に各国が大罪武装を持ち寄ればいいだけではないか?その方が断然効率的だし、そちらの被害も少なくて済むだろう。それに・・・」

 

康景の方を見るエリザベス

ただその向けた視線は一瞬で、すぐに視線を落とし

 

「いや、今これを言うのは貴方に失礼か・・・とにかく、その方が断然良いと思われるが、その辺り武蔵としてはどうなのだ?」

 

*****

 

〇べ屋『はい出ました。正論出ました~。この発言について解説のヤスさんどう思われますか?』

弟子男『そうですね~全くの正論ですね。確かにその通りだと思いますよ・・・ただ末世解決という名目だけなら』

○べ屋『と言うと?』

弟子男『エリザベスの発言は、全くその通りです。ですが"大罪武装の回収"には他に大きな意味があります』

○べ屋『意味・・・ですか』

弟子男『今回英国デートでウチの総長・・・もとい全裸が決めた事を思い返してください』

約全員『あ』

俺  『いや、ヤス!お前なんで総長を全裸に言い直した?そこが問題だろ!』

 

皆がジト目でトーリを見た為、テンションの高いトーリもさすがに黙った

 

弟子男『大体、元々がホライゾンの感情なのに他国がそれを我が物顔で使ってること自体反吐が出ますね』

 

確かに康景の言う通りだ

今回、馬鹿が馬鹿なりに決めた武蔵の方針がある

ならばその馬鹿と、一人でやらかす馬鹿に指示されている自分がそれを受け入れないでどうする

だから正純は

 

「大罪武装の回収は、末世解決という武蔵の目標でもあります。ですが、それ以前に大罪武装の回収は君主としてのホライゾン・アリアダストの存在を、完全なものにすることなのです―――それ故に会議の場に大罪武装をもちよればいいなどと、そのような事は武蔵には選べません」

 

つまり

 

「すべては武蔵が、末世を解決し、主権を持って他国と対等な立場に就くことが、我々にとってのヴェストファーレンなのです」

 

そう言った

エリザベスはその問に数秒間を置く

そして開かれた口から発せられたのは

 

「―――それはつまり、新たに神州を支配し直すのか?百六十年前の重奏統合騒乱を否定して?」

 

*****

 

〇べ屋『おっと~?今のエリザベス選手の発言にはさすがの私もイラッとしましたが、ヤスさんはどう思われますか?』

弟子男『そうですねぇ~、百年以上も前の責任なんてクソ食らえだと私は思っていますが、今のリザの発言は大変大きな意味があります』

約全員『リザ!?』

煙草女『今さらだけどお前の交友関係の幅広すぎだろ・・・』

弟子男『"リザ"に関しては単にエリザベスって言うのが面倒だっただけですはい』

 

特に他意はない

 

弟子男『リザの発言はもはや武蔵・英国間の問題にとどまりません』

 

それが何を意味するのか

 

弟子男『神州の支配を武蔵が行うという事は、神州の歴史としては正しいものです。しかし、今それを行えば、外界に進出する準備が出来ていない各国には大打撃でしょう』

煙草女『正純も思い切りが良くなったな』

 

確かに他国には痛い事実が生じるのは間違いない

だがそれでも、武蔵は進まなければならない

 

「jud・・・もはや極東は暫定支配を解除する事も辞さない」

 

何故なら

 

「私達の王が既に決めているからです・・・誰が一番強いのかやってみよう、と」

 

○べ屋『攻めてきましたね』

弟子男『こういう攻めの姿勢が重要ですね。今頃これを外部通神で見ている諸外国のお偉方も大慌てでしょうよ(爆)』

煙草女『文字では(爆)って言ってるけど顔が笑ってないなぞ』

弟子男『冗談はさておき、武蔵は戦争に関しては素人です。無茶をすれば戦争馴れした他国に付け入られる余地が生まれる。ならば次の一手は』

 

「武蔵は大罪武装回収を終えるまで開戦権は封印する」

 

*******

 

