宇宙難民地球人   作:藤種沟

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学級閉鎖になってしまいました‼︎

我がクラスが学級閉鎖‼︎

なんてこった‼︎

オオオオオオオオオオノオオオオオオオオオオ‼︎

(皆さんもインフルエンザには気をつけましょう)


動物の星

「何?宇宙から何者かがやってきた?」

 

「はい‼︎勝手にテントを張り、野営しています‼︎」

 

「………ふん。また汚らわしいのが入ってきたね。………全くしょうがないね………」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちはいつものように、政府が張った即席テントで固まって喋っていた。

 

この星に来てもうすぐ一ヶ月経つ。

世界の首脳たちは、未だ今後のことを決めあぐねているらしい。

 

まあそんな難しい話はせず、たわいもないことを話していると、テントの中に犬が入ってきた。

 

可愛いトイプードルである。どんぐりみたいな目が可愛らしい。

 

「わぁ可愛い‼︎」

 

「わあ、フサフサしてる〜」

 

「クゥ〜ン…………」

 

元気がない。

一体どうしたのだろうか。

 

「多分………飼い主と離れ離れになっちゃったんじゃないか?この騒ぎで。」

 

ジョーダンが犬の頭をなでながら言う。

 

首輪がついているから、飼い主がいたことは間違いない。

 

「よし、じゃあこういう動物を扱っている機関があるテントに、この子を連れて行こう。」

 

俺がそう提案すると、皆賛同してくれたので、出かける準備をする。

 

「首輪ノ裏トカに飼い主の名前カイテないかナ〜………?」

 

ショウちゃんが首輪の裏を見る。

 

「…………‼︎」

 

その途端、ショウちゃんの顔の表情が真剣なものになる。

 

「どうしたの?ショウ?」

 

マリアムが尋ねる。

 

「エ?う、ううん…なんでもないよ………」

 

皆の視線がショウちゃんに集まる。

必死に笑顔をつくろっているが、絶対なにかを隠している。

 

するとショウちゃんは、

 

「そ、そうだ‼︎この子アタシが預かりマス‼︎そ、ソ〜ネェ〜…な、名前はチロ‼︎ど、どう?イイ名前デショ?」

 

「…………は?」

 

皆そう思った。

何をぬかしてるんだこの人。

 

「やっぱ怪しいぜ。この子………」

 

康裕が俺の耳元で囁く。

 

すると………

 

「ワンワン‼︎」

 

チロが大きな声で吠え始めた。

 

その直後、ドウッと何かが倒れる音がする。

 

「どうしたんだ⁉︎」

 

皆、音のする方に視線を向ける。

 

 

 

 

 

「Hey‼︎Charles‼︎Aer you OK?」

 

「チャールズ、だ、大丈夫⁉︎」

 

そこには、青い顔をして倒れる、チャールズの姿があった。

 

「チャールズ‼︎しっかりせい‼︎俺はここにおるぞ‼︎」

 

康裕がチャールズのほっぺたをバチバチと叩く音が聞こえる。

 

「チャールズ‼︎」

 

俺は、少ししか英語は話せないものの、心の広いチャールズはその片言英語を噛み砕いてくれ、今では俺とも仲が良い。

 

「おい‼︎チャールズ‼︎」

 

俺もとりあえず康裕と一緒にチャールズのほっぺたを叩く。

 

「ドイテ‼︎」

 

ショウちゃんは大きなバケツを持ってきた。

 

バシャッ‼︎

 

チャールズが一瞬でビチャビチャになる。

 

すると………

 

 

 

 

 

 

「おお、起きたか。チャールズ‼︎」

 

「大丈夫か?」

 

「Charles‼︎Are you all right now?」

 

「………………」

 

チャールズはむくりと起きたものの、眉間にしわを寄せ、険しい顔つきで黙っている。

 

「Ah………Ah………‼︎‼︎」

 

「待て‼︎何か変だぞ‼︎」

 

しばらくうなっていたチャールズはいきなり暴れだした。

 

「Je m'appelle Charles‼︎Ou sont les chateau‼︎」

 

「⁉︎」

 

「何だ⁉︎何て言った?」

 

「ジョーダン‼︎今なんて?」

 

俺と康裕はジョーダンに目を向ける。

しかし、ジョーダンは首を横に振っていた。

 

「わ、分からない。た、多分英語じゃない。」

 

俺と康裕はマリアムやショウちゃんにも目を向けたが困惑した表情であった。

 

「多分これフランス語だと思うわ。ほら、チャールズってフランス人だから………。それにお父さんの取引相手のフランス人がこんな言葉喋ってた。」

 

