今度からはもう少し間を縮めようと思います。
いい加減な作者ですが、この小説、どうぞよろしくお願いします‼︎
しばらくすると、俺たちも脱出用ボートに乗ることができた。
しかし、先にボートに乗ったおばあちゃんとは、違うボートである。
「大丈夫かな………」
と思ったが、脱出用ボートの即席テレビで、総理大臣が会見し、このボートはひとまずどこかの星に不時着します、急いでボートに乗って家族と離れ離れになった方もいらっしゃると思いますが、すぐに会えます、と言ったのでひとまず安心した。
「なあ、ちょっといいかな………」
ジョーダンがおもむろに口を開く。
「俺、マリアムを助けにいく途中で、エイリアンたちの部隊の隊長みたいなの見かけたんだ。」
「隊長………?」
俺はジョーダンに聞き返す。
「ああ、その隊長はどうも他の奴とは違うんだ………その………ロボット…みたいな………」
「ロボット?」
「そう。そして、胸に『KOKURYU』って書いてあったんだ。」
「黒龍⁉︎」
マリアムがその言葉に反応する。
「ど、どうしたのマリアム?」
あまりにいきなり叫ぶもんだから、思わず俺は飛び上がってしまった。
「あなた知らないの?黒龍重工。日本の大手AI企業よ。あたしのお父さんの会社も、黒龍重工のAI使ってた。」
「何⁉︎ってことはあの襲撃してきたエイリアンを指揮してたのは地球のAIだったのか⁉︎」
さっきまで横で寝ていた康裕が飛び起きてそう叫ぶ。
「それはナイと思イマスよ。」
ショウちゃんが口を挟む。
「その黒龍重工はズット前、ツブレタもの。」
「え?なんでそれを?」
「え………ソレは………その………ス、スマホで調べマシタ‼︎」
ショウちゃんは手に持ってたスマホを高らかと掲げる。
ショウちゃんは汗をダアダアと流している。
「ア、アタシも黒龍の文字見たカラ調べたンダけど、やっぱり見間違えたのカナ?ハハハ‼︎」
「………」
康裕が俺のところに寄ってきて言う。
「なんか怪しいぜ、ショウ・ロンポウとかいうあの子………」
「え?そ、そうかな〜」
俺もなんか怪しいな、とは思ったけど、どうも素直に疑えない。
なんか特別な感情を抱いているような………
〜脱出用ボート内、桂首相の部屋〜
コンコン
「桂君、入るよ。」
「ああ、どうぞ。」
カチャ………
「よう、桂君、無事かい。」
「ああ東園寺君か。君も無事で何よりだ。」
東園寺 公麿《ひがしそのでら きみまろ》。桂と共に、元老党のトップに君臨する政界のドンである。今は日本の外務大臣を務めている。
「どうした桂君、元気がないな。自慢のカツラをエイリアンどもに光線銃で撃たれたか。」
「カツラなら被っとるわ!………そんなことじゃない。少し、話を聞いてくれないか。」
「………?」
「………で、君はエイリアンのトップが、その黒龍重工のAIだ、と言いたいのか?」
「ああ。私がこの脱出用ボートにくる途中、偶然エイリアンどもの隊長らしきものを見てな。そいつの胸に黒龍重工のエンブレムがあったんだ。」
「でも黒龍重工っつったらずいぶん前に倒産したじゃあないか。」
「だから余計引っかかるんだ。」
「桂君、君少し疲れてたんじゃないか?」
「いや、そんなことはない。………東園寺君、君、あのエイリアンたちの会話を聞いたか?」
「ああ。聞いたとも。あっちに地球人がいるだのおまえはあっちに行けだの………」
「何語で話してた?」
「そりゃ、私が分かったんなら日本語…………………⁉︎」
東園寺は桂の言わんとすることが全て理解できた。
「そうだ。やつらは宇宙人のはずなのに日本語を話してたんだ。」
「………………」
東園寺もなにか考え込んでいる。
しばらく黙っていた後、
「これからどうするつもりだね?」
と聞いた。
「先ほど、我々よりも先に襲撃されたアメリカと電話で会談してね、一旦どこかの星に不時着することになった。」
