もう一つの東方鬼狂郷   作:albtraum

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原作とキャラの性格が違くても見逃してください。

キャラクターが原作無視の強さを持っていることもあります。

それでもいい方は第八話をお楽しみください。


もう一つの東方鬼狂郷 第八話 紅魔館

 早苗も紅魔館をぐるりと囲んでいる城壁の唯一の入り口のこの門をくぐり、私も早苗の後を追う。私も中に入ると咲夜が門を押して閉じた。

 庭を見回すと武器を持ってそれをこちらに向けて構えたメイド姿の妖精が私を囲んでいる。

 得体のしれないやつはまず疑うということだろう。その判断は間違いないわけだが、間隔が狭くて刃先がちょっと刺さりそう。私はそう思いながら一応両手を上げることにした。

「……魔理沙は大丈夫ですので……引き続き巡回をお願いします」

 咲夜が命令を下すと妖精たちは武器を下げて数人ずつに分かれて巡回を開始した。

「行きましょう」

 咲夜は館に向かって歩き始める。

「…さすがはメイド長だぜ」

 私はそう言いながら咲夜についていく。館に入り、しばらく咲夜についていくとおなじみのレミリアの部屋についた。

 コンコンと咲夜が扉を手の甲でノックする。

「…入っていいわ」

 レミリアの声がドア越しに小さく聞こえた。

「失礼します」

 咲夜が言い、ドアを開いて頭を深々と下げて中に入る。

「…咲夜、霊夢はいた?」

 見た目は幼女だが背中から黒い蝙蝠の羽を生やし、見た目の数十倍は長生きをしている紅魔館の当主。レミリアが持っていた紅茶が入った白いコップを置き、椅子から立ち上がった。