マリアムは、すぐに冷静さを取り戻し、そう呟いた。

 

「Ou sont les chateau⁉︎」

 

そう叫びながら、チャールズはテントを飛び出し、なんと宙に浮いたではないか⁉︎

 

「な⁉︎」

 

「チャールズ‼︎降りてこい‼︎」

 

「一体どういうことだ⁉︎」

 

「Ou est chateau‼︎」

 

チャールズは不気味に叫びながら空を飛ぶ。

というより空中で何かの力に引っ張られているような感じだ。

 

「ああ、待てチャールズ‼︎」

 

「追いかけよう‼︎」

 

チャールズは、ぐんぐんと引っ張られていく。

 

「待て〜‼︎」

 

空中だから誰もチャールズを止めることはできず、ただただ追いかけることしかできなかった。

 

「ワンワン‼︎」

 

「チロ‼︎ちょっと待ってて‼︎すぐ戻ってくるから‼︎」

 

「クゥ〜ン…………」

 

 

 

 

山を越え、小川をとび越え、原っぱを駆け………

 

「ふぅふぅ………空を引っ張られてるチャールズは良いけど………はぁはぁ…走ってる俺らは大変だよな………はぁはぁ…」

 

全くである。

 

 

 

しばらく走っていると、何やら町のようなものが見えてきた。

 

「見て‼︎町よ‼︎」

 

この星にも町があるのか、と思いつつそこに向かうチャールズを追いかける。

 

「待て〜‼︎あの町へ何しに行く気だ⁉︎」

 

「¥%$÷#〒€〆…*°+々@”&………(とにかく何かをぶつぶつ言っている)」

 

駄目だ。チャールズには聞こえていない。

 

そうこうしているうちに町に入る。

 

そこは見た感じ普通の町である。しかし………

 

「ワンワン、キャンキャン♪」

 

「ニャーオ、ニャオニャオ。」

 

「………ねぇ…なんかわんちゃんが屋台出してるわよ………」

 

 

 

 

 

 

市場を越え、大通りを越え、チャールズはやっと止まった。

 

「はぁはぁ…やっと止まった………」

 

そこは大きな城である。

 

中世ヨーロッパ式のその城は、四方を堀に囲まれ、入り口の門に一本の橋が架かるのみであった。

 

しかも、その門で、甲冑を身にまとった犬が門番をしていた。

 

犬の門番がこちらに気づき、近づいてくる。

 

「ワンワン‼︎ウゥ〜ワンワン‼︎」

 

とりあえず事情を説明する。

 

「いや、僕たちはただ友達を追いかけてきただけ………」

 

「バウバウ‼︎ウゥ〜………」

 

通じていない。

 

「アタシのスマホに『ペットと会話アプリ』ってノガありますケド使ウ?」

 

なんだそのアプリ。

 

ショウちゃんはスマホでその謎のアプリを開くとその犬の門番にスマホを向けた。

 

「ウゥ〜バウバウ‼︎ワン‼︎」

 

→なんだ貴様ら‼︎ここは女王様の宮殿だぞ‼︎貴様らのような猿のできそこないみたいなのが来る場所じゃない‼︎とっとと立ち去れぃ‼︎

 

スマホにそのような文字が表示される。

猿のできそこないって………

 

「ワンワン‼︎」

 

→とっとと立ち去れぃ‼︎

 

 

 

 

 

 

「いいよ、入らせておやり。そいつらはあたしが呼んだんだ。クロ‼︎入れておやり。」

 

「⁉︎」

 

どこからか声が聞こえる。しわがれたおばあさんの声だ。

 

「ク〜ン………キャウ〜ン………」

 

「まあそう言わないでおくれよ。あたしだって好きでやってるんじゃないんだから。」

 

門番の犬が渋々門を開ける。

ギギギと大きな門が開かれる。

 

チャールズは高度を下げると門の中に引っ張られる。

 

「あ‼︎待て‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

城の中にはたくさんの部屋があったが、チャールズは迷わず飛んでいく。あっちへ行ったりこっちへ行ったり………。やはり、何ものかに引っ張られているのだろうか。

さらに驚くのは、チャールズの飛ぶところは、勝手に扉が開き、道を開けてくれるのだ‼︎

魔法にでもかかっているのか。

 

 

 

 

しばらく進むとまた大きな扉の前に出る。

 

キィ〜………

 

その扉も、勝手にゆっくりと開かれる。

 

チャールズは、その中に吸い込まれるように進んでいく。

 

「あら。なんだ地球人かい。」

 

