もう一つの東方鬼狂郷   作:albtraum

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もう一つとか言って前作とは関係がありません。

割と好き勝手にやっています。

それでもいいという方は第七十五話をおたのしみください。


もう一つの東方鬼狂郷 第七十五話 刻む その②

「……魔理沙ぁ!小悪魔ぁ!」

 レミリアの叫び声が聞こえた。それに混じって大妖精の絶叫も聞こえてくる。

 夢想封印の球体が爆発した影響で私の腕が一片の肉片も残さずに消し飛んでしまっている。さらに舞い上がった砂煙で視界も悪い。

 それでも、賭けは私が勝ったようだ。

 私の思いが届いたのか、あいつが単純に気分でそうしたのかはわからないが、寿命が延ばされた私と小悪魔の体は動くことができるようになった。

 手足が動くようになった私が小悪魔を見ると、私と契約でつながっている小悪魔の半透明だった体が生命エネルギーが送られたことによりいつもと同じに戻った。

「…魔理沙さん……これは……」

 小悪魔が困惑している。

 使い切った寿命がどこからか湧いて出てきたんだ。驚くのも無理はない。

 でも、私から聞いていた“彼”のことを思い出したのか、思ったよりもあまり混乱はしていないようだ。

「…小悪魔、霊夢も疲弊してる……押し切るぞ…」

 私がそう伝えると、小悪魔がうなづいて私と一緒に砂煙の中から飛び出した。

「霊夢ぅ!」

 レミリアたちも私たちと同じように始末しようとしていた霊夢に飛び掛かり、全力で私の拳を突き出して殴りつける。

 残り三秒。

「!?」

 私たちを始末したと思っていたのだろう。霊夢は油断していて、私のパンチを背中にもろに受けた。

「あぐっ…!?」

 突き飛ばされるようにして霊夢が前方に吹っ飛ばされ、前方に回り込んでいた小悪魔の拳を受け止めることができず、腹に食らっている。

 霊夢の体がくの字に曲がり、小悪魔が横から殴っていたため、右方向に霊夢の体は飛ばされ、地面を転がった。

「ぐ……あ……っ…!!」

 霊夢も人間であり、夢想天生と夢想封印を連続的に使ったことにより、かなり疲れている。疲れれば動きが悪くなるのは当たり前である。

 残り二秒。

 霊夢が転がりながら起き上がり、こちらを向こうとしたが、すでに走り出した私と小悪魔に札を投げつける。

「…!?」

 私たちに向かって投げられた数枚の札は、何枚かは叩き落とすことには成功したが、完璧にすべてを落とすことができなかった私と小悪魔の体の所々にまるでノリでつけられているように吸着した。

「爆」

 霊夢の淡々とした命令と共に、赤い炎を吹き出しながら何百倍もの体積に膨れ上がった衝撃をまじかで受けてしまう。

「うぐぁっ!?」

 後方にぶっ飛んだ私は地面に背中を打ち付けた後、地面と空を交互に何度も見てからようやく止まることができた。

 皮膚が焼け焦げる激しい痛みを感じたと思った直後、私は上空に霊夢の姿が見えたことに気が付く。

「…っ!」

 霊夢は魔力で足場を作り、私に向かって跳躍してくる。

 血を呑み込んで体を防御させようとしたが、素早い動きの霊夢のお祓い棒が私の顔に叩き込まれる。

「あぁぁっ!!…がはっ…!!」

 私は血反吐を吐き、何百トンという力で殴られたかのように体が地面にめり込んだ。霊夢が私を殴って地面にめり込ませた衝撃で、私を中心に地面に放射状にひびが入っていき、爆発でもあったのではないかと思うほどの砂煙が舞い上がる。

