東京レイヴンズIF~大鴉の羽ばたき~   作:ag260

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第二十二幕 新たな仲間?

 

 

 

波乱の自己紹介が終わり、教室全体が気まずい空気の中、初日の授業が終わった。

 

…え?授業は、どうだったかって?

………なんで陰陽術の座学ってあんなに眠くなるんだろうね。

 

そんなこんなで今は放課後。夏目と共に雑談をしている。

 

「夏目、あの京子って奴はいつもあんな調子なのか?」

「あんな調子?」

「妙に突っかかってきてたけど。何か土御門に恨みでもあるのか」

「うん。何かある度に突っかかってくるんだ。…もっとも今日みたいにあからさまなのは珍しいけどね」

「……お前、あいつと何かあったのか?」

「いや、特に心当たりはないけど」

「…あいつ『倉橋』京子って名前だったよな。倉橋ってあの倉橋だろ?お家絡みじゃないのか?」

 

今まで黙っていた冬児も会話に入ってきた。

 

 

 

「確かに彼女はあの倉橋だけど、今じゃ業界内の地位は彼女たちの方が上なんだからあっちから因縁つける理由にはならないよ」

「なあ、さっきから思ってたんだけど倉橋ってそんなに有名なのか?」

 

そう言えば塾長も倉橋だったような。

 

「「……ハァ」」

 

二人同時にため息をつかれた。

 

 

「な、なんだよ」

「いや、お前の無知さに呆れてな」

「しょ、しょうがねーだろ!陰陽師とは無縁の生活してたんだから」

「倉橋家はお前ん家と同様、陰陽道の古い名家だよ。土御門が没落した今、業界じゃ一番の名門だ。塾長の名前、聞いたろ?倉橋美代。あの人は倉橋家の大御所なんだぜ」

「じゃあ、あの京子ってのも……」

「そう、倉橋一族さ。しかも彼女は塾長の実の孫で、彼女の父は現陰陽庁長官。まったくこれ位は常識だよ?」

「だから俺は、陰陽師とは無縁の生活をこの間までしてたんだぜ?そんな他人の家の事まで知るわけないだろ」

 

 

 

俺の言葉を聞いた冬児が意地悪く笑いながら言う。

 

「いや、全くの他人って訳でもないんだぜ」

「どういう事だよ」

「春虎。倉橋家は元々土御門家の分家筋なんだよ。いわば僕たちと彼女に家は親戚関係なんだ」

「なに!?マジかよ」

「自分の親戚くらい知っとけよ」

「会ったことも無い奴相手に無茶言う―――」

 

『約束なんだからね』

 

あれ?なんか今、思い出しかけたような…。

 

「春虎?急に黙っちゃってどうしたの?」

「あ、いや、なんでもない」

 

う~ん。思い出せん。そのうち思い出すかな。

 

 

「土御門君。ここに居ましたか」

 

後ろから声をかけられ振り向くと、そこにはスーツを着た若い男性が立っていた。

 

「ああ!いけない。忘れてた」

「どうしたんだ?」

「あ、その、ちょっと用事が」

「じゃあ、私は先に行ってますよ」

 

男はそう言うと教室から出てった。

 

「じゃあ、僕はちょっと言ってくるね」

「おう。行ってらっしゃい」

「またな」

「またね」

 

そう言って夏目も男の後を追って教室を出て行った。

 

 

「さて、これからどうするか?」

 

冬児はそう言って教室を見渡す。

放課後の教室には誰も残っておらず静寂が満ちていた。

 

「俺、街に行って買い物したいんだけど一緒に行くか?」

「何買いに行くんだ?」

「マンガ」

「…夏目に怒られるぞ」

「別に良いだろ、マンガぐらい。っで行くか?」

「まあ、暇だし行くか」

 

俺たちは一旦、私服に着替え街に買い物に行くことにした。

陰陽塾は渋谷にあるので、少し歩けば繁華街に着いた。

 

 

 

「いや~。さすが都会。人がいっぱいだな」

 

周りの喧騒を聞きながら感心したように言う。

 

