割と好き勝手にやっています。語彙力が欲しい。
それでもいいという方は第七十六話をおたのしみください。
いきなり現れたルーミアに腕をひき肉のように潰されてしまった。でも、それが気にならないと言ったら嘘になるが、そのルーミアの姿を見て私は違和感を覚える。
仲が良く、見慣れているはずの大妖精がルーミアを見て疑問符を浮かべているのは、私と同じ違和感がある、そのせいであるだろう。
理由の一つとしては彼女のトレードマークと言える赤いリボンが無くなっていて、それのせいで彼女が別の誰かに見えたともいえる。
そして、なぜ私たちがルーミアの姿に大きな違和感を覚えたかというと、身長の高さが私以上に高く、子供っぽい幼児体型でもなく手のひらで余るぐらいに大きい胸、それにくびれもあって、出てるどころは出て引っ込んでいるところは引っ込んでいて大人っぽく見えているからだろう。
「……」
そして、霊夢の横に佇んでこちらの方向を紅いオーラを纏っている瞳で見つめている目からは何かやばそうな雰囲気を醸し出している。
「…魔理沙さん」
ルーミアのことを見つめたまま、大妖精が私に小さな声で話しかけてきながら近くに歩み寄ってきた。
「…どうした?」
「ルーミアちゃんとは私が戦います……だから、私に魔理沙さんの血を少し分けてください」
大妖精は静かに私に言った。
「…お前に倒せるのか?今のルーミアはそこらの妖精たちとはわけが違うと思うぞ…?もしかしたら、レミリアや咲夜並に強いかもしれない」
いまだ攻撃を仕掛けてこないうちに話を済ませておきたかった私は、早口に大妖精に言った。
「大丈夫です」
そう力強く答えた大妖精の方に私は視線を向ける。
「…わかった」
大妖精は覚悟を決めたような表情をしていて、ダメと言っても引き下がらなさそうだ。理由はそれ以外にもあるが、私は大妖精にルーミアを任せることにした。
いつ霊夢たちが動き出してもいいように、二人のことを注意深く睨みつけながら自分の親指に噛みつき、横に立っている大妖精にしゃがんで指を咥えさせた。
大妖精の唾液で湿った舌が私の傷口とそこからあふれ出した血を舐め取っていき、彼女は慣れない血の味に顔をしかめながら飲み込んだ。
血をゆっくりと嚥下した大妖精の力が増加し、こっちにまでそれが伝わってくる。
大妖精の体が震え、体から異音を発しながら目を見開き、地面に膝が崩れ落ちて体を硬直させた。
「大妖精!?」
膝を地面につき、体を抱えるようにして体を硬直させている大妖精に触れようとしたとき、大妖精の体に変化が起き始める。
「うぐ……うぁぁぁっ…!!?」
大妖精が苦しそうな悲鳴を上げた。
ビギッ……!
大妖精の体に起こった変化は、霊夢の近くに立っているルーミアと同じように体が大きくなっていく。
しばらく経つと大妖精の体の成長が止まり、彼女はさっきまで苦しんでいたのがウソのように軽快な動きで立ち上がった。
立ち上がった大妖精の身長は私よりも高く、大きくなっているルーミアとどっこいどっこいぐらいの高さにまで高くなっている。
私の顔の前に小悪魔とは言わないがそれなりに大きい胸があり、大妖精がかなり大きくなっていることを実感する。
「…魔理沙さん……血をくれたことに感謝します」
今までの子供っぽい声ではなく、見た目通りの凛としていて大人の色っぽい声で大妖精が私に告げる。
「お…おう」
いつもとは違う落ち着いる大妖精の様子に私はどぎまぎしながらも、返事をした。
「では……ルーミアちゃんは私が倒します…皆さんは霊夢さんをお願いします」
大妖精がいいながらルーミアに攻撃を仕掛けようとしたとき、先に行動を起こしていたルーミアが私に能力を使った。
私の視界からいきなり光が消え、何もかもが見えなくなってしまう。
「…は?」
違ってはいるがルーミアの能力だろうという結論にはすぐにたどり着いた。しかし、ルーミアが能力を使った際の闇の広がりのタイムラグなどが確認できず、とりあえずルーミアから離れようとしたときに私は気が付いた。
目が見えなくなっているのに気を取られていたせいで気が付くのが遅れたが、目が見えないだけではない。音が聞こえない。匂いを嗅いでも匂いを感じない。肌に触れている服の感覚や持っている棒の感触が無くなっている。そもそも、体が立っているのか倒れているのか、どの方向を見ているのか、いまどんな格好をしているのかすらもわからなくなっていた。
ルーミアの能力は自分を中心に数メートルの範囲内で闇を操ることができる能力だったはずだ。なのになぜ能力が変化しているのか、どう変化しているのかわからず私の理解を超えている。
全ての感覚がマヒしていて、平衡感覚が消え、レーザーを撃とうにも腕を動かすための感覚が消えているため、私にはどうすることもできない。
唯一できることと言えば考えることぐらいだが、これでは攻撃を受けていても痛覚がないため攻撃を受けたか受けていないのかすらもわからず、ルーミアに食われていてもわからないのではないか。そう思うと、ぞっとして私はさらに混乱をしてしまう。
魔理沙たちは知らないことだが、約二百年前。とある妖怪が幻想郷に生まれた。
その妖怪は生まれつき高い魔力力と戦闘能力を備えており、さらに強力な能力にも恵まれていた。
闇で覆う能力。
普段私たちは光が物に当たり、その光が反射して色や物の輪郭などをとらえている。その光が無くなってしまえば、私たちは物を見ることができなくなってしまう。
ルーミアの能力はそれを応用したものでる。
自分の手で目を覆うと、手という物体に物理的に目を塞がれていて見えないということもあるが、完璧に光が手の隙間から入ってこないようにそれをすれば、完全な闇となり、塞いでいる手すらも見ることができなくなるだろう。
ルーミアの能力はそれと似たようなものだ。
目を闇で覆えば目が見えなくなる。それと同様のことがほかの器官や五感にできるとすれば、やられた相手はどうなるか。
やられた相手はあらゆる感覚が闇で覆われ、立っているのかいないのか。座っているのかいないのか。倒れているのかいないのか。右を見ているのか左を向いているのか。息を吐いているのか吸っているのかすらもわからなくなり、ルーミアが能力を解除するしか抜け出すことができる方法はないだろう。
そんな二百年前のルーミアは、少し前に魔理沙たちの前に現れた時と同じ格好をしていて、背が小さかったころとは似ても似つかない。それに漂わせている雰囲気も全然違う。
なぜ、幻想郷のバランスが崩れるレベルの能力を持ったルーミアが力をなくし、低級の妖怪のようになってしまったのか。
それは二百年前、初代博麗の巫女がルーミアを退治したとき、今までの妖怪とは違うと感じた巫女はルーミアにとある契約をさせた。
存在を消し飛ばしてやらない代わりに、自分の後を継いだ博麗の巫女がもし妖怪に負けるようなことがあったら助けるように、と。
ルーミアは、狂っていてもそのことだけは本能が覚えていたらしい。
たぶん明日も投稿すると思います。