戦艦棲姫になっちゃったよ。   作:烈華

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すみません。投稿するやつを間違えました。


本土奇襲作戦in時雨ちゃんたちの鎮守府。その10。

「...時雨ちゃん」

「どうしたんだい?そんな暗い顔して」

「疲れちゃった。ぎゅーってさせて」

「わわっ!...はぁ。まぁ今回はいいかな」

 

やりきった、そんな安心感とこの先私たちはどうなるんだろうという不安が心の中で渦巻いてる、そんな変な感覚がある。

正直言って、やりすぎた感がハンパない。うん。

本当のところはすんなり吐いてくれるかと思った。

けど何故か爪を剥がさせてもらうって言う行動がでた、そんな感じ。

人間を虐めるっていうか、なんというか、それをするのが愉しかった、面白かった。

だけどその感情が本当の自分のようで本当の自分じゃないと思ってしまった。

そう愉しいと、面白いと、思ってしまった自分が怖い。

自分が自分じゃなくなる感覚。とてつもなく怖く感じる。

...これが深海棲艦の気持ちっていうか、なんというかなんだね。

 

「時雨ちゃん、なんか怖くなっちゃった」

「え?」

「この先どうなるのかなって。今、ふと思っちゃったんだ、あの男を殺して」

 

この感情は恐怖。なにかが消えるような、大切な何かが消えるような、そんな恐怖

 

「...」

「自分がした行動で、みんなが救えることは誇らしく思える。だけどね、救ったあとの世界に自分がいないんだ」

「戦姫...」

「ここで虐待みたいな行為をされた艦娘が笑顔になるのは嬉しいけど、やっぱり想像しちゃうんだよね。私はそこにはいない。もう死んでるって」

 

みんなには笑顔になってもらいたい。だけどみんなが笑顔になった時、私は。

 

「そう思うと、なんでかなぁ...。死ぬのが、怖い」

 

いなくなっているかもしれない。

 

「時雨ちゃんには言ってなかったけど、私元々は1人の人間だったのよ。まだ、高校生の」

「え...?」

「普通?の家庭に生まれて、普通にいきてきた。だけど気づいたら海の上。右左前後ろも分からない場所でぽつんと1人。あの時は困惑の方が大きかったけど、少しながら恐怖はあった。前の人生は死とはかけ離れた場所だったけど今は違う。人類から見たら敵、恐怖の対象。もしかしたら数分後に死んでいるかもしれないという現実。もう耐えられない気がするんだ」

 

元人間、今は深海棲艦の姫級戦艦。

人間の時は感じられなかったこの気持ち。

やっぱり怖いものだよ、死ぬってことは。

 

「戦姫さ...」

「どうしたの時雨ちゃん」

「深く考えないで、もっと楽に考えたほうがいいよ。人類の味方の僕、人類の敵の戦姫。別に一緒にいてもいいじゃないか」

「でもそれじゃ!...」

「だって、現にそうじゃないか。今の日本とアメリカ。昔は何してたと思う?」

「戦争?」

「そう、太平洋戦争。第二次世界大戦。その時の日本はアメリカのことをどう思っていた?」

「敵、だね...」

「そうだね。敵だった、何年も。だけど、今はどうかな?なにも争うことなんてしてないじゃないか。昔は敵同士だったのに今は友好関係なんでしょ?だから大丈夫。僕と、いや違うね、僕達と戦姫たちは一緒にいてもいいんだ」

「時雨ちゃん...」

「誰が敵同士仲良くしちゃいけないって言ったの?誰も言ってないじゃないか」

 

時雨ちゃんは優しい目をしながら私にそう言った。

そう、そうだよね。一緒にいてもいいんだよね。

ちょっち勇気でたかも。

 

「ありがとね、決めたよ時雨ちゃん」

「どうしたの?」

「私自首する!」

「はぁ!?」

「自首すれば私が刑務所にぶち込まれるだけ!10年ぐらい刑務所にいれば私のやったことは許される筈!多分!」

 

ちょっと人間の数百倍力強いけど大丈夫な筈!じっと安静にしていればすぐに釈放される筈!多分!