田舎(あっち)じゃ、こんなに人はいないしな」

「まあな。んで本屋はどこにあるんだ?」

「…場所を知らずに来たのか?」

「お前が知ってるだろ?都会(こっち)の出なんだから」

「ハァ……。こっちだ」

 

冬児の案内で着いた場所は喧騒の中心から少し外れ、人通りも落ち着いている商店街だった。

 

「へえ~。こんな所もあるんだな」

「人が多すぎず少なすぎずの良い所だろ?」

「ああ、確かに」

 

 

 

それから冬児の案内で着いた本屋でマンガを購入し、夕飯は寮で出るからそろそろ戻ろうとした時、

 

「なあ、ちょっと俺たちに金かしてくんない?」

「へへ。頼むよ~」

 

どこにでも、こういうチンピラは居るもんだな。

声の聞こえた、路地に顔を覗かせると三人のガラの悪い男が一人を囲んでいるようだった。

 

囲まれている人物の顔は良く見えないがあれは…。

 

「なあ、あいつ陰陽塾の生徒じゃないか?」

「…確かに、陰陽塾の男子用制服着てるな」

 

特徴的なデザインの制服だ見間違えるはずがない。

 

「これも何かの縁だ。助けてやるかな」

「本音は?」

「授業三昧でストレスがたまってる。遠慮なく殴れる相手が欲しかった」

「じゃ、頑張れよ」

「俺一人で行くのかよ!?」

「十分だろ」

 

まあ、確かに。

 

「俺はここで待ってるからな」

 

冬児はそのまま壁に背を預けた。

俺は学友を助けるため、チンピラたちの元へ向かった。

決して憂さ晴らしではない。

 

 

 

「さっさと金出せよ!出さねえと痛い目見るぞ!」

「ひいっ!」

 

チンピラが拳を振り上げたのと同時に声をかける。

 

「待て!」

「ああん?」

「なんだてめーは!」

「善人ぶってんじゃねーぞ!」

 

古今東西チンピラのセリフってのは代わり映えが無いな。

 

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ 悪を倒せと俺を呼ぶ。 聞け!悪人ども。俺は正義の戦士!仮面ライダー・スト〇ンガー!!」

「「「「…………」」」」

 

カツアゲを受けていた、奴まで黙り込んでいる。

ネタが古かったか?

 

「……特撮の見過ぎだ。バカ」

 

後ろで冬児がボソッと言う。

 

 

 

「…は!て、テメーふざけてんなよ!」

 

硬直から立ち直ったチンピラの一人がナイフを取り出した。

 

「へっ!今更謝ってもおせーぞ!」

「グダグダ言って無いでかかってこいよ」

「っこの!舐めてんじゃねーぞ!」

 

激昂したチンピラはナイフを振りかざしながら、こちらに向かってくる。

俺が、ナイフにビビる事なく構えをとったその時、

 

キィィン

 

金属同士がぶつかった様な甲高い音が響いたと思ったら、チンピラの手からナイフがなくなっていた。

見るとナイフはチンピラの遥か後方に落ちていた。

 

 

何が起きたか分からずに、自分の手と落ちたナイフを見比べているチンピラに俺は、

 

「獲物を手放すとは笑止!喰らえ!雷犂熱刀(ラリアット)オオオオォォ!」

 

首めがけて腕をフルスイング。

 

「ゴフッ!」

 

喰らったチンピラは、首を起点に一回転して地面に叩き付けられた。

痙攣してるから死んでは無い……と思う。

 

「よ、よくも仲間を殺ってくれたな!」

 

だから殺っては無いって……たぶん。

 

「ぶっ殺してやんよ!」

「こっちだってストレス溜まってんだ。五分はもたせろよ」

「スカしてんじゃねーぞ!」

 

そう言って残りの二人は同時に襲いかかってきた。

 

 

 

 

~~一分後~~

 

 

「お、覚えてやがれ!」

 

お決まりのセリフを吐いて逃げていくチンピラ。

弱すぎて話にならなかった。

 

そういえばさっき一瞬今朝も感じた気配を感じたような…。

なんだったんだあれは?

