もう一つの東方鬼狂郷   作:albtraum

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もう一つとか言って前作とは関係がありません。

割と好き勝手にやっています。

それでもいいという方は第八十三話をお楽しみください。


もう一つの東方鬼狂郷 第八十三話 一騎打ち

 

「…ずいぶんと遅かったわね」

 腕を正邪に切断されて、血液を流しすぎたのだろう。貧血気味で青い顔をした永琳が走って森を向けてきた私に言った。

「…ああ、お前と違って別れを言わないといけなかったんでな…」

 私はそう呟きながら、何をされても対応できるように一定の距離を放し、警戒しながら永琳に気になっていたことを聞いてみることにする。

「…一つ気になったんだが、なぜさっさと自分のしたかったことをしなかったんだ?…期間は十分にあったはずだ。私が出てくるまでの一日、それに私と小悪魔が牢屋に入っていた一日の間に自分のしたいことをできたはずだ……なのになぜしなかったんだ?」

 私が言うと、永琳はつがえて構えていた弓矢を収めてから答えた。

「…魔理沙、あんたもなんとなくわかってると思うけど……鈴仙の狂気の能力は感情やその人の思いに強く影響されて左右される……まさかそんな風になるなんてね、誤算だったわ…」

「…なるほどな……狂気の能力で皆を支配して何かをさせようとしてた…でも、全く言うことを聞かなくて計画が大きく狂って頓挫したっていう事か…」

「…ええ」

 永琳がうなづき、私はもう一つの質問を投げかける。

「…それと、お前がそこまでしてやろうとしている計画……目的やその理由がわからないな…」

 勇儀や萃香も異変の理由は知らなかった。だから、気になったのだ。

「……目的と理由…ね……この際だから教えてあげるわ……どうせもう終わりだしね……魔理沙は私がもともと月の都にいたことは知ってるわね…?」

「…ああ」

 やっぱり月が関係している異変だったか。私はそう思いながら永琳の話に耳を傾ける。

「私は輝夜に不老不死になれる薬を作ってと頼まれた。……でも、その薬を使うことは月の都では重罪になる…」

 こっちにはない月の法律のようなものもあるらしく、いろいろと面倒くさそうだ。

「それを輝夜は飲んで月から追放された。本来は不死の薬を使った人物は死罪であったけど…身分もあって、輝夜は何とか殺されずに済んだ……でも、月にいる頭の固い連中が変えて輝夜を何時か殺しに来るかもしれない……そんな不安がずっと付きまとってた……輝夜は不老不死だから、殺されても死なない…だから、死なない輝夜に死ぬよりもつらい罰を与えられるかもしれない…そう思うと不安で仕方がなかった…」

 永琳は聞くところによると数百年も前から、迷いの竹林の永遠亭でひっそりと住んできた。

 その長い間、ずっと不安を抱えたまま過ごしてきた永琳のストレスは私には想像もできないほどの物だろう。

「今から何百年前……月を支配しようとした萃香たちが月に攻め込んだと聞いた。……でも、月の兵士たちとの圧倒的な戦力の差に…撤退を余儀なくされた。……ここまで言えば、なぜ私が萃香たちと手を組んだのかわかるわね?」

 永琳の話を聞きいた私は、全ての情報をまとめてから話した。

「ああ、お前はいつ輝夜を殺しに来るかわからない月の兵や住民を殺してほしい。萃香たちは月の都を支配したい……目的は違くても敵は同じだったわけだ……お前はそれに付け込んで萃香たちを利用した」

 私がそう言うと永琳はだいたいあっているな、と小さくうなづきながら、少しの間を開けてから言った。

「…まあ、あれだけ緻密な作戦を立てて、こんな小娘に計画を潰されるとは思わなかったけどね……」

 永琳はそう言いながら、私のことを恨めしそうに睨みつけてきた。

「…」

 その言葉で、霊夢が死ぬはずの運命がなぜ変わったのか、何となくわかった。

 本当は、私の運命は神社で霊夢に殺されるというものだったのだろう。しかし、アトラスと言うイレギュラーな存在が介入したことにより生き返った私は、霊夢が歩むはずだった永琳たちが月に攻撃を仕掛け、いわゆる戦争に巻き込まれて殺されれるはずだった運命を変えた。

「…」

 霊夢を助けるために戦ってきたというのに、自分がそれで死んでしまっては笑い話にもなりやしない。私はそう思いながら一枚のスペルカードを取り出す。

「……。……永琳、お前が引く気がないことはわかっていることだ……だから、私と最後の勝負といこうじゃないか……お互いに攻撃をし合って、先に倒れた方の負け、そう言う勝負をしないか?……私はもう長時間戦える余裕はない」

 私がそうやって永琳に提案を持ちかけると、彼女はフンっと鼻で笑って呟く。

「自分が長いことを戦えないことを打ち明けるなんて、とんだおバカさんね。一対一なら私の方が有利だというのに、わざわざ不利にもなる状況になるわけがないでしょう?」

 永琳が弓矢を構え、キリキリと矢を引き絞る。

「…そう言うって知ってた」

 私はそう言いながら、永琳にはわからないように口内詠唱で魔法のスペルを唱えて保留にしていた魔法を発動させた。

 だがそれは魔法と言えるが、魔法ではない。呪いの一種、いわゆる呪詛というやつだ。

「なっ!?」

 永琳の胸の心臓がある辺りに私の手のひらから発生した黒い霧が、高速で移動して吸い込まれていく。

「その呪詛には、ある命令をした。私がお前よりも先に倒れたら呪詛は解除されるっていうな。永琳が先に倒れれば、呪詛は解除されずに保留されてこれから先、異変を起こしたらまた呪詛が発動するようになっている。もし、私と戦うことを拒否したりしたら死ぬよりもつらい目に合うことになるぜ」

 私が説明をすると、永琳は苦虫でも嚙み潰したような表情をして私に呟く。

「…わかったわ……すぐにお前を殺して、死んでいった鬼たちの仇を取ってやるわ」

「…」

 私は生命エネルギーを魔力に変換し、魔力を流したスペルカードを動かない体を無理やり動かして握りつぶした。ガラスのように割れ、風船のように弾けたスペルカードを横目に、永琳を見た。

 永琳はつがえていた矢に大量の魔力を流し込み、限界まで強化された矢を私に向けてぶっ放した。

 




たぶん明日も投稿すると思います。

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