 

「自首しなくても大丈夫なんだけどなぁ...」

「ゑ?」

「これを見てよ」

「何これ?日記?」

「そう。あの男が書いていた日記。内容は読めば分かる」

「そうなの?ちょっと読んでみる...!?これって...」

 

日記に書いてあったのは昨日までの提督日記みたいなの。

 

〇月 □✕日

 

今日は霞という駆逐艦の調教を開始した。

睡眠薬で眠らせた後に服をひん剥いて犯してやった。兵器に服なんか要らねぇだろ。

強気な性格だがぶん殴ったら大人しくなり、何回も謝ってきた。本当はもっと抵抗してほしいものだが、まぁいいだろう。

 

〇月 □△日

 

調教4日目。

最初は泣いていたが、今は霞自身からねだる様になった。いい成果だ。

だが少しばっかり感情が薄れていっている。こいつにもそろそろ飽きてきた。

性欲盛んな憲兵どもに放り投げておけば動物みたいに群がって楽しくヤるであろう。次は誰にしよう。

 

 

 

 

 

ここから先は見れなかった。

収まっていた怒りがまたフツフツとやってきた。

殺してくれって言ってたけど今思えばぶっ殺しておけばよかった。

 

「なんでこんなことを日記に...霞ちゃんはどうなったの?」

「少し感情は戻ってきたんだけど極度の人間恐怖症を抱えてしまったよ。僕が頭を撫でようとしたら、ごめんなさい、許して、なんでもするからぶたないでって...」

「あの野郎...!本気でぶっ殺した方が良かったわ」

「落ち着いて戦姫」

 

時雨ちゃんは私の手を優しく握ってくれた。

傷ついた小鳥に優しく触れるように。語彙力ねぇな私。

 

「今は怒ってる場合じゃないよ。艦娘たちはここ一週間水しか与えられてなかったらしい。ここで戦姫の出番だよ」

「...そうだね。ご飯作りますか。食堂って何処かな?時雨ちゃん」

「こっちだよ。食堂は妖精さんが3人?程いたから少しは綺麗になってた筈だよ」

「冷蔵庫の中は...何も無いよねぇ」

「無かったね...」

 

提督の部屋の金庫に沢山お金あったから諭吉さんを3枚持っていって米とか調理に必要なものを揃えなきゃ。

 

「ちょっと買い出しに行ってくるんだけど...時雨ちゃんも行く?買い物デート」

 

買い物デートなんて呑気にやってる場合じゃねぇよ。何言ってんだ私。

でも時雨ちゃんとのデートはいつかしてみたい。姉妹に見られるのかな?それとも恋人同士かな?そ~言うのなんて言うんかな。ガールズラブ?まぁそんなことは置いといてと。

 

(買い物デート...///やった...!)!!!...うん。一緒に行くよ」

 

...時雨ちゃんはやっぱり可愛いなぁ〜。食べちゃいたいほど可愛いなぁ。

小声で言ってたことは脳内保存だ。ダメだ可愛すぎる。

時雨ちゃんが小声で行ったことは聞こえなかったことにしよう。うん、そうしよう。

 

「それじゃ行こっか。とその前にヲウカー?レオー?聞こえます?」

『...ッチ...イイトコロデ姫様ハ...。ア、ドウモヲウカデス』

 

こいつ舌打ちしたよね?上司の私に向かって。なんか額に十字のマークが浮かんできたぞ?

 

「今から時雨ちゃんと買い出しに行ってくるから。あんまり人様に迷惑かけないでよ?」

『マム、イエスマム!大丈夫デストモ姫様!駆逐艦(マイエンジェルズ)ニ手ヲ出ス輩ハナニヲ切リ落ス勢イデ潰シマスカラ!』

「そ、そう。程々にね...。あと高橋さんに証拠書類を提督室に置いておくから送っといてくださいって言っといてもらえる?」

『ナンデアンナ男ト...了解デストモ姫様』

 

こいつさらっと言いたくない雰囲気惑わせてるだろ。

まぁ言ってくれるならそれでいいかな。

 

「それじゃあ切るわね」

『オ気ヲ付ケテ〜』

「一緒に行こ♪時雨ちゃん!」

「うん!」

 

私は時雨ちゃんの手をとり提督の部屋の金庫に入った諭吉さん5枚を引き抜いて、証拠書類を机に置いといた。

そんじゃまぁ、お買い物行きますか。

 

 

 

 

 

 

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20分後

 

 

 

