シャイナさんから紹介したい人がいると言われました。
まさか、ご両親ですか!?
ど、どうしましょう。まだ心の準備が出来ていません!
「いや、あんたと同じ日本人なんだよ。ここじゃあ、日本人は珍しいからさ。あいつも同郷の人間に会いたいだろうと思ったんだ」
「まあ、シャイナさんはお友達想いなのですね」
「そんなんじゃないよ。あいつは友達というよりも…そう、あたしのライバルみたいなもんさ」
照れ臭そうに頭を掻いているシャイナさんはとても可愛いですわ。
ところで、そのお友達とは女の子ですよね?
「当たり前だろ、魔鈴っていう女だよ。あんたに男友達を紹介なんか…いや、あたしに男友達なんかいないから殺気を消してくれないかい? 肌がピリピリするんだけど」
フフ、嫌ですわ。わたくしがシャイナさんに殺気を向けるわけないじゃないですか。
「はぁ…もう沙織はあたしよりもずっと強くなってる気がするよ……師弟関係は解消でいいかい?」
「わたくしの師匠の座をおりたければ、このわたくしを倒して下さい。言っておきますが、この勝負ばかりはシャイナさんといえど手加減は致しませんよ」
シャカに合図を送り、全力で結界を張らせる。アルデバランにも結界の強化を手伝うように指示をする。
わたくしは
さあ、わたくしの
「ぐうっ!? 元からデカい
「こ、これが戦意を込めた
「ああ、私の身も心も染まっていきます。沙織お嬢様の
「シャカ…貴様、少し気持ち悪いぞ」
「ほっといて下さい」
おーほほほほほっ、この身より溢れ出す無限の
煌めく星々たちが織りなす永遠に続く物語に、わたくし達の愛の舞踏が加わるのですわ!
「はぁ…仕方ないから沙織の師匠は続けるよ。それでいいかい?」
わたくしの愛が伝わったのですね!!
やはり、わたくし達の絆は永遠なのです!!
「一瞬で
「ぬおっ!? あれほど燃え上がっていた
「お見事です。このシャカ、ただただ感服するのみでございます」
うふふ、わたくしの
さあっ、わたくしを崇めなさい! わたくしを敬いなさい! 信じる者は救われるかも知れないですわよ! おーほほほほほっ!!
「ふぅ…あたしゃあもう疲れたよ。もういいや、さっさと魔鈴のとこに行くとしようかね。(上手くすりゃ、沙織のことを魔鈴に押し付けられるかも知れないしね)」
「ああっ、お待ちください。わたくしの手を繋ぐのをお忘れですわ!」
「はいはい。これでいいだろ。さっさと行くよ」
うふふ、シャイナさんのお友達とはどのような方かしら? 楽しみですわ。
***
大岩を背中に乗せて少年が腕立て伏せをしています。よく見ると大岩の上には女の子が座っていますね。
女の子がこちらに気付きました。手をあげて挨拶をしてくれています。わたくしも手を振っておきましょう。
ところで彼女は仮面を被ってはいますが、雰囲気が星華に似ている気がします。
もしかして彼女は、星華と同じ種族なのでしょうか?
「同じ種族? そりゃあ、日本人なんだから同じ種族だろう?」
いえ、そういう小さな区別ではなく、魂の世界での話ですわ。
「た、魂って…随分と大きな話だねえ。それで、どういう種族なんだい?」
あまり言いふらしていい話ではありません。シャイナさんにだったら特別にお教えしてもいいですが、他の人には秘密にしていただけますか?
「そんな特別な話なのか…分かった。誰にも言いやしない。約束するよ」
シャイナさんの目を見つめる。
真剣な瞳に信用できると感じたわたくしは、小さな声で彼女達の種族名を口にする。
「彼女達は人の世の陰に生きる種族――“腐女子”ですわ」
ぽかん!
「とりあえず殴っていいかい?」
もう殴っていますわ!?
うう、痛いです。
はっ!? まさか!!
星華の殴り癖がシャイナさんにまで!?
まさかシャイナさんも腐じょ…ぽかん!
うう、痛いです。
「あたしを魔鈴と一緒にするんじゃないよ!」
「よく分からないけど、わたしもその星華とやらと一緒にされたくないね」
いつの間にか大岩の上にいた女の子が近くにきていた。おそらく彼女が魔鈴さんで間違いないだろう。
「お初にお目にかかりますわ。わたくしは日本から参りました城戸沙織と申します。シャイナさんとは魂で結ばれた姉妹の関係ですわ。もちろん、シャイナさんがお姉様ですわ」
「そ、そうなのかい。シャイナの魂の妹なのか。あー、わたしは魔鈴だ。様付けは止めてほしい。それとシャイナとわたしは魂では結ばれていないから安心しな。ただの友人だと思ってくれ」
「なにが魂の姉妹だよ! 魔鈴は真に受けてないだろうけど、沙織はこういう奴だからよろしく頼むよ」
「えっ、シャイナは目覚めたんじゃないのかい? 」
「何に目覚めるんだよ!? いい加減なことを言うんじゃないよ!」
「いや、前々からシャイナは、年下の娘達を侍らせていたじゃないか、それでいよいよ吹っ切れてカミングアウトをしに来たんじゃないのかい?」
「そんなわけないだろ!」
「フフ、別に照れなくてもいいよ。シャイナの性癖は薄々と勘付いていたからね。ただ、わたしはノーマルだからね。そこのところは忘れないでいておくれよ。それならシャイナとは友達のままでいられるからね。そうそう、これからは水浴びは別々で頼むよ」
「魔鈴! てめえっ、ぶっ飛ばす!!」
「ふんっ、やるなら容赦はしないよ!」
シャイナさんと魔鈴さんのキャットファイトですわ!!