弟子男『つまり大罪武装はホライゾンの物だから返さないと主権侵害で戦争だ馬鹿野郎ってことだな』

〇べ屋『なるほど戦争ですね解ります・・・あとヤス君、解説役』

弟子男『ああ・・・そうだった、そういう事ですね』

煙草女『あくまで解説役の体は守るんだな・・・』

金マル『やっすんって変なところで律儀だよね』

 

実際の所は解釈の話になるが、そう言った解釈を匂わせることで『武蔵』という存在を警戒させ、動きを封じる意味もある

相手はいったいこの動きにどう出るか

正純は仕掛けた

 

「武蔵は英国に、聖連との仲介役を担ってもらいたいと思っています・・・武蔵には大罪武装非所有国に対して同盟と不可侵条約を結ぶ準備があります」

 

銀狼『武蔵自らが傾いた戦力の穴を補填するという事ですのね』

○べ屋『あ、チョロインが復活した』

銀狼『チョロインじゃありませんのよ?』

金マル『ミトっつぁん・・・』

銀狼『なんですの?皆さんのその可哀想なモノを見るような目は』

約全員『・・・この救われないチョロインに救いの手を』

銀狼『泣きますわよ!?そろそろ本気で泣きますのよ!?』

弟子男『お前らその辺にしとけよ。ネイトが可哀想だろ、可愛いのに』

ウキー『事の発端はお前の様な気もするが』

貧従士『本人に自覚が無いのが一番質悪いですよね』

俺『まぁその辺ヤスだから、しゃーねぇ』

約全員『jud.』

あさま『副会長:お前ら・・・』

 

国の行く末を決める会議で何やってんだこいつら・・・

これはこれでいつものノリなので気が楽と言えば楽だが

 

「武蔵は極東国家の一部として君主ホライゾン・アリアダストの感情を回収、その際に起こるであろう歴史再現の遅延を補います・・・その同盟国の初めの国として、英国を選びたいのですが」

 

その言葉を発し、正純は相手の言葉を待った

 

「―――断る」

 

********

 

エリザベスは武蔵との同盟に関して様子を見た

確かに、この同盟には魅力もあるし、英国にも利益が出る

しかし

 

薬詩人『この同盟には何の保証もありませんね』

印鑑子『面白そうだけどね~』

 

何の保証もないのでは博打と同じだ

ここは安易に肯定は出来ない

 

「武蔵は移動都市であり、この極東の空を自由に行き来することが出来、強力なステルスシステムも有している。そのような国を野放しにしていてはそれこそ各国には脅威だろう。しかもその上で他国を極東から追い出そうとするのなら、貴様らはラスボス側になるぞ?」

 

だから

 

「もし貴様らが主権云々で動き出すのならば、英国もそれに則って動くまで・・・」

 

この先は言いたくない

 

「ならば英国は、武蔵に対して総攻撃を開始し・・・」

 

言わせるな

 

「この場において武蔵総長連合及び生徒会を・・・」

 

あの人がいるのに

 

「殲滅する。構えろ諸兄ら」

 

康景と戦いたくない

 

*******

 

構えろという言葉に、武蔵の向かいに構える"女王の盾符"や大広間の後方に待機している英国生徒も身構える

それに対し武蔵の一同も身構えるが康景は一人身構えもせず

 

「リザ、差し出がましいようだが、今英国には航空戦力は無い・・・そうだろ?」

「ああああああ貴方!陛下に対してなんて口の利き方を!」

「なぜなら主力のドレイク卿たちがこの場にいないのなら、アルマダに向けて哨戒にでも出てるんだろう。ならば武蔵を止めるための戦力はオクスフォード教導院にいる生徒に限定される」

 

康景はただ事実だけを淡々と述べる

 

「陸上部隊を武蔵に乗り込ませようとしても無駄だ」

 

その言葉と共に、オクスフォード教導院が揺れた

 

「何をした・・・?」

「こんなこともあろうかと、武蔵を出港スタンバイ状態にしておいた」

「ななななななんて事を!?」

 