「まぁごく普通のスーパーね」

「ここに食材が...」

 

という訳でやってきましたスーパー。

色々な人がジロジロ見ているが気にしない。

男達が前屈みになって蹲っているなんて知らない。

 

「どんな料理を作るの?」

「胃に優しい料理かな。1週間も食べてなくて揚げ物とか食べると胃がびっくりして吐いちゃうんだよ。だから胃に優しい料理。例えばいつも作ってた海鮮スープ。あれって薄味だけど美味しいじゃん?」

「まぁ薄味だね。でも、戦姫が作った食べ物は全部美味しいよ」

「嬉しいこと言ってくれるじゃないの。ことが収まったら抱きしめた上に頭なでなでしてあげる♪」

「むぅ...恥ずかしいよ///」

 

恥ずかしがっている時雨ちゃんマジカワユス。

おいそこの男。なに時雨ちゃんをじろじろ見てんだ。殺すぞ。

 

「ワカメのスープと...いやうどんの方が...でもお粥の方が胃に優しいと思うんだけどな...どれにしよう」

 

お粥とワカメのスープか魚介の出汁を使ったうどんのどっちか。

どっちも捨てがたいんだけどなぁ。

 

「時雨ちゃん。あの鎮守府にどれぐらいの人数の艦娘がいる?」

「僕がいた時よりも数人いなくなってた。50人くらいじゃないかな?」

「50人...うどんにしましょう。手持ちのお金がちっとばっかし少ないし第1に、米重い」

「そうだね...10kgの米が幾つぐらい必要なんだろう?」

 

そうじゃないんだよ時雨ちゃん。

大切なのは時間なんですよ。

米は重いから運ぶのに時間がかかる。

私が持っても良いんだけど米を炊くのに時間がかかっちゃう。

ワカメのスープができた、それじゃ米は?まだ炊き終わってない。そういう状況を作り出してしまう。

しかも50人もの艦娘。炊飯器があったとしてもブラックなところだったから一升炊けるか炊けないかの炊飯器1台ぐらい。

その上に米は高い。

前の世界では5kgで1500円越える日本。

しかし今の世界の日本は深海棲艦との戦争の真っ最中。そうすると米の価格はどうなるか?軍に取られるから少しばっかり高くなっている。

 

そういうコストの面でも重量、調理に置いて素早く、そして美味しく、胃に優しい料理を作るのだったら断然うどんの方がいい。

出汁なんかは天龍たちが捕ったであろう魚を捌いてアラを昆布を茹でたりすればすぐにできる。味を整えるには時間がかかるけど。

麺はインスタントみたいな固まっているやつはNG。時間がかかる。だから生の麺を使いましょう。

 

「麺のコーナーはっと。ここね。このうどん3玉入りで129円!?良いわねこれ。結構あるし20袋買いましょう」

「それは他の人に迷惑じゃないかな?」

「大丈夫だと思う。生産者も影で喜んでるから大丈夫」

「それはちょっと違うんじゃないかな...」

 

時雨ちゃんは苦笑いをした。

けど私は止めないぞ。艦娘たちの明日がかかっているんだ。こんな小さいことで立ち止まる理由(ワケ)にはーーッ!

 

「すみませんお客様。少し取りすぎです」

「あ、すんません」

 

止まっちまったよ。ちくせう。

 

 

 

 

 

 

ここのスーパーでは長ネギと頼みに頼んで20袋のうどんを買った。

次はお隣のホームセンター。麺を茹でる専用のザルを買いましょう。そして大きい寸銅鍋と木ベラ。

 

「このぐらいの大きさで良いかな時雨ちゃん?」

「食堂は大きいから大丈夫だよ。でもそんなに持てるの?」

「大丈夫大丈夫。それと肝心な皿と箸の存在を今さっき思い出した。どうしよう時雨ちゃん」

「うどんを入れる皿は沢山あった気がするよ。でも洗わないと使えないよ?」

「洗うくらいどぉってことないよ。時雨ちゃん、洗うの手伝ってくれる?」

「当たり前じゃないか。手伝うよ」

「ありがとね時雨ちゃん。私、頑張るから」

 

疲れきった艦娘たちに、私の料理を送らなきゃ。

腕がなるわね。

帰りの途中、寸銅鍋を2つ持ったから前が見えなくて苦労した。前見えないってつらたん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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佐世保鎮守府食堂

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて」

 

準備は整った。

私と時雨ちゃんが買い出しに行っている間に高橋さんが大本営に書類報告をしたそうだ。3日後にここに来るらしい。私狙われたりしないかな?ものすごく心配。

 

天龍たちが捕った魚。なんだっけこの魚。えーっとキジハタだっけ?それがなんと8匹。それと真鯛が4匹、黒鯛が3匹。なんでお高い魚がこんなにいるんですか?天龍たち運良すぎる。それと私が水中に潜って採ってきたいい色をした昆布。

それを捌いて...

