仮面ライダースナイプIS   作:カズミン

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第2話 Part1

「此処がIS学園か。」

2人目の男性操縦者が発見された全国IS適性検査から2ヶ月が経ったある日の早朝。

タイガはIS学園の正面ゲート前に立っていた。

「ハァ...。」

タイガは面倒くさそうにため息をつくと、ボストンバッグが上に乗った大型スーツケースを牽きながら、本校舎の1階にある総合事務受付目指して歩き出した。

 

 

タイガは総合受付に着くと、受付担当の事務員に身分証を見せた。

「っ!貴方が例の...。少々お待ちください。」

事務員の女性は驚いた表情を見せた後、内線で誰かに連絡を取った。

 

しばらくすると、総合受付には、出席簿を持った、黒のスーツにタイトスカートの黒髪の女性が現れた。

「待たせてすみません、貴方の担任になる織斑千冬です。」

「織斑、千冬?・・・どっかで聞いた名だな、何処だったか。」

スーツの女性、織斑千冬の名前を聞いたタイガは首を傾げた。

「え!?し、知らないんですか!?世界最強のIS操縦者である『ブリュンヒルデ』の織斑先生の

 事!?」

「あぁ、確か第1回モンド・グロッソの優勝者の名前だったか。ブリュンヒルデだったか、悪いが

 興味が無かったんでな。」

「いえ、その呼び名は好きではないので。」

「そうか。で?なんでアンタは敬語なんだ?」

「一応貴方は私の受け持つクラスの生徒ではありますが、保険医も兼任される

 ということで同僚ということになりますから。」

「保険医と言っても、手が足りないときに手伝う、非常勤だがな。」

「それに私よりも一つ年上ですから。」

「て事はアンタ、24か。」

「えぇ、まぁ。」

「授業中は敬語じゃなくて構わない。」

「分かりました。では教室に向かいましょう。」

タイガは持ってきた荷物を受付に預けると、そうして千冬の先導で教室に向かって歩き出した。

 

 

1年1組の教室に向かう道中、タイガは千冬と雑談していた。

「なぁ、ブリュンヒルデ。」

「その呼び名はやめてください。」

「織斑と呼んでも良いが、一人目と被るしな。初対面の女を下の名前で呼ぶ趣味もないからな。

 それとも、下の名前で呼んでほしいのか?ち・ふ・ゆ・ちゃ・ん?」

「ブ、ブリュンヒルデで結構です。た、確かに弟は一組に所属しているので被りますし。」

千冬は赤面しながら答えた。

「弟?あぁ、なるほどな。織斑、か。・・・しかし、はた迷惑な話だな。」

「・・・申し訳ありません。」

「しかし、分からねぇな。何をどうしたら、一介の中学生がISなんぞに触れられるんだ?」

「その、実は、ですね。藍越学園を受験するはずだったんですが、あのバカは間違って、というか

 迷子になった挙句に適当にIS学園の試験会場に入り、入試用に安置されていたISに興味本位で触

 れたんです。」

「・・・なるほど、筋金入りの馬鹿か。場所なんて、受験会場の受付の人間にでも聞けばいいだ

 ろ。というか、IS学園の担当教員から受験時に説明があるはずだ。普通はソレで分かると思う

 が。」

タイガが呆れた口調で問いかけてくる度に、千冬の顔は徐々に赤くなっていった。

「・・・はい。実は、今年の受験生のテンションが妙に高くてですね、担当教員はベテランだった

 のですが、受験生の対応で疲れ果て、その時には判断能力が鈍っていて、顔を見ずに説明して少し

 休むために退出しまして。」

「ISを纏う訳だからISスーツに着替えるはずだな?」

「はい。」

「担当教員は一人目に着替えるように指示を出したわけだ。」

「はい。」

「普通ならそれで気づきそうだけどなぁ?」

「お、弟は、その、カンニング対策だと思ったらしく......。」

「そもそも、ISに勝手に触れる馬鹿がいるのか?」

「申し訳ありません。」

恥ずかしさから千冬の顔は既に、プレッシャー星人を超えるほど真っ赤になっていた。

 

 

その後、2人は無言で歩いていた。

 

 

「着きました。・・・どうやら自己紹介の真っ最中みたいですね、少し待っていてください。」

そう言うと、千冬はタイガを残して教室に入っていった。

 

 

 

 

 

千冬は後ろのドアから静かに教室に入った。

「以上です。」

クラス、いや学園唯一、ではなく唯二の男子生徒で千冬の弟である織斑一夏が自己紹介をしているところだった。

(なんだその自己紹介は。)

千冬は唯一の肉親の自己紹介に呆れ音を立てずに一夏の背後に立つと、背後から出席簿を振り下ろした。

「いっ―――――!?」

一夏は痛みに驚いて背後を振り向くと、

「げぇっ、ジャベル!」

千冬は再び出席簿を振り下ろした。―――かなり強めに。

その音に生徒が数名、否、生徒全員と副担任である眼鏡をかけた緑神髪の女性、山田真耶が完全に引いていた。

「誰がグンダリ無駄遣いオジサンか、馬鹿者。」

「お、織斑先生、会議は終わられたんですか?」

真耶は千冬に話しかけた。

「私は途中で抜けて、例の新入生の出迎えに行ったんだ。」

「そうですか。」

「それと山田君、クラスへのあいさつを押し付けてすまなかったな。」

千冬は一夏に投げかけた声とは天と地ほどの差がある優しい声で誤った。

「い、いえ、副担任ですから。」

真耶とのやりとりが終わると千冬は教壇に立った。

 

 

 

 

 

 

 

その頃教室の外では、タイガが知恵の環で暇つぶしをしていた。

 

「しかし、さっきの音は何だったんだ?」

さっきの音とは、千冬が一夏を出席簿で叩いたときの音だった。

「大砲みたいな音だったが。フッ、まさかな。」

 

しばらくしてタイガが知恵の環を外したと同時に教室前方のドアが開き、千冬が顔を出し、手招きして来た。

「入ってく、入れ。」

 

タイガは千冬の指示に従って教室に入ると、教壇の横で立ち止まった。

「彼は全国IS適性検査で見つかった、2人目の男性操縦者だ。自己紹介を。」

タイガは千冬に促されるように自己紹介を始めた。

「俺の名前は立花大河、歳は25。医者で一応、非常勤の保険医としてもこの学園に在籍すること

 になった。趣味は料理と、シューティングゲームだ、まぁ、よろしく頼む。」

 

 

 

 

 

 

 

「自己紹介はああやってするのだ、馬鹿者。」

「あべしっ」

千冬は気配を消して一夏の背後に移動すると、出席簿でもう一度頭を叩いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ~、面白そうじゃん。」

黒い長髪の生徒―――ニコはニヤリと笑いながらタイガを見つめていた。

 

「あの人、もしかして。」

そして真耶もタイガの事をじっと見つめていた。

 


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