ダッドリーが叫ぶ中、今度は正純が告げる

 

「もし英国が同盟に応じないのであれば、武蔵は他国にも同様の同盟を結ぶ話を持ち掛けるだけだ」

 

******

 

エリザベスは康景を見ながら正純の話を聞いた

 

「・・・貴方はそちら側で戦う気なのか?」

「俺の居場所だからな」

「そうか・・・」

 

嫌だ

 

「ならば」

 

嫌だ

 

「私が誰なのか、解らない貴方ではあるまい」

 

駄目だ

 

「王賜剣二型がある。あれは防衛だけではなく、攻撃にも転用できるのだぞ?それに近隣各国に協力を要請し、三征西班牙には歴史再現の一時休止を申し出て武蔵を囲む」

 

私は

 

「そして英国中の陸上部隊をこのオクスフォードに配した」

 

貴方と敵対したくない

 

「囲んだぞ?この状況、どう出る?」

 

しかし

 

「陛下、阿蘭陀の航空艦隊を一つ買収いたしました」

 

私は・・・

 

*******

 

○べ屋『うわぁ~買収やってきましたよ』

銀狼『ウチの会計もよくやってるではありませんか、ナルゼの描いた康景の同人誌の横流しで』

○べ屋『うわうわ!思わぬところで襲撃食らったよ!さっきの仕返し!?仕返しなの!?』

弟子男『・・・今度投擲用ナイフ二百本とIZMO製の短刀、長刀、手斧、短槍をそれぞれ十本ずつ、あと鋼鉄のワイヤーに関しては今日中に用意しろ。それで聞かなかったことにしてやろう』

○ベ屋『うっわ!普段要求される量の倍近く来たよ!でもそれで許してくれるなら喜んで横流ししましょう!』

銀狼『そこで屈するんですのね・・・』

煙草女『いや、その前にそんな大量の武器何に使うんさね?』

弟子男『備えあれば憂いなしって言うだろ?』

 

皆がそういう問題なんですか?とツッコミたくなったが敢えてスルー

一連の英国の行動に、康景は内心舌打ちした

だが冷静に、顔色一つ変えない

そしてそれに対し、正純は

 

「・・・妖精女王、武蔵は英国との敵対を望んではいません」

「ほう?」

「英国も同様に、武蔵との敵対は望んではいないはずだ」

「―――他国への要請が冗談であれば他国に恥を晒すのだぞ?」

「他国に対しては本気、という事は、英国は武蔵の撃沈を他国に譲りたいのではないでしょうか、国力温存と・・・」

 

康景を見て

 

「その他色々な意味を含めて」

 

そう言った

 

*******

 

銀狼『今のは・・・?』

弟子男『そのままの意味だろう、英国は武蔵を攻撃する気は元々なかった、という事だ』

銀狼『いえ、そういう事ではなくて・・・』

賢姉様『なんで正純がアンタの方を見て言ったか、よ。この馬鹿』

弟子男『・・・今のを英国が言えば、自国温存の疑念を持たれることに繋がる。逆に武蔵が言えば"え?お前らそんな手柄欲しいの?うわ、女王の心狭すぎ・・・!"とか言って煽りながらも武蔵を攻撃しない大義名分という貸しを、リザにやった訳だ』

賢姉様『話を逸らしたわね』

銀狼『逸らしましたわね』

煙草女『逸らしたな』

貧従士『逸らしましたね』

浅間『逸らしましたよ』

金マル『スキャンダル?』

 

後で話すと言ったはずなのだが、何故に女性陣の食いつきが酷いのか

最後に至っては何だ、何がスキャンダルだ馬鹿野郎

 

自分が悪い事をした気がして居心地が悪かった

皆に黙ってたのは悪かったと思ってるけども

 

とにかく、今はそれは置いといて、康景は会議に集中した

 

「武蔵撃沈の功を他国に立てさせること以外に、英国には武蔵を攻撃できない理由があると私は踏んでいます」

 

