ガンダムアーキテクトレイヴンズ 自堕落な一個人   作:人類種の天敵

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久しぶりのホワグリ戦

 

 

 

「ぐっ、がっ……!!」

 

空から絶え間なく突き落ちる弾丸、高速で飛来する分裂ミサイル。

市街地を通り抜けながら後ろ手にレーザーライフルを速射する。

 

手応えはーーーー無し。

 

「くそ、重量増せばそれだけ機動は遅くなる。支援には良いだろうが…ぐっ!やっぱりタイマンはキツイな……!狙撃型ッ、は!」

 

ドヒャァッ!

 

弾丸とミサイルの射線をクイックブーストで強引に避ける。

研ぎ澄まされた感覚がクイックブーストによる衝撃、慣性の法則諸々に引っ張られるのか、胃の中や内臓が掻き混ぜられるような感覚に襲われる。

 

しかし、ここで止まるわけにもいかない。

 

「ホワイト…グリントォォォ!!」

 

後ろをチラと振り返り、白い機体を視認したと同時にレーザーライフルとレールガンを感覚任せにぶっ放す。

レーザーライフルは当たらなかったようだが、撃ち出す弾丸の速度に定評のあるレールガンはホワイト・グリントの右肩に当たった。

無論あまりダメージを負ったようには見えない。

 

「ぐ、EN3割まで低下。一度身を隠すか」

 

右手のビルに機体ごとぶつかり中に身を隠す。

勿論その間、ホワイト・グリントから熾烈な銃撃を喰らうが、ビルが盾になることでダメージを抑えつつ無くなったENをコジマ粒子搭載のジェネレータが補給する。

 

唸りを上げたジェネレータから緑色の粒子が漏れ溢れていく。

 

そこで、これまでの経緯を短く思い返した。

 

 

 

「ホワイト・グリ……アナ。少し、いいか?」

 

阿部を弾丸3発でのして手持ち無沙汰になった俺は同じくホワイト・グリントに声をかけた。

内容は戦闘の勘を取り戻すためのガンプラバトル。

相手はリンクス最強のNo.9で、俺はその最強を倒したリンクスだ。

どちらも不都合などあるはずなくガンプラバトルが始まった。

 

 

 

…………その結果がこれだ。

俺の機体は装甲値が1000を切っていて、ホワイト・グリントはまだ2、3万上残しているだろう。

はは、何が最強を倒したリンクスだ。

 

俺は思ったよりもぬるま湯に浸かり過ぎていた。

ガンプラバトルをせずにアーキテクトとして金を儲けていきたいのが本音であるが、元傭兵として自分の腕が鈍ることだけは防ぎたかった。

これでは前世の相方に怒鳴られるな。

 

一度倒した相手も倒せずに何が傭兵を止めるだ馬鹿野郎が!……と。

 

「ふぅー………」

 

残コジマ粒子もプラフスキー粒子も残り僅か。

さっきまでは阿部を弾丸3発で終わらせた俺がホワイト・グリント相手には10発も当てられないとはね。

 

つくづく舐めていた、そういうことだろう。

 

曲がりなりにも相手はリンクス最強。

 

そして俺は短期決戦型の高速機動機を主に使用していたリンクスだ。

鈍重な遠距離機じゃ、ホワイト・グリント相手には荷が重かったか。

 

「EN……100%」

 

ふと気付く、もうビルには弾丸もミサイルも撃ち込まれていないことに。

 

小さなガラスから外を覗くと空中に浮かんだまま青白いカメラアイをビルに向けるホワイト・グリント。

 

なるほど、そろそろギアも上がって来たし真っ向からたたき潰そうってことかい。

 

こちらも既にコジマ粒子は充電完了していてプライマルアーマーがビルの中のあちこちに干渉しまくっている。

 

「さて、行くか」

 

スナイパーキャノンと脚部の増加装甲をパージ、明らかにデッドウェイトの上に分裂ミサイルがある限りホワイト・グリントに引き撃ちは通じない。

ビルの影を高速で移動しながらチクチクやるしかないな。

 

「イタチの最後っ屁だ。楽しませてやるよ」

 

画面?…いや、網膜に浮かび上がる『L/R-D』の文字。

次第に全身の感覚がラファールカスタムとリンクしていく。

球体状の操縦桿を握らずとも右腕を動かそうと念じればラファールカスタムの右腕が上がり、ぐりんと首を動かせば頭部ヘッドパーツもそれに追従する。

 

タイムラグは、ない。

 

周囲に緑色の粒子が集まる。

背中部に集りまくったそれらは轟音と爆発的な推進力を発揮し、ビルの中から一気に外へ吐き出される。

 

フオオオオオオオオオオオオン!!!