「……いいえ、霊夢に会うことはできませんでした」

 咲夜はいつも通りの冷静な声でレミリアに結果を伝える。

「……そう……一日以上も異変が続いたことがなかったから、現在どこまでわかっているか聞きたかったんだけどね…」

 レミリアがため息交じりに言いながら席に座りなおして、客人の私たちを好きなところに座ってと言った。

 私と早苗は言われたとおりに近くのソファーに座った。

 部屋の奥、レミリアの座っている机の反対側にはパチュリーが紅茶を飲んでおり、パチュリーの傍らには小悪魔が立っている。

「……ですが、魔理沙から情報を得ることができました」

 咲夜が言いながら私が座っている方向をちらりと見た。

「…魔理沙……話を聞かせてもらってもいいかしら?」

 レミリアが言いながら持っていたカップを皿に置いた。

「…ああ」

 私は言いながら机の上に置いてあるお菓子に手を伸ばしてクッキーをつかみ取って口に運んだ。サクサクしていて甘みも控えめでとてもおいしいクッキーだ。

「……」

 私がクッキーを咀嚼して飲み込み、話し始めるとした。

「…咲夜…お客さんに紅茶をお願い。……それで、魔理沙…あんたは何を知ってるの?」

 レミリアが私に情報を話せと質問を投げかけてきた。

 咲夜が消え、パチュリーや小悪魔の視線が集まる。

「…霊夢も例の光を見ておかしくなった」

 私はレミリアたちの方向を見て、話す内容を一言にまとめて話した。

「…それは、本当なの?」

 レミリアが驚きを隠せない様子で私に聞き返してくる。

「ああ、実際におかしくなった霊夢に襲われたしな」

 霊夢が馬乗りになって私を殴り殺したことを思い出した。

「……でも、霊夢から死なずによく逃げられたわね……少し見直したわ」

 霊夢の実力を知っているレミリアは少し感心した様子で私に言う。

「いや…死んだぜ」

 私が普通に答えると、レミリアたち三人の動きが止まる。

「それは、あんたから変な物を感じるけど、それと関係があるの?」

「……まあ、そうだな……生き返るまでの説明が少しややこしいんだが……した方がいいのか?」

 私が言ったとき、私の後ろに歩いてきた小悪魔が私にまるで銃でも突きつけるように人差し指を私の後頭部に押し付ける。

 ゴリッと強く押し付けられ、私の顔が少々下向きに傾く。小悪魔から少し殺気を感じる。主人のGOの一声があれば私の頭を吹き飛ばせる準備を完了している。

「こいつ、怪しくありませんか?」

 小悪魔が言いながらさらに強く私に銃口と同様の指を私に押し付ける。

 残念ながら私はこれをつかみ取ったり、手で払いのけたりする技術を持ち合わせていない。だから、頭に銃口を突き付けられたような状態のまま話すしかなさそうだ。

「い…今から……なぜ生き返ったのかを説明するぜ…」

 後ろから小悪魔の殺気をビシビシと感じて、くそ怖い。

「小悪魔、あまり魔理沙を脅かさないようにしなさい」

 パチュリーが珍しく私に助け舟を出してくれた。

「しかし、パチュリー様……こいつは危険です」

「魔理沙はこう見えても弱虫なのよ?泣かれでもしたら話が進まなくて困るわ」

 パチュリーが一言も二言も余計だが、小悪魔に言った。

「……」

 小悪魔は渋々と言ったように殺気を抑える。

 指は突き付けられたままだが、さっきよりは幾分かはましだろう。

「……私が死んだとき、映姫に裁かれたんだが……映姫が白黒つけられないって言ったんだ」

「……あの映姫が…?」

 レミリアが呟き、映姫の性格や能力を知っているため、おかしいと思ったのだろう。

「その先で、変な奴にあったんだ……そいつが言うには霊夢の力はかなりチートに近い。だから、それが敵に渡ったということはすなわちこちら側の敗北を意味する。……だから、それを止めろって生き返らせられた」

「まあ、確かに霊夢のあの技は使いようによっては神を殺せる技……霊夢がおかしくなってしまって、私たちを殺そうと思えばいつでも殺せるでしょうね」

 パチュリーが言ったとき、黙っていた小悪魔が口を開く。

「…信じられないですね」

 小悪魔がまた私に殺気を向ける。

「…待てよ、これは本当の話だぜ!?」

「その話自体がウソという可能性は捨てきれません。語り手がウソをつけばたとえそれが作り話でも、それが真実となります」

「いや、だから待てって!本当なんだよ!映姫に聞いてみればわかるぜ!」

 私が必死に弁解しようとするが、小悪魔は頑として受け付けない。

「そこまでにしてあげてください。小悪魔」

 ふっと現れた咲夜が私の早苗の前に置かれたカップに紅茶を注いだ。

「……どうしてです?信憑性は全くありませんが…」

 小悪魔が言いながら魔力を指先に集中させたらしく、後方から光が漏れ始める。

「……っ!?」

 私は凍り付いて動けなくなるが、咲夜がゆっくりと話し始める。

「…私が博麗神社に早苗とついたとき、既に魔理沙は死んでいました。……右目を潰されて」

 咲夜が言ったとき、小悪魔が私の肩を掴んで立ち上がらせ、後ろを向かせた。鋭い目つきで私の右目を眺める。

「……魔理沙の言う人物の仕業なら納得がいきます」

 私たち人間には再生しない器官というものが存在し、眼球の中身などがそれらに該当する。永琳が治せるように薬を開発しようとしていた時期もあったらしいが、結局完成はしなかったらしいが、目などの器官は自力で再生させることは不可能であるため、アトラスの話を信じてもらえる可能性はある。

