ゲート・忍者来れり 作:体は大人!心は中二!
ハリョ。
異なる種族が交配して生まれたハーフの集団。
彼らは自分たちこそ、どの種族よりも優秀で選ばれた存在であると言う思想を掲げて活動する闇の組織である。
彼らの最終目的は帝国の皇族に自分たちの血を混ぜて、帝国を支配する事。
その為の計画は現在調査中。
「ハリョ…か」
手元の資料を自室の机に置いて、考えるバサラ。
彼は今、頭を悩ませていた。
いつのまにか、占拠した悪所や市場を支配しつつあるイタリカ。
調査を命じた覚えはあったバサラだが、侵略を開始しろとは一言も言っていない。
バサラのお腹は部下達の忠誠心でお腹いっぱいであった。
ただ、そんな彼のストレスを軽減する出来事も僅かにあったのだ。
それは……ジゼルがベルナーゴへと帰還したのだ。
彼女が仕える主神ハーディの命令により、バサラ達の監視が終了。
詳細はよくわからなかったがドラゴンの育成をするらしい。
別れの祭、彼女の背を見送ったバサラはドラゴンの育成って大丈夫なのだろうか?
まあ、彼女は不死身で龍人だ。
何も問題はないだろう。
それよりも、あのオッパイが見れなくなるのは残念だ。
と、心配半分セクハラ半分の思考をしていた。
そして、バサラにとって重要な旅が決定した事である。
なんと、再不斬と白の支配で最も安全となった悪所を訪れる許可を得たのである。
はじめはエルフの集落を希望していたのだが、悪所の安全と他種族が見る事が出来るという事で変更したのだ。
ただ、行先が決まったこの旅には正直、困った事がある。
護衛の忍である。
この世界の人間の戦闘能力がそれなりに割り出せたので護衛の忍は一人で問題ないと判断されたところまではよかった。
しかし、バサラの護衛を務めるのは誰か?という事でくノ一達の己の欲望を叶える為の激しいバトルが修繕された演習場にて勃発。
大地が抉れ、森は焼野原……。
そして、演習所の修繕に駆り出される事に涙をながす、ヤマトと土遁使いの忍達。
周辺を破壊しつくし、死屍累々の中で純粋に『旅も青春だ!!』と言って参加した一人の珍獣がちゃっかりと残っていたのだ。
そう、その珍獣の名前は……。
「バサラ様!!旅の準備が出来ましたぞぉぉおおお!!」
バサラの書斎に大きな声と共にやって来た、暑苦しいオカッパ頭の男。
自称、日の国の青き猛獣『マイト・ガイ』であった。
負けたくノ一達はガイを羨ましいと思いながらも、他のくノ一に任せて出し抜かれるよりはマシと判断し、決定したのであった。
☆☆☆
「いやぁ、旅もまた青春ですなぁ。
自然を感じ、人々との出会いと別れ…楽しみですなぁ」
「そうだな」
大き目のリュックを背負い、楽しそうにバサラと話すガイ。
二人は国を出て目的地である帝都悪所へと歩き出した。
「しかし、バサラ様自身がわざわざ悪所を視察する為とはいえ、旅をするとは珍しいですな。
飛雷針の術でマーキングしたクナイを再不斬か白に送れば一瞬で飛べるではありませんか」
「たまにはな……自分の足で歩いてみたくなるものだ」
ガイの指摘に一瞬足を止めて、答えるバサラ。
冷静にそれっぽく答えたが、『その手があったかーーー!!』と、内心は図星を付かれて後悔していた。
そんなバサラに対し『さすがですな!』と感心するガイ。
もし、ガイが彼の図星を付いた時、彼の顔を見ていれば気づいたかもしれないが、残念な事にガイは彼の後ろに居た為に気づけなかった。
日の国を出た、ガイとバサラは歩き続けた。
食事時には保存食以外の食料を調達する為に、ハンティングを楽しんだり、夜にはバサラが木遁で作った小屋で眠る。
問題なく進む二人の旅路であったが、五日目の夜。
二人が居る小屋を監視する者達が居た。
………。
岩陰に隠れて監視する8人の男たち。
彼らは白と再不斬が支配する悪所で身の危険を感じて逃げ出した、強姦魔や度重なる盗みを働いた男達だ。
今の悪所は少しずつ治安が向上し、犯罪件数が半分にまで落ちていき、飢えていた弱い人々は再不斬と白に守られ、生きていく強さを身に付ける為に修行をする。
そして、強くなった彼らは悪所の警備部隊『鬼子』となって、ゴクドーと共に鬼人王の名において犯罪者を取り締まる。
殺しには処刑を、盗みには二度と盗めぬように指を切り、強姦には下半身のジョニーを切る。
もし、現在の悪所に彼らが残っていたら、全員がジョニーと永遠のお別れをしていただろう。
「ちきしょう!!何で俺達がこんな目に合わなくちゃならないんだ!!」
「悪所は、力こそが全だ。襲われて犯される弱い奴が悪いのに!!」
集団の力で好き勝手やって来た男達の身勝手は悪所を出ただけで、治るはずもなく悪態を付く彼らは必然的に盗賊へと身を落としていた。
「しかし、あの小屋はどうしたんだ?ここには小屋なんて建っていなかったはずだぞ」
「そんなことは、どうでもいいだろ。それよりも報酬が問題だ。
初めての獲物が男二人だ。女が居れば楽しめたんだが……」
「それはまた今度でもいいだろう。今俺達に必要なのは食料と寝床だ。
あの小屋と食料を奪えばしばらくは、生きていける」
「俺は男でも行けるぞ?緑色の服を着た太い眉毛の男が好みだな」
「「「「「「「………」」」」」」」
男二人の獲物に、喜びの表情を見せる男。
彼は男も女もいける両刀使いだった。
仲間の知りたくもなかった性癖を知った七人の男たちは一斉に尻を抑え、眉毛の男に同情した。
☆☆☆
「アイツら……どうしますか?」
「悪所から逃げ出したと言っていたし、言動もクズそのもの。
盗賊なんぞ、百害あって一利なし。殺しても問題あるまい」
男達の気配に気が付いた二人は、小屋の中にバサラの影分身を置いて脱出し、遠くから襲撃しようと小屋を囲おうとする男達をガイとバサラは尻を抑えながら見ていた。
しかし、これはいい機会なのではなかろうか?
今は大丈夫かもしれないが、いつかは自身の手で人間を殺す日がやってくる。
もうここは平和な日本ではない。
戦わなければ殺される異世界なのだ。
オッパイが大好きで、ポンコツなバサラだがこの瞬間だけはかなり真剣な表情を浮かべていた。
これはいい機会だと、バサラは日本に居た自分との決別の意味を込めて印を結んで術を発動させた。
火遁・豪火滅却!!
僅かなチャクラ消費を感じたバサラの口から放たれた紅蓮の豪火は夜を照らす炎の津波となって、小屋ごと男達を飲み込み滅却した。
しばらく燃え続けた炎が消え、目の前は地面が燻る焼野原。
その光景を見たバサラはゲーム時代と変わらぬ威力に感心しながら口を開いた。
「やり過ぎたな。次はもう少し弱い術を使うとしよう」
新たに小屋を作り、寝床を確保するバサラにガイは……。
俺…必要だったかな?
今の術でゲーム時代での異常な強さと火力を誇ったバサラの強さを思い出し、自身の必要性に前向きな彼が数秒間だけ悩んでいた。
ただ、すぐに悩みを忘れて飯を食って寝た彼の精神は実に羨ましく思う。
目的地まで残りわずか……。
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