 

 

「おい、大丈夫か」

 

まだ呆けている男子塾生に声をかける。

 

男子生徒は背が低く童顔で眼鏡をかけている。いかにもカモにされそうなタイプだった。

 

「あ、は、はい!助けてくれてありがとうございます!」

 

 

怖がられてると思ったが、なぜか逆にキラキラした尊敬の眼差しを向けられている。

なぜだ?

 

 

「と、ところでお前、陰陽塾の生徒だよな?」

「は、はい!」

「同じクラスメイトの顔ぐらい覚えとけ」

 

喧嘩が終わったのに気付いたがいつの間にか後ろに立っていた。

 

「え?クラスメイトだったのか。悪いな」

「いや、大丈夫です!気にしないで下さい!」

 

なんでこいつこんなにテンション高いの?

 

「そ、そう言ってくれると助かるぜ。…え~と」

「僕の名前は、百枝(ももえ)です。百枝 天馬(てんま)です」

「百枝天馬か。よろしく、もう知ってるみたいだけど、俺は土御門 春虎。春虎でい「兄貴と呼ばせてください!」

「―――へ?」

「不良どもをなぎ倒す兄貴の漢らしさに感銘を受けました!兄貴と呼ばせてください!」

「い、いや、ちょっと待ってくれ」

「第一印象から決めてました!」

「誤解を招く発言はやめてくれ!!」

 

 

そういう言葉はかわいい女子から聞きたいんだ!

 

 

 

「まあまあ、良いじゃねーか。慕ってくれてるんだから。兄貴になってやれよ」

「冬児、テメー他人事だと思って!」

「実際に他人事だしな」

「兄貴!お願いします!」

「俺は兄貴とか呼ばれるガラじゃないって!」

「さっきは『正義の戦士』を名乗ってたがな」

「黙れ冬児!」

 

「お願いします!」

「やめてくれ!」

「そこを何とか!」

「いや、だから」

「…駄目ですか?」

 

天馬が涙目で訴えてくる。

その顔を見ると、なぜか罪悪感に襲われる。

あれ?俺悪くないよね?

 

「兄貴…」

「……好きにしてくれ」

「ありがとうございます!」

 

その眼は反則だろ。

俺がうなだれている横で冬児はちゃっかりと、

 

「阿刀冬児だ。俺は冬児でいいぜ」

「よろしく。冬児君だね。僕の事も天馬でいいよ」

 

自己紹介を済ませてやがった。

抜け目のない奴め。

 

 

 

天馬も含めた三人での帰り道。天馬は寮生じゃ無いから途中まで一緒に帰ることにした。

 

「ええ!あの事件にそんな裏があったんですか!?」

「まあな。それで俺たちはそろって陰陽塾入りしたんだ」

 

天馬には例の事件の事を『十二神将』や『大連寺鈴鹿』などの重要なことは伏せて陰陽師に襲われた一般人として話した。

 

 

事件の事を話そうと提案したのは冬児だ。

理由はこちらの事情を知っている奴がいた方が、何かと便利だからだそうだ。

 

天馬を選んだ理由は、真面目そうでこんな話を聞いても他人に喋らないだろうと思ったからと、俺の事を兄貴と呼び慕っているかららしい。後者は意味が分からん。

 

「じゃあ、僕はこっちの道だから」

「ああ、また明日」

「また明日ね」

「気を付けて帰れよ」

「お疲れ様です兄貴!」

 

天馬は冬児には手を振り、俺には頭を下げて反対方向の道に走って行った。

 

「………なあ、冬児」

「なんだ?」

「あれが卒業まで続くのか?」

「さあな」

「…ハア」

 

 

 

冬児と共に寮に帰った後はすぐ夕飯を食べ、それぞれの部屋に別れた。

 

「あ~。疲れた~」

 

俺は部屋にある備え付けのベッドに倒れこんだ。

転入初日にあれだけのことをしでかして(やったのは俺じゃないが)大丈夫かと思っていたが無事に友達?も出来たし、今日のところは上々……か?

