ひょんなことから転生しました   作:雷蛇1942

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演習(強制):3

 

 

レキの狙撃を響が回避している頃、演習場の外に止まっているワゴン車の中でドローンを操作する少女の姿があった

 

「なんか面白そうなことやってる」

 

コントローラーと接続されたPC画面を見ながら美味しそうにポテトチップスを頬張っている

 

「でも妙ね・・・画面のラグじゃないし、どうしてこいつは瞬間移動してるのかしら」

 

少女は「細かいことを気にしたら負けの気がする」とか独り言を呟きつつ勝負の行方を見守っていた

 

 

 

 

 

現状二人の演習相手は倒したからの残りも二人だろう

途中参加者がいなければだが

 

「・・・(今更だが何故複数で襲ってこないんだ)」

 

複数人で襲わない理由はいくつか思いつく

 

一つはバトルロワイヤル形式の演習であることだが、むしろチームデスマッチのような感じで問題ないはず

二つ目は単独での方が力を発揮しやすいという可能性

今のところ一番可能性が高い、蘭豹を見ていれば分かるが周囲の状況お構いなしだった

自分以外を意識すると戦術が限られるからかもしれないが

 

「いずれにしても一対二で戦う可能性はあるな・・・」

 

今までがそうであっただけでこれからはどうなるか分からない

慢心すると痛い目を見ることになる

 

「さてと、探しますかね・・・」

 

一応言うと参加者は知らされていない

俺だけかもしれないけど

 

しばらく森の中を歩いていると開けた場所にたどり着いた

夏の昼頃だというのに涼しい、むしろ寒い

この感じ、覚えがある

背後に気配を感じスタンナイフとウォーリアーを抜き構えながら振り返る

しかしそこにいたのはピンク色の髪の少女、アリアだった

 

「・・・は?」

 

「いきなり『は?』とは何よ」

 

「いや、なしてこげなところにおるとです」

 

「博多弁なのか何なのか分からないからその喋り方やめなさい」

 

「演習に参加してたんですか?」

 

「まあね」

 

「・・・じゃあ撃っても文句言わないですね( ̄∀ ̄)」

 

腹に銃口を向け二回トリガーを引く

しかし予想していたかのように避けてくる

腕を掴まれ背負投げのような技をかけられそうになったが腕を折る覚悟でそのまま地面に叩きつける

 

「まだ甘いわね」

 

「何を勘違いしているんですか?」

 

「何も勘違いしていないけど・・・」

 

「まだ俺のターンは終了してないですよ」

 

勢いよく地面を蹴り結構な速度で上空に飛び上がる

落下する際に受け身を取るため一瞬だけは隙が生まれるはず

そこに勝負をかける

 

失速し落下が始まったとき

確かにアリアは笑っていた気がする

 

「空中なら身動きがとれなくなるから優位に立てると思ったわけね、なるほど」

 

「何を納得しているか知りませんが地面まで10mないですよ」

 

「相手が単独なら間違ってなかったかもね」

 

アリアが呟き終える瞬間掴まれていた右腕が離されそして氷の塔がアリアのいたはずの場所に建造されていた

 

「・・・は?」

 

着地して周囲を見回してみるとそこには見知った顔

 

「私も参加していたんだよ」

 

ジャンヌが剣を構えていた

 

「最後の最後で二人組と当たることになるとは・・・」

 

スキマから高周波ブレードを取り出し鞘から抜き放つ

 

「俺はこのブレードだけで戦うことにしましょう」

 

自分でもわかるが変なスイッチ入ったな・・・

 

「そうか」

 

「なら私たちもコレだけでいいわ」

 

自分たちの剣と刀を指し示し構える

自分で自分の表情がわからないし自分の感情が理解できない

おそらく俺は今笑っていてこの感情は歓喜なのだろう

 

「いざ、参る!」

 

まずはジャンヌに斬りかかり攻撃が防がれた瞬間に剣を蹴りアリアの背後に回る

 