扉の中には縦にも横にも大きな二頭身くらいのおばあさんが椅子にふんぞり返りながら座っていた。

 

「Ah………Ah………‼︎」

 

うなるチャールズにその謎の老婆は手のひらを向ける。

 

「いつまで魔法にかかってんだいこのマヌケ‼︎」

 

そうおばあさんが叫ぶと、宙に浮いていたチャールズはどさっと落ちた。

 

「大丈夫か⁉︎」

 

仰向けに倒れたチャールズは、いつもの普通の目つきに戻っている。

 

「………What………Where are we?」

 

「………Well…Do you remember?」

 

「………No…」

 

俺にはチャールズとジョーダンとマリアムとショウちゃんの英語の会話は全く分からないが、どうやら今までの事情を説明しているらしい。時折、チャールズは驚いた、というような表情を見せる。

 

「もう終わったかい?」

 

大きな老婆が低い声で話しかける。

言葉が通じるのだろうか。

 

「あんたたちの耳に魔法をかけてあたしの言葉が通じるようにしてあるのさ。多分あんたたちの母国語が聞こえると思うけどね。」

 

なるほど………。

この老人はそんなことまでできるのか⁉︎

 

背筋に緊張が走る。

 

魔法使いというものに、俺は恐怖を感じる。

 

「やいでっかいおばさん‼︎なんでチャールズにあんな事したんだ‼︎」

 

康裕がいきなり叫ぶ。

なんと無鉄砲な事だろうか。

 

「でっかいおばさんじゃない‼︎あたしの名前はオウナ。この星の支配者さ。

なんでその子に魔法をかけたかって?あんたたちをこっちに呼ぶためさ。」

 

オウナは淡々と質問に答える。

 

「なんでそんなことをする⁉︎」

 

康裕はチャールズに変な魔法をかけられた怒りからか語気が荒い。

 

「あんたたちが何者か知りたかったからさ。いきなり人の星にやってきてテント張るなんて無礼な民族はどこの誰かってね。」

 

オウナはいたって冷静である。

 

「よりによって地球人なんかが来るとはね。………けがらわしい。」

 

オウナは鼻をつまむような仕草をする。

 

「なぜチャールズを選んだ‼︎地球人なんかたくさんいたろう⁉︎」

 

「一番マヌケそうで引っかかりそうだったからさ。案の定あんなにまんまと引っかかる奴は五百年生きてて生まれて初めて見たよ。」

 

「‼︎」

 

チャールズがオウナに飛びかかろうとする。

ジョーダンがそれを必死に抑えているが、チャールズも康裕に負けず劣らず無鉄砲なようである。

 

「あの…なんでこの星には地球の動物たちが文明を持って生活してるんですか?」

 

マリアムがおそるおそる尋ねる。

 

確かに俺も疑問に思った。

ここに来る途中、市場や町を通ったが、そこにいたのは服を着、車を運転する動物たちだったのだ。

 

オウナはマリアムをジロジロと観察してから言った。

 

「あたしが地球から連れてきたんだ。人間の勝手で死んでいった動物たちを魔法で蘇らせてこの星に連れてきたんだ。

 

ペットとして飼われていたのに捨てられて、さまよった挙句餓死した子。

 

ペットショップで売れ残り、挙句の果てに殺処分された子。

 

人間同士の戦争に巻き込まれて、爆撃とかで死んだ子。

 

食物連鎖の頂点に立つ人間に捕まって、料理はされたのに食べてもらえず残飯として処理されてしまった子。

 

例を挙げたらキリがない。

ここの子たちは人間の犯した過ちをよく分かってる。

 

だから文明を持っても滅びることなくこうしてうまくやってけてるんだ。

 

自分で自分の星をメチャクチャにしたどっかの民族とは違ってね。」

 

オウナは眼光を鋭くして言った。

 

「今度はこちらが質問する番だね。…………なんで地球人がこんなところに居るんだい。しかもさしあたり全人類が宇宙に来たみたいだね。なぜだい?」

 

オウナは立ち上がると、ゆっくりと俺の頭に手を置いた。

 

しばらく目を閉じて、何か考える素振りをした後、手を外す。

 

「ふん‼︎地球人が自分の星をメチャクチャにしてるとは聞いていたけどまさかそれで地球を出るとはねぇ‼︎動物たちの犠牲の上に成り立っていた文明もついに終わったかい‼︎今度は宇宙を破壊しにやってきたのかい?」

 

「⁉︎」

 

オウナは頭に手を置いただけでそれまでの経緯まで分かるのか⁉︎

 

