ガンダムアーキテクトレイヴンズ 自堕落な一個人   作:人類種の天敵

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真凛に任せて

 

 

「じゃーねー烏丸ー♪」

 

「おーう」

 

 

 

俺はガンプラ学園一年生の烏丸っていう何処にでもいる普通の男子高校生だ。

外見だけ見れば何の変哲も無い青年だが、他人と違うところがあるとすれば、一つ。

それは、俺が前世の記憶を持っているってこと。

まあ、殺して殺して最後に殺された?……みたいな前世だったみたいでしょうもない記憶だが、この世界で一稼ぎするには十分すぎるほどの知識を持っていた。

前世の俺は傭兵って血生臭い職業についていたらしいが、今の人生でそんなことするつもりは一切ない。

前世の知識をフル活用して精々楽な人生をダラけて過ごすために使わせて貰うつもりだ。

 

そして俺の手には、一つの紙切れがある。

そこには先日塗装の仕上げまで終えて遂に完成したホワイト・グリントを依頼主のフィオナ・イェルネフェルトに渡したことで彼女から受けていたホワイト・グリント作成の報酬金として受け取った一千万という文字が見える。

 

いやー、俺にしかホワイト・グリント作れないとはいえ、フィオナ・イェルネフェルトってかなりバカだよな。

こんな大金使ってまでプラモデル作って欲しいとか何考えてんだか。

 

バカと天才は紙一重っていうし、彼女も頭良すぎた結果一周回って変人になってしまったんだろう。

世界は何と残酷なことか。

 

「まあでもこれで当分は安泰だ…今の内にガンプラのストックでも作っとこう。そうだな……今度は有澤企業製のタンク型をベースにオリジナルで量産型的なものを作ろうか……。日本人はなんだかんだ言ってタンクとかキャタピラついてる奴とか大艦巨砲主義者が多いからな。(有澤とか)受けは良さそうだけど」

 

作るとしてOIGAMIは一から自作になるだろうし、アレは知識を集めても作れそうにない。

…なにせ、正真正銘有澤の粋を集めて開発されたって兵器だからな、外見は真似出来ても性能まではちょっと無理くさい。

OGOTOならいけそうだし、腕部武器のグレネードとかは元のベースを弄れば案外楽に作れそうだ。

 

ベースにするのはRX-25 ガンタンク 他量産型ガンタンク、陸戦強襲型ガンタンク、ガンタンクIIなどのガンタンクシリーズで決まりだろう。

 

初代ガンダムに登場する長距離砲撃や火力支援を得意とする下半身が戦車で上半身が人型の地球連邦初のMS、それがガンタンク。

 

初代のは両腕のミサイルランチャーが対MS戦ではあまり効果が発揮できてなかったみたいだから本家の武器腕 RAIDEN-AWを使おうと思うが、コイツは1発1発の威力が高すぎだしリロード時間も長めで隙が多いから作るならマガジン式か内蔵式で比較的小型榴弾を速射出来るようにリロード時間を短めにした方が火力が上がるんじゃないだろうか。

 

実際にダネルMGLというグレネードランチャーが存在する。

40x46弾グレネード弾を回転式弾倉に装填して連射が可能な優れものだ。

これを基本構造にリロ短縮にスピードローダーを装備すればかなり脅威度が増すことだろう。

 

「……忘れそうだからブログに書いとこ…」

 

デッサン付きでアップすると俺より先に自作してしまう猛者がいるかもしれんのでやめておく。

あくまでも武装内容と、特徴くらい。

ただまあ、ガンタンクのちょっとしたアレンジなんて他の奴らからすればネタにしか見えないことだろうがね。

 

「……ふわぁ、眠……」

 

寝ぼけ眼をこすり時計を見る。

12時18分、そろそろ寝よう、俺はパソコンをそっと閉じると部屋の明かりを消してベッドに潜り込み、夢の中へ意識を沈めていくーーーー。

 

 

 

 

ピコン♪

 

『これこそわたしが求めていたガンプラです。凄いです本当に凄いです。こんなわたしが褒めても何の特にもならないし寧ろ邪魔だって思いますよねすみません。だけどこのガンプラACは本当に凄いですこんな武装設定は画期的いや革命的です。是非とも是非とも作らせて下さいカタツムリ速度で完成したら見せます下手だったらごめんなさい。それでこの機体なんですけど名前はーーーーーーー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリリリリリリリリ……カシャ

 

「………眠…」

 

目覚まし時計のアラートで起きる。

時間は6時12分、朝だ、クソ眠い、両の目をこすり洗面所で顔を洗おうと部屋を出る。

ジャーー、パシャパシャ、キュ……と顔に水をぶつけて意識の覚醒を促しながらもこんなことが出来るなんて贅沢だと半ば呆れた。

顔についた水をタオルで拭き取り、居間に入る。

 

