宇宙難民地球人   作:藤種沟

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エピローグはとてつもなくシリアスです。

でも二話目以降はこれより少しは軽い感じにしようと思いますので、最後までお付き合いください。(まあおそらくギャグを織り交ぜたストーリー系になると思われる)


エピローグ
地球「AI」化


ここは2XXX年、とある国。

 

もはや人間の残っていないこの国は、かつて世界一栄えた国であった。今でもその頃の高層ビルや、道路などは残っているが、人は住んでいない。そこにあるのは忙しく働くAIのみであった。

 

 

 

 

 

かつてこの国は、少子高齢化が社会問題になっていた。

 

医療の進歩で、寿命が延び、老人の人口もどんどん増えていた。しかし、その反面働く人口はどんどん減っていき、とても増え続ける老人を支えるだけの働き手がいなくなっていた。そして同時に、税金を納められる人間がどんどん減っていた。

 

そこで人々が希望を見いだしたのはAI…いわゆる人工知能の存在だった。税収の減少に困り果てていた政府は、減り続ける働き手の代わりにAIを用いることを奨励し、国の政策として、AIの普及に取り組んだ。

 

するとどうだろう。AI関連の企業の株の値はどんどん上がり、さらに、AIの素晴らしい性能で業績を上げた企業が出始めると、他の企業も次々にAIを導入し、業績が上がって、株価は上がり、そして景気が良くなっていった。

 

より速く、より的確に働くAIは、長らく不況であったこの国を見事に活気づけたのである。

 

さらに発展途上国への支援もAIが行うようになり、より速く、より的確な支援を行えるようになった。道路や橋の建設も、新しくできた施設で働くのも全てAI。発展途上国の人々が今まで職としてきた農業などもAIが行うようになり、結果的に発展途上国は短期間で見事な発展を遂げた。

 

 

 

 

 

 

しかし、国内では困った現象が起きた。

 

AIが人間のほとんどの仕事を行うようになってしまい、失業者が急激に増えてしまったのだ。

例えば医療の現場にAIが導入され、人間の医者が必要なくなり、大学の医学部卒の学生が就職できない、などという事態が発生したのだ。

 

医者だけではない。その頃には、AIを監督するAIが開発されていた為、企業は労働者だけではなく、管理職までもAIを導入した。AIには人件費がかからないし、燃料をきちんと補給すれば24時間365日働けるため、日に日にAIの需要が増えていった。

 

そうなると、AI関係の企業の株の値段はどんどん上がっていった。そして、他の企業はその株で儲けようと企みはじめ、だんだん株ばかりをやって本業をおろそかにする企業が増えていった。

 

その影で、AIに職を奪われた人々は確実に増えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

失業者の増加や、本業をおろそかにする企業を何とかしようとした政府は、AIの規制を呼びかけ始めた。今までAIを奨励してきた政府は一転してAIに厳しい規制をかけ始めたのだ

すると投資家たちはAI産業に見切りをつけはじめ、株価が下がっていった。

そのスピードは政府の予想より、はるかに早く下がって行き、AI関連の企業の株で儲けようとした人々は大損し、さらに今まで本業をおろそかにしていた企業は、経営状態がどんどん悪くなっていった。

 

さらにその影響はAIを職場に取り入れた他の種の企業にもおよび、この国の企業のほとんどの株価が下がり、この国の景気が悪くなっていった。

 

そうした企業は、いまさらAIからわざわざ人件費のかかる人間を雇う余裕も無く、銀行もそうした企業に対してお金を貸すのを渋りはじめ、経済は停滞。

この政府の政策は、景気が悪くなるばかりで失業者が減らすことはできなかった。

 

 

 

こうした問題は先進国全ての問題であった。

 

先進国の間で、AIの共同開発の推進の条約が締結されると、前述したような問題が先進国全てで発生。少子化で働き手が少ないと嘆いていた時代は終わり、働き手が世界的に余る時代に突入したのだ。

 

先進国だけではない。

AIによる支援を受けた発展途上国では、インフラの整備は実現したものの、そこで働くのはほとんどAIで、それまでの生活基盤であった農業にもAIが導入され、結果的にその国の雇用を奪う結果になってしまった。

奇しくもそれは発展途上国の人口爆発と重なり、自国で職に就くのは難しくなっていった。

 

