ガンダムアーキテクトレイヴンズ 自堕落な一個人 作:人類種の天敵
『ホワイト・グリントの撃墜を確認………いや待て……!ネクスト反応……これは、再起動だと……っ!?あり得るのか………こんな…ネクストが……』
『結局、こうなるんですね』
『メインブースターが……イカれただとッ!クッ、よりによって海上で………ダメだ、もう飛べ』
『逃げろ!×××!依頼はもう良い、今すぐその場から離脱しろ!奴が……ホワイト・グリントが………』
『か、母さ……!』
『ごめんなさい、繋がれたリンクス』
『ホワイト・グリントが来るぞッ!!』
「…………………」
やれやれ、嫌な夢を見たもんだ。
「起きてるー?なら早く支度しなさい」
「……………そうする」
偶にこんな風な、前世の記憶を夢で見る事はあったけど、まさか………、
「今作ろうとしている機体の夢とはな」
机の上の開かれたページが、白い閃光の前触れを、密かに予感していた。
「ふぁ、眠……」
「およ、おはぼっちー♪」
「………おはぼっち」
欠伸を噛み締めて自転車を漕いでいると、見慣れた……女の……姿が……………、
「お前、何それ。コスプレ?」
「ふっふっふ、これは艦○れという某ブラウザゲームの陽炎型駆逐艦の不知火と言ってですな〜♪」
「カツラまでしてるのか?すげぇな、お前」
「もっと褒めてもっと褒めて〜♪」
目の前ではしゃぐ少女、水龍寺 真凛の格好に驚く。
何時もの紺色の頭ではなくピンク色のカツラを青い髪飾りでポニーテールに纏め、白いシャツの上に黒いベストを着ている。
しかも胸には赤い紐のリボンを結んでいる始末だ。
更に下は黒いスカートに謎のベルト、スパッツ、ベルト両腿×2と、かなりやりたい放題だ。
「こんなんで普通に登校できるとか、ガンプラ学園って本当に服装面緩すぎだよな」
「え?この学校って正式の服、あったの?」
「……あったんじゃ……ないかなぁ……」
遠い目で自分の服装を見てみる。
安物黒シャツ+普通の安物白シャツ+安物パーカー+安物白ズボン
正式服装もクソもねぇ格好だ、どうやら俺も人の事をとやかく言える立場ではなかった。
「ふぁーぁ、それじゃ今日も一日中暇な暇を潰すか……あぁ、眠」
「寝不足?」
「昨日は急に創作意欲が湧きまして。まあ、デッサン描き終わった途端力尽きたけど」
「ふーん」
その日1日は全て寝て過ごした気がする。
ううむ、ガンプラ学園一の劣等生の名を欲しいままにしている俺だが、単位とか大丈夫なんだろうか……。
まあ、頭パー過ぎて留年はガンプラ学園としても非常にマズイ事態だし、昇級試験はガンプラの製作技術もしくは戦闘技術で評価されると聞いたから俺は製作でも戦闘でも、難なくクリアーできるわけだ。
ならば授業なんて……受けなくていいよな(現実逃避)
どうせ俺より腕の立つレベルなんて居ない。
俺のチート兵器再現機より強いガンプラなんてそうそういない。
……………はぁ、これは、学校に通わずに家でガンプラ作製&ファイターを探していた方が実りあったな…本当に。
「烏丸〜、帰ろっ♪」
「んぐ………あぁ、もう帰る時間か……」
真凛に肩を揺すられようやく起き上がる。
体が錆び付いているように動かない、軽く伸びをして筋肉をほぐす。
リュックを背負いながら校門を出ると、何故かそこには、巫女服を纏った儚げな少女がガンプラ片手に立っていた。
「お前のコスプレもすげーけど、あの子の巫女服コスも凄いな」
「んー?アレは九十九神社の巫女さんでしょ」
「そんな神社があったのか?……初めて知ったんだけど」
九十九神社……うん、聞き憶えも何もない。
「やあやあー、君この学園に何か用?」
「…………」
(すげえぞ真凛!俺なら野次馬根性で遠巻きに見てるだけだが、あいつは自分から接近しやがった!)