 

ビリビリと来る刺激に気持ち良さげに目を細め、レールガンとレーザーライフルを斉射する。

オーバードブーストを解放したラファールカスタムの動きについていけないホワイト・グリントの反射的銃撃は空を切り、虚しく地面に弾痕を残すだけだ。

それに対しレーザーライフルとレールガンは確かにホワイト・グリントの装甲に突き刺さり、その耐久値を削っていく。

 

「おおおおおおおおお!!!」

 

こと戦闘において久しぶりに上げた咆哮。

それはオーバードブーストの推進力にアドレナリンを分泌させようと身体が反応した為か、それとも強敵との戦いに本能がソレを求めたか………。

 

時間がゆっくりと感じる。

オーバードブーストでさえこの感覚の前ではとても緩やかだ。

 

遅く進む時間に背後を見る、随分遠くまで距離を引き離したホワイト・グリントはとても小さく見え、落ち着いてレールガンの銃口を向けると、「当たる」という確信と共に引き金を引いた。

 

軽やかな反動で飛んで行ったレールガンの弾はホワイト・グリントのカメラアイに直撃した。

 

一瞬の硬直、永遠にも取れる隙。

 

欠かさずレーザーライフルとレールガンを頭部に向けて撃ちまくる。

 

(まずは目を潰す!ロックオン機能を喪失させれば後はこっちのモンーーーッ!!?)

 

フオオオオオオオオオオオオン!!!

 

ホワイト・グリントが爆発的な加速を得る。

 

あっちも切り札を切って来たわけだ。

 

さながらチキンレースのようにオーバードブーストで直進を突っ切るホワイト・グリントに対しこちらもオーバードブーストで逃げながらレーザーライフルとレールガン当てていく。

だが、それももう終わりに近い。

 

(ENとKPが切れた……!)

 

突然の喪失感。

まるで身体が無重力空間に置き去りにされたみたいだ。

原因はもちろんコジマ粒子とENが切れてオーバードブーストが解除されたせいだ。

しかし止まってなどいられない、ホワイト・グリントの追撃をかわす為にすぐさま物陰に隠れなければーーー。

 

「なんて、させるわけないよな。ホワイト・グリント」

 

既にキルゾーンに迫っていたホワイト・グリント。

カメラアイを保護機能のシャッターが閉じ、各部から粒子の影響を受けて装甲の中に埋まっていた突起物が姿を現わす。

そして機体中を溢れるは緑色の粒子。

眩い光と衝撃に思わず目を閉じてしまい、また開けた時、目の前には真っ暗な画面と『バトルエンディッド』と機械音が流れていた。

 

 

 

 

「良い勝負」

 

抜かせ。

コジマ粒子抜きなら勝負にもなってなかっただろ……やれやれ、また1からやり直さないとな。

 

「でもサボりすぎ……次は期待」

 

……まあ、バレてるよな。

 

「ああ、次までにはなんとかするさ」

 

渋い顔のホワイト・グリントに苦笑しているとガラガラ、と扉が開く。

 

「おっす♪おはぼっち」

 

やっと来たか遅刻魔め……。

しかし、あっはっはっは、と笑う真凛の格好はスク水だった。

 

「……………………パーカー貸すからそれだけでも着ろ」

 

「うん?ありがと♪」

 

あまりにも直視出来そうにない真凛の姿にパーカーを着させたが、

 

(ま、マズイ………パーカー+スク水。これはこれで唆るーーーー!!?)

 

前世でハーレムを築いた俺がこんな小娘に発情するだと……!!真凛、恐ろしい奴。

 

「真凛ちゃん。ちょっとその格好は学校的に…」

 

「自由な発想、奇抜な生き方こそが良いガンプラを作る第一歩だと思います!」

 

「ああ、うん。でもね?…あの、その」

 

結局先生の指導は真凛に通じなかった。

チッ、使えねえ。

 

「じゃ、やろっか」

 

「ああ……悪いけどファスナー締めてくれる?」

 

ブカブカのパーカーのおかげでスク水は完璧に見えな……あ、これもダメな奴だわ。

あかん、逆に見えそうで見えない…的な。

 

「んっふっふー!不知火・紫電、行くよ!」

 

「連戦だ、行けるな?ラファールカスタム。全て焼き尽くすぞ」

 

 

 

 

 

阿部、ホワイト・グリントに続く3連戦目。

ダメージ設定は低レートにしてるしホワイト・グリント戦はともかく阿部戦はノーダメージだ。

実質2連目といって間違いない。

パーツの損傷度合いも想定内だ、真凛戦が終わった後で調整すれば大丈夫さ。

 