 咲夜が私と早苗のカップに紅茶を注ぎ終え、レミリアの方向に行ってレミリアのカップにも紅茶を注いだ。

「…咲夜さんがそう言うなら信用しないわけにはいかなさそうですね」

 小悪魔が言うと、殺気と指先に集めた魔力を抑え込んだ。

 寿命が縮んだ。五年は縮んだ。

 私は緊張から解かれてようやくソファーに座り込む。

 小悪魔がパチュリーの隣に移動し、二人の会話がわずかに聞こえてくる。

「どうしたの?小悪魔、今日はなんだか攻撃的に見えるんだけど…」

 パチュリーが小悪魔に言った。小悪魔もおそらく今までにない異常な異変にかなり警戒しているのだろうと私はそう思いながら紅茶に手を伸ばす。

「……いえ…何と言いますか……魔理沙さんを見ていると、嗜虐心がくすぐられると言いますか…」

 小悪魔が私の想像の斜め上の回答した。

「……………へ?」

 私は手に持ったカップを落としそうになる。

「その気持ちは凄くわかるけど、いじめるのはほどほどにしなさいよ」

 パチュリーが小悪魔に言った。

「…おまえ!…まさか必要ないことをしたのか!?」

 私は立ち上がり、掴みかかるような勢いで小悪魔に叫んだ。

「すみませんね…でも必要なことだったと思いますけどね」

 小悪魔は謝る気はあるのかと言いたくなる言い方で言った。

「…おま…っ!」

「まあ、別にいいじゃないですか……一応信じてもらえたわけですし」

 早苗が私をなだめるように言った。

 私は煮え切れない思いで渋々ソファーに座る。

「……それより、この場所にいるやつ以外で……ほかに頭がおかしくなっていないやつはいないのか?」

 私の質問に答えられるものはいない。

「……わからないわね……自分たちのことで手いっぱいだったから」

 パチュリーが紅茶を飲みながら言った。

「まあ、そうだろうな……それとフランはどうしたんだ?」

 私は一応レミリアたちに聞いた。

「……美鈴と一緒にいたフランは一緒にどこかに行ってしまったわ」

 レミリアがカップを皿にのせながら言った。

 美鈴はさきほど門にはいなかったため、おそらく光を見て奴らの仲間入りをしたのだろう。と思っていたがやはりそうだったようだ。

「……まじかよ…」

 それに加えてフラン。あいつが敵に回るとしたら、想像以上にやばいな……あいつの能力はかなり厄介だ。

 私は一枚のクッキーを頬張り、かみ砕いて飲み込んだ。

「…よし」

 私は立ち上がる。

「……どうしたんですか?」

 早苗が立ち上がった私に言った。

「霊夢を探すにきまってんだろ?」

 私は言いながらドアから廊下に出ようとする。

「……もう十二時を回っている。出るなら朝にしなさい」

 レミリアが空になった紅茶のカップを置いた。

「いや、今行く……あいつがほかの連中を殺しちまう前に見つけて正気に戻してやらないといけない」

「だめよ」

「……なんでだよ」

 私は早く出ていって霊夢を探したいというのに。

「…夜は妖怪の時間帯。人間が一人で妖怪と戦いに出るなんて自殺行為だっていうことよ……あんたもわかってるでしょう?…今までの異変とはわけが違う」

「そんなのわかってるぜ」

 私は箒を持ち、外に出ようとした。

「……魔理沙、あなたは直接的な体術戦が苦手よね?」

 パチュリーが私に言い、こちらを向いた。

「…ああ」

「今回の異変はそれが物を言うわ……あなたひとりだけじゃあ死ぬだけよ」

「わからんだろう?」

「いや、わかりきってるわ」

「…うるさいな」

 パチュリーの言っていることは真実である。しかし、私は霊夢を助けに行きたいという気持ちの方が大きく、苛立ちを感じる。

「じゃあ、あなたが小悪魔に体術で勝てるなら行きなさい……いいわよね?小悪魔」

 パチュリーがいうと、小悪魔はうんとうなづいた。

「…パチュリー、勝手に決めるんじゃぁねえよ」

 私はドアノブを掴んだまま肩越しに振り返りながら言う。

「……なら、…朝まで出ないことね」

「……」

 パチュリーが言い、私は苦虫を噛み潰したような顔をする。

「…無言は、了解ということでいいのかしら?」

 パチュリーが言いながらカップを置き、こちらを見た。

「……私が体術で小悪魔にかなうわけがないぜ」

「じゃあ、今はこの場所から出ないことね」

 パチュリーがカップに紅茶を注いでもらい、魔導書を開いた。

「わかったよ。朝になるまで大人しくしてるぜ」

 私はあきらめたようにパチュリーに言った。

 パチュリーが見ていないところで紅魔館から出ることにしよう。そう思っていたが、パチュリーが私に言った。

「言っておくけど、私たちが見ていないところで出ようとするのも許さないからね」

 私の考えはお見通しらしい。

 今すぐに飛び出して霊夢を探すことができないのがもどかしい。

「……くそ」

「…霊夢を探したい気持ちはわかるけど、夜は危ないわ」

「……うるさい…」

 パチュリーが言ったとき私がため息交じりに吐き捨てる。すると、小悪魔が私の肩を後ろから掴んだ。

「…なんだよ」

 私が小悪魔に言ったとき、小悪魔が素手で作った拳に顔を殴られた。

「あがっ……!?」

 私は後ろに倒れ、背中をドアにぶつけてしまう。

 頬が熱くなり、ジンジンと痛む。

「何…すんだよ…!」

「……誰かが心配というのは…パチュリー様たちも同じです……あなただけが特別というわけではありません」

「……」

 頭に血が上っていて忘れていた。早苗は諏訪子と加奈子。紅魔館の連中はフランと美鈴。皆、誰かしら大切な人がおかしくなってしまっている。私だけじゃあない。

「…まあ、私が殴ったのはもう一つあるんですけどね」

「…?」

「パチュリー様の優しさを無碍にするおつもりですか?」

 小悪魔が言いながら私の胸倉を掴んだ。

「……」

 環境や現在の頭に血が上った状態では、私は正常な判断などできやしないだろう。

「わかったら黙って朝まで大人しくしててください」

 小悪魔が言いながら私から手を放し、パチュリーの横に戻った。

「……っ…」

 私は口元を拭う。急速に頭から熱が引き、冷静になる。

「次は気絶させますからね」

 小悪魔が私に一応釘をさすように言う。

「ああ…、わかってるよ」

 私は立ち上がりながら体についている埃を払い落とす。

「……大丈夫ですか?」

 早苗が私に呟きかけてくる。

「…ああ、みっともないところを見せちまってすまない」

 私は言いながらさっきと同じ場所に座り込む。

「…魔理沙さん。…私も異変の解決を手伝わせてもらってもいいですか?」

 早苗が私に言いながら真剣なまなざしで私を見る。

 数秒間の間を開けてから私は早苗にはっきりと伝えた。

「……早苗…すまないが……私は今回の異変は単独で動くぜ」

 




たぶん明日も投稿すると思います。

駄文ですがよろしくお願いします。

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