「母さん。今日の朝飯なに?」

 

居間に母親の姿はなかった。

が、テーブルには作ってくれたのだろう朝ご飯と弁当が置かれている。

 

味噌汁、白飯、焼き魚、グルルル、と朝食メニューを見て俺の腹が鳴るが、せめて食う前に母親の顔でも見ようと台所に行く。

 

「母さん」

 

そして俺は見つけてしまった。

 

「……母さん。なに、してんだよ」

 

台所に横たわる母の姿をーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「過労に加えて新型の病気に掛かっています。……更に、貴方の母君はこの時のための保険に加入していないので……」

 

「……幾らですか」

 

「千飛んで四十万程です」

 

「…………」

 

医者曰く、母は新型の厄介な病気にかかっているとのことで、手術と術後を含めて1040万が要るらしい。

運が良いことに1000万はフィオナ・イェルネフェルトのお陰で手元にある。

 

「あと40万だな」

 

一先ず冷静に、母は病院だしどう金を稼ぐか考えよう、と郵便物を回収する。

ポストの中には二つの紙が入っていた。

 

一つは主任から、主任こと焼け野原ヒロシはガンプラバトルの後、なんかひっきりなしに俺を『企業』に勧誘しようと考えているようで、お誘いや企業のPVなどを毎日寄越してくる。

そしてその中には依頼と呼べるものもある。

大体データ取りのためのガンプラバトルとかそんなところだが、報酬は日給1万が殆どな上にデイリーチャレンジとでも言うかのようにほぼ毎日なにかしら依頼がくる。

 

今回は企業製のガンプラのテスト、日給一万。

そしてもう一つはガンプラ学園からで内容は『講師アラン・アダムズとソレスタルスフィアによる希望者とのガンプラバトル』、下らない、と机に放る。

 

そういえばとパソコンを開くとメールが入っている。

一つはブログに、もう一つは真凛からだった。

『九十九神社が面白いことやってるぅ〜♪ペアのガンプラバトルで優勝者に100万円だってさぁ〜』

 

「よしサクッと優勝するか」

 

俺の方針は決まった。

次に真凛に連絡を取り、サイトにアクセスして登録を申し込む。

登録日は今日が締め切りで、2週間後に開催されるようだ。

 

『いいよいいよ!寧ろこう言うのを待ってたんだよキミィ〜♪』

 

大変喜んで頂けて良かった。

真凛は以前使っていたシラヌイという機体を使うらしい。

アレは近接寄りのアタッカーだったからこっちは火力支援・砲撃特化系をビルドした方がいいかもしれない。

 

前世では主にアリーヤフレームやソーラフレームなどの高速機動・近接戦闘向きの機体や武器を使っていたが、スパルタな相棒に随分熱心に教育されたらしく、遠距離からの狙撃なども得意だ。

 

今回は流石に時間が無いのでフレームは作らず、狙撃武器を中心に武器だけを作ることにする。

 

それで、今回作成しようと思うのはレールガンとスナイパーライフルにレーザーライフルだ。

更にラファールのアリーヤもどきの頭部は近接戦闘の情報処理などに優れる反面視認距離やロックオン性能に難がある。

なので索敵性能を底上げする増設センサーや後付けゴーグル・アイなども追加しよう。

 

今回ビルドするものは……、

 

・RG01-PITONE

重レール砲、前世で相棒が大事に飾っていたものでもある(一度金が無い時に勝手に売っぱらって殺されそうになった)

 

・LR01-ANTARES

スタンダードレーザーライフル、迷ったらこれを積めと口酸っぱく言われていたレーザーライフル。

オーメルの機動レザライや試作レザバズ積むならこっちを積むだろ?と凄まれたのを俺は忘れない。

 

049ANSC

軽スナキャ、実戦で使う機会はなかったがシュミレートなら遠距離狙撃に慣れる為にスナイパーキャノン中で最多の使用回数を誇る。

 

そして頭部に付けるレーダーはRD03-PANDORA。

本来は背中に積む装備だが、一回りほど小さくして頭に積む、スタビライザー代わりでもあるわけだ。

 

最後にスナキャ射撃時の反動を殺す為に安定性能と、重量過多にならないよう積載量の底上げの為に脚部を補強する。

通常機動では中に収納か折り畳んで狙撃時のみ展開して安定性を上げるアンカーやスタンドを作ることにする。

 

 

 

 

 

『大丈夫?もう5日も学校来てないけど』

 

