ゲート・忍者来れり   作:体は大人!心は中二!

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7話

冥府の神、ハーディ。

 

ベルナーゴ神殿にて実際に存在する神。

彼女は何百年に一度の娯楽の為にアルヌスで門を作り、異世界とこの世界を繋げるらしい。

 

ハーディと交信出来るジゼルの話だと、門と異世界をつなげようと操作をしている時、操作を誤り一瞬だけ違う次元に繋げてしまったそうだ。

 

そして、繋がったその次元は通常の次元とは違い、こちらに流れこんできたらしい。

故にハーディは、自身の力を最大限に使用して流れ来る次元をせき止め、入って来た次元を近くの森に上書きしたそうだ。

 

つまり、門から出てくる日の国という大きな空間エネルギー体が門を通って世界にどんな影響をあたえるのか想像出来なかったから、適当な空間に上書きをした。

 

それが俺達がこの世界に現れた原因のようだ。

これは、勝手な想像だが通常の空間よりも不安定な電脳空間という場所に穴をあけた事によって電脳空間の中身が流出したのではないだろうか?

 

もし、ハーディが通常空間である異世界に上書きしなかったら、流出した空間エネルギーが爆発しこの世界は消えていた可能性も……。

 

まあ、実際にどうなるかは分からないが悪くて世界の消滅、良くて巨大な爆発と生態系の破壊か?

 

つーか、よく空間の上書きなんて出来るな…神ってチートじゃね?

 

日の国と自分の命が奇跡的に助かっていた事実を、ご飯を食べながら能天気に喋るジゼルに聞かされたバサラはなんとも言えない表情を浮かべていた。

 

「おいおい、そんな顔するなよ。難しい事は分からないが、助かったんだからいいじゃねぇか」

 

「それもそうだが……お前はいつまでここに居るつもりだ?」

 

「ん?主上さんから次の命令が下るまでだが?つーか、それよりも信徒にならね?なんなら俺が番になってもいいぞ」

 

「……信徒にも番にもならないぞ」

 

「ちぇ、自分でいうのもなんだが、結構良い乳と体なんだぜ?

まあ、いつでも言ってくれよ、好きなだけ揉ませてやるし、抱かせてやるからよ」

 

片手でハンバーガーを貪り、渋い顔をするバサラに声をかけるジゼル。

彼女はすっかりここが気に入った様で数日間ここに滞在しているのだが、一向に帰る気配を見せない。

 

それどころか、バサラにハーディの信徒にならないかと勧誘、ついでに結婚の申し込みをしてくるのだ。

 

もちろん信徒にはならないし、結婚も………………考えていないバサラは興味ないと言わんばかりに断る。

 

内心ではおバカだが、胸を両手で揺するジゼルが欲しいという欲求に耐えるべく、血の涙を流している。

 

これがバサラの……独身で童貞の悲しい漢の本音である。

ジゼル自身はこの数日間でバサラの事をとても気に入っている。

 

はじめは失禁するほど怖かったが、スパイ行為をしていた自分にうまい飯と極上の部屋を用意したバサラの器のでかさと彼女をビビらせる強い戦闘能力。

 

ある意味自作自演による吊り橋効果なのかもしれないが、ジゼルの本能はバサラを逃がしたら、こいつ以上の強いオスに会うのは無理だと告げているのだ。

 

故に神殿を日の国に作ってバサラといつでも会えるようにしたいし、本能で番になってやると男よりも漢らしくストレートに伝えているのだ。

 

ただ、本人は生まれてから四百歳となる現在まで恋という物を知らず、自身が恋をしていることに全く気が付いて居らず、ただバサラを気に入っているのだと思っている。

 

それほど遠くない未来の別世界線ではカレーで餌付けされてオタク自衛官に好意を抱く彼女らしい恋である。

 

バサラの仕事場である書斎を出てくジゼルの背中を見送ったバサラは自身の膝を殴って心の安定をはかっていた。

 

ちなみに翌日も、バサラに挨拶する軽い調子で勧誘と求婚するジゼルを見る度にくノ一達は、訓練所をハチャメチャにしたり、おやつに食べていた団子のくしをへし折ったり、飲んでいた湯呑を粉々に握りつぶしたりと殺気だっていた。

