「へえ、思ったよりも引き締まった身体になっているわね」
シャイナさんに仕上がった身体を見せるために、水着姿でポージングをするわたくし。
さあ、わたくしの美しい肢体をタップリとご堪能下さい。
「これなら次の段階にいっても問題なさそうだね。とはいっても訓練は続けるんだよ」
『分かっていますわ。運動を止めれば直ぐに筋肉は落ちてしまいますもの』
わたくしのギリシャ彫刻のような美が失われるのは人類の損失です。これからも全人類のためにもトレーニングは続けますわ。
「沙織の
『わたくしは、いつも
そう、わたくしは
「沙織が使っている超能力は
シャイナさんの説明によると、
そこまで説明するとシャイナさんが急に黙られてしまった。マスクでよく分かりませんが、わたくしに熱い視線を向けられているような?
如何されたのかしら?
ま、まさか愛の告白!?
「…沙織の
シャイナさんがブツブツとうわ言のように何かを呟いている。向けられている熱い視線も益々強くなっている気がします。
うう、わたくしはどうしたらいいのでしょうか?
シャイナお姉様のお気持ちに応えるべき? それとも……
『い、いけませんわ、お姉様。わたくし達は女の子同士でしてよ。そんなことは神様が許さないわ。で、でも、お姉様がどうしてもって仰るなら…わ、わたくしも覚悟を決めますわ!!』
わたくしは覚悟を決めて声を発する。
さあっ、シャイナお姉様!
あとは、お姉様のお気持ち次第ですわ!
「はは、こんなお馬鹿な子が“アレ”に目覚めてるわけないか。第七感は、黄金聖闘士達も幼い頃に目覚めていたらしいからね……突然変異みたいなもんなんだろうね」
シャイナお姉様は優しくわたくしの頭をポンポンとする。
もちろん、今のわたくしは意識体だけだから、実際に触れられているわけじゃないけど、なんだか頭が暖かくなった気がします。
『つまり、今はプラトニックという事ですね。分かりましたわ、シャイナお姉様』
そう、考えてみれば、わたくしはまだ10歳にもなっていません。シャイナお姉様のお気持ちに応えるには早過ぎる歳ですわ。
わたくしが成長するまで待ていて下さいね。シャイナお姉様!
「いやいや、あたしはアテナの聖闘士だからね。一生、アテナ一筋だよ。(こう言えば、女聖闘士なら、その手の奴らは正気に戻ってくれるんだけどね。この子はどうだろ?)」
がーん!?
わたくしのお姉様を!?
許すまじ!!
アテナッ!!
いつかぶっ倒して、シャイナお姉様を自由にさせてあげますわ!!
***
自室で瞑想をする。
自分の奥深くに眠る
無限に広がる宇宙を感じる。
全能感に浸りそうになってしまうけど、こんなものに囚われてはいけない。
瞑想を続けていると、わたくしの
無限に広がり続けていた
過去・現在・未来
この宇宙の歴史が、わたくしの中で広がっていく。
全ての意識が繋がっていく。
全ての意志に満たされていく。
全ての存在の上にわたくしが立っている。
「うふふ、全てはわたくしの為に存在するのですわ!」
おーほほほほほほほほっ…ポカン!
痛いですわ。
「お嬢様。高笑いは近所迷惑なのでお止め下さい。それと、高飛車キャラは嫌われるので、お止めになった方が賢明だと思われます」
「なるほど、星華の忠言を受け入れますわ」
つまり、One for all,all for one. ですわね!
おーほほほほほほほほっ…ポカン!
痛いですわ。
「だからっ、高笑いは止めろっての!!」
***
小学校でのわたくしは超絶優等生です。
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。
そんなわたくしは高嶺の花。
庶民の多いこの小学校では、誰もが憧れる存在ですわ。
憧れすぎて話しかけてくれる子がいないのが、ちょっぴり寂しいですけど。
そんなわたくしが狙っている同級生がいます。
星華が昔いた孤児院の娘ですわ。
星華繋がりで仲良くなれると思っていたのですが、何故か避けられている気がします。
「美穂さん、お昼をご一緒にしませんか? 星華もいますわよ」
「あ、ごめんなさい。友達と約束があるから、また誘って下さいね」
美穂さんはパタパタと逃げるように去っていく。これで何度目になるだろう。
「というわけで、星華が誘ってみて下さいな」
「うーん。私が誘ってもお嬢様が一緒だというと断られるんだよね」
「そこは年上の強権で、強引に引っ張ってきて下さればいいですわ。星華に強引にされたところをわたくしが優しくすれば好感度アップですわ!」
「いやいや、私が誘っている時点でお嬢様が命じていることはバレるよ。その後でお嬢様が優しくしても逆効果にしかならないと思うよ」
「うぐぐ、上手くいくと思ったのですが…」
屋上で星華とお弁当をつつきながら、美穂さん攻略作戦を練っていますが、いいアイディアが浮かびません。
ちなみに学校では、星華は砕けた口調で話してくれます。お嬢様呼びは変えてくれませんが。
「私にとって、お嬢様はお嬢様だからね。変えるわけにはいかないよ」
「うむむ、星華をメイド見習いではなく、わたくしの姉にすれば良かったかしら?」
「それは無茶だよ。たとえ、仮の話でもお嬢様と姉妹扱いなんて反発が大きすぎてとんでも無いことになるよ」
そういうものでしょうか? もしも変なことを言う人間がいれば、わたくしの力で洗脳すれば済む話ですが。
まあ、洗脳はグラード財団関係以外では使わないようにしていますけど。
「仕方ありませんね。グラード財団に群がる人間は多いですから、星華に迷惑をかけるわけにはいきませんもの」
「いや、私としてはお嬢様に迷惑がかかると思っているんだけどね。だいたい、私だったらお嬢様にどんな迷惑をかけられたとしても、それを迷惑だとは思わないよ。むしろ、頼ってもらえたなら嬉しいぐらいだわ」
星華はニコッと笑ってくれた。
その真心の込もった笑顔に、わたくしのハートはドキューンと撃ち抜かれた。
この時、わたくしは気付きました。
真実の愛はここにあったのだと!
「星華っ、わたくし達は永遠の絆で結ばれた魂の姉妹だったのですね!」
感極まったわたくしは、むちゅーと愛の口付けを星華に捧げる。
ポカン!
痛いですわ。
「お嬢様。言っておきますが、私はノーマルです。お嬢様の生贄は他でお探し下さい」
うう…星華、つれないですわ。
この沙織さんはどこに向かっているのだろう? 書いてて分からなくなってきた。とりあえず深く考えずにいこうと思う。