残念ながら、門番を二人ほど雇うことになってしまいました。
アルデバランとシャカ。
少々、不審者チックな雰囲気を感じましたので、城戸邸の門番としてスカウトするのは止めようと思ったのですが、お二人の気持ち悪いぐらいの熱意に負けてしまいました。
幸いと言えるかは分かりませんが、隠れ里での門番の仕事も掛け持ちなので一年のうち数ヶ月だけ城戸邸に来られるそうです。
その間は一輝の指導もしてくれることを約束してくれました。
「それでシャカよ。
「ええ、
「くそう、教皇め! やはり、アイオロスさんが裏切ったというのは嘘だったのか!」
「アルデバラン、教皇はこの私の目をも欺いていたのですよ。気に病む必要などありません。いつか必ずその報いは受けさせましょう。ですが、今は幼い
「……黄金聖闘士全員で、教皇を倒しちまえばいいんじゃないのか?」
「その後が問題なのですよ。教皇が邪悪に染まっていたと外部に漏れれば、今まで息を潜めていた邪悪なる者共が、活動を始める切っ掛けとなるでしょう。その時、完全に目覚めておられぬ
「そうするしかないのか」
「アルデバラン、今は屈辱に耐えて、
「おお!? その発想はなかったぞ! 確かに
「ふふ、やっと気付きましたか。アルデバラン」
「クク、シャカよ。貴様、最初からその腹積もりだったな」
「私は“最も神に近き男”とよばれています。これ程の好機を逃すことは考えられません。これで名実ともに神に近付けます」
「最も神に近きって、そういう意味だったのか!?」
「フハハハハハハッ、全ては
「クハハハハハハッ、いいだろう! 俺も
何やら、二人で高笑いをしています。
こいつらは本当に大丈夫なのでしょうか?
あとで、シャイナさんに相談するとしましょう。
***
やっと、生シャイナさんに会えました。
くんかくんか。
うふふ、思ったとおり、いい匂いがします。
「いや、いきなり匂いを嗅がれても反応に困るんだけど?」
困った顔のシャイナさんも可愛いです。
今はシャイナさんのご自宅なので、仮面は外しているので素顔が丸見えです。写真を撮ってもいいですか?
「いや、その、どうだろうね? 写真の決まり事は聞いた事はないけど、男に素顔を見られるわけにはいかないから、写真はマズイかな」
そうでした。女聖闘士は男に素顔を見られたら“例外なくブッ殺す”という決まりがありました。
「いや、例外なくじゃなくて…まあ、いいか」
では、誰にも見られないように城戸邸の地下にある金庫室で保管します。だから写真を撮らせて下さい。
「ふふ、あたしなんかの写真がそんなに欲しいなら構わないよ。だけど、本当に見られないように気をつけておくれよ」
よしっ、許可を貰えました。
ツーショットも撮らせてもらいましょう。
それから写真を撮りまくりました。
パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ……
***
「ちょ、ちょっと待ってくれ!? いつの間にか脱がされてるんだけど!?」
チッ、正気に戻ってしまいました。残念です。
***
「もう一度、言ってくれないかい?」
「ですから、アルデバランとシャカという者を城戸邸の門番に雇うことになったのですが、このお二人は人格的に問題はないのかをお聞きしたいのです」
シャイナさんに二人の名を出してみたところ、知っているという話だったので訪ねたのですが、何やら反応が妙ですね。やはり、問題のあるお二人なのでしょうか?
「イヤイヤ、問題はないよ! ただ、その二人は何というか、ここで大事な任務というか、仕事を持っている人達でね」
「ああ、門番のお仕事ですね」
「なんだ、知っていたのかい?」
「ええ、本人達から伺いました。それで、そのことなら支障はありませんわ。ここと城戸邸の門番は掛け持ちで行います。年間のローテーションを組んで数ヶ月交代になる予定ですわ」
「そ、そこまでしてあの人達が沙織のところに行くのかい! どうやって口説き落としたんだ!?」
「いえ、なんでも生活費に困っているとかで、半ば泣き落としで雇わされましたよ」
本当は雇いたくなかったのですが、わたくしが雇わなければこの冬を越せないとか、一族郎党で夜逃げをしなくてはならないとか、色々と言われてしまい仕方なしに雇っただけです。
あれ、シャイナさんが頭を抱えています。どうしたのでしょう。
もしかして、シャイナさんも生活費に困っているのでしょうか?
「そうですわ、シャイナさんも日本で働きませんか? 城戸邸での、わたくしの話し相手のお仕事がお勧めですよ」
「いや、沙織は友達だからね。雇用関係になったら関係が変わりそうで嫌だから遠慮するよ」
ガビーン!!
わたくしは、シャイナさんの言葉に衝撃を受けます。
そ、そうですわ!
シャイナさんは大事なお友達なのに、お金で日本に呼び寄せようだなんて……わ、わたくしは何てことを…
「シャイナさん、ごめんなさい。わたくしはお金にばかり目がいっていたようです」
「ううん、分かってくれればいいさ。沙織はまだ子供なんだから間違うこともあるさ。でも間違ってもこうして沙織は間違いを認めて反省することが出来るんだ。こうやって、少しずつ大人になっていけばいいんだよ」
シャイナさんは優しく頭を撫でながら抱きしめてくれました。
ああ、シャイナさんの優しい温もりが伝わってきます。
「はい、シャイナさんのお気持ちは伝わりました。それでは大人として結婚をしましょう。シャイナさん」
「うん、もう一度お話をしようか」
シャイナさんとのお話は深夜にまで及びました。
沙織さんは失敗を繰り返しながらも少しずつ成長しているのです!