不知火コスの真凛が巫女服少女と話し合いを始める。
何事か話し続けていると、真凛がすっと人差し指を向ける、お相手は………、確か前に俺にガンプラバトルを申し込んできた紫色のガンダムMK-IIカスタムを使用する男子生徒Aだ。
その男子生徒Aを見て、コクリと頷いた巫女服少女は、手に持っていたガンプラを男子生徒Aに向けてこう宣言した。
「私の家族をバカにした事……ガンプラバトルで……後悔させる」
……つまり、どういう事だ?
「どうやらね、あの阿部って奴が御琴ちゃんの家族をバカにしたから、ガンプラバトルで勝ったら謝れって事らしいよ〜♪」
「………へぇ」
俺は感心した、いや、あの阿部っていう名前の男子生徒Aのクズい言動にではない。
巫女服少女……御琴?……が阿部を謝罪させるため、ガンプラ学園の生徒にガンプラファイトを申し込むという点についてだ。
彼女もまさか、ガンプラ学園のネームシップ、ブランド力を知らないわけではないだろう……、全国各地から厳しい入学競争を勝ち抜いてきたガンプラファイターやガンプラビルダー、その中の1人と戦う事は、生半可な実力では逆に返り討ちにあうということだ(まあ、あいつ俺より弱いけど)
「いいぜ。ガンプラ学園への喧嘩、この俺が買った!」
「………学園じゃなくて…、君に売ってるんだけど」
どうも勘違いな阿部を引き連れて、巫女服少女は近くのゲームセンターに行くらしい。
そこにあるバトルシステムで勝負するんだと。
「私は行くけど烏丸は〜?」
「家に帰ってもやること無いし、着いてくさ」
何よりあの巫女服少女の実力が見たい。
もし、もしもあの少女がガンプラ学園のファイターを倒したとするなら……その時は俺とタッグを組むファイターとして勧誘するのも良いかもしれない……そんな思惑があるからだ。
そうして数人の野次馬グループを引き連れて着いたのは近くのゲームセンターガンプラバトルシュミレーションシステム。
そこで今、巫女服少女と阿部の一騎打ちが始まる。
「ガンダムMK-IIグレゼリア!出る!」
「ガンダムサムライ・O……出陣」
2人の掛け声でバトルが始まる、フィールドは焼け野原、隠れる場所が少なく、四方を炎の壁で覆われたタイマン向きのフィールドだ。
そして、フィールドの真ん中には紫色のガンダムMK-IIカスタムと、赤いガンダムダブルオーカスタムらしき機体がいる。
「喰らえっ!」
ガンダムMK-IIは手始めにバズーカを撃ちまくる、しかし赤いガンダムダブルオーはそれをヒョイヒョイと避けて着実に距離を詰めていく。
「赤いダブルオーの腕、真武者頑駄無だっけ?」
「そーだねー。背中はエクシア系のとんがりコーンだけど」
「おお、そら怖い。トランザム使ってやられるんじゃないか?」
腕部パーツだけが真武者頑駄無の赤いダブルオーもといサムライ・Oはメイン近接武器である太刀を振るうためにガンダムMK-IIの懐へ一直線に駆ける。
しかし、そうはさせじとMK-IIグレゼリアはバズーカで弾幕を張る。
地面を撃って意図的に地揺れを引き起こして機体バランスを崩させ、その隙を狙ってビームライフルでトドメを刺す。
流れるような動き、流石はガンプラ学園の生徒というわけか。
「そこだっ!」
MK-IIグレゼリアが放ったビームライフルの一射がサムライ・Oの右足を抉った。
男子生徒阿部はニヤリと笑い、トドメを刺さんとばかりにサムライ・Oへ突っ込み、
「トラン……ザム」
「んなっ!?」
阿部が上げた驚きの声、当然だろう、トランザムの起動音に伴い、目の前にいた手負いのガンプラが一瞬で消えたんだから。
「くっ……トランザムか、だが、いくら機体速度が速くてもなぁ!相手が悪いんだよ!」
バズーカを周りの地面に向け、乱射。
すぐさまMK-IIグレゼリアの周囲を煙が立ち込め、阿部には周りが見えないし、サムライ・OもMK-IIグレゼリアの行動が見えない。
しかし、サムライ・Oはそれを好機と見たか太刀を居合のように構えて猛スピードで突っ込んだ。
「そこだぁぁぁぁ!!」
「ッ!」
煙の中から振るわれるビームサーベル、サムライ・Oの頭部を斬り飛ばし、ビームライフルの銃口をコックピットへ向ける。
一射、二射、三射……、サムライ・Oは至近距離からのビームを肩部のシールドで辛うじて防ぎ、トランザムの勢いを利用して猛スピードの突きを繰り出した。
「…………!……くそ、あと一歩だったかよ」
MK-IIグレゼリアのコックピットを貫いた一本の太刀、それを左右へ振り切り赤い機体が距離を離すと、MK-IIガンダムのカスタム機は直ぐに爆発四散した。
「………ご家族のことを悪く言って申し訳ございませんでした……」
「………」
対戦終了後、土下座の状態で巫女服少女に一生懸命謝る阿部、しかし彼女はそれをジッと見つめるだけでうんともすんとも言わない。
「あ、姉さん!……やっぱりここにいたんだ」
「………瑞稀」
「あー!女男!!」
会話に参加してきた人物に人差し指を向けて喚く阿部、女男とは何事か。
「やめて。瑞稀は私の弟」
(……………弟?)
