私が無人、いや妖精さん5人しかいなかった鎮守府に住み始めてから1週間たった。
まあ私もこの体になってから1週間なんだけども。
「しざいのちょうたつよろしくなのです!」
「てきをみつけたらすいちゅうにもぐり!」
「てきのはいごにまわったら!」
「くびのほねをへしおるのです!」
「さーちあんどですとろいなのです!」
この子たちは何を言っているんだ。
「物騒なこと言わないの!…それじゃあ資材調達してくるね」
『いってらっしゃいなのです!!!』
そう。資材を調達しに行ってくるのだ。
私の家…平屋みたいなのだけど妖精さんたちが、
『もっとごうかにつくりたいのです!』
って言うもんだからね、それも1週間ぶっ通しでね。私は折れちゃったよ。
と言うことで今回が初めての資材調達です。
「あ、そうだ妖精さんたち」
「どうしたのです!」
「資材調達してくるのはいいんだけどどこあたりにあるの?」
肝心な資材のある場所が分からない。
そのまま海を漂流してもポンと資材が手に入るわけじゃないし。
「うーんどこにある?」
「みなみのほうには?」
「だめだ!」
「だめだ!」
「だめだ!」
「あそこはかんむすがいっぱいるのです!」
「せんきさんがあぶないのです!」
「それじゃひがしのほうなんてどうです?」
「あそこには…」
「ちかくにちんじゅふはないのです」
「ってことはです…」
「きまったのです!」
決まったみたいだ。東の方向にある石油が出ているところ。うん、分からない。
「決まったのはいいんだけどどこに行けばつくの?」
「…っは!」
「きづかなかっただと…?このわたしが…!?」
「いつからわかっているとさっかくした…?」
「なん…だと…?」
「わなだ…!これはわなだ!」
妖精さんたちは逆に私が知っていると思ってたらしい。
妖精さんは頼もしいときもあるけど、おっちょこちょいって言うのかな。いろいろ抜けているところがあるんだよね。それが可愛いんだけど。
「誰かが私についてくるのはどうかな?」
「それはいいのですが…」
「それじゃあすいちゅうこうげきが…」
「できないのです…」
「そうなのかぁ…」
妖精さんを連れて行くと言う案は早くも消し飛んでしまった。うーんいい案だと思ったんだけどなぁ…。
妖精さん泳げないらしいし、今回は敵に見つからないで資材を持って来なければ行けないからね。
「つうしんきなんてどうです?」
「おまえ…てんさいか…?」
「いいあんなのです!」
「ぐっどあいであなのです!」
「すばらしいのです!」
『そうときまればつくるのです!!!』
妖精さんたちの話では通信機を作って連絡を取ろうって感じの案が上がった。そして決まった。
通信機なら妖精さんたちにも負担かけないし、私も自由に行動できると思うんだけど…
「防水加工するんだよね?」
防水加工。どんな機械でもこれは大切なことだと思う。携帯だって水没したらバグが起きたり、故障したりする。だから通信機も防水加工をしなければ通信もなにもできない状態になっちゃう。
「だいじょうぶなのです!」
「ぼうすいかこうをしなければ!」
「こわれちゃうのです!」
「つくったいみがなくなっちゃうのです!」
「なのです!」
「あ、そうなの。余計なこと聞いちゃったね」
「すぐつくるので30ぷんくらいまっててほしいのです!」
「分かったわ。ありがとうね」
妖精さんたちは通信機を作るそうなので私は近くからもいできたびわを口にした。うん、美味しい。
………妖精さんたち通信機作るって言ってたけど材料あるのかな?まあ、いいや。触れてはいけないことだろう。
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「できたのです!」
「おぉ…早いね」
妖精さんが持ってきた通信機は耳掛け用の通信機だった。どこかのエージェントが使ってそう。
私は妖精さんから受け取った通信機を右耳にかけた。すると通信機は私の耳に合わせて丁度いいサイズに変化した。妖精さんの技術すごい。
「それじゃあ今度こそ行ってくるね」
「いってらっしゃいなのです!」
「ごぶうんをいのるのです!」
妖精さんの声を聞きながら私は海面を進んでいった。1週間ぶりの海だった気がする。気軽にいこう。
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「ここあたりでいいのかな?」
『そこあたりです!まわりにようせいさんがいるのでそのようせいさんにはなしかけてください!」
キョロキョロ見回すと海の真ん中あたりで浮遊している妖精さんを見つけた。
「こんにちは妖精さん。資材をくれませんか?」
「わかったのです!ちょっとまつのです!」
そう言って妖精さんは目の前からいなくなった。うちの妖精さん曰く、この間にドラム缶を用意すれば良いとのこと。
幸いあの鎮守府にはドラム缶がゴロゴロ転がっていたので心配はなかったみたい。
「おまたせしました!これがしざいです!こちらはねんりょうで、こちらはこうざいです!」
「ありがとう妖精さん。このドラム缶2つに入れてくれる?」
「わかりました!……はい!いれおわりました!」
「ありがとうね。また来るかもしれないからその時はまたよろしくね」
「わかりました!」
資材の調達は終わったから後は帰るだけだね。
にしてもこのドラム缶凄いな。水中に付けてても漏れたりしないんだから。これも妖精さんの技術なのかな?
