割と好き勝手にやっています。
それでもいいという方は第六十六話をお楽しみください。
今回は短いです
ザシュッ!!
大妖精を突き飛ばした私の右腕が、椛の大剣に切り跳ばされて回転しながら後方に飛んでいく。
「…っ!!」
左手で切られた傷口付近を強く抑え、出血を押さえさせる。
近くに立っている椛に傷口を押さえていた左手をそこから放して、手の平を向けてレーザーを放つ。
「ははっ」
椛が笑いながら大剣をふるって私が放ったレーザーを打ち消す。
さっきまでの前任者たちの声や殺戮への快楽や欲求は小悪魔たちにあってからというもの、全く感じない。
これなら使いすぎない範囲であれば、前任者たちが現れてそいつらに飲まれることはないはずだ。
血のこびりついている親指を口に含み、血を飲み込む。
「…っ」
魔力力を強化した私は、体の奥から熱いものがこみ上げてくるのを感じた。
大きく息を吸い込んで呼吸をしながら強化された魔力を全身に送り込む、何だか別の生物になっていくような感覚がする。五感が研ぎ澄まされていき、私は右腕を再生させながらゆっくりと瞳を閉じる。
椛が踏み込む土の音で距離を、服のこすれる音で格好を、口から吐き出されるわずかな吐息で椛のリズムを聞き取る。
「…はぁっ!」
椛が大きく振った大剣の空気を切り裂く音から切り付ける角度を、空気の流れからどれだけの距離が離れていて、どれだけ踏み込んで大剣のどの部分で切る気なのかを割り出した。
私は目を閉じたまましゃがむと私の頭上を大剣が通り過ぎ、後ろに生えている木を両断する。
「……」
大振りの一撃であったため、あと一秒の半分程度の時間は隙があるはずだ。
私はゆっくりと目を開けながら立ち上がり、椛の顔を掴んで私の真後ろにある椛が両断した木の幹に叩き付けた。
「…大妖精、目を閉じてろ」
私が言いながら短いスペルを唱えて、叩き付けた椛のことをこちらを向かせ、手をかざす。
「…leuchten(光り輝け)!」
私が光の魔法を発動させると強い光、人間や妖怪も失神するレベルの光が発生する。
光を直視した椛の体からすぐに力が抜けてぐったりとして動かなくなった。
おかしくなっていたとはいえ、私は萃香や幽香を相手にしていたのだ。今更椛に負けるわけもない。
「…すごい、手慣れてますね魔理沙さん」
突き飛ばされた大妖精が光を見ないように目を手で覆っていたが、その手を放して土を服から払いながら立ち上がり、私に言った。
「…これだけ戦ってれば……さすがにな」
私は言いながら博麗神社を見上げると、すでに戦いは始まっていて、グングニルが爆発する炎が遠目にも見える。
「……」
私は一度博麗神社から目線を外し、椛を見た。
「…魔理沙さん?」
大妖精が心配そうに私に声をかける。
「…私の友人が、こいつに殺された」
私がゆっくりと話し出すと、大妖精は少し落ち込んだように目線を下げた。
「…」
「…初めは…アリスを殺した奴を殺したくて殺したくて仕方がなかった…」
私が呟くと、大妖精は心配そうに私のことを見上げる。
「…でも、やめだ……負の連鎖を…ここで断ち切るんだ…」
私は言いながら再度、博麗神社を見上げながらそっちの方向に向けて空を飛んだ。
たぶん明日も投稿すると思います。