もう一つの東方鬼狂郷   作:albtraum

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もう一つとか言って前作とは関係がありません。

割と好き勝手にやっています。

今回は少し百合成分が含まれます。

それでもいいという方は第七十話をお楽しみください。


もう一つの東方鬼狂郷 第七十話 契約

 

「…もう少し…持つかと思ったんですが……持ちそうにないですね…」

 段々と光る強さがまし、少しずつ半透明になっていく小悪魔が申し訳なさそうに私に言った。

「小悪魔、私が魔力をお前に分ける…それなら大丈夫だろう!?」

 確か、小悪魔などの低級の悪魔は誰からか魔力などのエネルギーを貰っていないと生きていけないと聞いたことがある。小悪魔の魔力が無くなった。それが意味するのは小悪魔の死だ。

 私が小悪魔に魔力を分けようとしたが、彼女は首を横に振って駄目だと呟く。

「…どういうことだ?」

 私が聞くと小悪魔が訳の説明を始めた。

「私は…パチュリー様と契約してこの世界に居続けることができています……ですので私の体での魔力の仕組みは他人とは少し異なります……契約した人…パチュリー様の魔力でしか生きることができません……だから、魔理沙さんに魔力を貰っても私はそれを魔力として使うことができないのです」

 パチュリーが小悪魔と何かしらの契約をしているのは知っていたが、あまり興味がなかったため、小悪魔の契約についてはあまり知らない。

「…私のような低級の悪魔がここまで強くなれ、生きてこられたのは全てパチュリー様が私と契約してくれたおかげなんです……でなければ私はとうの昔に魔力切れを起こして死んでいたでしょう。……この異変が始まった時にパチュリー様が私に大量の魔力を注いでくれていたので、今まで活動することができていたんですが…もう限界のようですね…」

「…なら、私と契約しろ!そうじゃないとお前は消えちまう!」

 私が半透明になっていく小悪魔の肩を掴みながら言うが、かたくなに小悪魔は首を縦には振らない。

「私は……契約してくれたパチュリー様の従者として最後までいたいんです……」

 自分の透けていく体を見つめながら、小悪魔は静かに呟く。

「……。…お前のその気持ちはわからんでもない。……放っておいたら死んでいた自分を助けてくれたパチュリーに尽くしたいっていう気持ちは素敵なものだし、私のそれを尊重したい……でも、せっかく今までパチュリーが繋いでいてくれていた命をこんなところで終わらせちまうのか?」

 これは私の勝手な解釈だが、数日にわたって小悪魔と一緒に戦って来た。それができるほどということは、おそらくパチュリーは自分の持つ魔力を全て小悪魔につぎ込んだとみていいだろう。自分の死を悟ったパチュリーが小悪魔が新しい契約者を探すことができるように、持っていた全ての魔力を渡したのではないだろうか。

 パチュリーが死んでいる今、あいつが何を思って小悪魔に魔力を託したのかはわからない。だが、パチュリーならそうするだろう。そう言う奴だ。

「…」

「パチュリーのためを思うなら…生き抜け、小悪魔」

 私が言うと、小悪魔が顔を上げて力強くうなづいた。

「…それで、契約しろって言ったはいいが……どうやったら契約できるんだ?…命を半分とかか?」

 私が聞くと小悪魔は違いますよ、と言って私が持つ契約の間違った認識を解いてくれた。

「…悪魔との契約は、魔理沙さんが思っているようなものではなく……契約して自分の従者とするのです……と言っても、それは低級の悪魔だけですがね」

「へえ、じゃあ…上級なら寿命の半分だってあり得るのか?」

「はい、強い悪魔なら前金的な感じですね」

 小悪魔は低級の悪魔であるため、自分で魔力を生産することができない。そのため、誰かに取り付いて契約してもらって、魔力を分け与えてもらうのだ。

「契約自体はすぐにできますが……そのとき、私と契約して何を使うのかを選ばなければなりません。たとえばパチュリー様のように魔力で契約するのならば、出せる力は限られますが魔力は回復してしまえばほぼ無限にあるに等しいので、それで契約した方がいいでしょう」

 小悪魔の話を聞いていた私は、一呼吸間をあけてから言った。

「…お前が自分の持つ最大限の力を引き出せるようになるには、なにで契約をすればいい?」

 私が聞くと、小悪魔は少し悩んでから呟く。

「……寿命です」

「…ならそれで契約する」

 私がそういうと小悪魔はやっぱりという顔をした後に、やはり止めに入る。

「ちょっと待ってください!」

 私が早く契約を済ませようとするが、小悪魔が私のことを掴んできた。

「なんだよ」

「なんだよ…じゃあないですよ!寿命ですよ!?わかってるんですか!?」

 肩を掴んできた小悪魔は軽く私を揺すりながら叫ぶ。

「ああ、わかってる……お前も十分理解してるはずだろ?…霊夢を相手にして、全力を出さずに倒せるわけがない……霊夢はいつも私たちの一歩も二歩も先を行く、だから全力で行かなければ勝てるわけがない…だから、私は寿命を使う」

 私が言うと、小悪魔も霊夢相手に全力を出さなければ負けると分かっているのだろう。渋々と言った感じでうなづいた。

「…っ……わかりました……」

「…それで、どうやって契約するんだ?」

 私が聞くと小悪魔が私の手を取って説明を始める。

「…とりあえず、時間がないので説明しながら契約をします」

 小悪魔が応戦しているレミリアたちを見ながら呟く。

「あっちもそうだが…こっちも早くした方がいいかもな」

 小悪魔自身も向こう側の景色が見えるぐらいには色が薄くなってきている。

「…わかりました」

 うなづいた私の手を掴んだ小悪魔が少し私の指を眺めてから呟く。

「……失礼します」

 小悪魔は私の人差し指を口に咥えて、鋭い犬歯でがぶりと噛みついた。

 ズキッとした鋭い痛みが人差し指に走り、肉に小悪魔の歯が食い込む感触が指から神経を伝わってくる。

 小悪魔が溢れてきた血を唾液でぬるっと湿っている舌で舐め取ってから飲み込み、口から私の指を出した。

「…魔理沙さんも同じようにお願いします」

 私は小悪魔が差し出したサラサラと肌触りのよい手を掴み、同じように人差し指を咥えて歯を突き立てると、小悪魔はぐっと痛みをこらえているのか眉がピクリと動く。

「…」

 噛んだ傷口から血が滲みだし、私はその血を自分の血を飲み込むのと同じように嚥下した。

「…飲みましたね…?これで契約の第一段階が終わりました……次に…………」

 小悪魔が途中で口ごもってしまう。

「…?…次に何をすればいいんだ?」

「…えっと、これは契約するうえで必要なことであって…私に流すための流れを効率よくするための行為なので……」

 薄暗くてよくわからないが小悪魔の顔が少し赤らんで見えるのは気のせいだろう。

「ああ、わかった…それでどうすればいいんだ?」

 私が聞くと顔を赤くした小悪魔が小さな声で呟いた。

「き……キスをしないとだめなんです…!」

 私が外に出て神社に行き、霊夢に告白された時も驚いたが、これもそれぐらい驚いた自信がある。

 




たぶん明日も投稿すると思います。

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