「いま帰るから待っててね」
『わかりました!おきをつけてください!』
よし帰るか、そう思った瞬間、
ドオオン!ドオオン!ドオオン!
いつかのサメもどきが放った砲撃のような音がなった。
音がなった方角を見てみると、黒と白の人型の生物が何かを取り囲んでいるように見えた。
『あそこのしんかいせいかんにかこまれているのはかんむすのはずです!どうしますかせんきさん!』
うむ…どうしようか…。もし私が助けても後から助けた娘に攻撃されるかもしれないし、かと言って放っておくのも感じが悪いしなぁ…。
「助けにいくね」
『りょうかいなのです!』
私は深海棲艦に囲まれているであろう艦娘を助けることにした。
妖精さんが言っていたように、背後に近づいて首の骨を折る作戦を実行することにした。
目標は黒髮ロングで盾みたいなのを持っている深海棲艦。
ゆっくり音を立てないように近づいて……
「よいしょ!」
ゴキリッ!
右手で髪の毛を掴み、左手で顎を掴んだ後瞬時にドアノブを捻るような感覚で首の骨を折った。
強くやりすぎたのが悪いのか首と胴体が離れそうになっていて、そのまま海の底へと沈んでいった。
「はあ!」
次に左手がサメもどきみたいな深海棲艦に向かってボディブロー。……貫通した。緑色の液体が腕にこびりついて気持ち悪い。多分、いや確実にこれは人間で言うところの血であるだろう。
「ちょっこの杖借りるよっと!」
大きい被り物を被った深海棲艦から杖をパクった後、その深海棲艦を思いっきり横殴りした。
ホームラン!綺麗に首が飛んでった。
ちょっと前までこう言う光景見てたら吐いたあと気絶してたかもしれない。今は平気みたいだ。深海棲艦になったからかな?
「あとはこいつだけかな」
球体の中に入っている深海棲艦の頭を掴み持ち上げた後、
「ふん!」
握り潰した。黄色い物体や緑色の血が飛び散った。当然私は目の前にいたから全部かかった。
「オエッ!ゴホッゴホッ!」
臭い。なんだこの臭い。腐った卵と納豆の醤油をかけていない香りと中年親父の靴下の臭いを足して×3をしたような臭いだった。
…って解説するんじゃなくて!
「君、大丈夫?」
私は目の前の女の子に優しく声をかけた。自分なりにはだけど。
「ひっ!こ、こないでくれ!まだ僕は死にたくない…!」
目の前で怯える少女、外見は肩まである黒髮で、黒っぽいセーラー服をきた女の子だった。しかもボクっ娘。
「だ、大丈夫だから。もう怖くないよ」
「もう嫌だ…!誰か助けて…!」
ボクっ娘ちゃんはそう言うなり震える腕で自分の頭を守るように体をさらに縮めた。
だきっ!
「大丈夫大丈夫。もう怖くないから。怖いものは私が追い払ったから。もう泣かないで」
何故か体が勝手に動いてボクっ娘を抱きしめた。自分でもびっくりしたけど、ボクっ娘ちゃんを落ち着かせる言葉をすぐに言った。
「う、うわあああああああ!!!」
ボクっ娘ちゃんは私に抱きしめられて落ち着いたのか、恐怖が体全体に降りかかって叫んでいるのかは分からないけど物凄く泣き叫んだ。。
私はそれをあやすように優しく頭や背中を何回も撫でた。
ボクっ娘紺色セーラー服で大体検討はついたでしょう。
次はボクっ娘ちゃんとせんきさんの会話の回だと思います。
次回もお楽しみに。