 

そして、何もしておらずただ道を歩いていた自来也が謎のくノ一集団に半殺しにされたりする事件が発生し、男たちはくノ一達の恐怖に戦慄した。

 

――――。

 

 

自来也が理由なき暴力で半殺しにされて治療を受けている頃……。

悪所にある館にて動きがあった。

 

「ったく!なにが鬼人だ!首切りだ!会合に全く顔を見せねぇ腰抜けじゃねぇか!!」

 

「あの若造は完全にわしらを無視しておる」

 

「目障りだな……俺達で礼儀を教えてやるついでに上納金として縄張りを俺達で山分けにしねぇか?」

 

吸血種の男メデゥサ・人種で初老の男コンゾーリ・虎の獣人パラマウンテは会合に招集している再不斬が挨拶に来ない事に苛立ちを募らせていた。

 

「しかし、なにも考えずに戦えばベッサーラと同じ末路をたどる事になるぞ?」

 

「へっ、ベッサーラの女とガキを生かしてる甘ちゃんだぜ?ベッサーラのヤツみたいに油断しなければ大丈夫だ」

 

「いや……奴は残忍な性格と聞いている。もしかしたらベッサーラの家族は奴の趣味に使われているんじゃないか?」

 

本人のいないところで言いたい放題の顔役達。

彼らの中で再不斬は腰抜けの卑怯者、おまけに人妻と幼女スキーの異常性癖を持つ変態として認識されていた。

 

「じゃあ、近くにいる黒髪の女を人質にすればいい」

 

「女ごと切られないか?」

 

「そんなことをせずとも、数で圧殺すれば簡単だ」

 

「「それだ!」」

 

結局、再不斬にとって人質にする予定の人物が価値があるか分からなかった顔役達は、コンゾーリが提案する数で圧殺する作戦に決定した。

まあ、単純であるが再不斬を知らない彼らにとっては基本で確実性の高い作戦だと思ったのである。

 

確実に殺せると確信した彼らはワイワイと襲撃時間と再不斬を殺した後の報酬をどう分けるかを話し合っていた。

 

自分たちの会合が初めから筒抜けであるとも知らないで……。

 

「白…こいつらは俺の獲物だ。手を出したら殺すぞ」

 

「いいですよ。ただ、ほどほどにして下さいね?組織を丸ごと支配する予定なんですからベッサーラの時みたいに減らされると苦労するんですよ」

 

「それは、あいつ等次第だ」

 

白が作った鏡で顔役達の会合を覗いていた再不斬は首切り包丁を片手に殺気をまき散らす程に、怒り狂っていた。

自身をコケにされた事もそうだが異常性癖を持つ変態呼ばわりされたのが何よりも許せないらしい。

 

「ざ、再不斬の親分!俺たちはどうしますか?」

 

ベッサーラから再不斬に鞍替えした失禁男のゴクドー。

彼は、再不斬が支配するようになった縄張りを白と再不斬の命令によってビビって失禁しながらも治安向上に努めた。

 

始めは再不斬に恐怖していたゴクドーは自分が生まれた吹き溜まりが、少しでも良くなっていく事に達成感や満足感を覚え、今の状態も悪くないと再不斬たちのパシリになっていた。

 

若干綺麗になったゴクドーは再不斬達によって、このゴミの吹き溜まりがどう変わっていくのかを見届ける為に再不斬達について行くことを決めた。

そんな彼だったが殺気を振りまく再不斬に怯え、挫けそうになりながらも自分たちに出来ることを聞いた。

 

出会ってからしばらく失禁が絶えなかった彼からは想像できない進歩である。

 

「……白とここに居ろ」

 

「りょ、了解っス」

 

そんな彼を見て、再不斬も何か思うところがあったらしく、殺気を収めて白と共に残るように命令した。

そして、そんな再不斬を見ながら微笑ましい笑顔を向ける白に対し、ゴクドーは頬を赤く染めていた。

 

今夜、悪所にて少しマイルドになった鬼が再び包丁を振るう。

 

 

 




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