「そうか………他に襲撃された国はあるのか。」
「まだ情報はきていない。」
「不時着した後は?」
「どうやらその星で各国の首脳が集まって今後の事を話し合うそうだ。」
「そうか。」
”もうすぐ不時着します。降りる準備をして下さい。”
アナウンスが聞こえ、しばらくすると、とある惑星についた。
皆、脱出用ボートを降りていく。今日はひとまずここで野宿するらしい。
俺はボートから降りると、他のボートから出る人の波からおばあちゃんを探していた。
しかしおばあちゃんは見つからない。
「なあ康裕、」
「どうした光。」
「爆発寸前の船から脱出した脱出用ボートって何台あったっけ?」
「え………さあなぁ………」
「Ten.」
チャールズが後ろで俺に教えてくれた。
さらにチャールズは、
「There are nine boat here.(ここには九台のボートしかない)」
と言った。
「何ぃ⁉︎一体どういうことだよチャールズ‼︎おばあちゃんの乗ったボートはどこ行ったんだよ‼︎」
俺はチャールズの胸ぐらをつかんでゆさゆさとゆする。
「お、落ち着けよ光‼︎」
康裕が止めに入る。
「なんだなんだどうした光‼︎」
ジョーダンも止めに入る。
康裕が俺を押さえ、ジョーダンがチャールズと俺の通訳になる。
「本当は九台しかなかったんじゃないかとチャールズに言ってくれ。」
ペラペラペラペラ
「いや、チャールズは確かに十台あったと言ってる。俺もたしか十台あったと思うがな………」
「十台よ。」
横からマリアムが口を挟む。
「一台の宇宙船にはきちんと十台の脱出用ボートがないとだめだという国際的な取り決めがあるわ。間違いない。」
そう言われたら頷くしかない。
「じゃあ俺のおばあちゃんはどこに行ったんだ?」
周りを見ると俺たちと同じような会話をしている人達がいる。
「おい、脱出用ボート一台なくね?」
「本当だ‼︎一台到着してないわ‼︎」
「どういうことだ‼︎一緒に飛んでたんじゃないのか⁉︎」
「桂君、どうしたことだ⁉︎脱出用ボートがまだ一台到着してない‼︎」
「ああ、分かってる。」
即席で張られた政府要人のテントは大騒ぎだ。
するとしばらくして大慌てで一人の男がテントに入って来た。
「総理‼︎日本船団を襲った集団の犯人と名乗る人物が電話をかけてきました‼︎」
「何ぃ⁉︎」
「どうやら、現在行方不明の脱出用ボート一台についても何か話しているようです‼︎」
「分かった‼︎すぐに出よう‼︎」
桂は、即席テントに設置された電話で話をする。
「私が日本国総理大臣桂取太だ。」
「私が君たち日本船団およびその他のアメリカ船団などを襲った犯人だ。」
その犯人は、変声機を使ったような変な声をしている。
「君たちは脱出用ボートが一台来なくてたいそう心配しているだろうな。」
「なんだ‼︎なにか知っているのか⁉︎」
「ああ。なにしろ我々は、その脱出用ボートをそっくりそのまま誘拐したんだからな。」
「何ぃ⁉︎」
「安心しろ。殺すつもりはない。彼らは大切なお客様だからな。」
「………我々を襲って、どうしようと言うのかね。」
「ふふふ、さあな。自分の頭で考えるんだな。」
「誘拐したのはその脱出用ボートだけか⁉︎」
「ああ。日本船団七台。その船に搭載されている脱出用ボート合計七十台のうち、誘拐したのは五番の船の脱出用ボート一台だけだ。」
「なぜその一台を誘拐した⁉︎」
「誘拐しやすかったんでね。」
「こんな真似が許されると思っているのか⁉︎」
「ふん。おまえら地球人どもが私にした仕打ちに比べればこれくらい………」
「人質を解放しろ‼︎金なら払う‼︎」
「ふ、最後は金か。しょせん人間は金の奴隷。そんなはした金もらう筋合いはないね。」
「ならば何が目的なんだ‼︎」
