第28話「白銀聖闘士の襲来」
黄金の覆面少女は、身体の奥底から漲ってくる
「プレゼントをくれた足長お兄さんへの感謝を込めて突くわよ!」
一日目、16時間かけてやり切った。
終わった瞬間、泥と汗と埃で小汚くなった黄金の覆面少女は大の字になって眠った。
「スゥ…スゥ…ぷれ…ぜん……あり…が……スゥ…」
熟睡する黄金の覆面少女の寝顔は幸せそうだった。
二日目、1秒とかからずに終わった。
「あれ? もう終わり?」
驚天動地の超成長っぷりだった。
一万回の黄金正拳突きが終わった瞬間、黄金の覆面少女の真正面の海は、その衝撃によって真っ二つに割れていた。
割れた海の底では、大きな魚がピチピチと跳ねている。
「なんのお魚さんかなあ? 食べれるお魚さんだと嬉しいんだけど…」
黄金の覆面少女は目を凝らして魚を確認すると、まさかの
次の瞬間、黄金の覆面少女は光の速さで
「うりゃあ!! 獲ったわよー!!」
黄金の覆面少女は、
海が裂けるという凄まじい状況とかには興味のない黄金の覆面少女も
「こんなに大きなマグロなら孤児院の子達全員がお腹いっぱい食べれるわ!」
思わぬ幸運に喜ぶ黄金の覆面少女。
「えへへ、足長お兄さんにプレゼントを貰ってからツキが回ってきたみたい。もしかしたら神様って本当にいるのかしら?」
黄金の覆面少女は、今まで特に信心深いわけでは無かったが、立て続けに起こった幸運な出来事はそんな彼女にも心の変化を起こさせていた。
今までが不幸だった分、神様が帳尻を合わせるために幸運をプレゼントしてくれている。そんな荒唐無稽な考えを黄金の覆面少女は持ち始めたのだ。
「そういえば、星矢ちゃんがなった聖闘士は
黄金の覆面少女は、血の滴る
男をゲットするには胃をつかめというが、女の黄金の覆面少女でも胃が弱点だったのだろう。
このとき芽生えた
*
魔鈴は困惑していた。
「参ったね、どうしたらいいんだ?」
教皇から命じられた怪しげな噂の調査任務。
白銀聖闘士の自分にとって調査任務など容易いと考えていた魔鈴だったが、そんな甘い考えなど吹き飛んでいた。
──何故なら。
「ぶらっくぺがさす参上です!」
「ぶらっくきぐなす推参します!」
「ぶらっくゆにこーん登場よ!」
「ぶらっくあんどろめだ見参ですわ!」
「ぶらっくどらごん参戦するわよ!」
等々……。
デスクイーン島に到着した途端、続々と現れたのは壊滅したはずの暗黒聖闘士達──のコスプレをした後輩の女聖闘士候補生達だったからだ。
「えーと、お前達はデスクイーン島に連れさらわれたんじゃないのか?」
普段から可愛がっている後輩達のコスプレ姿にどう反応したらいいのか分からない魔鈴は、とりあえずコスプレに関してはスルーして質問をする事にした。
ノリノリな感じで決めポーズをとっている後輩達に少し引いたのは内緒である。
「魔鈴さん、まさか貴女が教皇の手下に成り下がっていたなんて」
「え…?」
「私たちは教皇の手下などに屈しはしません!」
「イヤイヤ、あんたは何を言っているんだい!?」
後輩達のリーダー格の少女に悲しげな瞳で見つめられたと思ったら、いきなりの教皇の手下扱いだった。
魔鈴には、
聖闘士というのは教皇の手下では決してない。聖闘士はあくまでも
「いいかい、わたしは
後輩からのいきなりの暴言とも言える言葉だったが、魔鈴は冷静に対応する。
もしも暴言を吐いたのが同格のシャイナなら、魔鈴は迷う事なくキャットファイトに突入しただろうが、今回の相手は可愛い後輩だった。
