もう一つの東方鬼狂郷   作:albtraum

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もう一つとか言って前作とは関係がありません。

割と好き勝手にやっています。

それでもいいという方は第七十七話をお楽しみください。


もう一つの東方鬼狂郷 第七十七話 相性

 ルーミアに能力を使われ、あらゆる感覚がマヒした私の意識が途切れたと思ったとき、視界や聴覚、触覚などが元に戻っていた。

「…あれ…?」

 さっきの意識の途切れる感覚、あれは大妖精の瞬間移動の感覚だろう。私が大妖精のことを見ると、大妖精は私に触れるためにあげていた手を下げて言う。

「…皆さん…それでは霊夢さんをお願いします」

 大妖精はそう私に言うと、瞬間移動で姿を消した。

 ボッ!

 小さな破裂音を出しながらルーミアの目の前に大妖精が出現する。大妖精の握った拳がルーミアの胸に叩き込まれ、ルーミアを後方に吹き飛ばす。

 すぐさま大妖精の出現に反応した霊夢が、現れた大妖精に向かってお祓い棒を振り下ろした。お祓い棒の軌道が一本の線に見えるほどの速度で振るわれるが、大妖精は当たる寸前に瞬間移動をして消え去り、霊夢の攻撃をギリギリで避けた。

 上から下へ薙ぎ払われたお祓い棒は地面に触れていないというのに、発生した剣圧が地面にひびを入れ、爆発が起こったのと引けを取らないほどに砂を舞い上げる。

 十数メートル離れているこちらにまで砂煙が届き、それを少し吸い込んでしまった私は顔をしかめながら呟いた。

「皆、霊夢も疲弊してる……でも…もう少しだけ、頑張ってくれ」

 私は小悪魔たちに伝えると小悪魔たちは力強くうなづき、それぞれが得物を構える。

 大妖精は私たちの邪魔にならないように、ルーミアをこの場から連れ出してくれた。大妖精がルーミアを倒せようが、倒せまいが、これで終わらせるほかない。

 息切れを起こし、疲れ切っている私たちは最後の戦いにその身を投じた。

 

「…ルーミアちゃん……」

 私がルーミアちゃんに話しかけるとルーミアちゃんはそれに応えるように、お得意の闇で覆う程度の能力を私に使ってきた。

 ルーミアちゃんの能力はチート級の能力であり、全ての感覚を闇で覆うことができる。でも、どんなに強い能力でも弱点はある。

 ルーミアちゃんの場合は、自分が合わせている目の焦点部分に能力を使いたい人物を合わせなければならないなどだろう。

 目の焦点部分は、視界全体からしたら二十パーセント以下とかなり狭い範囲だが、それでも能力にかかってしまう時にはかかってしまう。

 だとしても私が瞬間移動という能力が使えるいじょう、ルーミアちゃんに勝ちはないだろう。

 ルーミアちゃんに攻撃をしようとした私は、彼女の闇で覆う程度の能力がかけられ、あらゆる感覚が使い物にならなくなってしまう。

 でも、それでも私は落ち着いていた。感覚を殺すことはできても私の思考を止めることはできない。

 私は頭の中で瞬間移動先の座標を計算して出し、自分の体をその位置に瞬間移動させた。

 一瞬の間だけ意識が無くなったような感覚がするが、瞬間移動が終了すると浮遊感を感じ、計算通りに私の体は上空に出現していて、ルーミアちゃんの能力が解除されていた。

「…」

 私は、私のことを探してるルーミアちゃんの真後ろに瞬間移動し、体がそこに出現すると同時にルーミアちゃんに向けて至近距離から弾幕を浴びせる。

 魔理沙さんの血の能力で強化されたため、いつもの自分からは考えられないぐらいの威力が弾幕で出てしまい、少し驚いてしまった。

 ルーミアちゃんの腕が私の弾幕で吹き飛ばされ、彼女もその衝撃で大きくバランスを崩して後ろに尻もちをついてしまう。

 ビジャッ!!

 鈴仙さんの狂気の能力が働いているせいで痛みなど感じていないのか、ルーミアちゃんは吹き飛ばされた腕のことなど見ず、立ち上がって私の方向に殴るかかってくる。

「ルーミアちゃん…ごめんね……少しの間だけ……我慢してね」

 魔理沙さんたちの戦闘で壊れてしまっていて足元に転がっている木材。それにしゃがみながら私は言い、触れた。

 ボッ…!!

 巨大な木材が消え、ルーミアちゃんの片足の中に出現し、彼女の足を根元から切断した。

 小さかった私の能力は生物を瞬間移動することはできるが、生物の中に何かを送り込むことはできなかった。それはとある理由で弱体化したせいであるため、それが一時的に解除されている今であれば、瞬間移動をうまく使えばこういう事もできる。

 ルーミアちゃんは片足で自重を支えることができず、受け身を取る事さえせずに体を地面に打ち付けた。

 木材に足を切断され、弾幕で腕を吹き飛ばされたことにより、ルーミアちゃんの体から大量の血がどくどくと流れ出始めている。

「ぎ…あ……あぐっ……!?」

 仰向けに倒れているルーミアちゃんは自分の手足を見て目を白黒させ、ある方の手足でもがいているが、近づいた私はルーミアちゃんの後頭部に拳を叩きこみ、気絶させた。

 ルーミアちゃんの体から力が抜けて地面に突っ伏していると、彼女の体が縮みはじめ、本当に気絶しているのだと分かった。

 そうしてルーミアちゃんの体が完全に縮むのを待っていると、私の目線の高さが下がってきているのに気が付いた。

 自分の手や体を見ると、手が徐々に小さくなり膨らんでいた胸もなくなっていき、視線がいつも見ていた高さと同じぐらいの高さとなる。

 時間はギリギリで、もう少し遅ければ負けていた可能性が高く、完全勝利とまではいかなかったが、私はルーミアちゃんの攻撃をほとんど受けていない。勝ち方としてはよくもなく悪くもないと言ったところだろう。

 でも、鬼にすら対抗できる能力を持ったルーミアちゃん相手にこれで済んだんだ。良しとしよう。私はそう思いながらため息をつき、気絶しているルーミアちゃんのことを見下ろした。

 

「…げほっ…!」

 咳と同時に肺から絞り出された血が口の中に吐き出され、口内に血の味が広がる。

 霊夢は以前、自分の切り札である夢想天生を使うとほとんどの魔力を使い果たしてしまうと言っていた。それは嘘ではないだろう。その時、霊夢に嘘をつく理由はない。

 なのに、この強さはなんだ。ボロボロで呼吸も大きく乱れていて、いつもの鋭さなどないはずの霊夢は立ち、地面に膝をついているのは私だ。

「…ばけもんかよ……!!……くそが…!!」

 私は毒づきながら、喀血で口元が血で濡れているため、手の甲でぬぐい取った。

 




たぶん明日も投稿すると思います。

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