ゲート・忍者来れり 作:体は大人!心は中二!
「さて、これからの事だが……」
あれ?命令コマンドが出てこない……。
彼女たち幹部に与える情報収集、防衛、攻撃などのコマンドが現れない状態に眉を顰める。
俺が口を開いた状態で固まっていると彼女達の真剣な眼が集中する。
そんなに見られると緊張してくるのだが……。
……これって本当にゲームの中なのか?
それとも寝落ちした?
彼女たちに視線をちらりと向けるが、さっきと同様に真剣な瞳が俺に集中している。
なんか、針の筵(むしろ)みたいで嫌な気分になった俺は口頭で命令することにした。
「まずは、情報収集に専念したいと思う。」
あれ?忘れてたけど任務を与える指名コマンドもでない……。
本来は命令コマンド→任命コマンド→小隊編成→命を大事になどの方針。
となるはずなんだけど……。
ま、まさかね?ただのリアルを追求したアップデートの効果だよね?
リアルに近づけた、だけ……ですよね?
「そこで…ヒナタ」
「はい」
疑念がかなり大きくなるが、ここがゲームの中であろうと現実であろうと、とりあえず情報を集めるのは重要なのでコマンドで選択する物を口頭で伝える事にした俺は声を出しヒナタの名前を呼んだ。
名前を呼ばれたヒナタが返事と共に立ち上がり、俺を見つめる。
抑え込もうとはしているようだけど、白い頬は朱に染まり、体が少しモジモジと動いている。
おっぱいも動きに合わせて揺れている…マーベラス……。
「これから、六番隊から緊急連絡用に一人と九番隊から少数精鋭を選び、調査小隊を結成した後、
小隊と共に地上の周囲半径一キロ圏内をくまなく偵察し、地図を作成して欲しい。
それと戦闘は出来る限り避けて欲しいが、必要と感じた時には許可する。
小隊の人選は一任するが、優秀な者を選べ。最後だが…けっして無茶な事はせず、小隊と共に生きて帰って来い」
「はい!了解しました」
「サムイ。連絡役は優秀な奴を頼む」
「了解しました」
了解の返事をするヒナタとサムイ。
戦闘能力や白眼の事を考えるとヒナタ一人でも出来るのだろうが彼女よりも強い忍びを斥候として放っている国が存在するかもしれない可能性がある為、用心は必要だ。
「命令がなく、待機している部隊は一番隊・十番隊の補助を頼む」
「「「「「「了解しました」」」」」」
「では、これにて解散とする。」
「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」
返事と共に瞬身の術で姿を消す女性達。
どうやらうまく出来たようだ。
さて……。
会議室でボッチとなった俺なんだけど……それどころじゃない。
会議室を飛び出し、走って自室に戻った俺は、もう一度コンソールを呼び出そうと手を動かす。
だが、先ほどと同じようにコンソールは表示されない。
コンソールが表示されないとログアウトが出来ない。
つまり、仮にここがゲームの中であったとしても俺は戻る事の出来ない監禁状態に置かれていると言っても過言ではない。
そして現実であったのなら、俺は二度と現代社会に戻ることは出来ないだろう。
…………………。
…………。
……しかし…。
監禁状態、もしくは一生戻る事ない現実に焦りはしたものの、俺は思ったのだ。
安いアパートの一人暮らし…しかも独身で彼女も居ない……。
おまけに会社はブラックに近いグレーと来た………。
リアルでの自分を思い出すと正直、リアルに帰りたいという意欲が下がる。
むしろ、現実よりもここで何事もなく平穏に自分のお気に入り(女性キャラ限定)と死ぬまで戯れていたい。
よし!ゲームでも現実でも、もうどうでもいい!!どうにでもなっちまえ!!
楽しんだ者の勝ちだ!!
彼女のいない現実よりも好感度Maxの仮想の美女・美少女を優先し、あっさりと現実と決別した俺はこの状況を楽しむ事にした。
そうと決まったらさっそく、街に行ってNPC達の様子を見に行こう。
NPC達もリアル化されているだろうし、どんな反応をするのか楽しみだ。
さっそく、出発だ!!