よく見るとお嬢様お坊っちゃまの通う由緒正しき名門校の学生服を着た、身長167㎝ほどの美少年。
男にしてはクリクリとした大きめの瞳、整った眉毛、長いまつ毛……ああ、これ確かに、
(男じゃなくて女だな。喉仏出てないし腰の動きがだいぶ柔らかい。どう見ても女だろ)
瑞稀という少年(?)の身体的特徴からこいつは紛れもなく女だ、と確信した俺は面白いのでその後をじっくり観察して隙あらば巫女服少女をファイターとして勧誘することにした。
「姉さん、こんな頭のおめでたい奴と何してるんです?こんなとこにいると、姉さんが穢れてしまう。ボクと一緒に、早く帰ろう」
おう、この子結構毒舌家タイプらしい。
「お、おーいおいおい、なにが頭のおめでたい奴だって?烏丸はそうだが、俺はちげえ!なんてったって、ガンプラ学園の」
「ねえねえ!俺と契約してガンプラファイターになってよ!」
「………」
「………」
「………」
「………」
見事に沈黙する場、場の雰囲気を和らげようとしたがいかんせん唐突すぎたか。
「姉さん、誰?こいつ……ガンプラ学園?姉さんに何の用だよ」
「まあ、お前でもいいや、瑞稀って言ったか?ちょっと話がある」
訝しげな顔で俺を睨むボクっ娘にとりあえず話があると促し男子トイレへ。
するとボクっ娘はやはりというべきか男子トイレを前にして一歩躊躇する。
「お前、女だろ」
「は……っ、そ、そんなわけ!」
動揺するボクっ娘に人差し指を立て、
「一、その身長で変声期が来てない。ニ、同じ理由で喉仏が無い。三、男にしては腰の動きが柔らかい。四、男子特有の股間部の膨らみが無い!」
「うっ………」
ギュッとズボンのチャック部分に両手をかざしたのは何か?俺が男の股間をジッと見つめる変態野郎だから身の危険を察知したとでも言うのか?んなわけ無いだろ。
「最後に。………お前みたいな可愛い男がこの世にいる訳がない」
「………えっ。ボクが……可愛い?」
「まあ、お前が男だとか女だとかはどうでも良いんだよ。俺さ、タッグを組むガンプラファイターを探してるんだけど、君のお姉ちゃん紹介してくれる?」
「やっぱり姉さんが目当てか!」
そう尋ねた瞬間視界が反転した。
腕を極められている、一本背負?
壁にぶつけられる、結構やるな。
「ほっ」
「っ!?えっ……!」
放られた壁に向けて両足をつけ、不安定な体勢からボクっ娘と一緒に上方向にジャンプする。
驚いて動きの硬直したボクっ娘をお姫様抱っこして見事着地、このくらい前世の記憶通りに動けば簡単か。
「………」
一瞬の出来事で惚けているボクっ娘の頰を突っつく。
「世界は広いぞ、ボクっ娘。とりあえず連絡番号教えるから、お姉さんと一緒に、今度話でも聞いてくれよ」
「………ぁ、はい」
その後、用の済んだ俺は帰宅し、新しいガンプラACの作製に着手。
少し経って暇潰しにネットサーフィンをしていると、アカウントに一通のメールが届いた。
「………………んん?」
『本件 : ネクスト、ホワイト・グリント作製の依頼』
それは、白い閃光、ホワイト・グリントを作成して欲しいという、謎の依頼だった。
なにを書きたかったのか自分でも分からねぇーー!
まあ追々巫女も男装女子もゲットさせますが……。