「まずは一本もらったァ!!」

 

アリアがガードする際に使った刀のうち一本を切断する

 

「どんだけ切れ味いいのよ!?」

 

「アリア!下がれ!」

 

ジャンヌがアリアに下がるよう指示を出し響の足を凍らせ地面に縫い付ける

 

「これで身動きも取れまい」

 

「はぁ・・・」

 

足に力をいれ踏み出すと簡単に氷は砕け散る

 

「・・・」

 

無言でジャンヌに斬りかかるが先ほどと同様に剣で防がれるが今度は剣で防がれることを念頭に攻撃している

 

「私の剣は切れんよ」

 

「うん、そう思ってた」

 

高周波ブレードを逆手に持ち替えジャンヌに足払いをかける

バランスを崩したジャンヌの首に峰打ちを仕掛け用としたタイミングで背後からアリアに切りかかられる

 

「まだ終わってないわよ!」

 

横に飛び退き体制を整え改めて切りかかるがあえなく防がれる

 

「・・・(能力を使ってもいいがそれじゃあつまらんしな・・・どうするか)」

 

再び森の中に入り自分にとって有利な状況に持ち込もうとする

二人共響に続き追いかけてくる

 

(うまいこと誘い出せたか?)

 

周囲に結構な量の木がある状況であれば隠れてから奇襲するのも楽だろう

警戒するのはジャンヌの能力とアリアの鋭い勘と観察力だ

木の枝に飛び乗り姿が見えないように移動する

 

「どこに隠れた!」

 

「出てきなさい!」

 

「出て来いで出て行くバカはいませんよ」

 

ザ・フィアーのように木の上を跳んで移動する

 

「どこから攻撃されるかわからない恐怖を味わうがいい!俺の巣の中で」

 

完全にザ・フィアーのようなセリフを吐いてからアリアたちの死角から切りつける

今度はブレードに流す電力を最大出力にして防御した刀を紙のように切り落とし姿を消す

 

「刀が!!やってくれるじゃない!!」

 

「アリア!相手の挑発に乗るな」

 

挑発ではなく次の攻撃への布石だ

攻撃を防げなければそのまま峰打ちを仕掛けられる

 

アリアが刀身がほとんどなくなった刀を構え直したところで再び攻撃する

今度は電圧をある程度抑えた状態で首元へ

 

「アリア!後ろだ!」

 

「遅い!」

 

アリアが攻撃を防ごうと振り返るが間に合わずそのまま受けてしまう

首元にブレードが当たった瞬間に電圧を上げる

高圧電流を受け電極を付けられたカエルのように手足が痙攣するアリアを見て

 

「アルェー電圧間違えたかなー・・・さすがに死なないよな?」

 

チラッ

とジャンヌに目配せすると

 

「高電圧を体に流して拷問する方法もあるしこの程度なら大丈夫だろう」

 

「せなんか」

 

「ちょっとすれば気がつくだろう」

 

「火傷も大したことないな・・・(一応時間巻き戻して治しておくか)」

 

傷の様子を確認しながら武器と傷の時間を巻き戻し治しておく

改めてジャンヌに向き直り

 

「さあ、勝負を続けよう」

 

「ああそうしよう」

 

互いに剣を構え少しの時間が流れる

響は居合の構えだが

緊張が解けたただの一瞬で勝負が始まった

ギンッ

互いに声すらも上げずに切り合う

金属同士がぶつかり合い激しい攻防が繰り広げられる

 

途中剣とブレードの質量差でブレードが弾き飛ばされかけるがアーセナル装備の出せる力を調整して弾き飛ばされるのを防ぐ

 

「さすが伊達に剣を扱っていないな!」

 

「まだまだこの程度じゃないぞ!」

 

更に激しくなる剣撃をすんでのところで躱し、後方へ下がろうとするが生憎岩があるせいで横に飛び退けることになってしまう

 