ここ日の国は大まかに商業地域・農業地域・軍事教練地域の三つに分かれており、それぞれの地域でNPCや忍者達が日々の生活を送っている。
商業地域には食品から忍具等の武器と防具、家具や電気製品、果ては建築など様々な商品や建造物が開発と販売がされている。
開発される商品はNPCの職人たちのレベルと施設のレベルによって向上してする。
農業地域は水や食料を生産している地域でNPCの農家と忍者が働いており、同じように軍事教練地域でもNPCや忍者達が働いている。
俺は新しい忍具やスキルである忍術の入った巻物が売られていないか見る為に商業地域へと向かった。
「おお! バサラ様ではありませんか!! 緊急事態にわざわざ視察していただきありがとうございます!!」
「バサラ様!! 商店街は派遣していただいた忍達のおかげで問題ありませんぜ!!」
城から飛雷神の術を使用して商店街地区に飛ぶと、俺の姿を見た住人たちは笑顔で歓迎してくれる。
国民である彼らNPCも忍者同様に重要な存在である。
彼らが居るから戦争に必要な資金も税として集める事もできるし、施設のレベルや職人のレベルにも依存するが忍具に武器や防具も生産してくれる。
そして、軍事教練の施設のレベルによってアカデミーに入学できるNPCは変わってくるが、入ってくれれば入学したNPCは教員として配置された忍者のレベルに合わせて名もなき忍者、下・中・上となって卒業し、戦場で扱うことができる。
故に、彼らの事は定期的に視察したりして、住民たちの不満を聞き、クエストとして忍者達もしくは自身で問題解決に当たらなくてはならない。
仮に、彼らの不満が高まれば問題を解決しろと、どこぞのキムチ国のようにデモが発生し、あらゆる産業が機能を停止し、彼らの不満を解消する為にクエストに走り回らなくてはならなくなる。
そうなってしまった場合、国を守る為に動ける忍者が激減し、敵国に襲撃を受けやすくなるのだ。
俺は彼らに対してほどほどに挨拶し、武器屋に向かった。
武器屋に入ると商品である多種多様な忍具に武器が値札と共にあちらこちらにケースの中に保管されている。
俺が入店すると店長である厳つい親父がカウンターからこちらに向かって話しかけてきた。
「大将じゃねぇか! この大変な時にこんな俺の店に来て大丈夫なのか?」
「まあ、優秀な部下達に任せてるから大丈夫だ。 それよりも、新しい忍具出てる?」
「…暁の嬢ちゃん達に丸投げかよ。まぁ、大将が大丈夫って言うなら大丈夫なんだろうが……。
とりあえず新しい忍具だったな?最近大将が施設に開発資金を多めに投入してくれたおかげで、すごいのが出来てるぜ」
厳つい店長は、店の地下へと続く階段を下っていき新しい兵器を見せてくれた。
そう……。
「どうよ! 大軍兵器『メカナルト』と対城兵器『メカ九尾』だ!!」
男のロマンであるロボットを…。
い、いらねぇー。
敵国の忍者だけでなく世界観までも破壊しそうな兵器に唖然としながらも俺はキラキラした瞳でこちらの反応を伺っている店長に言った。
「廃棄するか、ここに封印しろ」
「な!? 大将これは男のロマンですぜ!?目から発射されるビームに腕にはミサイルとガトリングとライフルが搭載されていて、音楽だって流せるんですぜ!!」
俺の言ったことが信じられないと言った表情で店長がメカナルトの鼻を押す。
すると……。
『でっかく生きろよ 〇なら!〇道それずに 真っしぐら!♪』
大音量で歌と音楽が流れるが……作品が違う!!
ロボットアニメで声が同じだからって……運営は許可を得ているのだろうか?
運営が著作権によってハチャメチャが押し寄せてこないか心配になる。
「もうちょっと普通のはないのか?」
「しょうがねぇな……だったら…」
しょんぼりした店長に次に見せられた物は刀やら新型の粘土爆薬。
とりあえず、最新の刀である『草薙の剣+120』を購入して装備した。
値段は300万両と高めだったが今まで装備していた『草薙の剣+47』を売却した後で購入したので、安く購入出来た。
さて……早速、演習所で刀の調子を見てみるか。
………。
商店街地区に飛んだと同じように飛雷神の術で軍事教練地域の演習場地区へと飛ぶ。
術が成功すると視界には森が広がっていた。
本当に飛雷神の術は便利だ。
レベルを上げてガチャを回し、修行ミッションをクリアする事でようやく習得した物だけにあの時間と金は無駄でなかった事が実感できる。
さて、始めるか。
腰に差した刀を鞘から引き抜き片手で目の前の大木を斜めに一閃。
刀身が標的である木に当たった瞬間、まるで豆腐かプリンを包丁で切ったように殆ど抵抗感なく切り捨てることが出来、刀を振り切って数秒するとゆっくりと木は地面に倒れた。
中々の切れ味だ……。
切れ味を確認した後、チャクラの通し具合を見る為に雷を刀に流すイメージを行う。
しかし、ここでいつもと違う現象が起こる。
「発動している……」
イメージを行った瞬間、刀にチチチと言う音と共にバチバチと電気を纏ったのだ。
ゲームにおいてこの現象はおかしい。
何故なら、発動のキーワードである術名を言っていないのだ。
本来ならイメージでゲームのギアが読み込む→忍術名を口にする→発動という流れだ。
基本バトルのシステムが無視されて発動されるのはやはりおかしい。
この疑問は俺の中にあった『ここは現実説』が完全になった瞬間であった。
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