「ねえ、まだ終わらないの?」
「まだかかる、暇なら自分の欲しいもんでも持って来い、買ってやるから」
「言ったわね?後悔しても知らないわよ」
「おい・・・行っちまった・・・」
女子の買い物ってのは自分が買うのには時間がかかるくせに人に対しては「まだか」と聞いてくる、不条理というかなんというか
何故今買い物しているかといえばそろそろ自宅の冷蔵庫が大変な有様になってそうだからだ
冷凍食品だけってのも味気ないから自炊していたのだがしばらく寮に戻っていなかったことも相まって冷蔵庫を開けた瞬間の悪夢を想像したくないからとりあえず2、3日分の食べ物を買いだめているのだ
後でこっそり自室に戻って片付けるから買い物と冷蔵庫内の暗黒物質の処理をまとめて行いたい所存
「とりあえずこれだけあれば暫くはどうにかなるな」
タイムセールの時間帯を狙っただけあって豚肉、もやし、キャベツ、惣菜は安く手に入った
後はピーマンと豆板醤を買って家にあるはずの味噌で合わせて回鍋肉でも作るか
「はい、これよろしく!」
満面の笑みでカゴ2つ分のポテトチップスとカップラーメンを持ってくる神風をジト目で見つつ値段を確認する
「それ、1つ当たりいくらだ?」
「カップ麺100円、ポテチ88円!」
「・・・ボソッ(よくあればっかり食ってて太らないな)」
「何か言った?」
「いえ何も」
「その程度なら作ってやる、まともなものを食え」
「え~!」
「とりあえず買ってやるから騒ぐな・・・」
騒ぐ神風を黙らせレジに向かう、ラーメンとジャガイモをカゴに追加してからだが
「お会計4900円になります」
5000円札を先に出しておき領収書を要求する
「ありがとうございました~」
店を出て駐車場に行く直前に
「神風、5分ほど待っててくれ」
「どうして?」
「家にコレを置いてくるからだ」
「・・・お台場まで何キロあると思ってるの?」
「まあ、ちょっと待ってろ」
スキマを開き自室に繋げる
部屋に入るなり背後に気配を感じる
「神風・・・待ってろといったはずだが・・・?」
「付いてきました、はい」
「はぁ・・・まあいいだろう、ソファーに座って待ってろ」
生憎自室で生活する時間が少なかっただけに私物は少ししか置いていない
今のところこの部屋に置いてあるのは銃器に関する学校で配布される参考書が付箋まみれで置いてあるくらいだ
「ふーん、真面目に勉強してたのねー」
「私物はあまりないがいじるな」
部屋は数人で1つの部屋を使うもののため自分が使っているリビング以外に数部屋あるのだが、そのうちの1部屋は俺が装備科から買ってきた銃を改造する工房と化している
「こっちの部屋は?」
「銃の改造スペース」
冷蔵庫内の暗黒物質の状況を確認し時間を巻き戻すのを諦める
いつもいつも平気な顔して時間巻き戻してるけど割と制限がある
怪我とか破損程度なら完全に元の状況まで元に戻せるが食物だとカビの繁殖や食事などで生物分解された物に関しては元に戻せない
当然野菜や肉類にはカビが多少なりとも繁殖してしまっているのでカビが根を張ってしまった場所は穴があいている
「・・・雑菌とカビを破壊しておくか、細胞の欠片一つ残らず」
「終わった?」
「ああ、終わったよ・・・色々と」
「なんでそんな疲れたような顔してるのよ・・・」
「さあ?どうしてだろうな?」
「とりあえず俺のやりたいことは終わったが・・・何してる」
「ほへひはへへふ(ポテチ食べてる)」
「まずは飲み込め、飲み込んでから喋れ」
ゴクリ、と音がしそうな飲み込み方をしてから
「お腹すいた」
「・・・ポテチを食べてるじゃないか」
「今何時だと思ってるの?6時よ6時、夕飯時でしょ?」
「俺の夕飯は9時30分だ・・・まあいいだろう、ちょっと待っとけ」
「ん」
冷蔵庫内の元暗黒物質の処理がてら夕食を作ることにした
がしかし何を作るかと冷静になった瞬間
「・・・おい、さっきの宴会場行けば夕食くらい出るんじゃないのか?一応あそこ旅館形式だったし、泊まるやつの方が多いと思うぞ」
「♪~(ポテチウマー♪)」
「聞いてないし・・・まあいいか、どうせ時間はあるし。カズにも明日までにはもどるって言ってあるし」
冷蔵庫から豚ロースと生姜、焼肉のタレを取り出し生姜を半分に切る
半分に切った生姜のうち片割れをおろし器でボールに全部おろし、焼肉のたれと混ぜる
次に豚肉の筋を切り縮こまるのを防ぎ即席しょうが汁へと投下する
漬け込んでいる間に残りの生姜を水を張ったタッパーに入れる(冷凍するよりこっちのほうが長持ちするらしい)10分ほどしょうが汁へ漬け込むところを時間を進めておく
フライパンに油を張り火をかける
フライパンが温まってきたら漬け込んだ豚肉を2枚投入する
弱火で焼いている間にキャベツを千切りにする
え?米?安心してください、もう炊けてます!
キャベツが刻み終わったら2人分の皿に盛る
ついでに冷蔵庫からプチトマトを取り出し2つずつキャベツの脇に添える
豚肉を裏返し焼け具合を確認しちょうどいい感じだったので裏返し中火で焼く
いい感じに焼けたので皿に盛り、残りの2枚も中火で焼く
そして完成!題して「一人暮らし用即席生姜焼き」
「おーい、飯できたぞ~」
完成した生姜焼きを両手に持ち部屋の中央にあるテーブルへ運びに行くと
『本日未明、警察庁長官が職権乱用で自衛官1名を殺害するように部下へ指示したとのことで武偵に検挙され――』
とニュース報道されていた
しかもこれ誰か知らん奴の手柄になってるじゃん。めんどくさいの嫌だから別にいけど
「これ、あなたよね?」
「何が?」
「こいつを捕まえたのはあなたよね?」
「・・・まあな、コイツの部下に殺されかけたからな。捕まえるところまではやったが検挙はしてない」
「ふーん・・・あれ?いつの間に生姜焼きなんて作ったの?」
「お前がテレビ見てる間に、米は自分でよそれ。茶碗と箸は戸棚だ」
「はーい、♪~」
妙に機嫌のいい神風を脇目に飯を食う
「・・・(最近治安悪いなー警察は何してんだか・・・あ、そうか。汚職してるんだ)」
茶碗に白米をよそった神風が「もっきゅもっきゅ」と腹ぺこ王のように食べている
「はぁ・・・平和だなぁー」
「?」
アンブローズ・ビアスの「平和とは戦争と戦争の間の準備期間である」という言葉を思い出してハッとするが気にしないでおく
作者「冬休みが!受験前最後のオアシスが終わってしまう!」
響「失踪するなよ?」
神風「受験だろうがなんだろうが突っ走る作者に限ってそういうことはないと思う」
和馬「これで失踪したら受験で落ちたと思えばいい」
作者「安心しろ、落ちても更新はするから」