ここは頼りになる先輩として寛大な態度で接して上げるべきだろう。
特にこの後輩は、本来は真面目で先輩を立てるタイプの女の子だった。星矢のようなクソ生意気な弟子を育てていたせいか余計に可愛く思える。少しぐらいの特別扱いは許されるだろう。
特に今日は彼女に優しくしてあげようと、コスプレ姿で次々と決めポーズを繰り返す普段は真面目な少女を見ながら魔鈴は思った。きっとストレスのせいだろうなあ、と考えながら。
「魔鈴、何を甘いことを言っているのですか? 今の言動だけで十分に粛清対象になりますよ」
「ミスティの言う通りだぜ。さっさと全員始末して聖域に帰ろうぜ。ここは暑くてかなわん」
「そうだな、たかが聖闘士候補生だ。どうせ大した動機もなく反旗を翻したに過ぎんだろう。調査をする価値もないさ」
「……コイツらからは教皇への叛意が読み取れる。完全にクロだな」
蜥蜴星座のミスティ。
ケンタウルス星座のバベル。
白鯨星座のモーゼス。
猟犬星座のアステリオン。
そして、鷲星座の魔鈴。
この五人がデスクイーン島に派遣された調査部隊のメンバーだった。
調査部隊のリーダーは魔鈴である。ちなみにジャンケンで決めた。
調査部隊メンバーの非情な言葉に魔鈴は仮面の下で顔を顰める。
「……同じことが起こらないように原因は調査すべきだよ。これがリーダーとしての決定だ。だから候補生達は殺すんじゃないよ!」
「フッ、随分と甘い対応ですが、今回は貴方がリーダーです。指示には従いましょう」
可愛い後輩達を殺したくない魔鈴は、何とか理由づけをしてリーダー権限で通そうとした。
普段なら日本人の魔鈴に敵対的なメンバーだったが、クソ暑いデスクイーン島で言い争いなどをして汗を流したくないミスティは、今回は素直に魔鈴の指示に従うことにした。
そうなると他の三人もミスティが賛成するのならと、渋々ながら魔鈴の指示に従うことを了承した。
「(何とかこの子達を殺さずに済みそうだね)」
魔鈴は内心ほっと胸をなで下ろす。もちろん、ここで殺されなくても聖域で処刑される可能性はあるが、時間さえあれば対策は出来るだろう。
いざとなれば、日本にいるシャイナを頼ることも魔鈴は考えていた。シャイナにはあの沙織がついている。魔鈴から見ても黄金聖闘士以上の化物としか思えない沙織なら聖闘士候補生ぐらい余裕で匿えるだろう。
沙織のユリユリな趣味を考えると後輩達が少し……凄く心配だけど、魔鈴はそこは諦めた。
──逞しく生きろ。
それが、自分から後輩達へ送る最後の助言になるだろうと考えながら。
沙織「もう白銀聖闘士編になるのですね」
星華「“もう”? 連載が始まって一年半は経っているのに“まだ”白銀聖闘士編ですよ」
沙織「なるほど、そういう考え方もありますね」
星華「そういう考え方しかないと思いますけど……まあ、いいです」
沙織「うふふ、それにしてもこれからの展開が楽しみですね。白銀聖闘士編から十二宮編へと続く見所満載のイベントラッシュですわ♪」
星華「えらく嬉しそうですね?」
沙織「あらあら星華ってば何を言っているのかしら? これから原作ヒロインであるわたしを救うために下僕達が必死に戦う名シーンのオンパレードですよ♪」
星華「原作ヒロインはシャイナ様のはずでは?もしくは美穂だと言えなくもないですね」
沙織「違います!誰がどう見てもヒロインはわたし以外ありえませんわ!」
星華「では、読者の数だけヒロインはいたのだ。ということで手を打ちましょう。ぱんぱん」
沙織「星華っ、適当な締め方をしないで!」