 

「水の入った寸銅鍋へポーン!」

 

そしてじっくり煮込みます。

次にネギ。焼いて食べるのもそれは美味しいんだけど今回は胃が弱っている艦娘約50人。だれか一人は吐いてしまう。という訳で今回は白髪ネギにします。

ネギを縦に包丁を入れ、細く切れば...はい完成。ね?簡単でしょ?

麺は出汁ができたら茹でます。

茹で終わったと同時に時雨ちゃんが艦娘たちに食堂に来るようにと伝えておいた。

いい出汁が出るまで魚を捌きます。今日の夜のご飯です。海鮮丼を作る予定。魚が沢山必要だから私も海に出なきゃ。忙しい1日ね。

 

 

 

 

 

 

 

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「こっちだよー!あと、あともう少しだからね!」

 

あれから10分。良い出汁がとれたから時雨ちゃんにお願いしてここにいる艦娘を全員食堂へ呼んだ。

みんな髪はボサボサで目には力が無い。要するに虚ろな目。涙が出てきた。

茹でた麺と汁を入れた皿を時雨ちゃんやヲウカ、レオ、天龍、龍田さんに運んでもらった。

私の存在に気づいた艦娘は怯えたりしていたが、近寄って、

 

「大丈夫だからね。あともう少し、だから頑張ろ?」

 

と言って抱きしめた。そしたら泣いてしまった。やばいどうしよう。

 

「コホン。えーっと、皆さん初めまして。深海棲艦の姫、戦艦棲姫と申します。そして隣にいるのがヲ級のヲウカ、レ級のレオです」

「「ヨロシク」」

「私たちがここにいるのはおかしいと思う艦娘もいると思う。だけど安心してください。私たちがあなた達を、守るわ。あんなクソみたいな男といてどうだった?楽しかった?面白かった?」

「...ぃゃ」

 

誰だか分からないけど1人の艦娘が反応した。

 

「でしょう?だからここを変えるために私たち深海棲艦がやってきた。...あんまりっていうか1度もこんなことはやったことがないんだけど。偽善者みたいなことを言うけど、あなた達を幸せにしてみせるわ。前に置いてある料理は今までのことを塗り替えるための料理と考えてください。言葉が思いつかないから、どうぞ召し上がれ」

 

そう言うと艦娘たちはゆっくりとうどんに手をつけた。

食べながら泣いている艦娘、そのまま号泣している艦娘、色々な艦娘たちそこにはいた。

 

「みんな生きたいって思っているんだよ。死にたいって、消えたいって思う生き物はここにはいない」

「そうだね...。戦姫、ありがとう...僕達の鎮守府を助けで、ぐれでっ!うぅ...」

「時雨ちゃんは泣き虫だね。私は当然のことをしたまでよ」

「ヤバイ...目カラ汗ガ止マラナイデス」

「ウンウン...俺タチイイ仕事シタナ...!ヤベッ鼻水ガ止マンネェ...」

 

ここにいるみんなが笑顔に、そして楽しく過ごせる鎮守府はまだ先なのかもしれない。

でも、今この瞬間を大切にしたいと、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここでもう1度。投稿するやつを間違えてすみません。
1度投稿したものとその次に同じ場面を書いたものをゆうごうさせていいただきました。
うどん最高。
霞ちゃんが好きな方は申し訳ございません。
本土奇襲作戦は次回かその次に終える予定です。

Twitter始めました。

@Rekkaso0126か烈華草と調べると出てくると思います。

今回は本当にすみませんでした。以後気をつけます。

評価、コメント、誤字報告、コラボしたい方はどしどしよろしくお願いします。
では次回もお楽しみに。

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