フルーツパイといえども基本的に糖分は少し控えて作っておいた
何故かといえば甘すぎるとせっかくの紅茶の味まで悪く感じてしまう。リプトンのレモンティーだけど。何にせよ頭と体を動かす武偵でも生活習慣病には勝ち目がない。
それはそうとティータイムを楽しむにはいささか時間が経ちすぎた。そろそろもう一つのことにおいてもコイツから聞き出さねばならない。
「ところで、昨日って何時くらいに起きた?」
「それがどっこい朝までぐっすり」
「麻酔銃の威力が十分で何よりだ」
「聞きたいのはそれだけか?」
「・・・いや、もう一つある。お前の能力で一時的にでも姿を他人に変えることはできるか?」
「他人の姿に?顔や傷跡くらいまでなら再現できるがあんまり得意ではないかな?」
「じゃあ逆にそれを他人に行うことは?」
「皮膚、筋肉、骨格。これらすべてを構成する物質さえ操作可能であれば」
「・・・結局誰が俺のフリをしてやがる」
「イ・ウーでも他人に化けるような技術を持った奴なんて大量に居るが、昨日の時点では大半が海外だったり国内でも全く関係のないような場所にいたりだしな」
「そうか、助かった。またな」
「おう、じゃあな」
スキマを開いて武偵校に繋げる
実際問題、俺の姿をした誰かが犯罪行為を行えば俺の前科にフィードバックされる。まったく迷惑な話だ。どうにかしてもう一人の俺をとっ捕まえる必要がるが、どこから手を付けるか。仮に目の前に現れたとして相手は能力も使えなければ強化外骨格もない、まあ負ける気はしないわな
そんなことを考えつつも校内に繋げたスキマから出て行くと
「まだ持ってんだろ?ほらジャンプしてみ?」
「ま、マジでもう勘弁してくださいよ」
「んだとテメェ!」
それはそれは典型的なヤンキーがいた。よく見ると俺に似ているような似ていないような・・・それはそうと絡まれている方には見覚えが有るな。え~と、確か
「ステルスキル!」
外骨格の出力を骨が折れ無い程度に上げて顔面に叩き込む。まあ武偵ならこのくらい受けても大丈夫でしょ。うめき声も上げずに勢い余ってもうひとりの方に吹き飛んでいって下敷きにしてるけど、大丈夫だな。よくある事よくある事。多分気絶したな
「大丈夫か?」
「これをどう見たら大丈夫に見えんだ」
「悪いな、少し威力を読み違えた」
「とりあえずコイツをどけてくれ、重い」
顔を少し苦悶に歪めながらも助けを求めてくる。うん、まあ、助けるけどね?
流石に気分も悪いし足でコイツの上からどけてやる
「助かった。なんかいちゃもん付け・・・られて・・・」
「俺の顔を見てどうした?もしかしてホモか?」
「違うわ!お前忘れたとは言わせんぞ!」
「いや、忘れた」
「うっそだろ?!・・・いや、もういい。この話はなしだ」
「で?こいつに何盗られた?」
「金と銃、あとはナイフとマガジン」
「これか?」
「そうそう、助かった。以前の事があるとは言え名乗ってなかった。俺は大守、
「俺は黒羽響だ。よろしく」
握手でもしようと手を差し伸べたところ、一瞬戸惑っていたようだが握手し返してくれた。意外にいい奴なのかもしれない
「クソ野郎め、人の財布の中身全部取ってんじゃねえよ」
前言撤回、どこにでもいるタイプの不良なのかもしれない。
気絶してピクリとも動かない男の懐をまさぐって財布を取り出したと思えば財布の中身をカード類以外全部抜き取っている
「さて、こいつに仕返しは済んだか?」
「そうだな、このくらいにしとくか。じゃ、後よろしく」
「おう、俺もこいつに用があったからな」
倒れた男を背中に担ぎ上げ、尋問科に連行し始めるあたり俺も良心的な人間だな、うん。それにしても外骨格を使ってるから体格は少し俺より小さいが大体の背恰好とか顔がここまで似てるとは思わなんだ。パッと見だけならカズでも誤魔化せそうだ。変装にせよ元からにせよ迷惑なこった。