「はぁ・・・全く面倒くさい・・・」
シャーロックめ、コイツのこと頼むって言ってどっか行きやがって・・・
なに?コイツが目を覚ますまで面倒みないといけないの?俺がやったことだから文句は言えんが
「あらあら、面白い奴がいたものね」
声がしたので部屋を見回すが誰もいない
「疲れてるのかな?」
ソファーの影が変に動いたと思えばそこから人の形をしたものが出てくる
それは女の形をして俺に話しかけてくる
「お前は一体何者?」
「さてね、何者だろうな。まあ、ただの武偵だよ、平均的な成績で植物の心のような平穏な生活を望んでいるだけの、ただの武偵だ」
激しい喜びはいらない、その代わり深い絶望もない。そんな植物の心のような平穏な日常を望んでいたのだがこの世界に来てからは全く逆だな
時に今コイツは影から出てきたように見えたが能力のようだな。使用可能能力が追加されたような感覚がある、強いて言えば一瞬体の感覚が遠くなってから元に戻った感じだ
「面白いわ、ちょっとこっちに来なさい」
試しに心を読んでみればこいつは吸血鬼かよ・・・
「断る、俺の睡眠時間を邪魔するんじゃあない」
「来ないならどうなっても知らないわよ」
こっちに向かって歩いてくるが無視を決め込みスキマの中にしまっておいた小型のソファーを取り出し腰掛ける
そのまま腕を組み目を閉じてここ数日の出来事を振り返りながら睡魔に身を任せようとする
しかしそれは頭と肩を掴まれる感覚によって遮られる
「起きなさい。起きなければ血、全部抜き取るわよ?」
「はぁ・・・仕方ないが仕置が必要なようだな」
隙間を可能な限り大量に俺の背後に出現させそこからナイフや高周波ブレード、銃口を覗かせ射出を待機させる
「吸血鬼風情が、誰の許しを得てこの俺に触れる」
「何が吸血鬼風情だ」
「吸血鬼は吸血鬼らしく棺桶の中で眠っていろ。
どこぞの英雄王がごとくスキマを使い目の前の吸血鬼を排除しにかかる
俺の知る限り多分血を吸えば肉体はいくらでも復活するし大丈夫だろうという考えのもと俺の背後に立つ吸血鬼に向け銃弾やナイフが雨あられと降り注ぐ
しかし直前に陰に隠れたかそこに吸血鬼の姿はない
そういえばあいつの名前、確認するの忘れてたな。失敗失敗。さて、初対面の相手の心を読む癖直さねえとな・・・とりあえずはしばらくこの能力は封印だな
「最近寝てねえからな・・・しばらく戻れそうにないしあいつには先に帰るようメールしておくか」
ポケットから携帯を取り出し適当な時間に帰るようメールを送る
「危ないじゃない、何よ今のは」
「生きていたのか」
「そりゃね、魔臓がなければ死んでるわ」
「それが何か知らないが俺には関係のないことだ。お前の名前は?」
「人に名前を聞く時は自分から名乗りなさい」
「俺は黒羽響だ、疲れてるから寝かせてくれ」
「私はヒルダ。ブラド3世の娘、あなたが言ったように吸血鬼よ」
「吸血鬼なんて怖くない・・・」
さてと、寝るか
どうせあいつが起きるのは数十分後だ、今寝たところで問題あるまいて
ただし、寝てる間に拘束されたり殺されたりしてもかなわんしスキマの中で寝るか
ちょっと前に買った小型ベッドの寝心地も試したいところだしな