「…………はっきり言っておくけどね。ここの動物たちは人間をとても憎んでるからね。地球人がテント張って野営してるなんて知れたらボコボコにやられるだろうね。」

 

「何⁉︎」

 

それは大変なことである。

 

「オウナさん、どうにかなりませんか?」

 

マリアムが必死に懇願する。

 

それを見て、オウナは「フン!」と鼻で笑った後こう言った。

 

「安心しな。勝手に地球人を襲わせたりはしないさ。」

 

さっきまで地球人のことをギャーギャー言っていたが、さすがに星の支配者とあって秩序は守るらしい。

 

皆ホッと胸をなでおろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

喜べたのは束の間であった。

 

「だがあたしの命令のもとで地球人を襲わせることは可能さ。」

 

「…………‼︎」

 

オウナの言葉に皆固まる。

 

「エレ将軍‼︎いるかい⁉︎」

 

「はっ‼︎ここに‼︎」

 

オウナが叫ぶと、甲冑に身を包んだ象がやってきた。

 

「エレ将軍、今から動物兵を率いて地球人のところへ行き、奴らを皆殺しにしてらっしゃい‼︎」

 

「御意。」

 

象が一礼して行こうとした瞬間、

 

「もう我慢できん‼︎」

 

「Me too‼︎」

 

と康裕とチャールズがオウナに向かって突進した。

 

しかしオウナは余裕の表情である。

 

「バッ‼︎」

 

オウナが両手を広げて叫ぶ。

 

そう思った瞬間、俺の頬の横を、康裕とチャールズが飛んでいった。

 

「痛っ…………‼︎」

 

二人は壁に叩きつけられたようだ。

 

オウナは、その両手から何かのエネルギーを出し、二人を吹き飛ばしたのか⁉︎

 

「あんたらにあたしの子供たちの苦しみが分かるんかい‼︎虐げられ、忌み嫌われ、追い詰められ、無念の最期を迎えたあの子たちの苦しみが‼︎それでまだ自分たちの命が惜しいんかい‼︎散々動物の命を奪い、自然を壊したくせに‼︎」

 

オウナの毛が逆立つ。

目を大きく見開き、その怒りにとらわれた眼球をこちらにむける。

 

オウナはエレ将軍に早く行け、というジェスチャーをすると、エレ将軍が部屋を出ようとする。

 

しばらく、目の前で起こる事に唖然としていた俺は、とっさにそのエレ将軍とやらの前に立つ。

 

自分でも、何か考えてそうした訳じゃないが、とにかく部屋のドアの前に立つ。

 

「やめろ‼︎もし行くんなら俺を倒してから行け‼︎」

俺はとっさに自分の刀を抜く。

 

するとジョーダンも持っていた銃をエレ将軍の背中に構え、その巨体を威嚇する。

 

「ええいまどろっこしい‼︎みんな‼︎こいつらを抑えるんだよ‼︎」

 

オウナが大声を出すと、城中にいた犬の衛兵たちが部屋にやってくる。

 

「ワンワン‼︎」

 

犬の衛兵たちは、まず壁のところで倒れている康裕とチャールズに襲いかかる。

 

「ワンワン‼︎」

 

「あ‼︎チャールズを離せ‼︎」

 

「ウ〜バウバウ‼︎」

 

「Dhaaaaa‼︎」

 

危険を察知したのか、二人はピョンと起き上がり、犬の衛兵たちを追い払う。

 

「ええい何してるんだい‼︎そこで縮こまってる二人を先に始末しな‼︎そうすりゃ他のもおとなしくなるよ‼︎」

 

そう怒鳴られた衛兵たちは康裕とチャールズから離れ、隅の方で怯えているマリアムとショウちゃんの方に矛先を向ける。

 

「あぁ‼︎ショウちゃん‼︎」

 

俺はとっさに女子二人のところに駆けつける。

 

「おら犬ども‼︎この子たちに指一本触れてみろ‼︎切り捨ててやる‼︎」

 

幸い、相手も槍しか持っていない。

刀でも十分相手できるだろう。

 

「こらあんたたち‼︎頭悪いね‼︎皆その女子んとこ行ってどうすんだい‼︎エレ将軍の援護もするんだよ‼︎」

 

オウナは本当に犬たちを可愛がっているのだろうか。

 

そんなことは気にも留めず、衛兵たちはジョーダンのところへ向かう。

 

エレ将軍も剣を抜いており、ジョーダン一人じゃ対処できそうもない。チャールズと康裕が援護にまわっているが、三人でも対処できないだろう。

 

かと言って俺もここから動くと女子二人は捕まってしまう。

 