 

 

「まだ寝るには早いしな。何すっか」

 

買ってきたマンガはもう読んでしまった。

 

「……荷物整理でもするか」

 

まだ寮に入ったばかりだから、荷物が色々と片付いていないのである。

そうして荷物整理のため、カバンの中身を漁っている時だった。

 

「…なんだこりゃ?」

 

出てきたのは小さな和紙でできた、包み紙だった。

 

「ああ!そう言えば親父からもらった物がこんな奴だったような」

 

家を出る直前に親父から渡されたものがこんなのだった気がする。

あの親父が寄越すものだからロクな物じゃないと思ってカバンに放り込んどいたんだった。

 

 

 

「確か親父は式神とか言ってたような……」

 

いかん。使い方が分からん。

 

とりあえず包み紙から出してみるかと思い、封を開けようとしたとき背後にいきなり気配が発生した。

いきなり出てきた気配に驚きながらも、素早く振り向く。

 

そこにいたのはおそらく十歳、もしかするとそれ以下かもしれない小さな子供だった。

小さな子供が俺に対し土下座の様な格好で頭を下げていた。

 

「…誰だ?」

「--っ!」

 

俺が声をかけるとその小さな子供はバッと頭を上げた。

顔つきからしておそらく少女だろう。

 

その少女の容姿はおかっぱ頭に白い肌。こちらを見つめる双眸は蒼く、人間離れしている。

そして一番気になるのは、耳と尻尾だ。

 

頭のてっぺんにピンと立った二つの耳。

ふさふさの毛並みのよさそうな尻尾。

 

二つとも人間には無いものだ。ってことは、

 

「お前、式神か?」

「はは、はい!おおお、お初にお目もじ致しまする!わわ、わたくしこのたび、祖狐葛の葉が御末裔、つ、土御門はは、春虎様の護法に仰せ掴まりました、こ、コンと申します。ふ、ふつ、不束者ですがなにとぞよ、よしなに」

 

どもり過ぎてて聞き取り辛い。

 

 

 

「あ~、コンって言ったか?お前が親父の寄越した式神か?」

「はは、はい!」

「いや、頭は下げなくていいから」

「は、はい」

 

俺の言葉に少女――コンは気まずそうにしながらも、頭を上げた。

 

「でも、俺まだなんもして無かったんだけど、どうやって出てきたんだ?」

「ここ、コンは春虎様の護法ですのでつつ、常に主様の身をお守りしなければなりません。おお、お役目を仰せつかりました時から、かかか、陰ながら護衛を」

「ってことは、親父にこれもらってからずっと居たのか。でも、姿が見えなかったけど」

「おおお、お声が掛からなかったので、おお、隠形を致しておりました」

「おんぎょう?ああ、姿を消す奴な。ってことはずっと側に居たのか?」

「ははは、はい」

 

 

ああ、じゃあ前から感じてた気配とか、今朝アルファが言ってた俺の式神ってコンの事だったのか。

 

「ん?じゃあ、チンピラとの喧嘩の時ナイフを弾いたのはお前か?」

「は、はい!出過ぎた真似かと思いましたが、つい」

「いや、助かったよ」

「ああ、ありがたきお言葉です!」

 

別に何もしなくても、無傷で勝ってたと思ったが。

 

 

 

「親父が俺に寄越したってことは、前は親父に仕えてたのか?」

「いい、以前の記憶は残っておりません。しし、しかしコンは以前にも何度か土御門分家の方々に使えておりました」

「へ~。じゃあ、俺ん家に代々仕えてたかもしれないんだな」

 

夏目の持ってる『雪風』みたいなものだろう。

由緒ある式神なのかもしれないが、……見た目がな。

 

コンを連れて街なんか歩いたら、通報されかねないからな。

しかし、見た目で判断するのは早計だろう。

 

こんな見た目でも何かすごい能力とか持ってるかもしれないしな。

 

「コン。お前、何か能力とか得意な事とかあるか?」

「は、はい。恐れながら隠形の術なら得意でございます」

「ああ、さっきのか。ちょっとやってみてくれよ」

「は、はい。では――」

 