『んふふ!今回は本気で行っちゃうよ♪避けてねっ?』

 

「へぇ……!」

 

真凛戦の舞台は宇宙プラントA。

一応宇宙系フィールドだが、室内での戦闘の他、あちらこちらには衝撃を与えると爆発しちゃう系のギミックも置いてあるし隔壁を破壊すれば外に出ることも可能だ。

一応ネクストACは宇宙での活動・戦闘も出来るって設定も反映されてるが、奴の跳躍ユニットとか言ったあのオプション武装は無重力空間でこそ真価を発揮するかもしれない。

 

『とりゃあ!真凛ちゃん、初っ端いっきまーすー!』

 

バチバチバチィィィ!!

 

プラント中に紫電が疾る。

チッ、と舌打ちをしてマップを見渡す。

先程の攻撃で大まかな真凛の位置は分かったものの、宇宙プラントAのマップは狙撃機には不利だ。

まず全体的な広さが圧倒的に狭い、こんな所で戦えるのは近・中主体の高機動機や近接機くらいだろう。

 

「ラファールカスタムにも一応近接兵装はあるけど」

 

右腕のレールガンを惜しげもなくパージする。

いくら弾速が早かろうと銃口を向ける速度の遅さ、取り回しの悪さ、消費EN量諸々でここでのレールガンは相性が悪い。

 

代わりに装備したドラゴンスレイヤーはエクシアのGNソードを改造したもので、実体剣を取り外してレーザーブレードを出せるように弄った為、消費EN量は倍増したものの、取り回し、軽さなどは劇的に変わっている。

 

更に左手に持つレーザーライフル《LR01-ANTARES》は癖がなく、使いやすい。

設定時のステータスも前世での企業評価とほぼほぼ一緒で元の感覚と同じように使える。

 

つまりーーー、

 

「そこは射程距離内だぜ」

 

青白い粒子が800m内に姿を見せた不知火・紫電に直撃する。

当たった瞬間不知火・紫電の肩部はプスプスと焼き焦げ、慌てたように真凛は飛び跳ねさせて乱数回避を試みている。

 

「おいおい……紙装甲にも程があるだろ」

 

呆れ溜息を吐き、第二射。

しかしそれは不知火・紫電の小太刀を中心に生じた紫色の膜壁に弾かれる。

 

「あれがビームシールドか」

 

続けて撃ちまくるが不知火・紫電まで届いている様子はない。

ならば、と今度はEN兵器ではなく実弾兵器のスナイパーキャノンを構え、撃った。

大口径の弾丸が衝突した途端バチバチバチと唸り声をあげて弾かれるーーーと言うよりは逸れた。

 

「大体は掴んだ」

 

『悠長に構えられるかな〜?てやー』

 

不知火・紫電の上段、下段、斜め切りーーーく、速い!

大きく振りかぶり、思い切り振り下ろすだけの動作が非常に鋭く、その斬撃は重く、様々な切り口は熾烈を極める。

 

咄嗟にレーザーブレードで太刀と切り結ぶが、ドラゴンスレイヤーの色と同じ紫色の放電がまるで〝飛ぶ斬撃〟のように装甲にダメージを与えて行く他、視界さえも遮られる。

 

「チッ、これが真凛の言ってた、〝やりよう〟って奴か」

 

確かにこれはうざい。

 

仕方ねえ、と一度距離を開け、不知火・紫電と相対する。

 

今までは数度しか使わなかった体質を使うことにしたのだ。

それに、そろそろこいつにはこれに慣れといてもらおう。

 

「アシムレイト・バースト」

 

身体中の感覚が真っ直ぐ不知火・紫電に向かって飛んでいった。

 

『んにゃぁっ!?』

 

たじろぐ真凛の声、ここで仕掛ける。

 

『んにゃぁ?な、なぁにこれぇ……感覚が…敏感すぎるよぉ……』

 

「ようこそ、新しいリンクス」

 

ボソッと呟きレーザーブレードを振るう。

まだ機体と同調(リンク)する感覚に慣れていない真凛の動きはぎこちなく、太刀を薙ぎ、小太刀を掴んでぶん投げると、真凛の体を慣らすためにトドメを刺さずにバックステップで距離を取る。

 

『う〜……』

 

今の状態に疑問の残るものの、真凛は継戦することを選んだ。

両腕の突起物から二本のナイフを取り出し投げつけ、更に太刀を右手に握り、左手は手裏剣の形状をした飛び道具を引っ掴む。

 

