ゲート・忍者来れり 作:体は大人!心は中二!
「……この服を税を引いたデナリ銀貨70枚で買わせていただきます」
「いいだろう」
大商会の一室にて取引を完了し、滞在する為の資金を手に入れたイタチとカブト。
ただ問題があるとすれば、服の買取をしてくれる取引相手の瞳が虚ろだったりすることだろうか?
「……僕は今後、写輪眼を持つ人間とは取引しない」
「何をいっている?相手の記憶を読み取り、安く買いたたかれないように適正価格で取引しただけだが?」
確かに商人リュドーの言っていた情報が本物であるなら適正価格だ。
しかし……なんとも言えない気持ちがカブトの心に渦巻いていた。
金を受け取った二人は大商会を出て宿へと向かった。
「それで…今後の予定はどうするんだい?僕としては調査を打ち切りにしても問題はないと思うよ。
商会の商品として部屋に展示されていた雑な出来の剣と槍と鎧……アカデミーを卒業したばかりの忍にだって危険はないと思うよ」
「…そんなのは兵の力量によって大きく変わる。結論を出すのは物資を護衛する帝国兵を見てからでも遅くはない」
「嘘だね。君……何を企んでいるんだい?」
何百年と生きたエルフの情報からこの世界の脅威となりうる存在のリストが存在する。
その中での順位は帝国・王国の兵→魔法使い→エルフ→亜神→神となっている。
リスト最下位である人間の兵士など、イタチを含めカブトが言ったアカデミー卒業生の敵ではない。
それ故にカブトは、そんな弱い存在を気にかけているフリをしてまでイタリカに残ろうとしているイタチを怪しんだ。
もちろん、忠義の塊のようなこの男が主であるバサラを裏切るような事はしないと確信しているが、不安はある。
カブトの疑いの視線を受けたイタチは周りを警戒しながら自分の考えを口にした。
「商人の記憶を見た時、帝国の性質を理解した。
もし、帝国の貴族や皇族が日の国の存在を知った場合、確実に戦争になる。
そうなった時、穀倉地帯を真っ先に陥落させたら早く戦争が終わると思わないか?」
「……全く、本当に忠義者だよ君は…」
「そうか?俺はここに着てからずっと片手をポケットに入れて、休まず情報を記録しているお前が忠義者だと思うが?」
「……そこは気づかないフリをするのがマナーだよ」
お互いにニヤリと嗤った二人は、有事の際にイタリカを支配するための下地をどうするかを話し合った。
―――。
「潜入して一日で五回の襲撃とは……悪所とはよく言ったものですね、再不斬さん」
「……見事な吹き溜まりだが………雑魚ばかりで大したことはないな」
悪所に潜入した二人は、外から来たものとしての礼儀を教えてやると言われて戦闘。
金を出せと恫喝されて戦闘。
白を女と勘違いした男たちに女をよこせと襲撃され戦闘。
返り討ちにした連中が顔役の部下という事で報復に二回。
まさに、帝国のごみ溜めと呼ばれるのに相応しい治安の悪さである。
「……面倒だ。このまま頭を取に行くぞ」
「その意見には賛成したいのですが……混乱や反乱が起きますよ?」
「…歯向かう奴らは、皆殺しでいいだろう?俺が選ばれたのはそういう事だと判断しているが?」
「ほどほどにお願いしますね?やり過ぎた場合は僕が貴方を始末しなくてはならなくなるので」
「フン…大将の意向には逆らわないから安心しな」
亜人・人間を含む、五十もの首のない死体をまたぎながら悪所の顔役を抹殺する為に彼らは監視者の後を追った。
所変わって、悪所の顔役ベッサーラは外から来た二人組に顔に泥を塗られたと怒り、あらぶっていた
「ふざけるな!このベッサーラ一味に手を出して未だ生きているってどうゆう事だ!!?
テメェら…俺をなめてんのか?」
「俺達はふざけていませんぜ!!あいつ等…特にでかい剣を持ってる男は異常だ…人種の姿をしていたが…ありゃあ、化け物ですぜ。」
「そうです!アイツ…笑いながら部下の首を……うげぇ」
憤慨するベッサーラに報告する二人の男たち。
二人は遠くの建物で二人組を監視していた為、トラウマ必須『再不斬の殺戮ショー』を目撃してしまったのだ。
襲う五十人ものならず者達をまるで作業をするように首を飛ばす鬼と表情を変えずに殺戮ショーを鑑賞する少女。
二人が通った道は真っ赤に染まり、生者なし。
悪逆非道で有名なベッサーラ一味の男たちも恐れ戦く所業であり、部下の全滅を報告することを免罪符にベッサーラの屋敷に逃げてきたのだ。
「っち、腰抜け共め……こうなったら俺が直々に、その二人組をぶっ殺してやる」
「もう、やめやしょう!あの二人にこれ以上手を出したら…」
「ほう、俺達をぶっ殺す?それは面白い冗談だなぁ……」
剣を腰に差し、重い腰を上げて立ち上がったベッサーラと報告に来ていた男たちは謎の声に振り返ると……。
そこには巨大な剣を血に染めた鬼が居た。
染められた血は新鮮なものの様で、剣からポタポタと床に垂れてゆっくりと絨毯にシミを大きくしていく。
恐らく侵入する時に屋敷に居るベッサーラの部下を殺したのだろう。
報告に来ていた二人は自分たちも生首にされると恐怖に戦き、ガクガクと震えながら腰を抜かすと同時に失禁した。
「き、貴様!どこから入って来た!!?」
「おいおい……。これから死ぬ奴がそんな事を気にしてどうするんだ?」
「ぬかせ!!このベッサーラをコケにした罪を教えてやるぜ!!」
「お前ごときが…この鬼人に叶うわけないだろう」
腰の剣を引き抜き、勇ましく吠えたベッサーラ。
だが、ベッサーラ一味の頭目である彼は特に何も出来ずに死んだ部下達同様、『首切り包丁』によって生首となった。
頭目が死に、恐怖で縄張りを支配していたベッサーラ一味は壊滅……。
ベッサーラが所有する縄張りを丸ごと鬼が支配する事になった。
そして、再不斬はベッサーラの部下だった男達を雇って自分がベッサーラに成り代わった事を広めさせた。
こうして彼の所業である『首切り』と『鬼人』の名が悪所に轟いたのであった。
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