「ふ………さっきも理由を聞かれたな。そこまで聞きたいなら教えてやるよ。そうだな………地球人への復讐ってところかな。ま、とにかく言いたかったのは誘拐したぞ、てことだけだ。電話を切るぞ。」
「待て‼︎おまえは………もしかしたら地球の黒龍重工の関係者か………?」
「………………電話を切るぞ………ガチャ‼︎ツーツーツー…」
「むむむむむ………」
しばらくすると、残りの日本船団の脱出用ボートが次々と到着した。
しかし、おばあちゃんの乗った船はない。
混乱を招くから、と政府はあまり情報を公開しない。
秘密にしないといけないくらい、おばあちゃんは大変なことになっているのだ。
聞くところによると、アメリカはじめ、他の襲撃された国からは、誘拐された船はないという。
ただ、アメリカ船では移民や黒人などがボートに乗れず、船と運命を共にした人々が大勢いたという。
それを聞いた黒人のジョーダンはとても、憤っていた。
他の、襲撃を免れた国の船もこの星に到着した。各国の首脳の会議に出席するためだという。
〜各国首脳会議〜
各国首脳会議は、ひときわ大きなテントで行われた。
「とりあえず………今後の事についてだが………」
「また襲撃を受けてはたまったもんじゃないですからなぁ。」
「ここはHope Starの人々に連絡して迎えに来てもらったら………」
「そのHope Starの船が襲われたらどうするのだ?それに、我々はここに何日もとどまることはできません。そんな迎えが来るまで待つことはできません。」
「やはり襲撃を受けた国の国民は襲撃を免れた国の船に乗せてもらってこのまま進むしかないですな。」
この会議の後、桂首相は、外務大臣東園寺を連れて、中国の首脳のいるテントへ向かった。
「桂君、なぜ中国のところへ?」
「我々は、中国の船に乗せてもらう。」
「何⁉︎」
「アメリカも襲撃されて日本どころじゃないからね。七万人もいる日本国民を保護できるのは中国だけだ。」
「しかし………その昔日本と中国ではいざこざがあった………大丈夫か………」
「………」
〜中国のテント〜
「………ということなのです。どうか我々日本国民を中国の船に乗せてくれないだろうか。」
「………」
中国国家主席、王華満は厳しい顔をしている。
「話は分かります。先の会議で、『襲撃を受けた国は襲撃を免れた国の船に乗せてもらう』と決まりましたから、あなたたちが我々の船に乗りたい、というのは十分分かる。だが………」
王は一息おいて、
「かつて中国とアメリカが戦争になった時、日本は集団的自衛権を行使して我が国と戦った。それを忘れたとは言わせませんぞ。」
「………」
「確かに日本国民七万人を受け入れられるのは我が国だけだ。しかし国民感情的に受け入れられるかというと………」
「それでは………」
桂が何かを言おうとしたのを押さえてさらに王は続けた。
「まあただ、今は中国人だ日本人だと対立している場合ではない。『地球人』として、今我々は危機なのだから。同じ兄弟を受け入れない訳がない。日本人は我々が最後までHope Starまで乗せる。安心してください。」
そう言うと王はにこやかに笑った。
「あ、ありがとうございます‼︎」
桂は深々と頭を下げた。
「………我々は、こうして地球を出なければならなくなる状況になる前に、こうして協力するべきだったのだ。」
〜地球人のテントが張ってある場所の郊外〜
「なんだあれは………」
「なぜいきなりこんなところにテントが………」
「我々の星に勝手に入ってくるとは‼︎」
「よし‼︎女王に報告だ‼︎追っ払ってくれる‼︎」
ガササッ………
その草の茂みが少し揺れたのに、気づいた人間はいなかった。
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