すると突然コンの姿が消えた。気配もかなり薄いものになっている。

 

「おお、すごいな」

 

さっきまでコンの居た所に手を伸ばすが、何も触れずに通過する。

 

「コン。居るんだよな」

「はは、はい。ここに」

 

おお、声だけ聞こえる。

 

「触れないってことは透明になってるわけじゃないのか」

「い、いま、コンは霊的に存在するだけで…そ、そのうえで周りに霊気を紛れさせています。しし、しかしこうして喋ると、霊気が揺れ動いてしまいますが…」

 

確かに声のする方を良く視ると、そこには微かに霊気の陰みたいのが見えた。

サーヴァントが霊体化するみたいなものか。

 

 

 

「もういいぞ」

「は、はは」

 

俺が声をかけると目の前にコンが現れた。いや、現れたというより最初からそこに居たかのように出現した。

 

「お~。改めてみるとすごいな」

「ああ、ありがたきお言葉です」

 

コンは顔を真っ赤にさせながら頭を深々と下げた。

その後ろに見える尻尾は、千切れんばかりに左右に振られている。

 

な、なんだこの癒される式神は!

 

「か、顔を上げてくれ。それで他には何かできるのか?」

「ちゅ、宙に浮くことができます」

 

するとコンは正座の体勢のまま宙に浮いた。

 

「おお!ほんとに浮いたよ。他にもあるのか?」

「ひ、火が操れます」

 

コンは、宙に浮きながら指を立てるとその先に、握り拳大の青白い火球が発生した。

さらにそれを二個、三個と増やし、宙に漂わせる。

 

「おお~!すごいじゃないか。他には何ができるんだ?」

「え?……他に…」

 

 

急にコンの表情が曇った。

火球も消え、コンも正座のまま床にストンと落ちる。

 

 

あれ?もしかしてネタ切れか?

 

「あ~、別にないなら――」

 

もういいよ、と言おうとした時コンがハッと何かに気づいた仕草をした。

 

そして正座の姿勢から素早く片膝を立て、同時に右手を背中に回し、何かが閃いた次の瞬間、

 

 

 

俺はコンに小刀を突き付けていた。

 

……………OK詳しく説明しよう。

 

コンが何をトチ狂ったか俺に逆手に持った小刀を向けてきた瞬間、小刀の腹を右の掌底で叩いていなし、小刀を持った手を軽くはたき、コンの手から零れ落ちた小刀を素早く掴んで突き付けたのだ。(この間実にコンマ一秒)

 

 

コンは何が起きたのか理解できずに、空になった自分の右手と突き付けられている小刀を見比べている。

 

「ああ、悪いな。勝手に体が反応しちゃって」

「いい、いえ!みみ、見事な体捌き!深く感服いたしました!」

 

そう言ってコンはまた、深く頭を下げる。

 

「おい、だから顔上げろって」

 

俺は立ち上がってコンに近づいた。その時、

ガチャ

 

「春虎。明日の講義だけ、ど………」

「おお、夏目。どうした?」

「は、春虎?ななな、何をしてるの?」

「なにをって…」

 

 

今の俺の部屋の状況を第三者の立場から見つめなおしてみよう。

 

1.俺は小刀を持って立っている。

 

2.コンは跪いて頭を下げている。

 

3.コンは幼女にしか見えない。

 

4.俺の部屋に二人きり(男子寮)

 

結果…通報される。

 

 

 

「ま、待ってくれ夏目!」

「なんだい春虎?ぼくちょっと用事が出来ちゃったから後でいいかな?」

「その用事ってその手に持った携帯で警察に通報することだろ!?お願いだから話を聞いてください!」

「春虎。言い訳は警察の方に言ってね。大丈夫、初犯だから執行猶予が付くかもよ」

「いや、だから話聞けよ!犯罪なんてしてないって!」

「ゴメンね春虎。ぼくがもっと主としてしっかり教育しとけばこんな事には」

「だから話を聞けええええええ!!」

 

 

それから夏目の誤解を解くのに二時間以上かかった。

 

 


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