 私に当てたお祓い棒を持ち上げ、霊夢がしゃがみながら私の顔を左手で掴み、地面に後頭部を何度も打ち付けさせた。

「…っあぁぁぁぁっ!!」

 指の隙間から見える霊夢の赤い瞳が、あの時のように笑っているのが見えた。まるで、私が霊夢に殺された時のような状況だ。

 だがあの時とは違うところがあり、私にまだ反撃する力が残っているということだけが違うだろう。

 私は右手で拳を握り、霊夢に向かって振りぬいた。

 それを予期していたのか、霊夢は上体を下げて私の拳をすり抜け、それと同時に顔を掴んでいる手をどけて、上体を下げる力を利用して私に頭突きをかます。

「うぐっ!」

 お祓い棒を私に振り下ろそうとした霊夢に向けて、小悪魔が普通の人間ならば上半身と下半身が分かれるほどの威力で回し蹴りを放つ。

 残り一秒。

 その蹴りは霊夢の顔に直撃し、霊夢は十数メートルは距離はある木に衝突して倒れ込む。

 だが、霊夢はただ蹴られただけではなかったようだ。

 蹴られた瞬間、大量の札を私たちのいる場所にばらまいていたらしいが、今までとは比べ物にならないほどの量が私に押し付けられている。

「「っ!!?」」

 札を払い捨ててこの場所から逃げ出そうとしたとき、木を支えにして立ち上がっていた霊夢は嗤いながら呟く。

「爆」

 発生した炎、炎が発する超高温の熱、爆発による衝撃波、それらが同時に私と小悪魔に襲い掛かってくる。

 爆発の炎であるオレンジ色が視界を覆い、その爆発音に鼓膜が破れそうになりながら爆風に吹っ飛ばされてしまう。

 小悪魔よりも爆心地に近かった私の腕が進行方向に吹っ飛んでいくのは見えた。足の骨は爆発の衝撃波で粉砕してタコの足のようにグニャリと曲がったのが何となくわかり、爆風で体が浮き上がり、ものすごい勢いで地面と衝突してバウンドし、何度か地面にぶつかった。

 ようやく木の幹に背中がぶつかって止まることができても、腰椎と胸椎がすべて粉砕し、体が胸から下が動かすことができなくなってしまう。

「……っ…はぐ……ぁ……っ!!」

 倒れそうになった私は手を地面について立ち上がろうとしたが、そのまま大きくバランスを崩して倒れ込んでしまった。

「……あれっ…?」

 そこで思い出す。手はさっきの爆発で吹き飛んでしまったではないかと、両足の骨も砕けてねじれて地面に伸びている。

 霊夢の顔も体も半分しか見えていない視界に違和感を覚えた私は、触れることなくすぐに察した。顔の半分が吹き飛んでいるのだ。

 ゴボッ…

 と口だった器官から血を吐き出す。顎が顎関節ごと無くなっていて、それがちょうど足元に転がっているのがうつむいた私のちょうど視線の先にあった。

 舌も千切れていて、血を飲むことができない。ついている方の手で血をすくって呑み込もうとしたが、指が一本も残っておらず、喉に血を流し込むことはできない。

 そんな状態だというのに、私の血の能力が解けてしまう。

 このままでは、死ぬ。

 私の意識が揺らぎ、倒れそうになった私を瞬間移動でこっちに移動してきた大妖精が支えてくれた。

「魔理沙さん…!」

 大妖精の顔が引きつっていて、相当私の体はやばいことになっているのだと表情から私は悟った。

 

 残りゼロ秒。無想天生解除。

 

 私の意識が途切れそうになっていた時、大妖精が私の血液を手ですくって喉に流し込んでくれた。

 それのおかげで、私の意識がなくなる直前に血の能力によって魔力力が強化され、さらに夢想天生が解除されたことにより、魔力を使うことができるようになった私はすぐに腕や足、顔などをすぐに修復させる。

「…っはぁっ!!」

 霊夢が立ち上がろうとした私にすでに飛び掛かっていて私は殴られてしまうが、それと同時に私は霊夢を殴り返す。

「…か…はっ……っ!!」

 お互いによろけた私たちは地面に膝をつくか、木に背中を預けて体が倒れないようにして支える。

「…霊夢…っ!!」

 顔をお祓い棒で殴られたせいで砕けた顎と頬骨の一部が砕けた感覚がするが、私は治療をしながら霊夢に飛び掛かって再度攻撃を仕掛けた。

 まだ地面に膝をついて立つことができていなかった霊夢は私の攻撃を、いつものように避けることができない。

「終わりだぁぁぁぁ!!」

 私は叫びながら、避けることができない霊夢に拳を伸ばした。その瞬間に、伸ばしたはずの右腕の感覚が丸ごとなくなっていることに気が付いた。視界に見えるはずの腕がいきなり消失したことで、腕が一瞬のうちにもがれてしまったときが付くのに数秒の時間を要した。

「…なっ…!?」

 だが、それは霊夢の攻撃ではないことに私は気が付く、なぜなら霊夢は今頃立ち上がって攻撃を私にぶち当ててきたからだ。

 後方にぶっ飛んだ私は途中で後ろに現れた大妖精に瞬間移動で運ばて助けられ、レミリアたちの近くに連れてこられる。

「…大丈夫かしら?」

 レミリアがグングニルを構えながら私に言う。

「…何とかな……」

 私は呟きながら腕を再生させて霊夢の方向を見ると、私の腕を切断した人物が霊夢の近くにいるのが見えた。

「…ルーミア…ちゃん……?」

 森を出てすぐに襲って来た妖怪が霊夢の近くに立っており、それを見て驚いて言葉が出ないと言った様子の大妖精のかすれた声が小さく響く。

 




たぶん明日も投稿すると思います。

少ししつこくてすみません。入れたいシーンをぶっコんでいたら長くなってしまいました。

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