何という事だ。第3位階の天使がまるで歯が立たないなんて!
「あれは―――魔神だ。あんな奴にどう立ち向かえと…ハッ」
ニグンは懐から青い水晶を取り出し、声高らかに叫ぶ。
「最高位天使を召喚するッ!見よ、この尊き姿を!〈威光の主天使/ドミニオン・オーソリティ〉!」
「不味いな・・・」
ユグドラシルのドミニオンは、いわゆる中位モンスター。50lvもない強さだが、今のブロリーにはかなり厄介な相手だった。それもそのはず、サイヤ人は魔法防御が圧倒的に低い種族な上、あの時代のブロリーは凶悪なPK(殺戮)の金字塔のようなPLだった。そのせいでカルマ値がマイナスに振り切っていたのだ。
(ドミニオンはカルマ値によるダメージ変動が起こる魔法があるから、このままだと恐らく負けるだろうな――――ならば、賭けに出ようか。)
「恐れ入ったか、この化け物がぁ!・・・ふっはっは!ここまでよく頑張ったと褒めてやりたい所だが――
――それもここまでだ、神の御業を食らうがいい!〈善なる極撃/ホーリー・スマイト 〉を放て!」
ドミニオンが一瞬煌めき、聖なる光が滝のように打ち付けてくる。メッチャ痛てぇ!
「ぐふぁ!・・・・・これがダメージか、想像以上だな。」
「呑気な戯言をペラペラと、―――もう一発放て!」
また聖なる光が打ち付けられる。しかし、さっきよりも威力が低いようだ。
「ウグッ!・・・イエローゾーンと言った所か。どうしよう凄く痛い。」
「い、いい加減くたばれぇ!〈善なる極撃/ホーリー・スマイト〉だぁ!!」
2度あることは3度あるというが、また降り注ぐ光の雨。HPはレッドゾーンに達したのだろう。体中ボロボロで、意識も朦朧としてきた。
「さ、流石に、三度目は、キツイな・・・死にそうだ」
「やっとくたばるか木偶の坊め!貴様には随分と手を焼かされたな―――だが、これで終わりだ!〈威光の主天使〉!アイツに止めを刺せぇ!」
ゆっくりとドミニオンは動き出す。恐らくMPが切れたのだろう。それとも、最後は直接攻撃をするのがこの天使の流儀なのか。
(3、2、1…今だ!!)
ブロリーは死にかけの身体に鞭を打って起き上がり――――仙豆を1粒取り出し、咀嚼する。
モゴモゴ・・・ゴクン!
「ここで無様に這いつくばれ!せめてもの情けに、一思いに殺してやる!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「その程度の天使で、俺を倒せると思っていたのか?」ゴゴゴ
先程まで虫の息だった男が、爆発――そう思わせるような息の吹き返し方をしたのだ。髪が青味がかり、身体からは大地を揺るがすエネルギーが溢れていた。
「なっなななんだその光は!どんな魔法を使ったのだ――ハッ!威光の主天使よ!早く止めを刺すんだ!」
「やはりか。どうやら、アクティブスキルだけでなく、パッシブスキルもユグドラシルのままの様だな。…〈滅殺砲/イレイザーキャノン〉!!」ポピ―ン
ブロリーの左手から、緑色の球体―――猪を狩った時の数倍はあろう巨大なエネルギー弾が飛び出した。それは物凄いスピードで威光の主天使にぶつかり、上半身を跡形もなく消し飛ばす。
「ば、馬っ鹿ーなぁぁぁぁぁ!!最高位天使がやられただとぉぉぉ!??あり得んンンンン!!!」
ニグンは狂ったように喚き散らし、これ以上ないほど狼狽している。
「――時は満ちたぁ!全軍突撃ィ!!」
間髪入れずにガゼフの部隊が取り囲む。最後くらいは戦いに貢献したかろう、面子もあるだろうし。
「ブロリー殿。ご協力、深く感謝する。君がいなければ私は今頃死んでいただろう。――この件が無事片付いたら、私にできる最大限のお礼をしよう。また会えるのを心待ちにしている。では、失礼!」
こうして、スレイン法国の特殊部隊、陽光聖典との戦いは、幕を閉じた。
この戦いの一部始終がスレイン法国の最深部にて監視されていた事など、対策スキルのないブロリーには知る由も無かったのである・・・
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。オーバーロードの中では全然インパクトのないお話でしたかね?とにかく、仙豆は使ったものの勝ててよかったです。と、他人事のように感じます。
ここからは後書きというより設定の後付けです。
サイヤ人という種族は、逆境の中、死の淵から蘇ると強くなる種族です。その設定からユグドラシルでは、HPがレッドゾーンから回復すると、一時的にバフが付くというパッシブスキルがありました。この世界では…