「流石に余裕が無くなってきた」

 

「投降するか?」

 

「手加減する余裕が、だがな」

 

逆手持ちに持ち替えた高周波ブレードを地面に突き立てそのまま地面に突き立てた状態で前方に走り出す

イメージで言えばMGRのサムの剣撃だ

 

「ラァ!!」

 

「!?」

 

「最終的にィ!勝てばよかろうなのだァ!」

 

ブレードを引き抜く際に巻き上げられた土煙を利用し目隠しにする

 

「なっ!どこに隠れた!?」

 

「ここだ」

 

ジャンヌの背後に周り峰打ちを仕掛けつつ回答する

剣で防ごうとしてくるが剣速はこちらの方が早いため防御が間に合わず衝撃をそのままに受けてしまう

 

「まだまだ私を倒すには足りんぞ!!」

 

それなら同じ力で連続的に攻撃するだけだ

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」

 

2分の1の確率で攻撃が防がれていないことを考えると戦闘中の疲労が蓄積しているのだろう、ESPの使用は精神力の摩耗が激しいと聞くし

 

「くっ!まだ終わらない!終わらせない!」

 

周囲の空気が冷え始め地中の水分が凍結し地表につららのように出てくる

 

「あぶねえ・・・木の上に飛ばなきゃ今頃串刺しになってたな・・・」

 

「これならどうだ!!」

 

ジャンヌの周囲の空気が凍り、凍結した空気中の水分が氷の槍となって響めがけて飛来する

あぶねえ、氷を飛ばせるなんて聞いてないぞ・・・

氷の槍のいくつかを切り落としジャンヌの懐へ飛び込む

 

「直線的に飛ぶだけの銃弾やコレは軌道が読みやすい」

 

下段から攻撃する瞬間に一言だけ呟き高周波ブレードの電圧を調整する

 

「最後の最後で詰めが甘かったな」

 

峰をジャンヌの首筋に当て電流を流す

感電し四肢を思うように動かせなくなった挙句その状態で打撃を受け気絶したジャンヌを倒れないよう抱きとめる

 

「だが初見殺しとしては悪くなかったと思う、いいセンスだ」

 

無線の周波数をカズに合わせ演習終了を告げる

 

「二人は戻るついでに連れてくよ」

 

「了解、昼飯食いに行くか?」

 

「そうだな、どっか貸切にしておいてくれ」

 

「まさか演習に参加した全員でやる気か?」

 

「当たり前だ、戦った相手を労うのも演習だ」

 

「了解、じゃあ後でな」

 

無線を一方的に切られ会話が終了する

 

後ろに倒れているアリアとジャンヌに向き直り

 

「さて、帰るか」

 

スキマを開き両手にアリアとジャンヌを抱え集合場所に出口を設定する

 

 

 

 

「・・・何あれ・・・」

 

PC画面を覗く少女は驚嘆していた

わかりやすく言えば

Σ(゚д゚lll)こんな顔押して驚いていた

 

「SSRに移転したっていうのは聞いていたけど複数種の能力を使用可能というのは聞いていない・・・」

 

独り言をぶつくさ言いながら過去に提出された報告書を読み直す

そこには響がSSRに移動することと今日の演習に参加すること、その他綴の目の前で使用した空中を飛行する能力や身につけていた装備品などに関することがまとめられて書かれていた

 

「やっぱり書かれていない、瞬間移動したり何もない空間に入ったり道具を取り出したりするなんて記述もない・・・直接接触したほうがわかりやすいかも」

 

ゴソゴソとワゴン車の中を移動し運転席に座り

 

「よし、打ち上げ会場へ先回り決定!!」

 

打ち上げ会場の特定を完了させ車を出した

 




どうも、あけましておめでとうございます
しばらく書いてなかったもんで4000字近くまでまとめて書いてしまいました(途中で区切るタイミングをなくしてしまった・・・)

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