その後戯れること数分。

 

当初こそ酔っ払い同然の動きだったが、今の真凛の動きはダン・モロやドン・カーネルの動きを超え、《ハリ》くらいの機動にはなってきた。

 

「どうだ?慣れると病みつきになるだろ」

 

『うにぃー。やっぱこれ、カラスマルゥの仕業〜?なんか体がヘニャヘニャ〜って…て。で、でもね。頭はとっても冴えてて…』

 

言いながらも彼女の攻撃は普通に動かすだけでは再現しきれないような動きを見せてくる。

脚部や腕部の駆動を限界以上まで動かし、全身のスラスターを操作して連続バック転からの突撃切りこまし、刻み込むようなウィービングやダッキング、紙一重で避けるスウェーバックなど、感覚には慣れてきたみたいだ。

 

「真凛の武装も把握したし、そろそろ十分か……降参だ」

 

『バトルエンディッド』

 

これ以上のパーツの損傷を防ぐため試合を終わらせる。

真凛にはパーツの調整や修理をしながら話をすると言い、持ってきた道具を並べて行く。

 

「なんだったの?あれ」

 

「ん、説明するのもいいが、先に…お前、アシムレイトって知ってるか?」

 

聞き慣れない単語なのだろう。

真凛は首を横に数回振って首を傾げた。

 

「なにそれ」

 

「ファイターとガンプラのシンクロ現象だ。思い込みや厨二病なんかとは違うぞ?ファイターとガンプラが同化することによって元々のポテンシャルや第六感的な感覚をを更に高められる…そんな現象だ。他にもアシムレイト適性が高い奴は普段からガンプラとかに対しても感性が敏感になったりするけどな」

 

「えぇ、少しカラスマルの頭の中がおかしくなったかと思ったよ!」

 

「アホか。そんで俺の場合、普通のアシムレイトでは出来ないような特性を持ってる。まあ大体……2つくらいか」

 

「2つ!?」

 

ドミナント(支配)バースト(爆発)って呼んでるけどな」

 

ドミナント(支配)バースト(爆発)

 

ドミナントは戦闘中の全て……フィールドやガンプラ、更にはファイターを支配することで敵の動きを制御したり相手に過度のプレッシャーを与えたりできる。

ただ、ホワイト・グリントとかの強敵には一切通じないんだけどな。

 

肝心なのはバースト。

こいつは相手に対して擬似的なアシムレイトを体感させたり、後天的な素質を植え付けることができる。

素質が開花するかどうかはそいつのセンス次第だが、真凛みたいな奴はものの数分でアシムレイトを発現したりする。

 

「まあ、これはただのスタート地点でしかないんだが」

 

真凛に期待するゴールは、俺と同じリンクスになれるかどうか。

 

先天的な存在であるリンクスという才能を、後天的に得られるかどうかの実験的な意味合いもある。

 

俺がこのアシムレイトを得られたのは原理は不明だが、元がリンクスだったから……てのが関係しているんだろうな。

とりあえずは真凛の不知火・紫電にコジマ粒子を搭載させて真凛のアシムレイトに刺激を与え、リンクスとして芽吹くよう成長を促す。

 

当面の目標は操縦桿を一切触らず、自分の思念だけでガンプラを動かすことかな。

まあ、それらはぜんぶ真凛には言わないけど。

 

教えられるよりも何も教えない方が成長する場合もある……相方の教育方針だ。

 

「まあ、そういうことだから。アシムレイトの感覚に少しでも慣れて貰うために大会までトレーニングだ。俺はラファールは使わないから一方的な戦闘にはならないけど、アシムレイトはガンガン使って行くからな」

 

使うのはランスタン。

その存在全てがハンデや縛りのようなものだが、リンクスがアシムレイト成り立ての相手を務めるんなら最適だろう。

 

さてさて、大会まであと5日。

こいつはどこまでいけるかな?




豆知識

普通のファイター→オールドタイプ。今はまだ幸せ。

アシムレイト→ニュータ○プ的な人間、感覚が鋭い他機体のダメージがフェードバックする。ただし主人公のみ?最早後戻りは出来ない。

リンスス→操縦桿を触れずにガンプラを動かせる人。これ以上は危険。

コジマ汚染患者→リンススの上位個体?もしくは末期患者とも。
リンク同様に思念だけでガンプラを動かせる他コジマ粒子すらも自由自在に操ることが出来る。
ただし思考回路が常人のそれではなく、面妖な生き物(AMIDA)などを飼っていたりする異常人格者。ここまで行くと最早修正を通り越して排除が必要になる。本人〝は〟幸せ。

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