こうした発展途上国の人々は、職を求めて先進国に不法に移民するようになり、ただえさえ職の少ない先進国では、職の競争がますます激しくなっていった。

 

 

 

さらに、軍事面でもAIが導入されるようになった。

 

物資の輸送も、偵察機も、戦車も、戦艦も、そして兵士までもがAI化した。こうなると、戦争は全てAIがするようになる為、人間が死ぬことは無くなっていった。

 

これだけ聞くと良いことのように聞こえるが、こういう状況になって、戦争が起こりやすくなった。人間が死なないのだから、いくら戦争をしたって大丈夫だ、ということだ。

戦争は、武器をつくる企業や、戦場で戦うAIをつくる企業などの雇用を生み出すので、各国政府はテロの撲滅を目的とする形をとって、こぞって戦争をするようになった。

 

しかし、戦争が頻発することによって、攻撃をうける国は大きな損害をうけ、さらなる難民を生み出す結果となった。

 

AIに要するエネルギーの生産に使う資源の取り合いによる戦争も始まり、各国間はこうした戦争での環境破壊で進む地球温暖化にどう協力して対処していくかをも話し合えなくなってしまったのだ。

 

隣国とは資源の取れる領土を取り合い、国境には不法に入ってくる移民や難民を防ぐために壁をつくる。

もはや、話し合いどころではなくなってしまったのだ。

 

EU、ASEAN、国際連合なども解体し、人間は果てしない憎しみの時代に突入していった。

 

 

食料もどんどん少なくなっていった。

これ以上地球温暖化を促進させないようにとAIの燃料に選ばれるようになったのはバイオ燃料だった。AIによって穀物の生産高も上がり、バイオ燃料が安く手に入るようになったのだ。

 

しかし、穀物がバイオ燃料ばかりにまわるようになり、家畜はおろか人間さえも穀物を食べるのが難しくなっていった。

 

 

やがて地球温暖化の進行でAIでも食料をつくることが難しくなり、魚などの野生の食料もとれなくなり、人間は徐々に衰退していった。

 

ただ一つ地球が温暖化して、気候が変動しても手に入るエネルギー、太陽光によって動くAIだけが、地球で生きることを許されたのであった。

 

 

 

 

国際連合が解体して、数十年、世界の人間の人口が十億にも満たなくなった時、やっと戦争どころではないと気づいた各国は、この状況の打破のために会議を行うようになった。

 

 

 

 

 

 

交渉は難航したが、とりあえず人間に職を与えよう、という話で各国は合意した。それも、もうボロボロの地球を出て、宇宙のどこかの星を、一から開墾してやり直そう、ということであった。

 

他のどこかの星で、「開墾」という仕事に従事し、もう地球で起きた歴史のようにはしない、という決意のもとでの合意であった。

 

その移住する星を探すのも、AIの探査機であった。もはや人間は、地球にいる限り、人間の衰退の原因であるAIなしでは生きていけなくなっていたのだ。

 

 

 

 

 

それからまた数十年後、AIの探査機は地球に戻ってきた。どうやらその探査機は人間の住める星を見つけてきたらしい。

 

その星は「Hope・Star」と名付けられた。Hope・Starには地球と同じような大気が存在し、水もあり、人間が生活するにはとても適した場所であった。

 

さらにその星には先住民、いわゆる宇宙人が生息しており、この探査機にはその宇宙人のメッセージがインプットされていた。かなり高度な文明がHope・Starには存在しているらしい。

 

そのメッセージは「私たちはあなたたち地球人を歓迎します」というものだった。

 

早速各国ではロケットの製造に着手。当時はもう人間の人口は五億をきっていたが、五億人の人間と、生き残っている家畜やペット、少ない食料などを載せるロケットをつくるのには長い時間を要した。

ロケットが完成し、地球を出発する頃にはあの合意から約百年が経過していた。

 

 

 

 

 

 

 

かくして地球上で一番栄えた生物、ヒトは、自ら開発した「AI」によって、地球をでていく羽目になってしまった。

 

果てしない、宇宙の果てに。

 

 

 

 




二話目は本編‼︎

宇宙船でのひと騒動。お楽しみに‼︎

ここで一言言わせてください。

二話目からは本当に軽いからね⁉︎本当だよ⁉︎(注意)

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