ゲート・忍者来れり   作:体は大人!心は中二!

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8話

鬼が近づいてきているのに気が付かない顔役達が、酒を飲みながら会話を楽しんでいる頃…。

 

「た、助けてくれ!!アンタに付く!!アンタに付くから!!」

 

「お、俺もだ!アンタの下に入るから命だけは!!」

 

顔役達が会合をしている館を護衛している男たちは半殺しにされていた。

腕が折られた者、足をへし折られた者、再不斬に降伏せず首を切り落とされた者。

館の周りは血みどろである。

 

男たちは顔役達を恨んだ、何が腰抜けの卑怯者だ!!こいつは神の使徒か化け物だ!!

そう、彼らは普段から顔役達の愚痴などを聞いており、再不斬は腰抜けだと教えられてきた。

そのイメージのせいで再不斬を挑発してしまい現状に至る。

 

ようは、ケンカを売って返り討ちにあったのである。

 

悪所では強い奴になびく奴は利口者で、逆らう奴は愚か者という言葉がある。

それを見誤れば彼らのように運がよければ半殺し、悪ければなぶられて殺される。

顔役達の金魚のフンをしていた彼らはそれを忘れ、今になってそれを思い出したのだった。

 

「ふん、雑魚のくせに粋がるからこうなる……。失せろ」

 

「は、はひぃ!!」

 

「消えます!!消えさせていただきます!!」

 

再不斬の睨みに死体と仲間を置いて逃げ惑う男たち。

再不斬は逃げる男たちから視線を外すと館の中へと入っていった。

 

「忍法……『霧隠れの術』」

 

再不斬の術により館の中と外は霧に包まれた。

 

「さぁ、楽しいハンティングの時間だ」

 

 

――――。

 

「なんじゃこりゃ?霧か?」

 

「何で館の中で霧が出るんだ?」

 

「おい!どうなっていやがる!!?」

 

気持ちよく酒を飲んでいた顔役達は突然現れた霧に困惑する。

そして、困惑する顔役達のすぐ近くでドサ…ドサ…という物が倒れる音が周囲から連続で鳴り続けた。

 

しばらくすると顔役達以外の音は完全に消えてしまった。

ここまで来てようやく、酔いがさめた顔役達は襲撃を受けている事に気が付く。

 

「おい!どんな魔法をつかっているのかはしらねぇが、俺たちに逆らって生きて帰れると思うなよ!?」

 

「そうだ!俺たちは悪所の支配者なんぎゃぁあああぁあああ!!??」

 

「どうし…お前…腕が……」

 

勇ましく、襲撃者に吠えていた顔役達だったが、メデゥサの腕がいきなり切断された。

腕を切り落とされたメデュサは切断面の近くを片腕で抑えて悲鳴を上げながら、うずくまる。

その様子に、危機感を覚えた二人は襲撃者と敵対するのではなく交渉することにした。

 

「わ、分かった!お前の実力は分かったから幾らだ?金ならいくらでもやるから俺を助けてくれ」

 

「わ、ワシもだ言い値を出そう。だから……」

 

「お、俺も出す!!…だから…だから俺の腕を………治療してくれ!!」

 

「ほう?」

 

そこで初めて、顔役達は襲撃者の声を聞いた。

声を聞いた顔役達は、襲撃者の反応に安堵した。

返事を返したという事は、殺すのではなく交渉をする価値があると思っているからだと……。

 

霧が晴れ、周りを見た顔役達は愕然とした。

周りで侍らせていた女たちが全員倒れていたのだ。

 

「幾らでも出すと言ったな?」

 

後ろから聞こえる男の声に驚き、振り返る顔役達。

そこには、黒髪で包帯を口元に巻いた男が大きな武器を片手で持って立っていた。

 

「ああ!!出してやるとも!!だから…俺の腕を」

 

「いいだろう。お前を治療してやるよ」

 

「じゃあさっさと……」

 

しやがれ

 

メデゥサは最後までこのセリフをいう事なくその首が再不斬の振るう首切り包丁によって宙を飛んだ。

 

首はそのまま部屋の壁にぶつかり、重力に従って床に落ちてゴロゴロと転がった。

そして勢いよく血を噴き出し、崩れ落ちる胴体を見ながら唖然とする顔役達。

 

「もうこれで痛くないだろう?さて、後はお前らだが……」

 

「や、やる!!土地も金も全部お前にやる!!」

 

「そ、そうだ!!なんならお前を悪所の王にしてもいい!!だから、殺さないでくれ!!」

 

こうして、顔役達から全てを受け取った再不斬は悪所の完全なる支配者となり、悪所の住民たちは皆、再不斬をこう呼んだ『鬼人王・再不斬』。

 

鬼人には逆らうな、逆らえば首を持っていかれるぞ。

 

悪の限りを尽くしてきた、顔役達は『鬼人の晩餐』と呼ばれる事件を経て、恐怖ですっかり老け込んでしまい。

今では、再不斬の決めた悪所のルールをよそ者と若い連中に教える立派なご意見番になっていた。

 

―――――。

 

再不斬が悪所の支配者になった頃、イタリカでは……。

 

「イタチ…僕ら忍だよね?潜入しているんだよね?」

 

「正直、すまないと思っている」

 

商人として活動していたイタチとカブト。

彼らは今……。

 

「家のミュイも気に入っているし、どうか執事になってくれないか?

もちろん、商人を兼任してもらってもいいし、タダとは言わない。

破格の待遇で雇わせてもらうよ」

 

フォルマル家の当主に執事の勧誘されていた。

 

 




少し短めです。
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