メールボックスに入っていたその文章を見て苦笑する、まさかこいつに心配される事になるとは。

『心配しなくても飯は食ってる』と返して笑みを溢す……そう、飯だけは食っている。

 

既に5日連続徹夜明けで武装は完成した。

デッサンに丸一日掛け、武装作成に二日、設定に手こずって二日、今はスタビライザー兼レーダーを担うHRD03-PANDORA(頭部に搭載するので名称にHを付け加えた)と狙撃時に起動するゴーグル・アイを作成中だ。

考えた結果、HRD03-PANDORAは形状はそのままに上部と下部のアンテナの角度を変えて横から見ると<の形になる様にした。

こうする事で装備間の干渉を防ぐ。

 

更にゴーグル・アイは頭部の上部に装備して射撃時には本来のバイザーを覆い隠す形状にした。

これなら狙撃時に攻め込まれたとして、無理なく近接戦闘を行える遠近両用の機体に進化できる。

最後に顎の長さを伸ばした事で頭部バランスの釣り合いを取ることにした。

 

ただ、このレーダーとゴーグルバイザーを載せて顎を延長した完成イラストを真凛に見せたら、

 

「し、不知火弐型……に似てる!?」

 

と驚いていたが、シラヌイ・ニガタとは何の名前だろうか?俺の知らない機体の名称か?何かのアニメのものかも知れないし真凛が使っているシラヌイの妄想後継機の可能性もあった。

 

さて、俺には休んでいる暇がない。

大会の対策や真凛との連携を高めたいのもあるし、新型兵装の試運転もまだ満足にやれてないのだ。

もしテストして見て満足出来なければまた一から作り直すことになるのだから食事や排泄の他で時間を無駄には出来ない。

それは睡眠であってもだ。

 

「……」

 

意識を覚醒させる為、ブラックコーヒーを口に含みゆっくりと飲み込んでいく。

一度被りを振り、ビルドに戻る。

まだ、やるべきことは沢山あったーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「烏丸ぅ、生きてる?」

 

「………………………ぁ?」

 

誰かに体を揺さぶられ、目覚める。

見えるのは見知った天井、かろうじて原型を留めている下手くそな黒いアリーヤのラクガキ……3歳の頃の絵だ。

周りを見れば一面白塗りの壁、ごちゃっとしたベット、ノートや教科書を置くだけであまり使わないから綺麗な机、スクラッチや組み立ての時に使う作業台に塗装ブース、一昨年買ったまま未だに掛けてるカレンダー……ああ、俺の部屋だ。

 

「………?」

 

体を起こそうとするが、全身が怠い倦怠感があってつい横たえたまま片目を瞑る。

眠い、動きたく無い…だけど眠り続けるわけにはいかない。

漠然とした考えが絡み合って頭の中がこんがらがっていく。

仕方なしにベットの側で心配そうに俺を見つめる人物の名を呼んだ。

 

「真凛」

 

「な、なにかな〜?」

 

「お前、どうやって入ったんだよ」

 

誰かの正体は、ガンプラ学園の悪友(?)水龍寺真凛だった。

右側の髪の毛は肩まで伸びていて、左側は耳の裏にかけている紺色のアシンメトリーの髪、青、水色、白のチェック柄が入ったワンピースを着た色白の女。

 

「じゃじゃーん、合鍵〜♪」

 

「没シュートー」

 

「ええっ、酷」

 

ドヤ顔で取り出した合鍵を奪う。

しかしこいつに家の合鍵を渡した覚えはない。

 

「あ、それ?烏丸のお母さんにお見舞い行ってあげたらバカ息子を宜しくって渡されたよ〜」

 

あのくそババア、誰がバカ息子だよ。

しかし、よりによって真凛に合鍵を渡すとは……心配しすぎだって。

 

「ご飯食べ…てはいるけどさ、睡眠はとってなかった」

 

「ふぅ〜?やれやれ。そういうところがぁ〜?やっぱり烏丸ぅはダメだなぁ〜んふ、んふっふっふーん。良い?烏丸。今日は1日ベットで寝ること!真凛ちゃんの命令で〜す」

 

1日?寝てろ?ダメだ、時間が……。

 

そこで俺は作業台に立っているラファールの狙撃仕様が完成された姿を見て、眼を見張る。

 

「……真凛ちゃんでも、烏丸の綺麗なデッサン見ながらなら、作れるよ。だから、今は休んで」

 

「悪い」

 

「んふっふ〜。全て真凛ちゃんに任せなさーい」

 

仕方ないなぁと困った顔で微笑む真凛に、一言悪いと告げると、俺は数日振りの安眠に入ったーー。

 

 

 


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