やっと投稿できるようになってホッとしてます。
今後ともよろしくお願いします‼︎
「ハァ…ハァ…ハァ………」
俺たちはひたすら森を走っていた。
しばらくは警備兵たちが追いかけてきたがうまく撒いたらしい。
「案外いい加減な警備兵だな……」
「ちょっとここで休憩しましょ……」
俺たちが立ち止まったそこは鬱蒼とした木々の中であった。
ショウちゃんが撃ったバズーカでその射程範囲内が焦土と化したのを考えると大分森の奥の方へ逃げてきたらしい。
「ハァ〜……なんであたしたちこんな目に合うの……」
マリアムが崩れるようにうずくまる。
全くその通りである。思えば政府の意向で宇宙に放り出され、黒龍重工なる謎の組織に襲われ、よく状況が飲み込めないまま黒龍重工のAIをとめる装置の材料探しに出て、その瞬間に地球人というだけで見知らぬ星で逮捕され、何がなんだか分からぬまま牢屋を脱出し、今鬱蒼とした森の奥である。
風にどよめく木々がまるで俺たちを嘲笑っているようだ。
空を見上げれば綺麗な月が出ている。もうすっかり日も暮れたらしい。
「まあ今日はここで野宿だな。暗い中森をさまようのも危険だ。」
「ええ〜‼︎……こんなとこで寝るの⁉︎もうやだ……」
めずらしくマリアムが弱音をはく。
マリアムだけではない。他のみんなも疲れ切っていて、口々に不平不満をぼやく。
俺も泣き出しそうだ。
追ってくる警備兵と刀でやりあい、日が暮れるまで走り続け、ハエのブンブン飛ぶ森の中。おまけに宇宙のハエは地球のより一回り大きく、一つ目で気持ち悪い。おまけにブンブン音が地球のより大きい。
俺は何をやってるんだろう……
黒龍重工のAIを止める為の装置をつくり、おばあちゃんを助けるために俺はここにいるんじゃないのか……
こんな森の中で何もできないこのなんともいえない無力感……
装置をつくるためのパーツを一つ集めるのにこんな追い回されるようでは命がいくつあっても足りない。地球人というだけでここまでやられては身がもたない。
寝転がると頭の上には綺麗に星が輝いている。
その夜の空を埋め尽くすような星々を見ていると急に涙がこみあげくる。
この星々の輝きのどこかでおばあちゃんが捕まっている。それを助けるためならとこの大いなる宇宙に勇んで飛び出したものだ。
それが今ではこの様だ。もしかすると俺は明日にでも地球人だから、という理不尽な理由で死んでしまうかもしれない。
ああ、地球が懐かしい。幼い頃走り回った故郷。
この星空のどこかにあるのだ。
自ら光を出してはいないが、確実にこの星空の中に我が故郷があるのだ。
人はどうしても綺麗なものを見ると色々考えてしまうものだ。
様々なことが頭をよぎる中、俺は深い眠りの底についた。
「よーし‼︎出発デース‼︎」
ショウちゃんの元気な声で目がさめる。
木漏れ日がまぶしい。この星は昼や夜が地球と同じように来るらしい。
それにしてもなぜショウちゃんはこんなに元気なのだろう。
皆昨日の疲れもとれず訳のわからない状況下で不安の念に潰されそうだというのに。
「どこに行くんだよ……これから……」
康裕が怒ったような口調で呟く。
「どこってホウアシゲンの鉄探すデスヨ?」
ショウちゃんがニコニコしながら言う。
「あのなぁ……地球人というだけでこんなに大変な目にあってんだぞ?それなのにこの星の人に『僕ら地球人です。鉄くれませんか?』なんて頼むのか?」
「ダイジョウブです‼︎ホウアシゲンの人はもともとそんなに凶暴チガウから‼︎」
ショウちゃんの笑顔はこんな状況でも崩れない。
「なんでそう言い切れるんだよ?」
「アタシの経験‼︎」
ショウちゃんはピースしてそれを天につきあげた。
「経験て……」
なんの経験かはなはだ疑問である。
「ダイジョウブ‼︎アタシについてきて‼︎」
人間不安になると藁にでもすがりたくなるものである。藁よりかましだと渋々ショウちゃんについていくことにした。
その経験とやらを信じて……
しばらく鬱蒼とした森の中を歩いた。
ショウちゃんが迷わず進むので向かっている何かがどこにあるかは分かって歩いているらしい。ただどこに向かっているのか分からないまま歩くというのも気味の悪いものである。
「Hey,……Where will we go?」
チャールズがぼやく。
「あたしたちどこに向かってるの?……ショウ……?」
マリアムも歩くのに疲れたのか愚痴をこぼす。
「ショウちゃん?」
俺もショウちゃんにどこに向かってるかだけは聞きたかった。地球の森でさえあてもなく歩き回っては危険である。ましてはこんな異星ではもっと危険かもしれない。
「まあまあ……ここはショウちゃんを信じてみようよ。他にあてはないんだし……」
ジョーダンが二人をさとす。
「でもどこに向かってるのかくらい教えてくれたって……」
「集落よ。」
ショウちゃんがポツリと言う。
「し、集落?」
「ホウアシゲン、各地に集落点在してル。ホウアシゲンの一般人、地球のこと知らないカラ追い回されることもないバズ。その集落のどこかには鉄の工場かなんかあるバズよ。そこを目指すの……」
「で、でもなんでそんなこと分かるんだよ?」
「チロに聞いたのよ。」
そういうとショウちゃんはポケットから小さな箱を取り出し、その箱のボタンを押した。
するとこの箱はみるみるうちに大きくなり、その中からなんとチロが飛び出してきた‼︎
「チ、チロ⁉︎」
一同が目を丸くしてその様子を見つめる。
「この箱便利デスヨ‼︎捕まった時、とっさにコレに入れた‼︎」
なるほど……
「夜の間チロ出して道聞きマシタ‼︎」
そういえばチロはオウナに何かインプットされてたっけ。
「なんでもっと早くチロがいるって言わなかったんだよ⁉︎」
「忘れてマシタ‼︎」
ひでぇ。てか結局経験ってなんだったんだよ。
「ま、まあでもチロされいれば材料の場所とか分かるしなんとかなるよ‼︎」
「お、おう‼︎」
まあ、とにかくなんとなくではあるが希望が見えてきた。
チロをもとに進めばなんとかなるかもしれない。
とっとと材料見つけて、そしてとっととこんな訳の分からない星から脱出するのだ‼︎
「さあチロ‼︎あたしたちを装置の材料まで案内してちょうだい‼︎」
「ワン‼︎」
チロが走り出そうとした瞬間、
ガサガサ……
草が揺れる音。
動物だろうか。
「ウ〜……ワンワン‼︎」
チロが吠える。
音はどんどんこちらに近づいてくる。
ガササ‼︎
「ひっ‼︎」
そこにいたのは独特の格好をした少女だった。
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