出来ない理由、それは

 

「英国艦隊の大部分は未だ阿蘭陀の艦隊に所属したままなのではないでしょうか、そして現状、英国の主力艦隊も三征西班牙への偵察で出ている」

 

この場にドレイク達がいないのはそういう事だ

正純を見る

呼吸数、わずかな発汗から、気分が高揚してるのだろうな

 

「ならば陸上部隊に関しては?すでにこちらを囲んでいるぞ?」

「それは・・・」

「なら、聞くが、ここの正面防備は完璧か?リザ」

 

遠まわしに聞いてみた

 

********

 

エリザベスは思った

 

やはりこの人は英国の現状を理解している・・・

 

現在の英国の艦隊は三征西班牙との戦争に向け、哨戒中

殆どの陸上部隊の生徒もアルマダ海戦に向けて海岸に待機している

今このオクスフォード教導院を囲んでいる生徒も暗闇を利用して、松明を二つ持たせて実際より多く見せているだけだ

 

そしてこの会議の場に"女王の盾符"を武蔵総長連合・生徒会を対面に置いたのも、"もしも"の場合における生存率の高さを重視したもの

いくら『天野康景』という武蔵最大の戦力が戦士の命である目を負傷したとはいえ、その実力は計り知れない

故の布陣である

 

「それに・・・王賜剣二型は使えないはずだ」

「!」

「・・・一週間後のアルマダ海戦に向け、今ここで使えば調整に差し支える。だから、使えない」

「・・・」

 

面倒な事だ

やはりこの人は厄介な事この上ない

確かに、王賜剣二型はその不備があった場合、その方がずっと危険だ

エリザベスにとって康景は二重の意味で敵対したくない存在だった

 

一つは、英国の現状、自分とメアリの事に詳しいという点で

一つは、単に思い入れの強い人物だという点で

 

この人と武蔵副会長は厄介なコンビだ

本多正純という女も、気に障る事が多いが、こういう女はいずれその気に障る部分も頼りになる部分になる

エリザベスにとって面倒臭い相手である

 

理解して自国の最善を尽くそうとする

 

単に康景と戦いたくないという事も大きいが

 

・・・武蔵との貿易も魅力はある

 

「仮に、同盟を締結した場合、それに対する被害を受ける英国に対して見返りはあるのか?」

「英国を武蔵の貿易拠点とします」

 

それが意味する事

貿易システムは提携国が多い程その恩恵が薄れる

しかし、年に一回だけ来る武蔵が、その回数を数回、数十回と増やす事の意義は大きい

清算と備蓄の確保は、産業の力を伸ばすことも可能になる

何より

 

・・・貴方に会えることが嬉しい

 

そんなことを思ってしまった

だがエリザベスはすぐに現実に戻る

 

康景に会えても、その頃にはメアリが・・・

 

残酷な現実と、夢の様な提案がエリザベスの中で渦巻く

駄目だ

今は英国の長として、この場にいる

なら、今の自分はその責務を全うしなければならない

 

「外界への開拓が不可能な状態から生じた暫定支配、本来なら歴史再現に置いてそのような事態こそがイレギュラー・・・ならば本来の歴史が通じる、末世のその先にある正しい世界のために、武蔵と手を取り合ってはもらえないだろうか」

 

沈黙が、会場を包む

武蔵副会長が、差し伸べるその手を、エリザベスは見る

 

だが、その手を取る動きよりも先に、生じた動きがあった

 

「おいおい、ちょっと待ってくんねぇかなぁ、それ」

 

入ってきたその姿は、朱色の制服を着た男女

 

「三征西班牙、書記のベラスケスと、第三特務立花誾だ。外交官としてこの会議物言いつけるぜ」

 

長寿族の書記は、自分と、武蔵副会長を見た

だが立花誾だけは、天野康景の包帯姿に驚きを隠せないでいた

 

 




ミトツダイラ・・・貧乳・・・お義母様・・・ボインボイン・・・うっ、頭が・・・

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