割と好き勝手にやっています。
それでもいいという方は第七十九話をお楽しみください。
「おおおおおおおおおおおおっ!!」
私は雄叫びを上げて小悪魔を爆破した霊夢に向かって、残りの距離を詰めながら魔力と血で強化された拳を彼女に突き出した。
まるで映画のワンシーンのようにスローモーションで進む私の拳は、彼女が振り下ろしてはじき返そうとするお祓い棒をミリ単位の誤差ですり抜ける。
私の拳にお祓い棒を当てることができなかった霊夢の表情が驚愕を示し、見開いた眼で霊夢は自分に向かってくる拳を見た。お祓い棒は振り切っていて戻ってくるまでには時間がかかり、左手も私の拳を受け止めるには遠すぎる。
攻撃を弾くことはできないと分かった霊夢は、私の腕の長さ以上の距離を放すことで拳をかわそうとする。だが、それを見越して吐息が当たる程度の距離にまで私は霊夢に接近し、拳を振り切った。
霊夢の胸に向かって私の拳が吸い込まれていく。
ドゴォォッ!!
手ごたえありの霊夢を行動不能にするには十分すぎる一撃だ。
「…あ……ぐ……ぁ……っ!!?」
私の拳が胸に当たったことで呼吸がままならないのか、霊夢は後ろにヨタヨタと二、三歩程度下がっり、口をパクパクと開いたり閉じたりしていたが、私に反撃するために使おうと持っていたお祓い棒をポロリと地面に落とした。
カラン……
霊夢の手元を離れたお祓い棒は重力に従って地面に向かって落ち、それが地面に触れると乾いた木の音が嫌に大きく響いた。
霊夢が落としたお祓い棒の乾いた音が段々と小さくなりながら反響し、お祓い棒が落ちた音はすぐに聞こえなくなる。
霊夢はそれでもまだあきらめていないのか、震える手で足元に落ちているお祓い棒を拾おうとした。
「いっけぇ!魔理沙ぁ!!」
誰かの絶叫に近い叫び声が私の背中を押し、殴った衝撃と後ろに下がったことにより後退した霊夢に向かって私は飛び掛かる。自分がお祓い棒を拾うよりも私の到達の方が早いと判断したのか、霊夢はお祓い棒に向けて伸ばしていた右手を止めて握りこぶしを作る。
「「あああああああああああああああああああああああああっ!!」」
私も霊夢も雄たけびを上げて右手で拳を握り私たちは、お互いに真正面から突っ込んだ。
魔力で強化された拳が交差する。私の拳は霊夢の頬に直撃し、その影響で霊夢の狙いがわずかにズレて彼女の拳は私の頬を掠るだけとなった。
「………っ!!?……うぐ……っ……」
霊夢の顔が殴ったことにより跳ね上がって上を見上げる。ほんの少しの間、彼女の体はその場で静止していたがすぐに体から力が抜け、私が殴った衝撃で後ろに傾きながら重力に従って霊夢の体が後ろに倒れそうになる。私は霊夢の体を倒れる前に掴んで倒れないように支えた。
「…………ようやく、助けることができたよ……」
私は静かに呟きながら周りを見るとまるで時が止まっているかのように静寂に包まれている。
その静寂を破るように、私の血の能力が切れて体の縮んだ大妖精がすぐ目の前に瞬間移動で現れ、私に全体重を乗せて飛びついてきたのをきっかけに、ボロボロのはずの小悪魔やレミリアまでもが私に飛びついてきた。
「うおぁ!!?」
小悪魔と大妖精、レミリアと抱えている霊夢の重量に耐えられなかった私は、後ろに倒れてしまい。合わせて四人分の重量がのしかかってくる。でも四人のうち二人が子供ほどの重量で、残りの二人も女性ということであまり体重もなく、重さはあまり感じられない。
「やりましたね!!魔理沙さん!!」
小悪魔が涙ぐみながら私に言った。霊夢を元に戻すのはこの異変を解決しようと動き出していたころからの目標だった。それを知ってた小悪魔は、私がようやくそれを成し遂げることができたと気持ちが高ぶっているのだ。
「…ああ……」
夜明けが近くなり、明るくなり始まった空を見上げながら私は呟いた。視界の端で咲夜と永琳がふふっと微笑みながらこちらを見ているのが見える。
私の腕の中にいる霊夢は寝ているときのように一定のリズムで呼吸をしていて、気絶しているのがわかる。彼女が目を覚ますのは早くても数時間後だろう。
「…三人とも、ちょっといいか」
私は飛びついてきた三人に避けてもらい、霊夢を抱えて立ち上がりながら一言だけ呟いた。
「……解せん」
「…え?」
嬉しそうにしていた大妖精が驚いた表情となり、私に聞いてくる。
「どういうことですか?」
私は霊夢と繰り広げた戦いで荒れ果てた神社の庭を横切って神社の縁側、私が殺された位置とは少し離れた位置に霊夢を寝かせた。
眠っている彼女の寝顔はとても愛しく、汚れた手でもうしなく思うが、頬を軽くなでて私は大妖精のさっきの質問に答えることにした。
「…あいつら……萃香たちはおかしくなった霊夢たちを使って何かに利用しようとしていたはずだ……なのに、霊夢がこうして負けたのにもかかわらず、まだ私たちが把握してない…黒幕が出てきていない……おかしくないか?」
私はみんながいる方向に歩いて戻りながら私は話し出す。
「……確かに、萃香さんたちが異変を起こした理由もまだわかっていないですし……魔理沙さんの言う通り、鈴仙さんに呪詛をかけて自分のことをばらさせないようにした人物がまだ残っています」
小悪魔がそう言ったとき、私はとあることを思い出した。
「…そういや、幽香と戦ってて軽く流していたんだが……ぬえと会ったんだ」
私が言うと、その話を聞いた大妖精がこちらを見る。
「え…?でも、命蓮寺の方々は響子さん以外全員が死んだって、魔理沙さん言ってましたよね?」
大妖精がそう言ったとき、様々な疑問が一つの線でつながっていく。聖たちの話などから、その黒幕の人物を私は割り出した。
「……もしかしたらというか、私たちは大きな間違いをしていたようだな…」
私はこの場にいる全員を見回しながら呟き、ある一人の人物を見る。
「…だよな?永琳」
たぶん明日も投稿すると思います。