もう一つの東方鬼狂郷   作:albtraum

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もう一つとか言って前作とは関係がありません。

割と好き勝手にやっています。

それでもいいという方は第七十八話をお楽しみください。


もう一つの東方鬼狂郷 第七十八話 仲間の力

「ぜぇ…ぜぇ…!」

 私をお祓い棒で殴った霊夢も殴られて地面に膝をついている私も、肩で呼吸をしながらできるだけ空気中にある酸素を肺に送り込み、相手よりもできるだけ早く回復を図ろうとするが、お互いにそれをさせないように走り出して打ち合いを始めて回復などままならない。

 以前の私なら、あの霊夢をここまで追い込めば晩飯に自分で赤飯をたくぐらいの功績ではあるが、今は霊夢に追いつくだけではだめだ。越えなければならないのだ。

「……」

 ドォッ!!

 私の持っている棒と霊夢の持っているお祓い棒が打ち合わさり、まるで花火が炸裂しているように辺りに綺麗に輝く魔力の塵をまき散らす。

 バギャッ!!

 いや、違う。まき散らされたのは魔力の塵だけではない。私が得物として使っていた棒の耐久性がついに限界に達したらしく、半ばからへし折れた。

「…っ!?」

 私は弾幕をばらまきながら霊夢から距離を取り、手に残っていた棒の一部を投げ捨てて状況の確認をする。

 私の中に感じるアトラスに増やしてもらった生命エネルギーもかなり消費している。この調子でいけばあと十分も戦えないだろう。

 魔力はとうの昔に尽きた。体力も底をつき始めており、走るのが厳しいと感じるほどに足が重く、鉛のようだ。その体を突き動かしているのは気力と信念のみ。

 しかし、その二つもダラダラと長引けば次期に底をつく。そうなれば勝利に近づくのは霊夢だ。

「……片を付ける……小悪魔ぁ!!」

 私は叫びながら走り出すと、小悪魔は別方向からレミリアや咲夜の援護の邪魔とならないように霊夢に向けて走り出す。

 霊夢もこれが私の最後の攻めだと察しているらしく目つきが変わり、持っている残りの札をすべて私に向けて投げつける。

 札が私に触れる寸前、上から飛んできたナイフがほぼすべての札に正確に突き刺さり、私に向かうはずだった札を咲夜が退けた。

 私はそのうちに一歩を踏み出して大きく進み、霊夢に近づいた。

 そこで魔力が底をつきてしまうが、私の本意ではないが非効率でありながらも私は生命エネルギーを魔力に変換して体を強化し、ボロボロの体に鞭を打つ。

 ほんの数メートルという距離が、何十メートルも何百メートルも距離があるかのように感じる。

 霊夢まで、三歩。

 私が大きく踏み出したことで霊夢との距離がぐっと縮まり、それと比例するようにして彼女から攻撃を浴びてしまう確率が上昇する。

 霊夢が私に向けて大量の弾幕を放ち、私は弾幕が自分に到達する前に口の中にある血を飲み込んで、脳の処理能力を強化した。

 脳が活性化し、見えている視界のあらゆるものの動きがスローモーションのように遅くなり始める。

「……」

 どの弾幕がどの方向からどの角度で、一つ一つの弾幕がどれだけのスピードでこちらに近づいているか、また直線と曲線では軌道の問題でわずかに生じる時間差。霊夢のホーミング付きの弾幕がどれだけ私を追跡する能力を持っているか。それらを全てたたき出し、計算上は弾幕を全て避けられる安全地帯に体を滑り込ませ、血を再度呑み込むことによって脳の活性化をリセットして魔力力を強化した。

 脳の活性化を解くと同時に弾幕の進行スピードが速くなって私に向かって飛ばされてくるが、計算をした通りに私には一発も当たることなく弾幕は通り過ぎていく。

 その隙に私はもう一歩大きく踏み出した。

 残り二歩。

 得物を持っている霊夢の方が射程が長く、私に向かってお祓い棒を薙ぎ払う。

 だが、そのお祓い棒は途中で静止することとなる。なぜなら咲夜とは別行動していたレミリアが真上から霊夢に接近しており、私を殴るはずだったお祓い棒をグングニルで受け止めてくれたからだ。

「…っ!!?」

 レミリアの接近に気が付くことができなかった霊夢は驚愕しながらもすぐに対応し、レミリアのグングニルをお祓い棒で殴り消し、それと同時にレミリアの胸にお祓い棒を一瞬のうちに二度も叩き込む。

「あぐぁ…っ!?」

 レミリアが悲鳴を上げ、私の視界から消え失せた。

 だが、私はそちらには目もくれずに押しを大きく前に出して霊夢に近づく。

 残り一歩。

 レミリアへの攻撃が終了した霊夢が魔力で赤く光っているお祓い棒を全力で私の頭部に向けて横から薙ぎ払う。頭蓋を容易に砕くことのできるその棒はまたしても私に当たることもなく、何かに防がれる。

 霊夢のお祓い棒は地面に埋め込まれる形でいきなり出現した鉄の棒により、それにあたったお祓い棒の動きが静止した。

 小さな破裂音を出しながら現れたその棒は大妖精の瞬間移動によるものだ。ルーミアとの戦いでこちらに加勢するほどの余裕はないと思われるため、大妖精はルーミアに勝ったようだ。

 私はそう思いながら地面を踏みしめ、もう一歩足を突き出そうとした。

 しかし、そのとき霊夢は私とはまだ一歩分の距離が開いているため、時間差的に多少近くにいる別の方向から接近していた小悪魔の方向に向かって魔力の弾丸を大量にばらまいた。

 その弾幕一つ一つは爆弾だったらしく、まばゆい光を放ちながら大爆発を起こす。数百倍に膨れ上がった空気の爆風に煽られ、疲れ切っている私の体は後ろに倒れそうになるが、皆が霊夢の攻撃を防いだりしてくれたおかげでここまで近づくことができたのだ。だから、この程度で後ろに下がるわけにはいかない。

 私は歯を櫛張りながら、また大きく一歩を踏み出す。

 




たぶん明日も投稿すると思います。

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