当然ながら、女子二人は武器など持っていない。

 

このままでは全滅だ。

 

このまま人類がやられるのを止められず終わってしまうのか。

 

「さあ‼︎やっておしまい‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワンワン‼︎」

 

それは突然のことだった。

 

「チ、チロ⁉︎」

 

「ワン‼︎」

 

チロが部屋の中を駆け回り、ショウちゃんのところで落ち着く。

 

あまりに突然のことで、部屋の中は、しんと静まり返る。

 

犬の番兵たちは同じ犬同士だからか、チロに手を出さない。

 

「なんだいこの子は?」

 

オウナも不思議そうな目で見つめている。

 

当のショウちゃんも驚いているのだから、オウナが疑問を持っても無理はない。ショウちゃんを追いかけてこの城へやってきたのだろうか。

 

「こら待て‼︎ここは女王の城だぞ‼︎」

 

先程の門の番をしていた犬がチロを追いかけ部屋に入ってくる。

 

「す、すいません。こいつ入るなというのに城に入っちゃて…………」

 

「クゥ〜ン…………」

 

オウナに必死に弁明する門番をよそに、チロは飼い主の顔をペロペロとなめる。

 

「チロ‼︎ヤメテ‼︎アハハ‼︎」

 

ショウちゃんはなんか楽しそうにチロと戯れているが、今の状況を忘れてはいないだろうか。

 

犬の衛兵たちはしばらく呆然としていたが、とっさに我に返り、槍をこちらに向けてくる。

 

「ウゥ〜バウバウ‼︎」

 

チロがショウちゃんのひざから抜け、衛兵たちに吠える。

 

しかし、いかつい犬の衛兵たちに、可愛いトイプードルが勝てるとは思えない。

 

チロが吠えたのに反応したのか、衛兵たちがいっせいに襲いかかってくる。

 

「バウバウバウバウ‼︎」

 

「ワンワンワンワン‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

「そこまで‼︎」

 

いきなり叫んだオウナに、皆の視線が向けられる。

 

「もういい。エレ将軍も自分の持ち場に戻んな。地球人狩りはなしだ。」

 

「…………⁉︎」

 

「あんたたちも自分の持ち場に帰んな‼︎この人間どもも帰してやるんだよ‼︎」

 

オウナが犬の衛兵たちに指示する。

 

「ワンワン‼︎」

 

「バウバウ‼︎」

 

衛兵たちがオウナに抗議をしている。

 

こちらも疑問だ。

なぜいきなり自分たちを解放する気になったのだろうか。

 

「馬鹿だねあんたたちは。あの地球人どもの船にも動物たちは乗ってるんだよ。このチロとかいう子みたいにね。その状況で地球人狩りなんかしたら宇宙船の中の子達の飼い主がいなくなっちゃうよ。

飼い主がいなくなって苦労したあんたたちなら分かるだろう?

それに…………このチロとかいう子の飼い主を目の前で殺したくはなかった…………」

 

オウナは衛兵たちの頭をなでながら諭している。

 

どうやら、オウナはショウちゃんをチロの飼い主だと感違いしているらしい。

 

そして、チロの方へ駆け寄り、

 

「飼い主思いのわんちゃん。これからも人間と仲良く暮らすんだよ。」

 

と頭をなでた。

 

そして俺たちの方を向き、

 

「今回はこの子に免じて許してやるよ。でもまた人間たちが動物を不幸にする文明をつくりあげたら承知しないよ‼︎」

 

と言い放った。

 

「ほら、分かったらさっさと消えな。」

 

オウナは手で俺たちを追い払うジェスチャーをする。

 

俺たちはオウナに一礼すると、部屋を後にした。

 

 

 

 

「いやぁ、しかしオウナがショウちゃんをチロの飼い主だと感違いしてくれて助かったな。」

 

「全くだな。………で、結局このわんちゃんどうすんだ?」

 

「え………あ、アタシが飼うノ‼︎」

 

彼らはまだ気づいていなかった。

この星に迫る、大いなる脅威に。

 

 

 




チャールズの英語のセリフを見た英語話せる友達が

「この英語おかしいwww」

とぬかしてきました。

まあ僕の英語が燃えるゴミレベルということもあるのですが、登場人物にはイギリス人もアメリカ人もいません。
つまり母国語が英語の人物がいないのです。
(チャールズ:フランス人、ジョーダン:イタリア人、ショウ・ロンポウ:中国人、マリアム:アラブ首長国連邦人)

ですのでたとえ彼らの英語がおかしくても目をつむってください(-_-)

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