イケイケゴーゴーですわ!!
シャイナさんと魔鈴さんが組んず解れつの大格闘で色々とお召し物が凄い事になっています!!
悔しいですわっ!!
どうしてわたくしは、カメラだけゃなくてビデオも持ってこなかったの!!
こうなったら、わたくしの灰色の脳細胞にシャイナさんと魔鈴さんの艶姿を永遠保存ですわっ!!
アルデバランにシャカっ!! お前達はお二人の姿を見ることを許しませんよ!! チラリとでも見たらぶっ殺しますわよ!!
「了解であります!! 俺達はお許しをいただくまで後ろを向いているであります!!」
「そのような女の裸よりも、私の裸の方が美しいと思うのですが? アルデバランもそう思いませんか?」
「そんなこと知るか!!」
よしよし、二人とも後ろを向いていますわね。わたくしのお姉様方の柔肌をケダモノ共の目に触れさせるわけにはいきませんもの。
ああっ、そんなに服を引っ張りあっては色々と大事なものが丸見えですわ……ゴクリ。
…シャイナさんと魔鈴さんは着痩せするタイプですわね。
「おいおい、魔鈴さんは何をやっているんだよ。俺に修行をさせたまま、シャイナさんと喧嘩なんかしないでくれよな。ほら、服が乱れておっぱいが見えてるよ。まったく、二人とも少しは恥じらいを持ってくれよな」
「うるさいよ、星矢!! お前は修行を続けな!!」
「げっ!? 星矢が居たんだった!! 星矢っ、早く逃げなっ!!」
「なに言ってんだよ、シャイナさんは? 訳わかんないこと言ってるヒマがあるなら、おっぱいを隠しなよ」
「……星矢、成仏しなよ」
「は?」
「燃え上がれ!! わたくしの
「沙織お嬢様!! それ以上、
「沙織お嬢様のお身体には負荷が強すぎます! どうか、お気を静めて下さい!」
「シャ、シャイナ!! これって、どういう状況なんだい!?」
「いいからっ、死にたくなけりゃ逃げるんだよ!!」
「し、死ぬ!? それはどういう意味なんだい!」
「全力退避ーーーーーっ!!!!!!」
「シャイナッ、置いてかないでおくれっ!!」
「はぁあああぁああああああっ!!!!」
わたくしは星々すら砕けそうなほどに高まった
「消え去れぇえええぇええええええっ!!!!邪悪なるクソ虫がぁあああああっ!!!!!!」
「ひぃっ!? なんだよこれっ!? せ、星華姉ちゃん助けてぇえええええっ!!!!」
ポカン…☆
わたくしの拳が少年を軽く小突く。
「あなたは星華の弟でしたの? もう、早く言って下さればよかったのに。そうだわ、思い出しました。貴方は星矢でしたわね」
かつての愛馬との再会です。
「ま、まさか……沙織お嬢様なのか?」
「お久しぶりですね、星矢」
そういえば、星矢はわたくしを恨んでいる可能性があったのでした。
聖闘士になって力を得てから復讐をされる前に始末しておこうかしら?
でも星華が悲しむかもしれない。
わたくしの星華が悲しむ顔は見たくないし、星華に嫌われるのも嫌だわ。
…星矢が女聖闘士に手を出そうとして、返り討ちになったことにすればいいかしら?
ちょうど星矢の師匠が女の子の魔鈴さんだから、若さによる欲望に負けた星矢が、魔鈴さんの寝込みを襲おうとして逆襲にあい命を落としてしまう。うふふ、我ながら無理のない展開ですわね。
ククク、わたくしを狙った星矢が悪いのですよ。せめて葬式は盛大にしてあげるわ。
「ちょっと待ってくれ!! 俺は沙織お嬢様を恨んじゃいない!! 当然、復讐する気なんかないからなっ!!」
あら、そうなの? それなら放置でもいいわね。
……あれ、どうして星矢はわたくしの考えが分かったのかしら?
はっ!? まさか星矢も超能力者!?
「沙織…あんた、考えていることを口に出すクセに気付いていないのかい?」
なんですとーっ!?
わ、わたくしにそんなクセがっ!!
恐る恐る周囲を見回します。
星矢は怯えていました。これはどうでもいいですわ。魔鈴さんは警戒の目を向けてします。これはよくない兆候ですわ。アルデバランは居眠りをしていますね。ならば無視でいいでしょう。シャカは読経に夢中みたいで話を聞いていなかったようです。そしてシャイナさんは呆れた顔でわたくしを見ているけど、その目に嫌悪の色は宿っていません。
ま、まだ挽回できそうね。
だけど流石に警戒されると記憶改竄は難しいですわ。
一体、どうすれば…
この時、わたくしの灰色の脳細胞に閃きが舞い降りました。この状況がよくないのなら全てをなかったことにすればいいのです。
わたくしは満面の笑みを湛えて言い放ちます。
「うふふ、なーんちゃって、全部冗談ですわ!」
***
わたくしは己の天才的な閃きで窮地を脱することが出来ました。
「まあ、沙織の趣味の悪い冗談はいつものことだから気にするだけ無駄だよ」
「ふむ、類は友を呼ぶというからな。やはりシャイナの魂の妹ということか」
「……絶対にあの目は本気だったと思うんだけどなあ」
「がははははっ、俺は居眠りをしていたから何も知らんぞ!」
「私は読経の時間でしたので、外部の音は遮断しておりました」
おーほほほほほほほっ、わたくしの時代はこれからですわ!!
などと、愚かな小娘でしかないわたくしは母国から遠く離れた異国の地で……無邪気に笑っていたのです。
ギャグは終わり、物語はシリアスへと流転する。かも?